そして大切な物と、見出したる光
あの大敗より三日目の夜……わたし・ロッテは、この暗い店舗に居ます。
手にマイスターが以前くれたペンダントを握りしめ、ずっと考えますの。
『自分は果たして何の為に戦って、誰の為に一体何をするべきなのか』?
これはわたしだけの事じゃなくて、アルマお姉ちゃんとクララちゃん……
そしてマイスター自身にも突きつけられた、フリッグさんの問いですの。
手にマイスターが以前くれたペンダントを握りしめ、ずっと考えますの。
『自分は果たして何の為に戦って、誰の為に一体何をするべきなのか』?
これはわたしだけの事じゃなくて、アルマお姉ちゃんとクララちゃん……
そしてマイスター自身にも突きつけられた、フリッグさんの問いですの。
「今日はここか、ロッテ。そろそろ寝ぬとバッテリーが切れてしまうぞ」
「……大丈夫ですの。ちゃんと御飯も食べましたから、多少保ちますの」
「そうは言っても、普段より摂取量が少ないだろう……皆、そうだがな」
「あれから、わたしはずっと考えますの。考えきれない位、想いますの」
「……大丈夫ですの。ちゃんと御飯も食べましたから、多少保ちますの」
「そうは言っても、普段より摂取量が少ないだろう……皆、そうだがな」
「あれから、わたしはずっと考えますの。考えきれない位、想いますの」
背中に感じる、マイスターの吐息。多分、さっきまで騒がしかったのは
わたしを探していた所為ですの。でも、今は……貴女の顔を見るのが、
とっても辛いですの……マイスターの為と言いながら、わたしは……。
わたしを探していた所為ですの。でも、今は……貴女の顔を見るのが、
とっても辛いですの……マイスターの為と言いながら、わたしは……。
「……わたしは、ただ自分が気持ちよかっただけなんじゃないかって」
「ふむ……私を詰っても構わぬ、この際心情を全部吐き出してしまえ」
「マイスターの作る服はとってもお洒落で、作った武器は頼もしくて」
「有無。無論、そうあるべきと願い作った物だからな……それはいい」
「ですけど、それに慣れきってましたの。それに甘えていましたの!」
「ふむ……私を詰っても構わぬ、この際心情を全部吐き出してしまえ」
「マイスターの作る服はとってもお洒落で、作った武器は頼もしくて」
「有無。無論、そうあるべきと願い作った物だからな……それはいい」
「ですけど、それに慣れきってましたの。それに甘えていましたの!」
マイスターの与えてくれる物・時間・心、それが心地よかった。だから
それを当然と思って、甘えきってしまいましたの。“強い事”こそが、
当然だなんて……怖い考えさえ在った気もしますの。何故か震える手を
必死に堪えながら、わたしは続けます……“弱さ”を、隠せないから。
それを当然と思って、甘えきってしまいましたの。“強い事”こそが、
当然だなんて……怖い考えさえ在った気もしますの。何故か震える手を
必死に堪えながら、わたしは続けます……“弱さ”を、隠せないから。
「わたしは自分が赦せないですの、マイスターを利用しただけの自分が」
「……そう、思うのか。いや、今この言葉だけは……『そう思うの?』」
「え?マイスター、泣いて……それに、その言葉って……その……!?」
「……そう、思うのか。いや、今この言葉だけは……『そう思うの?』」
「え?マイスター、泣いて……それに、その言葉って……その……!?」
普段と全く違う口調で、わたしを背中から包んだマイスターの言の葉は、
今まで聞いた事がない程に、儚く哀しげで。鈴を鳴らす様に、繊細な声。
そして普段の気丈さを全く感じさせない、『少女の言葉』でしたの……。
でもそれも一瞬。咳払いをして……普段通りの口調で、問い掛けますの。
今まで聞いた事がない程に、儚く哀しげで。鈴を鳴らす様に、繊細な声。
そして普段の気丈さを全く感じさせない、『少女の言葉』でしたの……。
でもそれも一瞬。咳払いをして……普段通りの口調で、問い掛けますの。
「……私はな、お前達を戦いに送り出して良かったと思っているのだぞ」
「どうして、ですの?ただ戦って、勝ったらはしゃいでただけなのに!」
「だからだ!その笑顔を見て、私は思ったのだぞ……『嬉しい』とな!」
「え……笑顔……?わたし達の“笑顔”……ですの?マイスター……?」
「そう。私の力を以て、皆……時には他の神姫にも、笑顔を灯してきた」
「どうして、ですの?ただ戦って、勝ったらはしゃいでただけなのに!」
「だからだ!その笑顔を見て、私は思ったのだぞ……『嬉しい』とな!」
「え……笑顔……?わたし達の“笑顔”……ですの?マイスター……?」
「そう。私の力を以て、皆……時には他の神姫にも、笑顔を灯してきた」
それはとても微力な事。でもマイスターが、常に心がけていた事ですの。
神姫達に笑顔を。わたし達が、そして灯さんの神姫達やお客様達が……。
常に笑ってくれるからこそ、ここまでやってこれたのだと。マイスターは
そう言って、わたしを胸に抱き寄せてくれましたの……とても、暖かく。
神姫達に笑顔を。わたし達が、そして灯さんの神姫達やお客様達が……。
常に笑ってくれるからこそ、ここまでやってこれたのだと。マイスターは
そう言って、わたしを胸に抱き寄せてくれましたの……とても、暖かく。
「そして、側にいるお前達にも笑ってほしいと思い。全てを為してきた」
「……それがマイスターの、『誰の、何の為に戦うか』って事ですの?」
「そうだ。全ては隣人たる神姫達、そして私の側にいるお前達の笑顔故」
「……大切な人の、笑顔の為に……たったそれだけで、大丈夫ですの?」
「……それがマイスターの、『誰の、何の為に戦うか』って事ですの?」
「そうだ。全ては隣人たる神姫達、そして私の側にいるお前達の笑顔故」
「……大切な人の、笑顔の為に……たったそれだけで、大丈夫ですの?」
私の最後の迷いに、『とても大事で、十分な理由だ』と言って。貴女は
優しく抱いてくれましたの。でも、まだ残っている疑問。それは……。
優しく抱いてくれましたの。でも、まだ残っている疑問。それは……。
「“マイスター”が“便利な道具”ではない事は、ハッキリしましたの」
「……嗚呼。まだ『誰の、何の為に戦うのか』以外にも宿題があったな」
「はいですの。わたし達にとって『“マイスター”とは何なのか』って」
「そして同時に、私にとって『“三姉妹”とは何か』と……言われたな」
「……嗚呼。まだ『誰の、何の為に戦うのか』以外にも宿題があったな」
「はいですの。わたし達にとって『“マイスター”とは何なのか』って」
「そして同時に、私にとって『“三姉妹”とは何か』と……言われたな」
そう、『大切な人の、笑顔の為に戦う』。それは忘れかけていた、重要な
事柄ですの。これがまず一つ……でも、その“大切な人”って何ですの?
フリッグさんは“それ”をちゃんと認識してほしいと、願ってましたの。
マイスターは、暖かくて凛としていて……そして時にお茶目で優しくて。
何より、こう……貴女の事を思うと、胸の辺りが暖かく感じられて……。
事柄ですの。これがまず一つ……でも、その“大切な人”って何ですの?
フリッグさんは“それ”をちゃんと認識してほしいと、願ってましたの。
マイスターは、暖かくて凛としていて……そして時にお茶目で優しくて。
何より、こう……貴女の事を思うと、胸の辺りが暖かく感じられて……。
「……色々言葉は思い浮かびますけど、まだ一語にはまとまりませんの」
「アルマとクララもそう言っていた……更に私もだ。明確にはならぬな」
「唯の“大切な人”で済ませてしまうのは楽ですの。けど、それは……」
「有無……それで済ませられぬ気がするのだ。もっと深い何かがある筈」
「アルマとクララもそう言っていた……更に私もだ。明確にはならぬな」
「唯の“大切な人”で済ませてしまうのは楽ですの。けど、それは……」
「有無……それで済ませられぬ気がするのだ。もっと深い何かがある筈」
“存在”を認識した時、わたしはそれを言葉にする怖さも感じてました。
ですけど、何時かはマイスターに告げなければならないですの。だって、
永遠にチャンスがあるとは限らないですの。それはアルマお姉ちゃんも、
クララちゃんも……マイスターさえきっと感じている事ですの。だから!
ですけど、何時かはマイスターに告げなければならないですの。だって、
永遠にチャンスがあるとは限らないですの。それはアルマお姉ちゃんも、
クララちゃんも……マイスターさえきっと感じている事ですの。だから!
「何時かちゃんと言葉に出来る日が来たら、必ず言いますの。だから」
「有無、待っていてくれ。その時は必ず、皆に告げよう。その言葉を」
「有無、待っていてくれ。その時は必ず、皆に告げよう。その言葉を」
『わたし達は“笑顔”の為に戦い、“大切な人”の為に歩いてゆこう』。
まだ解決しきれない“問い”にも、一応の光明が見えてきましたの。なら
後は、フリッグさんに剣戟を通して伝える……その為には、特訓ですの!
まだ解決しきれない“問い”にも、一応の光明が見えてきましたの。なら
後は、フリッグさんに剣戟を通して伝える……その為には、特訓ですの!
「マイスター、散々困らせちゃってごめんなさいですの。でも、大丈夫」
「……その笑顔だ。そうして笑ってくれるならば、私は何でもしよう!」
「はいですの♪なら、明日から色々手伝ってくださいですの。まず……」
「……その笑顔だ。そうして笑ってくれるならば、私は何でもしよう!」
「はいですの♪なら、明日から色々手伝ってくださいですの。まず……」
──────見えてきた大切なモノ……その手に残るのは、何かな?