その日、俺は彼女に出会った―――。
時に、気象庁とは何を行うところなのであろうか。
まぁ簡単に、俺たちの身近で彼らの存在を感じることができる場面は、やはり天気予報であろう。
明日の天気が晴れか雨かだけではなく、その降水確率や気温、さらに一週間の天候の変動まで予測できるようになったのは素直にすごいと思う。
ただ、天気予報も所詮『予測』でしかなく、外れる可能性はあるというのは分かる。だが、
「今日外れるこたぁないだろうよ…」
水を吸って重たくなったタオルを絞りながら、ため息と共に俺は呟いた。
昨夜大学の友人(まぁ大半はオタだが)たちと飲みに出かけ、自宅に帰ってきたのが午前3時。風呂に入ることもなく眠りにつき、二日酔いの頭で起き上がったのが昼の10時。大学の講義が始まるまで残り1時間の時間だった。
大慌てでシャワーを浴び、講義の準備をして家を飛び出し、なんとか電車に飛び乗れたのは幸いであった。
その車内で、今日が雨だと聞かされるまでは。
今俺―――秋津正彦は大学の講義を終えて電車から家に最も近い駅で降り、ダッシュで帰ろうと思った矢先に本降りになった雨をやり過ごすため、近くの廃工場で雨宿りをしていた。
雨脚は強くなるばかり、屋根を叩く音も大きくなっていく。
「帰れねぇよなぁ…どうすっかな」
いつもなら鞄の中に入れてある携帯用の折り畳み傘も今はない。10月の雨は冷たく、水も滴るナンとやらになるつもりもない。
「都合よく傘がある…とかはないよなぁ」
辺りを見回すが、あったのは骨組みが錆だらけで今にも折れそうなボロ傘くらいだ。
ため息一つと共にもう一度骨組みだけの残骸の傘を見て―――気付く。
「…?何だありゃ。人型…?」
その横で何かが倒れている。本当に小さな、自分でも良く分かったなと思うくらいの何かがそこに背を預け、眠るように機能を停止させている。
「…武装、神姫?」
友人の片桐が最近しきりに会話のネタに持ってくるその小型ロボットの名を俺は呟いていた。
逆十字(アンチクロス)~プロローグ
『雨』
時に、気象庁とは何を行うところなのであろうか。
まぁ簡単に、俺たちの身近で彼らの存在を感じることができる場面は、やはり天気予報であろう。
明日の天気が晴れか雨かだけではなく、その降水確率や気温、さらに一週間の天候の変動まで予測できるようになったのは素直にすごいと思う。
ただ、天気予報も所詮『予測』でしかなく、外れる可能性はあるというのは分かる。だが、
「今日外れるこたぁないだろうよ…」
水を吸って重たくなったタオルを絞りながら、ため息と共に俺は呟いた。
昨夜大学の友人(まぁ大半はオタだが)たちと飲みに出かけ、自宅に帰ってきたのが午前3時。風呂に入ることもなく眠りにつき、二日酔いの頭で起き上がったのが昼の10時。大学の講義が始まるまで残り1時間の時間だった。
大慌てでシャワーを浴び、講義の準備をして家を飛び出し、なんとか電車に飛び乗れたのは幸いであった。
その車内で、今日が雨だと聞かされるまでは。
今俺―――秋津正彦は大学の講義を終えて電車から家に最も近い駅で降り、ダッシュで帰ろうと思った矢先に本降りになった雨をやり過ごすため、近くの廃工場で雨宿りをしていた。
雨脚は強くなるばかり、屋根を叩く音も大きくなっていく。
「帰れねぇよなぁ…どうすっかな」
いつもなら鞄の中に入れてある携帯用の折り畳み傘も今はない。10月の雨は冷たく、水も滴るナンとやらになるつもりもない。
「都合よく傘がある…とかはないよなぁ」
辺りを見回すが、あったのは骨組みが錆だらけで今にも折れそうなボロ傘くらいだ。
ため息一つと共にもう一度骨組みだけの残骸の傘を見て―――気付く。
「…?何だありゃ。人型…?」
その横で何かが倒れている。本当に小さな、自分でも良く分かったなと思うくらいの何かがそこに背を預け、眠るように機能を停止させている。
「…武装、神姫?」
友人の片桐が最近しきりに会話のネタに持ってくるその小型ロボットの名を俺は呟いていた。
逆十字(アンチクロス)~プロローグ
『雨』