「・・・・引き分け・・・か」
都は筐体に設置された椅子に深く腰をかけて呟いた。
「驚いたな・・・まさか刀一本の相手にやられるとは。まぁ引き分けだし。負けたわけじゃないですよね?」
そういって筐体の向こうにいる記四季を見る。
記四季は憮然とした表情で座っていた。
そう、確かに負けではない。この試合、結果は勝者も敗者もいないのだ。
「・・・確かに負けたわけじゃねぇが」
「それじゃ、キャンペーンの詳細はメールで送っておきます。当日は神姫を二人連れて来てくださいな。お小遣いは諦めますので。じゃ行くぞノワール」
都は早口にそうまくし立てるとノワールと共にさっさとその場を去ってしまった。
・・・その顔は、一つ仕事をやり遂げた顔だったと言う。
都は筐体に設置された椅子に深く腰をかけて呟いた。
「驚いたな・・・まさか刀一本の相手にやられるとは。まぁ引き分けだし。負けたわけじゃないですよね?」
そういって筐体の向こうにいる記四季を見る。
記四季は憮然とした表情で座っていた。
そう、確かに負けではない。この試合、結果は勝者も敗者もいないのだ。
「・・・確かに負けたわけじゃねぇが」
「それじゃ、キャンペーンの詳細はメールで送っておきます。当日は神姫を二人連れて来てくださいな。お小遣いは諦めますので。じゃ行くぞノワール」
都は早口にそうまくし立てるとノワールと共にさっさとその場を去ってしまった。
・・・その顔は、一つ仕事をやり遂げた顔だったと言う。
*
ホワイトファング・ハウリングソウル
*
第九話
ホワイトファング・ハウリングソウル
*
第九話
『紫色の警告』
「作戦会議を始める。総員席に着け」
「・・・まぁ、私達しかいませんけれども」
帰宅後、記四季は囲炉裏端で作戦会議を始めた。
議題は・・・『どうやってアメティスタをバトルに誘うか』。
「俺らの神姫の知り合いはアイツだけだ。問題はバトルが好きじゃないアイツをどうやって誘うかだが・・・」
「あの、主。神姫の知り合いでしたら・・・お孫さんのサラさんがいらっしゃるのでは?」
「却下だ。孫と神姫バトルなんかできるか」
彩女の提案は記四季に却下された。
もうばれてるんなら一緒に遊べばいいのに、彩女はそう思う。
「・・・という訳で何かいい案は無いか。正直俺じゃ何もおもいつかねぇ」
記四季はさっそく考えることを放棄した。
「いい案と言われましても・・・・どうしたものでしょう。何か物で釣ってみては?」
「物・・・物ね・・・・この間作ったはんぺんとかはどうだ」
「・・・いえ、仮にもアメティスタは女の子なわけですから、何かこう・・・女の子らしいのを」
「ならようかん・・・いや栗きんとんか?」
「食べ物から離れましょうよ・・・・」
彩女は嘆息する。
この男、普段は明朗快活なのだがこと女の事となるとてんで不得手なのだった。
正直孫がいることすら疑問に思える。この男は一体どうやって妻を口説き落としたのだろうか。
と、廊下で電話のベルが鳴った。
・・・この家は、2030年以降もなぜか骨董品に成り果てた黒電話を使っている。動くことが既に奇跡に近い代物だ。
記四季は突然の電話に驚くことも無く無言で立ち上がり、廊下へと出る。
部屋には彩女だけが取り残された。
「・・・・何か、いやな予感がしますね」
しばらくすると記四季が帰ってきた。
表情に変化は無く、誰と何を話していたかはわからない。
「お帰りなさいませ。どちら様でしたか?」
「・・・・ムラサキだ。あのアマ、こうなることを予知してやがったな」
やはりか。彩女は思う。
彼女なら、今この場所で起きていることを予知していると思っていた。問題なのは予知した上で今、電話をしてきたことの真意なのだが・・・。
「して、内容は?」
「お前と一日遊ぶ代わりにバトルに出てやるとよ。いつも遊んでるってのに、変な奴だ」
彩女の顔が強張る。
アメティスタは確かに友達で、普通に遊ぶことも遊ぶがこういう場合、『遊ぶ』の後に(性的な意味で)と付け加えられる場合が多い。普通の遊びならいいのだが・・・そうでない日は正直かなり疲れる。決して嫌いではないのだが。
「・・・・主、それで・・・了承したのですか?」
「ん? あぁ一日と言わず毎日でも遊んでやれやって言ったが」
彩女の貞操の危機が始まった。
「・・・まぁ、私達しかいませんけれども」
帰宅後、記四季は囲炉裏端で作戦会議を始めた。
議題は・・・『どうやってアメティスタをバトルに誘うか』。
「俺らの神姫の知り合いはアイツだけだ。問題はバトルが好きじゃないアイツをどうやって誘うかだが・・・」
「あの、主。神姫の知り合いでしたら・・・お孫さんのサラさんがいらっしゃるのでは?」
「却下だ。孫と神姫バトルなんかできるか」
彩女の提案は記四季に却下された。
もうばれてるんなら一緒に遊べばいいのに、彩女はそう思う。
「・・・という訳で何かいい案は無いか。正直俺じゃ何もおもいつかねぇ」
記四季はさっそく考えることを放棄した。
「いい案と言われましても・・・・どうしたものでしょう。何か物で釣ってみては?」
「物・・・物ね・・・・この間作ったはんぺんとかはどうだ」
「・・・いえ、仮にもアメティスタは女の子なわけですから、何かこう・・・女の子らしいのを」
「ならようかん・・・いや栗きんとんか?」
「食べ物から離れましょうよ・・・・」
彩女は嘆息する。
この男、普段は明朗快活なのだがこと女の事となるとてんで不得手なのだった。
正直孫がいることすら疑問に思える。この男は一体どうやって妻を口説き落としたのだろうか。
と、廊下で電話のベルが鳴った。
・・・この家は、2030年以降もなぜか骨董品に成り果てた黒電話を使っている。動くことが既に奇跡に近い代物だ。
記四季は突然の電話に驚くことも無く無言で立ち上がり、廊下へと出る。
部屋には彩女だけが取り残された。
「・・・・何か、いやな予感がしますね」
しばらくすると記四季が帰ってきた。
表情に変化は無く、誰と何を話していたかはわからない。
「お帰りなさいませ。どちら様でしたか?」
「・・・・ムラサキだ。あのアマ、こうなることを予知してやがったな」
やはりか。彩女は思う。
彼女なら、今この場所で起きていることを予知していると思っていた。問題なのは予知した上で今、電話をしてきたことの真意なのだが・・・。
「して、内容は?」
「お前と一日遊ぶ代わりにバトルに出てやるとよ。いつも遊んでるってのに、変な奴だ」
彩女の顔が強張る。
アメティスタは確かに友達で、普通に遊ぶことも遊ぶがこういう場合、『遊ぶ』の後に(性的な意味で)と付け加えられる場合が多い。普通の遊びならいいのだが・・・そうでない日は正直かなり疲れる。決して嫌いではないのだが。
「・・・・主、それで・・・了承したのですか?」
「ん? あぁ一日と言わず毎日でも遊んでやれやって言ったが」
彩女の貞操の危機が始まった。
アメティスタのバトル参加を取り付けた後、記四季は川に来ていた。
単なる散歩ではない。ある人物に呼び出されたのだ。
記四季は下駄を鳴らしながら川辺を歩き、適当な岩に腰を下ろす。
「・・・・・いるんだろう」
煙管を取り出しながら記四季は言った。
川のせせらぎの中、水しぶきが上がりその人物が姿を現す。
「せっかちだね。もうちょっと謎の人物っぽさを味わいたかったのに」
川の中から姿を現したのは・・・・アメティスタだった。
薄紫の美しい髪から水を滴らせ、手近な岩へと座る。
「で、何の用だ。お前さんが俺を呼び出すなんて珍しいじゃねぇか」
「今日はね。警告とお願いに来たんだ」
そういうとアメティスタは川の水をすくい、飲み干す。
その白い肌が水を嚥下する。
「・・・・警告とお願いだと?」
記四季の言葉にアメティスタは無言で肯く。
「警告だけど・・・・まず先にボクのお願いを聞いてくれないかな。まだ時間はあるから」
「・・・聞いてから考えるが、それでいいなら」
アメティスタは再度無言で肯いた。
「記四季さんがボクの話を聞き終えたら、パソコンにメールが届いてる。差出人は七瀬都さん。内容は・・・キャンペーンバトルについてだけど、それは別にいい」
アメティスタは訥々と話し出した。
その顔は前髪で隠され、窺い知ることが出来ない。
「今日から四日後にバトルはあるんだけど・・・その後で都さんをここに連れて来て欲しいんだ。都さんとノワールさん、それにハウさんの三人で」
何故教えていない都の名前が、そして神姫の名前にメールの内容までもがわかるのか。記四季はそれを問わない。
なぜなら彼女はそういうものだからだ。神姫でありながら未来を見る。それが彼女だ。
「・・・・何をする気だ?」
しかし、記四季は彼女のお願いが気になった。初対面の人間と神姫をこんな所に連れて来て何をする気なのか。その理由がわからない。
「ボクが神社にいる理由、それは剛三さんの孫が預けてるって・・・今世界を旅してることになってるけど・・・それは嘘だ。本当は・・・・・人形供養で北白蛇神社に送られただけ」
「・・・・何?」
「ボクのマスターは二年前にもう死んでる。横断歩道を渡ろうとして車に轢かれて死んだ。ボクが・・・殺した」
「・・・・・・・・・!」
アメティスタの突然の告白に記四季の息が詰まる。
今、目の前の神姫は一体何を言ったのか。自分で自分のマスターを殺した? そんなこと・・・・。
「・・・不可能だ。アシモフコードに触れる」
アシモフコードとは、全てのロボットに内蔵されている大原則である。作家、アイザックアシモフが彼の作品で語ったロボット三原則の事だ。
「そうだね。でも壊れていたら・・・アシモフコードは適用されなくなるんじゃないかな? 今現在、現実においてその手の事件事故は起きてはいないけど・・・過去にある映画監督が撮った作品の中に、似たようなことがあったよ」
「イノセンス・・・ガイノイドの事を言っているのか」
「ガイノイドたちは自ら故障する事により、人間を攻撃する許可を作り出す。ただし・・・・」
「・・・その論理的帰結として倫理コード第三項からも開放される。お前・・・・自殺でもしたいのか」
「ふふ・・・自壊って言わないんだね。トグサよりかは記四季さんのほうが好きかな」
「質問に答えろ。お前、一体何をたくらんでいる・・・・!」
アメティスタの言葉に記四季は激昂する。
すでに記四季は座っていない。立ち上がりアメティスタのすぐ傍にいた。
「・・・ボクはね。罪の告白をしたいだけなんだ」
「それが俺の孫娘と何の関係がある!」
「彼女は二年前に恋人を亡くしている。恋人の名前は高崎 衛(たかさき まもる)・・・ボクのマスターだ」
「・・・・・なん、だと?」
都が恋人を亡くしているのは知っていた。
だがそれがアメティスタのマスターだとは知らなかった。
「疑うんならそれでいい。なんならボクのアクセスコードを使って登録者氏名を洗ってくれていいよ。・・・・でも記四季さんはそれをしない。ボクには見える」
「・・・・・・・・・・クソッ!!」
記四季はそう怒鳴ると岩に腰を下ろして頭を抱えた。
アメティスタの言うとおりだった。恐らく彼女は今の記四季の反応すら予知していたのだろう。全てがアメティスタのペースだった。
頭は混乱し、聞くべきことが思いつかない。今の記四季は相当参っている。
「・・・お前さん、その話・・・本当なんだろうな」
もし本当なら・・・今目の前にいるのは記四季の敵だ。
あの日、都の恋人が死んだ日・・・都は雨の中傘も差さずに歩き回っていた。記四季にはそれが恋人を捜し歩き・・・・もういないことを知っていながら、それでも尚捜し歩く彼女の姿が、遠まわしな自殺にしか見えなかった。
もしあの日、都がハウを拾わなかったら ――――都は衛の後を追っていただろう。
記四季は知っている。都がどれだけ深い傷を負っているかも、そして未だにそれを引きずっていることを。
「全部真実だよ」
「・・・・・・・・・・なぜだ。・・・・何故、殺した」
「・・・・それを最初に話すのは、都さん達三人だ。記四季さんじゃない」
記四季の問いをアメティスタは拒絶した。
今、記四季の頭の中には疑問しかない。
「・・・・・・これで、ボクのお願いはおしまい。次は記四季さんに対する警告だけど・・・その前に謝っとく。ごめんね」
アメティスタの謝罪の言葉に記四季は思わず顔を上げる・・・と
「――――――――――――――――――ッ!?」
いきなり胸に痛みがはしり、吐き気が酷くなる。
あまりの激痛に記四季が膝を折った瞬間・・・記四季は血を吐いた。
「ガ ――――――――ハッ ――――――ア ―――――――」
そのまま記四季は動けずにいた。
今自分が吐いたものが信じられなかったのだ。
「肺ガンだ。結構深いところにあるから・・・・手術をしても五分と五分。その結果は、ボクは予知しない。したくないから」
「ム ―――――――――ムラサキ ―――――――テメ ―――――――」
「大丈夫。今すぐにどうこうってわけじゃないから。・・・ボクの警告はこれ。知ってると思うけど今すぐに煙草をやめないと、死ぬよ。ボクには吸い続けて死ぬ未来が見えた。だったら吸わなければ・・・また未来は変わる」
アメティスタはそういうと水にはいる。
そのまま顔だけ出して続けた。
「もう少ししたら動けるようになる。その時はもう痛くないから大丈夫だ。・・・それじゃ、ボクのおねがい・・・・聞いてね」
そういって、アメティスタは川の中に消える。
記四季が動けるようになったのは、それからちょうど三十秒後だった。
単なる散歩ではない。ある人物に呼び出されたのだ。
記四季は下駄を鳴らしながら川辺を歩き、適当な岩に腰を下ろす。
「・・・・・いるんだろう」
煙管を取り出しながら記四季は言った。
川のせせらぎの中、水しぶきが上がりその人物が姿を現す。
「せっかちだね。もうちょっと謎の人物っぽさを味わいたかったのに」
川の中から姿を現したのは・・・・アメティスタだった。
薄紫の美しい髪から水を滴らせ、手近な岩へと座る。
「で、何の用だ。お前さんが俺を呼び出すなんて珍しいじゃねぇか」
「今日はね。警告とお願いに来たんだ」
そういうとアメティスタは川の水をすくい、飲み干す。
その白い肌が水を嚥下する。
「・・・・警告とお願いだと?」
記四季の言葉にアメティスタは無言で肯く。
「警告だけど・・・・まず先にボクのお願いを聞いてくれないかな。まだ時間はあるから」
「・・・聞いてから考えるが、それでいいなら」
アメティスタは再度無言で肯いた。
「記四季さんがボクの話を聞き終えたら、パソコンにメールが届いてる。差出人は七瀬都さん。内容は・・・キャンペーンバトルについてだけど、それは別にいい」
アメティスタは訥々と話し出した。
その顔は前髪で隠され、窺い知ることが出来ない。
「今日から四日後にバトルはあるんだけど・・・その後で都さんをここに連れて来て欲しいんだ。都さんとノワールさん、それにハウさんの三人で」
何故教えていない都の名前が、そして神姫の名前にメールの内容までもがわかるのか。記四季はそれを問わない。
なぜなら彼女はそういうものだからだ。神姫でありながら未来を見る。それが彼女だ。
「・・・・何をする気だ?」
しかし、記四季は彼女のお願いが気になった。初対面の人間と神姫をこんな所に連れて来て何をする気なのか。その理由がわからない。
「ボクが神社にいる理由、それは剛三さんの孫が預けてるって・・・今世界を旅してることになってるけど・・・それは嘘だ。本当は・・・・・人形供養で北白蛇神社に送られただけ」
「・・・・何?」
「ボクのマスターは二年前にもう死んでる。横断歩道を渡ろうとして車に轢かれて死んだ。ボクが・・・殺した」
「・・・・・・・・・!」
アメティスタの突然の告白に記四季の息が詰まる。
今、目の前の神姫は一体何を言ったのか。自分で自分のマスターを殺した? そんなこと・・・・。
「・・・不可能だ。アシモフコードに触れる」
アシモフコードとは、全てのロボットに内蔵されている大原則である。作家、アイザックアシモフが彼の作品で語ったロボット三原則の事だ。
「そうだね。でも壊れていたら・・・アシモフコードは適用されなくなるんじゃないかな? 今現在、現実においてその手の事件事故は起きてはいないけど・・・過去にある映画監督が撮った作品の中に、似たようなことがあったよ」
「イノセンス・・・ガイノイドの事を言っているのか」
「ガイノイドたちは自ら故障する事により、人間を攻撃する許可を作り出す。ただし・・・・」
「・・・その論理的帰結として倫理コード第三項からも開放される。お前・・・・自殺でもしたいのか」
「ふふ・・・自壊って言わないんだね。トグサよりかは記四季さんのほうが好きかな」
「質問に答えろ。お前、一体何をたくらんでいる・・・・!」
アメティスタの言葉に記四季は激昂する。
すでに記四季は座っていない。立ち上がりアメティスタのすぐ傍にいた。
「・・・ボクはね。罪の告白をしたいだけなんだ」
「それが俺の孫娘と何の関係がある!」
「彼女は二年前に恋人を亡くしている。恋人の名前は高崎 衛(たかさき まもる)・・・ボクのマスターだ」
「・・・・・なん、だと?」
都が恋人を亡くしているのは知っていた。
だがそれがアメティスタのマスターだとは知らなかった。
「疑うんならそれでいい。なんならボクのアクセスコードを使って登録者氏名を洗ってくれていいよ。・・・・でも記四季さんはそれをしない。ボクには見える」
「・・・・・・・・・・クソッ!!」
記四季はそう怒鳴ると岩に腰を下ろして頭を抱えた。
アメティスタの言うとおりだった。恐らく彼女は今の記四季の反応すら予知していたのだろう。全てがアメティスタのペースだった。
頭は混乱し、聞くべきことが思いつかない。今の記四季は相当参っている。
「・・・お前さん、その話・・・本当なんだろうな」
もし本当なら・・・今目の前にいるのは記四季の敵だ。
あの日、都の恋人が死んだ日・・・都は雨の中傘も差さずに歩き回っていた。記四季にはそれが恋人を捜し歩き・・・・もういないことを知っていながら、それでも尚捜し歩く彼女の姿が、遠まわしな自殺にしか見えなかった。
もしあの日、都がハウを拾わなかったら ――――都は衛の後を追っていただろう。
記四季は知っている。都がどれだけ深い傷を負っているかも、そして未だにそれを引きずっていることを。
「全部真実だよ」
「・・・・・・・・・・なぜだ。・・・・何故、殺した」
「・・・・それを最初に話すのは、都さん達三人だ。記四季さんじゃない」
記四季の問いをアメティスタは拒絶した。
今、記四季の頭の中には疑問しかない。
「・・・・・・これで、ボクのお願いはおしまい。次は記四季さんに対する警告だけど・・・その前に謝っとく。ごめんね」
アメティスタの謝罪の言葉に記四季は思わず顔を上げる・・・と
「――――――――――――――――――ッ!?」
いきなり胸に痛みがはしり、吐き気が酷くなる。
あまりの激痛に記四季が膝を折った瞬間・・・記四季は血を吐いた。
「ガ ――――――――ハッ ――――――ア ―――――――」
そのまま記四季は動けずにいた。
今自分が吐いたものが信じられなかったのだ。
「肺ガンだ。結構深いところにあるから・・・・手術をしても五分と五分。その結果は、ボクは予知しない。したくないから」
「ム ―――――――――ムラサキ ―――――――テメ ―――――――」
「大丈夫。今すぐにどうこうってわけじゃないから。・・・ボクの警告はこれ。知ってると思うけど今すぐに煙草をやめないと、死ぬよ。ボクには吸い続けて死ぬ未来が見えた。だったら吸わなければ・・・また未来は変わる」
アメティスタはそういうと水にはいる。
そのまま顔だけ出して続けた。
「もう少ししたら動けるようになる。その時はもう痛くないから大丈夫だ。・・・それじゃ、ボクのおねがい・・・・聞いてね」
そういって、アメティスタは川の中に消える。
記四季が動けるようになったのは、それからちょうど三十秒後だった。