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「新年、明けましておめでとう。宗太、パーシ」
「同じく、明けましておめでとう。お二人」
 糞寒い冬の朝。俺はとある駅の前で加奈美とシルフィから新年の挨拶を受けていた。
「あけおめぇ、二人ともぉ。その振袖、よぉく似合ってるわぁ」
 俺の胸ポケットでパーシが言った。確かにパーシの言う通り、二人は俗に言う振袖姿だ。
 加奈美はピンク色の花柄振袖。髪も何時もみたいにストレートじゃなくて、ちゃんと結わえてある。化粧でもしているのか、振袖のせいか何時もと違って大人ぽく見えてしまう。
 シルフィも加奈美とお揃いの振袖を着て、加奈美の肩に座っている。しかも髪の毛は何時ものツインテールじゃなくて、簪を付けてポニーテールぽくしてる。その凛々しい表情は振袖の魅力を何倍にも引き出している。
 今がこんなんじゃなければ、加奈美の姿は目の保養になったろうしこの初詣もデート気分で楽しめただろう。
「バカ宗太ぁ、綺麗の一言でも言ったらどうよぉ?」
「……加奈美」
「なに?」
「今日が何日か言ってみろ」
「一月四日よ」
 加奈美はにこにこしながら言った。まるで物事の正否なんて関係無いとでも言うように。
「初詣っつーのはよ、普通元旦辺りにいかねぇか?」
「私も主にそう進言したのだが……」
 と、シルフィは言っているけど顔は満更でも無さそう。てゆーかすげー嬉しそうだから説得力も何も無い。振袖着れたのがそんなに嬉しいんか。
「別にぃ初詣にいつ行こうと自由じゃなぁい?」
「うっせー阿呆。別に初詣自体に文句はねーよ」
「では宗太殿、何が不満なのだ?」
「……とりあえず、眠ぃ」
 何を隠そう、俺はついさっきまでバイトをやっていた。しかも徹夜で。
 昨日の夕方六時から今朝六時までずっと働き詰めだった。夜勤に行くことは加奈美にメールで言って置いた。今朝もバイトが終わったときに加奈美にはこれから寝るから家来ても無駄だって、そう連絡した。なのに。
「加奈美、お前はあのメール見てなんでこうなるんだ」
「押すなよ、絶対押すなよ! みたいな?」
 加奈美の一世代古いネタに頭痛がしてくるけど、今はもっと頭痛の原因がある。
「……それと後一つ」
「なにかしら?」
「何で秋葉原なんだよ」


「この辺りはフツーの町だな……」
 俺と加奈美とシルフィと阿呆は、秋葉原のメインストリートから二つ三つ奥に行った所謂裏路地を歩いていた。
「電気街とは月と鼈よねぇ」
「いや……電気街が異常過ぎるのではないか?」
「そうかしら? 私はああいうの好きよ、活気があって」
「……」
「馬鹿宗太ぁ、なんか言いたそうねぇ?」
 なんつーか。あれだ。
 俺も少しくらいまともな恰好して来た方が良かったんかねぇ。
 振袖の加奈美とシルフィに対して俺はジーパンとダウンジャケットだし、パーシに至っては素体そのままだ。
 そんな俺達と加奈美達が並んで歩いているのは端から見たら結構奇妙な光景じゃねーのかなぁ。
「なぁ、加奈美」
「なに、宗太?」
「……どこの神社行くんだ?」
「あら、言って無かったかしら?」
「……主よ、ただ神社に行くとしか言っていなかったぞ」
「そうだったかしら?」
「加奈美ったらぁ、いつになくぽややんねぇ」
「着慣れない物着てるからかしらね」
「本当にそれだけぇ?」
「さぁ、どうかしら?」
「……楽しんでるところわりーいんだが、俺の話覚えてるか」
「なんだったけぇ」
「なんだったかしら?」
 相変わらず、マイペースと言うか何て言うか、自由な連中だよ。
 そんな俺に残された最後の良心はシルフィだけだ。
「シルフィ、どこの神社かわかるか……」
「……」
「シルフィ?」
「……」
 やべぇ、返事が無ぇ。ていうかさっきから反応が少し可笑しいと思ってたら、振袖の袖の部分を嬉しそうに眺めてみたり、帯を触ってみたり、簪いじってみたりしてる。俺の言葉には反応すらしない程に嬉しいんかい。
「あ、加奈美ぃ。あの神社じゃなぁい?」
「あら本当」
 二人の視線の先に目を向ければ、そこにはこじんまりとした神社が見えた。
 まだ少し距離があるから細かな所は解らないけど、公園みたいなのもある。
「喋ってる内に着いちゃったわねぇ……シルフィ、着いたわよぉ」
「……ああ、了解だ……」
 シルフィはそう言ってるけど、視線は神社を見ていない。てゆーか俺の声は聞こえなくてもパーシの声は聞こえるんかい。
「で、なんであの神社選んだんだ」
 すこーしブルーな気持ちになりながら、俺は加奈美に聞いた。
「あら、言って無かったかしら?」
「……加奈美、その台詞二回目だぞ」
「そうだったかしら?」
 ……ダメだ。今日の加奈美はいつも以上にペースを乱される。振袖ってのは女をこうも変えてしまうのか。
「おい阿呆」
「なによ馬鹿」
「なんであの神社なんだよ」
「ふぅ……まったく馬鹿は人に物聞く態度も分からないのねぇ」
 何時もなら導火線に火が付く所だが、今日は眠すぎてそんな気も起らねぇ。
「まぁ、今日は正月明けって事も踏まえてぇ許してあげるわぁ。一度しか言わないからよぉく聞きなさいよぉ?」
「やっぱ良いわ」
「なんでよぉ」
「着いちまったし」
 加奈美とパーシに話を振ってる間に、俺達は神社の鳥居の下に着いていた。
 とりあえず、ぐるりと周囲を見渡してみる。
 まぁとりあえず頭上にある鳥居。正面にある参道の先に拝殿と賽銭箱。参道の脇にある手水舎。所々にあるでっかい木。公園みたいなのもあった。
 普段から神社とかあんま来ない俺からしたら、何と言うか、なんで加奈美がここに来たがるか分からない。そんな普通な神社だと思う。
 ただ、この時期なのに落ち葉とかはあんま落ちてないし、ゴミみたのも見当たらない。規模でいえば小さな神社なんだろうけど、その分なのか、手が行き届いてるような気がする。
 どっかのでっかい神社みたいに入るだけで疲れそうな神社とは違う、安心できる。よくわかんねぇけど、そんな風に俺は感じた。
「馬鹿宗太ぁ、加奈美達先に行ってるわよぉ!」
「おう」
 気付けば加奈美達は手水舎で手をすすいでいた。
 石で出来た水盤には見るからに冷たそうな水が溜まっていて、それで手を洗ってる加奈美を見ているだけで寒くなる。
「マメだな」
「あら、これは参拝者のマナーよ。ちゃんと宗太もやらなきゃダメよ?」
「……マジで?」
「マジで」
 加奈美はそう言うと、水を手で掬って口に入れた。
 それは俺に同じ事をやれと言外に要求しているのが良く分かる。
 仕方なく柄杓で水を掬って、左手にかけた。
「……つめてぇ」
「泣き言言わなぁい」
 一月の水は阿呆みたいに冷たい。まるで針で刺されてるみたいな痛みを感じる。眠気が一気に覚めるくらいに。
 だらだらやっても辛いだけだから一気に右手に水掛けて、口もすすいだ。
「あー……つめてぇ」
「はい、ハンカチ」
 ハンカチで手を拭いたところで、冷たさは変わらない。俺はハンカチを加奈美に返してポケットに手を突っ込んだ。
「遅いわよぉ、馬鹿」
「うるせー」
 パーシの小言に相槌を打ちつつ、参道に戻って拝殿へと向かう。
 加奈美は一歩遅れて付いて来ている。
「主よ、人が少ないな……」
 意識が振袖から離れたのか、シルフィがようやく自発的に言葉を発した。
「三が日は過ぎたからな。今更初詣来るのは俺達くらいだろ」
 拝殿までの道のりはそんなに無い。一言二言交わせば直ぐに付いてしまう。現に俺は賽銭箱の前に居る。
「宗太ぁ、お金ぇ」
「ほらよ」
 悴む手を奮い立たせて財布から一円玉を取り出して、パーシに渡した。
「……馬鹿宗太ぁ」
 凄まじい敵意を感じるが、そんなもんスルーだ。俺も同じく一円玉を取り出して賽銭箱へと投げ入れる。
 目を瞑って手を合わせて。とりあえず、家内安全辺りを祈っておくか。それとも学業成就か。
 色々考えていると、ちゃりんちゃりんちゃりんと賽銭を投げ入れる音が三連続で鳴った。
 それに続いて、ぱんぱんと手を二回叩く音。
 瞑っていた目を開ければ、瞳を閉じて何か真剣に祈っている加奈美の姿が見えた。
 俺はとりあえず、がらんがらんと鈴を鳴らした。
「宗太ぁ、私の分も鈴鳴らしなさいよぉ」
 阿呆に言われるまま俺は連続でがらんがらんと鈴を鳴らしてしまった。
「……何お祈りしたんだ?」
 とりあえず、何と無く手持無沙汰だったから、パーシに話を振ってみた。
「だぁれがあんたなんかに教えるのよぉ」
 まぁ、そういう返事は想定の範囲内だ。はなからまともな返事が返ってくるとは思っていない。ただの暇つぶしだ。だから阿呆に何言われようと全く気にならねぇ。
 その時、丁度がらんがらん、がらんがらんと鈴が連続で鳴った。言わずもがな、加奈美とシルフィのが終わった音だ。
「ねぇ加奈美、シルフィ。何お祈りしたのぉ?」
 音が鳴り終わるやいなや、パーシは開口一番そう言った。
「私は……とりあえず家内安全よ」
 ウソだな。あの間は加奈美がウソつくときの癖だ。
 本当は何を神頼みしたかは知らねーけど、碌でも無い事は確かだろう。
「シルフィはぁ?」
「私は皆の健康だ」
 たぶん、シルフィは本当だろう。
 なんとなくだけど、そんな気がする。
「加奈美、用はすんだか?」
 神社に来てやる事はもう荒方やってしまった。加奈美が何故この神社に来たがったかは俺には解らない。
 確かにここは良い所だが、メールで俺を叩き起す必要は無かったんじゃないか。
「ふふ、お楽しみはこれからよ、宗太?」
 と、加奈美は不敵に笑うと社務所の方に歩いて行った。
 阿呆のパーシを見たら何故かしてやったりな顔されて、シルフィを見たらまだ振袖を嬉しそうに眺めてた。
 そんな俺に出来る事は冷えた両手を温めながら加奈美に付いて行く事だけだ。
「すいませーん」
 社務所についた加奈美は少し大きな声でそう言った。社務所にはどこの神社にもあるようにお守りやら破魔矢やらが置いてある。ただ、人だけが居なかった。
 そんな事をぼんやりと考えていると、少し遠くから声がした。
「はい、唯今参ります!」
 人の声にしたら少し奇妙に感じる声。なんというか、発信源が遠いような、近いような。そんな感じだ。
 加奈美もパーシも俺の事を面白そうに見るだけで、何にも言おうとしないし。
「お待たせしました」
 次の瞬間、かなり近い場所から声がした。
 その音源を探る様に辺りを見回してみても、見る限り人はいない。
「宗太、そこよ」
 加奈美の少し下向きな視線を追えば、そこには立派な巫女さんが居た。
 白子袖に緋袴姿。どっからどう見ても完璧に巫女。ただ一つ、その姿形が良く見慣れた存在である以外は。
「へぇ……神姫の巫女さんか」
「はい、結と申します。この神社の巫女を任されております」
 俺は思わず嘆息した。その巫女さん神姫―――結はハウリンタイプの武装神姫だ。
 それが巫女装束に身を包んで神社の巫女をやっているのだ。
 俺は純粋にハウリンと巫女との融和性に驚くしかなかった。
「結さん。御神籤を引きたいのだけれど」
「はい、少々お待ち下さい」
 結の受け応え、そして動作はどうみても巫女そのものだ。
 彼女がこの神社の巫女を任されているのは、本当の意味で任されているのだろう。
 ただ、武装神姫の結が人間用の御神籤箱を持ち出した時は少し危なっかしいと思ったりした。
「どうぞ」
「ありがとう」
 加奈美は御神籤箱を受け取ると、からからと振った。
「私は……3番。はい、宗太」
「おう」
 加奈美に御神籤箱を渡されて分かったが、この御神籤箱はかなり軽い。たぶん、結のオーナー辺りが彼女用に作ったのだろう。
 片手で軽く御神籤箱を振り、出てきた棒の番号を読み上げた。
「俺は1番だ」
 御神籤箱をパーシに渡してから、結から御神籤を貰った。
「はい、こちらです」
 小さく折りたたまれた御神籤をさっそく開こうとしたら。
「宗太ぁ、皆で一気に開いた方が面白いでしょぉ……私は16番ねぇ」
 パーシから御神籤箱をひったくり、シルフィに渡す。シルフィもそろそろ平常心に戻っているらしく、普通に御神籤箱を受け取ってくれた。
「……私は4番だ」
 これで、全員に御神籤が行き渡った事になる。
「んじゃ、早速」
 俺は小さく折りたたまれた御神籤を開いた。
 開いて、かなりブルーになった。
「あら、吉だったわ」
「主……小吉だ……」
「ラッキぃ、私は大吉よぉ」
 お前らは良いよなぁ……。
「宗太のはぁ……と……凶?」
「あら」
 パーシの言うように、俺の御神籤にはでっかく凶の字が書かれていた。
 御神籤で一年の全てが決まるとは言わないが、一年の初めにこんなんだとどうしてもテンションがブルーになる。
「御神籤というものは運勢よりも、書かれている内容をしっかりと心に留めて、よりよい運勢になっていくように努力していいくものなのですよ」
 結が口を開いた。
 それは俺を慰めているのとは違う、励ましているのとも違う、何とも不思議な声音だった。
「内容、ねぇ……」
 禍々しい凶の字に向けていた意識を、下の方に向けて見た。
 悦事:なし 
 住居:移らぬ方よし
 旅行:盗難に遭うから止めよ
 儲事:先得するも後大損す 
 待人:来らず
 失物:でがたし
 試験:落ちてもくよくよするな
 病気:死に至る病である
 事業:友人の裏切りに注意
 産児:大きな苦しみを伴う
「……宗太ぁ、良い事あるわよぉ」
「宗太殿……その……」
 気を遣うな、武装神姫。


 あれから俺はお守りを買い漁り、神社を後にした。
 俺の心は清々しい青空のようにブルーだった。
「馬鹿宗太ぁ、まだ引き摺ってんのぉ?」
「パーシ、そっとしておいた方が良いのではないか……?」
 シルフィは自分も小吉だったせいか、俺に友好的だ。だけど、その心遣いもちょっとキツイ。
「……加奈美、ここは何だ」
「ALChemistよ」
 俺はこんな気分を払拭する為にも早く帰って寝たかった。
 それなのに加奈美は俺を引き摺り回し、秋葉原の中心部に程近い無線会館とやらの地下二階に連れてきやがった。
 看板やらを見る限り、一応武装神姫関係のショップのようだが。
「……俺は帰る」
「なんでよぉ、馬鹿宗太ぁ」
 俺はこのショップからある気配を感じていた。
 いや、正しくはこのショップと加奈美とシルフィとパーシからだ。
 それは男にとって理解出来ない気配であり、出来れば帰りたくなる気配だ。
「い・い・か・ら、入りましょ?」
 いつの間にか背後に回っていた加奈美に背中を押され、俺はALChemistの店内へと足を踏み入れてしまった。
 その先は、一見喫茶店と見間違うような空間だった。
「あ、いらっしゃいませですの~」
 俺の真正面、棚に並ぶ商品を整理していたのだろうか店員らしき人物が立っていた。
 俺は思わずその姿に見とれていた。
 蜂蜜色、そう形容するしかない三つ編みにされた綺麗で長い髪の毛。
 その瞳は吸い込まれるような深い蒼色。
 アクセサリーを身に付け、エプロンを身につけた彼女はとても俺と同じ人間とは思えないほどに美しかった。
 それでいて彼女は絶世の美女、と言うよりも美少女と言った方がしっくりくる。
 何分でも、何時間でも見惚れていたくなるような、そんな人だ。
「馬鹿宗太ぁ、なぁに鼻の下伸ばしてんのよぉ」
 今日初めて秋葉原に来て良かったと思っていた至福の時をブチ壊したのは俺の耳を思いっきり引っ張った阿呆のパーシだった。
「? ゆっくり見て行ってくださいですの」
 そう微笑みかけられて、俺は思わず目を逸らしてしまった。俺は餓鬼か。
「ふん。加奈美、こぉんな馬鹿ほっときましょぉ」
「そうね、これからは女の子の時間だものね」
「そぉ言う事だから宗太ぁ、お財布よろしくねぇ」
「……おい、どういうこった」
「だからぁ、私たへのお年玉よぉ」
「心配しないで、宗太。ちゃんと宗太が帰れる程度には残しておいて上げるから」
「あ、主よ。それは幾らなんでも……」
「心配する事無いわぁ、シルフィ。あの馬鹿は年末年始で相当稼いでるから10万20万は全然平気よぉ」
「俺の意見は無視か」
「いや、だがしかし……」
「大丈夫よシルフィ。宗太は優しいからきっと買ってくれるわ」
 加奈美にそんな顔で見られると、断るわけにはいかねぇよ。
 だけど、ただやられるだけじゃ腑に落ちない。
「……良いけどよ、30分以内に」
「馬鹿も正月は気前が良いわねぇ!」
 パーシは俺の背中を蹴って加奈美の肩に飛び付いた。
 俺が言い終わるよりも早く、3人は買い物を始めやがった。
 もうこうなったら俺にはどうしようもない。30分時間が浪費されるのを待つだけだ。
「あら、これ可愛いわね」
「いいじゃなぁい、シルフィに似合いそうよぉ」
「い、いや。私にはとても……」
「そんなことないですの。きっとお似合いになるのですの♪」
「て、店員さん!?」
「でも貴女にだったらこっちも似合うと思いますの」
「本当、こっちの方が似合うわね」
「さっすがぁ、店員さんねぇ」
 ……女は怖い。
 怖い、っていうか凄い。
 気持はわからないでもないけど、俺は買い物にここまで夢中になれない。
 30分。たぶんあいつらにとっては短すぎるんだろうなぁ。
 まぁ俺は店員さんを眺めているだけで良いんだけど。
「何か探しものか、客人よ」
 美少女店員さんを眺めてたら、声がかかった。
 雰囲気的びは店員さんだが、周囲を見渡しても小さな女の子しかいなかった。
「誰が小さな女の子かッ!」
 黒髪を肩辺りで揃えた、小柄で非常に可愛らしい女の子は、その可愛らしさとは裏腹な言動と鋭い蹴りを俺に浴びせやがった。
「っ―――痛ぇ!」
 俺の脛を正確に狙い澄まして放たれた蹴りは、滅茶苦茶痛い。
 うずくまって脛を押さえていると、彼女が再び口を開いた。
「人の妹をいかがわしい目で見るかと思えば言う事はそれかッ!」
 妹? 誰が?
 ここにいるのは俺と加奈美とシルフィとパーシと店員さんとこの幼女だけなのに?
「誰が幼女か、このたわけッ!」
 うずくまっている俺に対し振るわれる右足。
 顔面に当たり寸前に腕でガードしたけど痛い痛い。
 この子、なんか格闘技でも習ってんのか?
「……少しは反省したか?」
 軽く腕組みしながら俺を睨みつけてくるよう……じゃない、この子。
 てか俺思考読まれてね?
 とりあえずうずくまったまんまだとヤバいから立ち上がる。
「OK、OK。お互い落ち着こう……」
 両手を挙げてこちらに敵意と悪意が無い事をアピール。
 だけど、彼女は鋭い目つきで俺を睨んだまんまだ。
 大人しくしてれば人形みたいに可愛らしいんだがなぁ。
「ふん……最初に言っておく、私がこのALChemistの店長、槇野 晶だ」
 店長? こんなちっさくて可愛らしい女の子が?
「っと待て、待って下さい、蹴らないで下さい……じゃあ、妹って言うのは?」
「無論、あそこに居る葵の事だ」
「……葵さん、ねぇ」
 あの店員さん、葵さんっていうのか。
 良い名前だなぁ……とか思ってたらまた危うく蹴りを入れられそうになった。
「うぉっ、あぶね!」
「貴様……また良からぬ事を考えておったな?」
 やべぇ、この子。じゃねぇや晶さんは読心術でも会得してんのかよ。
 迂闊な事考えられねぇじゃねぇか。


 ―――そんなこんなで1時間後、俺は無事にレジで代金を支払っていた。
「毎度ありがとうございますの♪」
 レシートを受け取ればそこには目を覆いたくなるような惨劇が。
「……帰るぞ」
「えぇ、帰って早速ファッションショーね。宗太のお家で」
「それが良いわぁ、加奈美。この馬鹿の部屋、今は大掃除直後だから珍しくキレイなのよぉ」
「二人とも、そろそろ宗太殿が怒られるぞ……」
 何故か俺が荷物を持ちながら、店を後にした。
「またどうぞですの~」
 最後に一度、葵さんの姿を目に焼きつけようと思ったけど、晶さんに蹴られそうだったから諦めたのは俺の心の中に締まっておこう。











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