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インターバトル3「エルゴより」


「ほら、着いたぞ」
  マスターはコートの胸ポケットの中で終始俯いているマイティに呼びかけた。
「本当に、直るんですか……?」
  沈痛な声色でマイティは主人を見上げる。
「ここの店長は確かな腕を持っている。大丈夫さ」
  マスターは右手に提げた紙袋を揺らした。中にはマイティの愛車、
1/12ヤマハV-MAXが入っている。
  二人はホビーショップ・エルゴに来ていた。
  マスターの行きつけのショップである。
  マイティを迎え、V-MAXを買った場所だ。

◆     ◆     ◆

  河川公園のラジコンコース。日曜日の昼、晴れた日には、マイティはここでV-MAXを走らせるのが日課となっている。
  天使のマークがプリントされた専用のフルフェイスヘルメットをかぶり、愛車にまたがるなりマイティはエンジンを始動。クラッチペダルを踏み込み発車する。小気味よくスロットルを回し、エンジンを吹かしてゆく。
  小さなライダーが小さなコースを軽快に疾走する。ミニチュアエンジンの甲高い回転音がコースに響き渡る。1/12と言ってもV-MAXの最大の特長であるVブーストシステムはきっちり再現されている。縮小ゆえ構造の簡略化は致し方ないが、スケール換算するならばその挙動は間違いなくV-MAXだった。
  エンジンの回転数が6000回転を突破する。6500回転を超えてからVブーストの本領が発揮される。小さなライダーを見に来たラジコン愛好者たちは固唾を呑んだ。
  が、その時。
 ばすんっ!
  異音がした。直後V-MAXのマフラーから煙がもうもうと吹き出し、スローダウン。マイティは異常に気付き何度も後ろを確認しながら停車。安全のためバイクから離れる。
「マイティ、大丈夫か」
  煙を上げる愛車を、メットをかぶったまま見つめるマイティの元へ、マスターが駆け込んでくる。
  やっとマイティはヘルメットを脱いだ。不安の色を隠せていない。
「マスター……」
  声を出した途端に、マイティは耐え切れず泣き出してしまった。

◆     ◆     ◆

  自動ドアを開けると、入れ違いに大勢の神姫とオーナーたちがぞろぞろと帰るところだった。
「やあ、いらっしゃい」
  店長、日暮夏彦がマスターを見つけ挨拶する。店長と呼ぶには若い。三年前に父親の後を継いでこのホビーショップを切り盛りしているのだった。
「店長、ちょっと頼みたいことがあるんだ」
  マスターはオーナーたちの端っこを通りながら、カウンターへ近づく。
  カウンターの横に設けられた1/12の教室の教壇に、胸像だけのヴァッフェバニーが鎮座していた。
「あら、こんばんはマイティ」
「こんばんは、うさ大明神先生……」
  マイティもこの神姫の学校で学んだことがあった。
「どうしたの? そんな浮かない顔しちゃって」
「あ、その……」
「これなんだが」
  マスターは紙袋からV-MAXを取り出し、カウンターへ置いた。
「こりゃ、うちでお買い上げいただいたV-MAXじゃないですか」
  店長はV-MAXを持ち上げる。
「何か、あったんですか?」
「前の日曜にいつもどおり走らせていたんだが、急に煙を噴き出してな」
  詳しくは彼女から訊いてくれ、と、マスターはマイティをカウンターへ立たせた。
「落ち込んでいても仕方がない。彼に話してくれないか」
「はい……」
  マイティは、6000回転を超えたあたりから変な破裂音がして、止まってしまったことを話した。
「ははあ」
  店長はそれでだいたいの見当がついたようだった。
「たぶん、バタフライバルブ関連ですね」
「バタフライバルブ?」
「Vブーストシステムの要の構造です。エンジンの回転数が6000回転を超えるとだんだんと開き始めて、8500回転で全開になってエンジン構造がツインキャブに変化するんです」
  マスターは普段の走行で見た、中盤からの強烈な吹き上がりを思い出した。
「おそらく、バルブのパッキンか何かが吹っ飛んで、燃料の混合気がいきなり大量にエンジンに入っちゃったんだと思いますよ」
「人間の過呼吸みたいなものか」
「良いたとえですね」
  店長は作業台へV-MAXを乗せると、エンジンを外し始めた。
「直りますか?」
  マイティはおそるおそる尋ねた。
「部品を交換するだけですからね。たしかバルブの予備はあったから、すぐ済みますよ。……あ、そうだ」
  店長はマイティのほうへ振り返った。
「せっかくだから、メンテナンスのやり方、教えてあげるよ」
「えっ?」
「愛車は自分でいじりたいだろ?」
「あ、ありがとうございますっ!」
  マイティは涙をぬぐって、作業台へ向かった。うさ大明神様ことジェニーも調整助手として作業台へ置かれる。
「部品飛ばさないでくださいよ。よけられませんから」
「わかってるよ」
  店長はエンジンを取り出し終え、今度はエンジンそのものの分解に入る。
「さて、俺はどうするかな」
「あ、そうそう。神姫パーツの新製品、入ってますよ」
「そうか。見せてもらうよ」
  マスターは神姫パーツの棚へ向かった。
  棚の手前に新製品の台があり、そこに小さな箱が平積みされている。
  うさぎさん仮装セット、黒ぶちメガネ、サイズ変更用バストパーツ、etc……。
  むう、ほとんどが愛玩用のパーツじゃないか。
  マイティに対して、このような愛玩用部品を買い与えることは全く無かった。マイティが欲しがるところを見たことが無かった。言わないだけかもしれないが。
  そういえば、戸田静香嬢の作った服を着てみたいとは言っていたな。今度会ったときに頼んでみようか。
  考えながら見ていると愛玩用でないパーツを見つける。
  ストラーフ用らしき鎌に、白と黒、色違いの翼である。
  マスターは白い翼を一箱取る。
  一見仮装セットやメガネのような愛玩パーツの類に見えるが、裏を見るとれっきとした飛行機能をもつ背部パーツであることが記載されていた。
  アーンヴァルの高速巡航性能を持つウイングバーニアとは違う、曲線で機動的な飛行が可能らしい。翼面への武装は出来なくなるが、その軽さは非常に良好な出力重量比を出す、と、かいつまんで言うならこういうことが書いてあった。
「ほら、こいつが問題のバタフライバルブさ。ここんところが割れてるだろ……」
  カウンターではちょうどエンジンを分解し終えたらしく、店長の説明にマイティは熱心に聞き入っている。
  とりあえず白い翼のみをカゴに入れて、マスターは対戦端末の方へ行く。
  ここではランキングに関係のない対戦か、大多数のオーナーが所属しているサードリーグの対戦しか出来ない。
  マスターはサードのランキングを参照する。検索キーワードに「片足 片脚 片輪 隻脚」と入力し、検索。
  すぐに「該当なし」の答えが返ってくる。いるいないに関わらず、オフィシャルで二つ名は検索出来ないようだった。うろ覚えの名前を思い出して、今度は「ルーシー」、そしてタイプに「ストラーフ」と入力してみる。
  あいまい検索を使ったので該当名は102件。マスターはしらみつぶしに参照し始めた。

「終わりましたよ」
  カウンターから声がかかり、マスターは端末を閉じる。102件の神姫の中で、目的のストラーフは見つけられなかった。片脚装備のストラーフはいるにはいたのだが、そのどれもが偽者、というよりはただの「まねっこ」でしかなかった。 
「これを頼む」
  マスターは白い翼のパーツを置く。
「はい。マイティちゃん、すごいですね。飲み込みが早くてびっくりしましたよ」
  店長が元通りになったV-MAXをカウンターに置く。
「ついでにオーバーホールもやっちゃいました」
「ありがとう。いくらだ」
「あ、いや、いいですよ。翼のだけで」
「いいのか?」
「ええ。久しぶりに楽しかったし」
  マイティはにこにこしている。
「……そうか。ありがとう」
「いえ」
  マスターはすこし考えて、訊いた。
「一つ尋ねたいんだが」
「はい?」
「片輪の悪魔、もしくは、片脚の悪魔という二つ名の神姫を知らないか」
「…………」
  店長はしばらく黙っていたが、
「それって、オーナーも左足が無いやつ、ですか」
「そうだ。すこし前、サードだった頃に戦ったことがある」
  変に重そうな空気を察して、マイティはマスターのコートにもぐりこんだ。
「たぶん今は戦えませんよ。だって彼、今ファーストランカーなんです」
「なんだって?」
「知らないんですか?」
「ファーストのセンターには行かないからな」
  ランキングの参照は、プライバシー云々とかいう面倒な理屈でセンターでしか参照できず、またそこではセンターの取り扱うランク以下のものしか見られない。ファーストのランクを調べるには、ファーストのセンターへ行くしかないのだ。
  そしてファーストのセンターは、例外なくリアルバトルのための大規模な施設がある、スタジアムのようなところである。
「ともかく、いま彼はファーストです。破竹、って言葉がぴったり当てはまるほどの勢いでのぼり詰めましたから。時期的に見て、サードで戦ったのはたぶんあなたが最後ですよ」
「そうか」
  マスターは驚く風でもなく、そうとだけ答えた。
「いろいろありがとう。それじゃあ」
「ありがとうございました。また来てください」
「またね、マイティ」
「さようなら、うさ大明神先生」
  そうしてマスターはホビーショップ・エルゴを後にした。

「マイティ」
「はい?」
  雪がしんしんと降る帰り道。マスターはマイティに言った。
「お前は、……ファーストに行く気はあるか」
「どうしたんですか? 急に」
「いや。もし行けるとしたら、の話だ。リアルバトルがほとんどの、危険な所だ。お前はどうしたい」
「うーん……」
  マイティはすこし考えて、答える。
「マスターがそうしたいのなら、私はそれで」
  テンプレートのような回答。神姫が本来答えるような。
  だが言葉は同じでも、マイティはそれを自分の意志で言ったのだ。
「私も、あの片脚の悪魔ともう一度戦いたいです」
  だからマイティは、そう付け加えた。
「そうか――」
  マスターは安心したとも落胆したとも取れる微妙な、表情をして目をつぶった。たぶんそのどちらでもあり、マイティはそのどちらでもある悩めるマスターが好きだった。
「明日晴れたら、もう一度バイクを走らせに行こう」
「はい」
  白い空がだんだんと暗くなり、夜が訪れる。







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