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前を見た少女と、煌めく神の姫達(その一)




──もう、手放さない。滅びが分かつまで、愛しき姉妹と共に生きよう。
“妹”達の笑顔の為ならば私は尚の事、己の全てを神姫に捧げていこう。
それが……共に歩んでいく彼女らに対し、私が捧げられる“誓い”──。



第一節:訣別




“悪夢”の暴威が去った翌朝。私・槇野晶は、朝一番の電車で出かけた。
行き先は東杜田技研。勿論“四人の妹達”……アルマとロッテ、クララに
昨日から加わったエルナも一緒だ。但し、彼女らは目を醒まさない……。
あまりに受けたダメージが大きすぎたのか、一様に酷い不調を訴えてな。
なので私は、ありったけの修理用部品を持って東杜田技研を頼ったのだ。

「……私を置いて逝くには、まだ早いよ。まだ、色々あるんだから……」
「晶ちゃん?おーい、あーきーらーちゃーん?何ブツブツ言ってるのさ」
「どわっ!?げふ、げふっ!ど、ドクターではないか何時からそこに!」
「ん?たった今。一通り終わったから、再起動前に色々説明したくてね」

ベンチに座って祈っていた私は、掛けられた声に素っ頓狂な声を上げる。
……聞かれなかっただろうな?この“言葉”は、あまり出す物ではない。
ともあれ私の眼前では白衣姿のDr.CTaが、マスクをくるくる回していた。
悲壮感のない表情からすると、“手術”自体は成功した様なのだが……。

「ドクター、どうなのだ?私の“妹”達は無事か、無事なのかッ!?」
「はぃドードー。焦っちゃって晶ちゃんらしくないぞ?落ち着けー?」
「む、す……すまん。色々とあって……私では直し切れなんだのでな」

そう。私では手が出ないレベルの修理や改造も、色々と必要だったのだ。
そう言う経緯もあって逸る私を、Dr.CTaは宥めながら別室へと案内した。
そこは、処置室を外部から観察する為の……硝子張りの部屋だった。目を
少し下に降ろせば、作業台の上には少々痛々しい姿の四人が眠っている。

「んー、まずは……ロッテちゃん達三人の方から説明しようかなっと?」
「宜しく頼む。特にアルマとクララは、奇妙な病を起こしているからな」
「それも多少分かってるさ。まぁとりあえずは……皆、酷い損耗だねぇ」
「これがカルテか……全員四肢のモーターが焼き切れている、だと!?」
「そそ。一体どこでこんな無茶させたのさ晶ちゃん、って位の重傷だね」

ドクターが示したマイクロマシン用検査器具のログを見て、私は戦慄く。
何と、ロッテまでも含めた“三姉妹”全員の駆動系が焼損していたのだ!
ヴァーチャルフィールドで起きていた筈の出来事なのに、どういう事だ?

「むぅ……ヴァーチャルフィールドで、相当無謀なバトルをしていたが」
「じゃ、そのセンかな?“何か”の影響でフィードバックした情報がさ」
「有無。知らず知らず、皆の躯を突き動かしていたのか……しかしなぁ」
「超AIやCSCも、あちこち傷があったからねぇ。可能性は大きいよ」

ログには確かに、アルマとクララのCSC……そして皆の超AIに相応の
負荷が掛かっていた事を示す値が印されている。一部は、結構深刻な傷と
なっていた様だが……Dr.CTaは、その処置もしっかりとしてくれた様だ。
物理・論理……両方の傷を癒し皆の命を維持する、見事な“技”だった!
これほど完璧に修復されているのならば、当面は安心して良さそうだな。

「なるほど……こんな方法で修復したか。流石は手練れの“技術者”だ」
「結構離れ業だったけどねー。でも、何したらこうなったのさ本当に?」
「そうだな。ドクターには話してもいいだろう、これまでの恩義もある」

それに報いるべく、という訳でもないが……私は起きた事の全てを語る。
エルナの正体、彼女を止める為に挑んだ大一番。そして事後に襲来した、
あの“悪夢”を。それを聞き、彼女の表情は少し引き締まった物となる。

「へぇ……テロなんかの為に、MMS……というか神姫をねぇ。外道だね」
「外道と思うが、彼女……“ロキ”だったエルナの否定にはならんぞ?」
「そりゃそーだね。エルナちゃんは愛されたかった、それだけだろうし」
「そのエルナは、注文通りにやってくれたか?違法な部品の撤去と……」
「皆まで言わなくて大丈夫。塗装以外は、“姉”を参考にやっといたよ」

固定武装と“武装神姫”のレギュレーションを越えた部品の撤去、それに
伴った、私の持ち込んだ部品による修理。他にも色々と注文を付けたが、
それを言い連ねようとした私を制する形で、彼女はその成功を裏付けた。

「そ、そうか。それなら何よりだが……そう言えば、エルナの様態は?」
「アルマちゃん達以上に酷かったよ。もう少しでバーストしたかもねぇ」

さらっと言ってのける辺りはドクターらしいが……本当に彼女は、破滅の
寸前だったのだ。どうにか助けられた事に、私は改めて胸をなで下ろす。
そうしていると、彼女は私の前で唸り始めたのだ。とても神妙な顔でな。

「しっかし、“悪夢”と“約束の翼”ね……神姫の“心”の力かな……」
「……どういう事だドクター?チェックの過程で、思い当たる節でも?」
「大体ねー。まずは“悪夢”だけど、これの大元は普通のウィルスだよ」
「何?普通の……と言う事は、コンピュータ用のワームウィルス辺りか」
「うん。八割位壊れてたけど、“変質”したコードの残滓は見つけたさ」

Dr.CTaが語る所によると、エルナの……殆ど破損した……補助記憶装置と
アルマ・クララの現行型CSC三基に、そのコードが残っていたらしい。
だが、元となるウィルスはMMSの超AIやCSCを侵蝕する類ではない。
しかし調べた限りでは、機能が激変する程の“改竄”が見られたそうだ。

「……でも作った連中がそこまでやったとは考えにくくてさ。となれば」
「エルナが憎悪を膨らませる過程で、知らずに己の“毒”を精錬した?」
「あたしゃそう睨んでる。で“約束の翼”だっけ?これは“ワクチン”」
「“ワクチン”だと?だが、対コンピュータ用のワクチンソフトは……」
「入れないね普通。でも、あの透明なCSCにあった物は間違いないよ」

首を捻りつつ、私は推論する。ひょっとしてアレは“ワクチン”ではなく
“抗体”なのではないか?“プロト・クリスタル”にのみ発生したという
指摘を踏まえると、歩姉さんが遺した“大いなる遺産”かもしれないが、
私の知る限りでは妖しいルーチンは存在しない。となれば“悪夢”同様、
三姉妹の“心”が繋がった事で産み出された“即興詩”なのかもしれん。

「で、問題は……どっちも破損して動かない事と、規約に引っかかる事」
「つまり、各々のデータを遺すか消すか。選択しなければならんのか?」
「そーなるね。起動してないのは、確認しときたかったから……でもさ」
「む、何だ?調査用に別個コピーしておこうという考えでもあるのか?」
「んにゃ、殆ど壊れてるから解析は無理さね。第一、エルナちゃんって」

『神姫として生きていくつもりなんでしょ?』と笑ってみせるドクター。
聞けば、なんと彼女はその小さな胸に三個のCSCを備えていたという。
そう……エルナの身体構造は基本的に神姫と酷似しており、今回の修理で
完全にオリジナル型神姫として通用する躯になっていたのだ。故にこそ、
唯一公式バトルに出る際の障害となる、残存データの処遇が問題となる。

「……分かった、消してくれ。未来を歩む彼女らには、最早不要だろう」
「オッケー、じゃ早速やってくる。動作チェックが終わったら完了だよ」
「本当に済まないな、ドクター。この埋め合わせは、何れ必ずしよう!」
「ホント?それじゃ今度、お言葉に甘えちゃおうかな。にっしっし……」

楽しそうな笑顔を浮かべて、彼女は部屋を後にした。そう、未来に向かう
四人の“妹”達……そして私に“悪夢”は、もう要らない。そして過去の
残滓も、最早無用の物。歩姉さんの遺志を受け継ぐ“遺産”は、現状でも
十分にある。私達は、ある意味過去と“訣別”する事を選んだのだ……。

「歩姉さん、クリスティアーネ。私達を見守ってくれて、有り難う」

──────そして、さようなら。志は、大切に受け継いでいくよ。



第二節:姉妹




東杜田技研を後にして、私はMMSショップ“ALChemist”へと戻ってきた。
今日は当然ながら臨時休業。私は出来た時間を最大限使い、“四姉妹”の
補修で痛んだ素体塗装を復元する。無論エルナも、全身の修復された痕を
隠す為、菫色と肌色をベースとした物に変更する。作業はすぐ終了した!

「ふぅ……よし、これでいいだろう。さぁ皆、目を醒ましてくれよ……」
「チェック……OK──ん、ぅ……あれ、ここはお店の作業台ですか?」
「……そうみたい、なんだよ。頭もスッキリしてるし、躯も快調だもん」
「戦闘後は具合悪かったですけど、今はちゃんと治ったみたいですの♪」
「うむ。おはよう、皆……そして、連戦本当に御苦労だった。見事だぞ」

アルマを初めとして、ロッテ・クララと火が灯っていく。徹底的に全身を
検査・修復された三人の表情は一様に明るく、私に微笑んでくれた。だが
今日からはもう一人……皆の笑顔を受け微笑むだろう娘が増える。そう、
まだ敢えて電源を入れていない、“五女”にして紫の姫・エルナの事だ。

「さ、服を着たら皆で見に来てくれ。この様な感じになったがどうだ?」
「わぁ……綺麗ですの~♪マイスター、早く起こしてあげて下さいの!」
「急かすな。皆、大丈夫だな……?よしっ、では始動コードを……っと」
「──────ジステム、グリューン……機動……ん、躯が軽いわね?」
『おはよう、エルナ!!!!』

急かすロッテに動かされる形で、私はエルナを目覚めさせた。そして……
服を整えてから皆で挨拶をする。彼女は、不思議そうに自分の躯を眺めて
手を握ったりしていた。だが、裸となっている為か……妙に艶めかしい。
更に“姉”とお揃いの“琥珀色の瞳”も、菫色の髪に映えて輝いていた。

「お、おはよ……お姉ちゃん達。アタシのこれ……どうしちゃったの?」
「有無。やはり非常にガタが来ていたのでな、彼方此方を改修したのだ」
「エルナちゃん、あのままの武装だと法に問われそうでしたからね……」
「……その武装、然るべき機関で処分してもらったのかな?マイスター」
「ああ、Dr.CTaにお願いしておいた。彼女ならば、確実だと思ってな?」
「そう?……アタシの過去が消えた訳じゃないけど、スッキリしたわね」

そう言い、エルナは微笑んだ。彼女もあの濃密な一日を経て、己の過去に
一区切り付ける事が出来たのだろうな。これならば前田達が見咎める事も
最早あるまい。後は私達の“妹”として、嗜みを教え込んでいくだけだ。

「有無。その躯は戦う為だけではなく、少女として身を飾る為にもある」
「身を飾る、って……ロッテお姉ちゃんやマイスターみたいに、服を?」
「そうですの!わたし達、マイスターの作ったお洋服が大好きですの♪」
「無理矢理好きになれ、とは言わぬ。服を着る習慣もなかったろうしな」
「でも、あたしも慣れてきた時……“心”が踊ったんですよ、とても?」
「大丈夫。エルナちゃんにもきっと似合うんだよ。丁度、一着あるしね」

クララは気を利かせて、自分の衣装箱……の隣に置いてあったケースから
服を一式運んできた。そう……春新作の“Electro Lolita”、その最後の
一着──“菫色”のドレスだ!まさか、着る者の居なかった“四着目”が
この様な形で充足されるとは思いも寄らなかったが……運命は、面白い。

「え、ええと……アタシに、そんなの……その、似合うのかしら……?」
「それは私が、そしてお前の“姉”達が保証する。さ、着付けてやるぞ」
「ええっ!?そ、そんなの大丈夫よ!その、えと、あの……はぅぅ!?」

私に着せられる事に、最初は物凄く戸惑ったエルナ。だが、服飾の構造を
理解出来ない彼女は、渋々私に身を任せる事となった。その仕草は……!

「ぅ、うぅっ……な、なんだかムズムズするわ。でも、嫌じゃない……」
「それも“心”の成せる業ですの。照れくさいって“感情”ですの~♪」
「て、照れるとか恥ずかしいってこういう事をいうのね?……ひゃうっ」
「こら、可愛らしい声を出すなっ!その……私も顔が紅くなりそうだぞ」
「そ、そう言われたって……マイスターに触れられると、出ちゃうのよ」

とても“初”で可愛らしい。初めてドレスに袖を通す“少女”そのままの
リアクションは、私……いや、私達の胸をとても暖かくしてくれる物だ。
程なく着付けが完了した所で、アルマが神姫サイズの姿見を持ってきた。
当然ながら、彼女らも各々に与えられた“春の新作”を纏っているのだ。

「マイスター、これでエルナちゃんに姿を見せてあげて下さい……っと」
「どうだ?これがお前だ、エルナ。神姫として、凛と振る舞う娘の姿だ」
「とても似合ってて、可憐ですね……お揃いですよ、エルナちゃんっ!」
「……嫉妬しちゃう位に、可愛いんだよ。ボクらまで堪らなくなるもん」
「うん。切れ長の目に、淡い紫と白のコントラストが映えますの~っ♪」
「はうぅ……そ、そんな褒められる事なんかしてないわよ……アタシ?」

只服を着ただけなのに、皆が暖かく……微笑ましく見守ってくれる。その
感覚は、決して全身を武装化しただけでは味わえなかった物なのだろう!
可愛らしくもじもじと手を絡ませるエルナと、それを抱きしめる三姉妹。
私は四人の頭を、順番に撫でてやった。皆は糸の様に目を細めて、感触を
味わっている。エルナも、まんざらではないという表情だ。くぅぅッ!?

「コホン……そう言えばエルナよ、眠っている間にお前の登録をしたぞ」
「登録?神姫同士のバトル、って奴かしら……過去はムダじゃないのね」
「有無、そうだ。装備はこれから作ってやる事となるが、それは後日だ」
「武装が仕上がったら、戦闘訓練とかに打ち込むんだよ。エルナちゃん」
「ふふっ。負けないわよ、クララお姉ちゃん?本当楽しみね……色々と」

塗装作業の前に、私はエルナを事務局に見せている。そして、お墨付きを
頂戴したのだ。完全オリジナルの素体という事で多少の制約はあったが、
登録を受理された彼女は、正真正銘“神姫”として生まれ変わったのだ!
それを自己認識したエルナは、早速“姉”との訓練に思いを馳せている。
だが、今日はもっと大切な事をせねばならん。前に踏み出さねばならん!

「まぁ待て、今日は……その、何だ。デートと洒落込もうではないか!」
「で、デート!?アタシなんかと?……なんか、なんて言っちゃダメね」
「そうとも。お前も大切な“妹”なのだぞ!それを、今日は明確にする」
「“も”……って、事はマイスター!ひょっとしてあの事、ですか!?」
「そうだ。長く待たせてしまったが、約束は……しっかり果たしてやる」
「……やっと、本心と言うか具体的な言葉が聞けるんだね?マイスター」
「なら今日は精一杯五人で楽しんで……それから、告白を受けますの♪」
『はいっ!!!』

──────胸が張り裂けそうだよ。皆への、想いで。



第三節:逢瀬




全てが終わった暁には、私の“想い”を具体的な言葉として告白しよう。
それは、アルマとクララに誓った事だ。しかし、新しく私達の輪に加わる
エルナにも……更に、長く側にいてくれたロッテにも、言わねばならぬ。
“マスター”として……“マイスター”として、私が抱いている想いを。
デートと言うのはつまり、言い出せる雰囲気を作る為の通過儀礼なのだ。

「ほれ、エルナ。バランスをしっかり取らぬと墜ちるぞ?どうだ、外は」
「あ、あのマイスター?皆見てるわよ、アタシ達の事……変じゃない?」
「自意識過剰かもしれないけど、決して変じゃないよ。皆、綺麗だもん」
「そうですね……マイスターの『白と橙の服』も、お揃いで綺麗ですし」
「わたし達の服に合わせる形で、マイスターは何時も服を作りますの♪」
「そうなの?その、マイスターも……可愛いと思うけど、あのその……」

私の左肩で、エルナが周囲の“好奇の視線”に身をよじっていた。ここは
渋谷のセンター街である。作業に結構な時間を取られていたので、あまり
遠くへ出張る事は出来なかった。しかし、私達の日常と世間に慣れるなら
こうして街を見せてやるだけでも十分効果があると睨んだのだな、有無。

「で、でもさクララお姉ちゃん……それなら、これから毎日こうなの?」
「毎日という程でもないけど、可憐に振る舞える位の場数は踏む筈だよ」
「……そ、そう。ところで、さっきから周り見てて気になったんだけど」
「何です、エルナちゃん?……あのお兄さん、何か変な事してました?」
「うん。あの人、耳に通信機なんか付けて誰の指令を受けてるのかしら」
「え~と……あれは音楽を聴く物ですの。無線機とかじゃないですの♪」

だが、何処か常識に疎い所があるのはしょうがないか……?まぁ、それも
焦る事はない。これから四人で、街での暮らしという物を教えればいい。
自己を恥じて律していくその姿は、とても愛らしいではないか。真っ赤な
エルナを、私はそっと撫でてやった。それだけで、緊張は随分と解れる。

「うぐ、だ……ダメねアタシ。音楽とかは、北欧のしか聞いた事無いの」
「北欧の?ひょっとしたら民族舞踊とか、地元のバンドとかですの~?」
「う、うん。“マヨール”と“ベルンハルト”が、その辺好きだったの」
「ふむ、そうか。では今度エルナにもお薦めを教えてもらうとしようか」
「後……あたしの演奏と歌に合わせて踊るのも、いいかもしれません♪」
「ふぇ!?だ、ダメよ!アタシは見聞きしてるだけで、上手じゃ……!」
「大丈夫だよ。技巧も大切だけど、ああ言うのは“心”が第一だもんっ」

そうして、他愛ない会話を膨らませていく。互いを深く知っていくには、
兎に角なんでも話すのが一番なのだ。御陰で、エルナの過去や嗜好なども
意外な側面が見えてくるのだ。例えば、そう……このショーケースだな。

「わぁ……マイスター、アレ見て!アレ……ほら、水晶のイヤリングよ」
「む、クリスタル自体は有名な工房の品か。ああ言うのが好きなのか?」
「ええ、金や銀も綺麗だけど……この中だったら、アレとこの紫色のね」
「それはアメシストだよ、エルナちゃん。あ……二つ名にもどうかな?」
「ふむ。んー……“紫風の尖姫(アメティスト・ヴァルキュリア)”とか」
「いいですね。アタシ達がバトルで名乗るのも、宝石の名前ですしッ!」
「エルナちゃんがお気に入りなら、今度その二つ名を使ってみますの♪」

ウィンドウショッピングに華が咲くのは、神姫と言えども買い物が出来る
身の上ならば女性は皆同じなのだ。それは、私が散々己の店で見た光景。
だからこそ……エルナもそういうゆとりが産まれた今は、瞳を輝かせる。
そこから話は、バトルで名乗る二つ名へと発展する。本当に、他愛ない。
だが、これこそが幸せなのだ。この何気ない日常こそ、喪いたくない物。

「ふぅむ……そろそろ夕餉の時間か。皆、適当な店に入ろうではないか」
「え?お、お店って……でもアタシ達人間の食事なんて摂れないわよ!」
「ふふっ。あのドクターなら、その辺りは心配要らないですの♪ね、皆」
「きっと“仕込んでる”筈ですよ……皆、あの人に修理された時にね?」
「うん。匂いを嗅げば、エルナちゃんも自分の変異に気付く筈なんだよ」

ビルの谷に沈む陽を見てディナーを提案する私に、当然エルナは戸惑う。
だが“姉”達が睨んだ通り、あの喰えない人は私に意地悪く笑っていた。
故に『十中八九』と見て良いだろう。私は皆で、狼狽するエルナを連れて
イタリアンレストランへと入った。まずは見知った洋食の方がよかろう?

「まずは、マルゲリータのピッツァを頼もう。後は皆、好きな様に頼め」
「分かったんだよ。でもマイスター、エルナちゃんは“どっち”かな?」
「……正直そこまでは聞いていないのでな。とりあえず量を確保するか」
「フルーツも少々と……あ、ライスコロッケなんかよさそうですの~♪」
「え、あの?なんで皆、人間の食事注文してるの?普通無理でしょ!?」
「確かに普通は、無理ですね……でも、あたし達はきっと大丈夫ですよ」

さりげなくピザを頼んだのは、過去との訣別を意味する。しかし、それは
最早どうでもいい事だ。それよりも、何が起きているのかを理解出来ない
エルナを落ちつかせながら、料理を待つ事こそ肝要。あまりにも自然且つ
遠慮無く頼む“姉”に、彼女は驚くばかりである。だから私は、こっそり
カルボナーラも追加してやった。さぁ、この娘はどんな顔をするだろう?

「お待たせしましたー。でもお一人でこんなに大丈夫です、お客さん?」
「一人ではない、見ての通り五人だ。気にせずに料理を持ってきてくれ」
「……う、わぁ。何これ。これが、人間の食べ物なの……?いい、香り」
「ふふふっ。匂いが分かるなら、ちょっぴり口に運んでみてください♪」

十数分位で運ばれてきた豪勢な食事を前に、エルナは初めての“香り”を
体験した。それは、今まで情報として知覚した臭気ではなく……文字通り
『食欲をそそる』指向性を持った感覚として、彼女の超AIに染み渡る。
伺いを立てる様に見上げてきたエルナに対して、私は笑顔で肯いてやる。

「い、いただき……ます。はむ、ん……え!?何これ、む……んくっ!」
「お洋服を汚さない様、気を付けてくださいですの~♪はむ、はむ……」
「エルナちゃんはいっぱい食べるんだよ……アルマお姉ちゃんみたいに」
「あ、酷いですよクララちゃんっ!あたし、そんな大食いじゃないです」
「にしても……やっぱりDr.CTaが仕込んでたね、“食事機能”。あむっ」
「『今晩はお楽しみだねぇ』等と、言っておったからな……あちちっ!」
「ああもうマイスター、チーズで火傷しない様に気を付けて下さいね?」

アルマの窘めに、私もつい照れくさくなる。そう、こういった“交流”を
補助する為の特殊機構こそ、Dr.CTaが研究を続けている“食事機能”だ。
エネルギー補給経路の確保という以上に、この力は私達の“心”を繋ぐ。
無心に食事を頂くエルナを見ていると、つくづく彼女の悪戯心には感謝を
せねばならんな、と感じる……にしてもな。その、なんだ。彼女は……。

「……か、可愛い。ほれ、クリームが垂れているぞエルナや……よしっ」
「あ、ありがと。はぅ……な、何か凄く照れくさいわ……でも、嬉しい」
「マイスター、タバスコ取ってほしいもん。ボクだって、甘えるんだよ」
「あ、クララちゃんずるいですよ!後でこれ、一緒に飲みましょうよっ」
「ふふ~……わたしは、食べ終わってから一杯拭いてもらいますの~♪」
「ああもう皆、急かすでない!今日という時間はまだまだあるのだぞ?」

──────そう、楽しい時間は……ずっと続いていくんだよ?







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