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ハウリングソウル
ハウリングソウル
第十一話
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『説得、人事じゃない神姫破産』
『説得、人事じゃない神姫破産』
「・・・・・・・・・・・んぅ・・・・」
吉岡のベッドは寝心地が悪かった。
私の家ではこの寝心地のものをソファと呼ぶ。
眠い目をこすりながら枕元を見る。そこには二つのクレイドルがあって、片方は空だった。
私の家ではこの寝心地のものをソファと呼ぶ。
眠い目をこすりながら枕元を見る。そこには二つのクレイドルがあって、片方は空だった。
「・・・・?」
もう一つのクレイドルには吉岡の神姫、美代子さんが寝ているが・・・・私の二人はどこに行った?
・・・・・・・・まさか。
私は走ってダイニングキッチンへと向かう。いやな予感がした。
・・・・・・・・まさか。
私は走ってダイニングキッチンへと向かう。いやな予感がした。
「ハウ! ノワール!」
ダイニングキッチンの扉を開け放す。そこには・・・・・・・・
「吉岡さん、醤油ですよ」
「・・・・・・醤油」
「それ・・・ソースだよノワール」
「ぐぉうふぁんに~! なっとぅぉう! うぁさぁぐぉはぁんぅ~!」
半裸のオカマッチョが歌っていた。
三人で朝ごはんを作っていたらしい。
全く紛らわしい。
『切り裂き』に襲われたかと思ったじゃないか。
全く紛らわしい。
『切り裂き』に襲われたかと思ったじゃないか。
「やーねー心配しすぎよぉ!」
「そうですね。心配してくれるのは嬉しいんですけど・・・・吉岡さんもいますし」
「・・・・お早う、マイスター」
・・・・ハウが元気になっているのはいいことだが、緊張感の無い三人だ。
・・・・ハウが元気になっているのはいいことだが、緊張感の無い三人だ。
私は溜息をつくと椅子に腰を下ろす。
・・・・・これからの事を考えないといけない。
警察は・・・どうだろう。今の日本の法律では神姫はオーナーの所有物扱いだ。その所有物が家の神姫を狙っている・・・・しかも狙っている方のオーナーは既に死んでいる。それにこの街から15cmの神姫を見つけ出すのはほぼ不可能だ。
どうしたもんだろう。
・・・・・これからの事を考えないといけない。
警察は・・・どうだろう。今の日本の法律では神姫はオーナーの所有物扱いだ。その所有物が家の神姫を狙っている・・・・しかも狙っている方のオーナーは既に死んでいる。それにこの街から15cmの神姫を見つけ出すのはほぼ不可能だ。
どうしたもんだろう。
「いやそれにしても驚いたわよ。まさかアンタがあんな事を許可するなんてね」
考えていると吉岡が私の前に焼き鮭を置いた。
醤油で味付けされていて中々に美味そうだ。
醤油で味付けされていて中々に美味そうだ。
「・・・・あんなこと?」
「そぅよぉ! アンタのためにもう手配しておいたからね。こちとら裏道にも通じてるのよ。珍しくタツ子ちゃんも乗り気だったし・・・・でもあんた、本気なの? かなり危ないわよ?」
「まて、何の話だ。私は何も許可して無いよ?」
さっきから吉岡は何を言っているんだ?
意味がわからない。
意味がわからない。
「え? でもハウちゃんから聞いたわよ? ハウちゃんとノワールちゃんが『切り裂き』を倒すって・・・・・・・・・」
・・・・・なんだって?
テーブルを見るとハウとノワールがバツの悪そうな顔をしていた。
テーブルを見るとハウとノワールがバツの悪そうな顔をしていた。
「どういうことだ」
問いかけるとハウが一歩進み出た。
「ごめんなさいマスター。僕は・・・アイツとどうしても戦いたいんだ」
「なぜだ」
私の声は多分、とても冷たかっただろう。
自分で言うのもなんだが珍しく怒っていたからだ。・・・ハウが、危ないことをしようとしているから。
自分で言うのもなんだが珍しく怒っていたからだ。・・・ハウが、危ないことをしようとしているから。
「あいつが狙っているのは僕だ。僕がいる限り、マスターや他の神姫に迷惑がかかる。僕はそれを許せない。・・・・・だから、終わりにしたいんだ」
「刃物を怖がるお前が『切り裂き』に挑むと? ふざけるな」
「近寄られなければ大丈夫だから。遠距離から撃てば・・・・・・・」
「ノワールの一斉射撃で傷つかない化物だ。神姫用の・・・・たかがオモチャの武装で勝てる相手じゃない」
「改造した武器を今、吉岡さんの友達に作ってもらってます! それなら効果があります!」
・・・・・・・・・用意周到だった。
一体何が、ハウをここまで突き動かしているんだろう?
一体何が、ハウをここまで突き動かしているんだろう?
「もう一度聞く。なぜ戦おうとする」
「・・・・夢の中で、ストラーフが言ってたんです。生きてって、生き抜いてって。でもこのままじゃ僕はいつか殺される。僕は・・・・彼女が言った風に、生きたいから。それにやっぱり、僕は『切り裂き』を許せない。もうアイツに、仲間を殺させないから」
ハウの琥珀のような瞳が私を見上げる。
その瞳はとても澄んでいて、自らの決断に微塵も悩んでいないことがわかった。
その瞳はとても澄んでいて、自らの決断に微塵も悩んでいないことがわかった。
「・・・・負けるかも知れないよ?」
「負けません」
はっきりと、ハウはそう口にした。
「負けません。負けるとマスターが悲しむから、僕たちは悲しむ姿を見たくないから、負けません。それに、マスターが待っていてくれるなら、僕とノワールは無敵です」
場を、静寂が支配する。
気がつくとハウだけでなくノワールも、なぜか吉田までもが私を見つめていた。
ハウはもう言うことが無いのか、ただ黙ったまま私を見上げている。
気がつくとハウだけでなくノワールも、なぜか吉田までもが私を見つめていた。
ハウはもう言うことが無いのか、ただ黙ったまま私を見上げている。
「・・・・・・・・・・・・・私は、待たない。お前たちがそういうなら、この私に『切り裂き』を倒す姿を見せてみろ」
私はそういってから箸を取り、すっかりさめてしまった潮鮭をほぐす。
「・・・・・ありがとうございます!」
ハウは、緊張していたのか少し顔を緩めて頭を下げた。
ノワールにいたってはへなへなと座り込んでしまっている。大丈夫なのかこれで。
ノワールにいたってはへなへなと座り込んでしまっている。大丈夫なのかこれで。
「あー、みーちゃん? それでね、さっきの改造武器の話なんだけどぉほらやっぱりそういう武器って違法じゃない? アングラじゃない? あたしもそんなに気乗りしなかったんだけどぉ、どうしてもってハウちゃんとノワールちゃんがいうからぁ手配しちゃったんだけどぉ・・・・」
「あぁいいよもう。やることは決まったんだ、あとはどうするかを決めないと」
「そうじゃなくてねぇ・・・まぁこれを見てちょうだいな」
そういって吉岡は一枚の紙を取り出した。
・・・・何ですかこれ。ゼロが一杯付いてるんですけど。
・・・・何ですかこれ。ゼロが一杯付いてるんですけど。
「ほらぁハウちゃんのは殆どヴァッフェバニーからの流用だけどぉ、ノワールちゃんの武装ってカスタムメーカーのものじゃない? あの武装をそのままの形でパワーアップするとぉ・・・・その金額が最低ラインなんだって」
ガトリングはいいんだが、何だこの汎用マイクロミサイルアンテナ一式って。命中率が上がるのか?
しかも三連式7mm砲とか何ですかこれ。こっちは二つも。おまけに6mm口径の化物(神姫用としては)ライフルまで・・・。
この野郎。有事にかこつけて前から欲しかったものまで注文しやがったな。
ノワールを見る。
しかも三連式7mm砲とか何ですかこれ。こっちは二つも。おまけに6mm口径の化物(神姫用としては)ライフルまで・・・。
この野郎。有事にかこつけて前から欲しかったものまで注文しやがったな。
ノワールを見る。
「・・・・・・・・・・」
そっぽを向いて体育座りをしていた。
「ライフルはハウちゃん用ね。それとぉ・・・・こっちが弾代なんだけどぉ・・・・」
そういって吉岡が更に紙を差し出してきた。
どうやら私の散在は止まらないらしい。
『切り裂き』と戦う前に破産しそうだった。
どうやら私の散在は止まらないらしい。
『切り裂き』と戦う前に破産しそうだった。