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第12話 「相手」


「んヌっふっふゥ……見て驚くでないぞォ? 今日の相手は貴様の想像を遥かに越える美女であるゆえ!」

 明けて翌日、雲ひとつない快晴の日曜日。
少し早めに到着した俺を出迎えたのは大佐和と、なんだか妙に多いギャラリーだった。
……後者に関しては、大佐和の言葉がその存在理由を示したわけだが。

「大佐和、お前にひとつ忠告しといてやる。 美人ってのは観賞するもんだ。 干渉するもんじゃない」
「ヌっはァぁー! 時間に几帳面な彼女の事ゆえ遅刻ということはありえぬが、こぉなると『少しくらい早めに来てくれまいか』と思ってしまうのは我侭勝手な男の性よ!」

俺のアリガタイ言葉は聞こえていないようで、今日も白黒シミだらけの迷彩コスチューム野郎のテンションはアッパーだった。

「遼平さん、今日の相手は女性だったんですか?」
「いや、知らなかった。 というか今知った」
ぽそぽそと言葉を交わす俺とルーシー。
 武装神姫はいろんな層に人気だが、女性ユーザーはバトルよりも服やアクセサリーを身に付けさせて楽しむ方が多いと聞く。 中には自分と同じペアルックで街を歩いたり、コスプレを楽しむ人もいるんだとか。
もちろんバトルに参加する女性もいるし、そういった存在はとても人気があったりする。

「えぇっと…大佐和さんはいつ頃来たんですか?」
なおも興奮し続けていた大佐和を少し落ち着かせようとルーシーが声をかけると。
「む? ほんの6時間ほど前だが」
……今2時ちょっと前だから……
「お前それ開店前なんじゃ」
「うむ! ワガハイあまりにも待ち遠しくてな、ついつい店の前で待機しておったら鍵を開けに来た店長が入れてくれたわ!」
……なんって迷惑な客だろう。 というか開店直後から今までの時間、この男は何をして時間を潰していたのやら。

そんな俺の考えが表に出たか、大佐和はニヤリと笑ってのたまった。
「心配無用ッ! 男一匹・大佐和軍治、灼熱真夏の炎天下であろうと吹雪真冬の氷点下であろうと、待つ事には人並み外れた耐性を有しておるぞォ!」
そっち方面でも我が世の春を謳歌している大学生は「待ちは軍人の基本戦術である!」などと自信たっぷり叫んでいる。
理由を問うようにルーシーがこちらを見上げるも、答える術を持たない俺は沈黙を守るしかなかった。

 ……そういえば武装神姫もそっち方面じゃかなりの人気だとか、ネットで見かけたなぁ。

そんなこんなで数分後。
突然ギャラリーの間で沸き起こった野太い歓声に反応し、大佐和も「キター!」となんか変な顔で更なるダミ声を張り上げた。
その視線…というか騒ぎを追って振り向けば、その中心にはずいぶんと派手な存在がいた。

 腰ほどまである蜂蜜色の金髪、鮮やかな紺碧の瞳。ミルクのような白い肌にすっきりと高く通った鼻筋、薄い笑みを浮かべた唇は透明感のある薄桃色。
ぴんと姿勢良く背筋を伸ばしているためモデルのようにも見えるが、そういう職業人と違って歩き方が自然で軽やかだ。

さながら自信と誇り、高い知性と無邪気な好奇心を併せ持つ野生の獣……そんな彼女を見て、つい俺とルーシーの口から同時に言葉が漏れ出た。






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