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注:このお話には、特定のキャラクター(神姫SSwiki内の他作品の登場人物ではありません)のイメージを大きく誇張・歪曲した表現が使われています。主に二次創作の苦手なかたはご注意下さいませ。
 また、本編読了後に特定のキャラクターのイメージが大きく変わってしまう可能性があります。途中でその危険性を感じ、またそれを望まない場合は、速やかに更新履歴・もしくは作品別直リンク・バックスペース等で他ページへの移動をしていただくようお願いいたします。












 最初に報告を上げたのは、通信士兼レーダー手のD2だった。
「敵本隊、動きました! 来ます!」
 ノリコもバイザーに映るレーダーを最大まで拡大する。激突する右翼と左翼のちょうど中間あたり、砲撃射程のはるか外に、動く大きな機影が見えた。
「ノリ、チャージ完了だ!」
「はいっ!」
 フルレンジのレーダーで照準は合わせられない。支援砲撃モードに戻し、再びメガランチャーでの援護に取りかかる。
「ゲイナーは!」
 メガランチャーの砲撃音はフィルタリングで何とかなるが、肢体を揺らす衝撃まではかき消せない。そんな中、はっきりとセンサーで識別出来るのは、ミドリの鋭い声だけだ。
「ゲイナー、ケンプ隊に合流。敵航空部隊は駆逐中ですが……ケンプから緊急入電! ゲイナー、撃墜されました!」
「何ですって!」
 支援砲撃の合間を縫って、砲撃モードから全体の戦況マップへと切り替えてみる。D2から送られてくるデータを元に作られた戦況図から、ゲイナーを示すマーカーが確かに消えていた。
「相手は……」
 代わりに表示されるのは、神姫サイズの飛行ユニットが二つ。もちろん、敵表示を示す赤い色のマーカーだ。
「ツガルタイプ二機!」


マイナスから始める初めての武装神姫

その11 後編



「あの野郎かっ! ノリ!」
 その言葉を聞いた瞬間、レシーバーを峡次の声が震わせる。
「無理ですよこの距離で! ZGさんだっているのに……」
 ツガルほどの機動力があれば、遠距離砲撃を回避することなど造作もない。むしろ左翼で戦っているZG達に誤射する可能性のほうが高い。
「あのへっぽこ武器マニアとデクノボーに死ぬ気で落とせフニャ○ン野郎と伝えるのです!」
「サー!」
「キリコはどうなっているですか!」
 チャージ完了のシグナルはバイザーの端に瞬くが、支援予定の右翼の話が出て来たところで、一旦保留。トリガーから指を外し、指示の変更がないか待つ。
「ガンメン工兵隊と戦闘継続中! プライムがあと1ターンで合流予定です! プライムから定型文入電『私にいい考えがある』」
「アイツがそう言うときはロクなことにならないのです! 死亡フラグなんか立てるんじゃねえこのイ○ポ野郎と伝えるのです! ちびちび神姫!」
「支援砲撃、5セット中4セット終了。5セット目、今からです!」
 照準も既にセット完了。指示が有ればすぐにでも撃てる状態だ。
「ガンメンどもは硬いんだから、出力三割減とか言ってないで全力射撃するです!」
「え、あの、キリコさん……は?」
 ガンメンは硬くても、キリコの乗るフルモータライズATの装甲にそこまでの防御力はない。前面装甲ならともかく背部装甲に至っては、フルパワーのメガランチャー一発で致命傷になる怖れさえ出てくるのだ。
「そんなの当たる方が悪いのです。遠慮しないでいくですよ!」
「は、はぁ……」
 指示ともなれば仕方ない。
 メガランチャーの出力をフルパワーに戻し、ノリコはトリガーを引き絞った。
 続けざまに放たれた粒子加速の咆吼が、鋭角で構成された黄色いガンメンを三体まとめて吹き飛ばす。
「ノリ。ヒューズ、焼き切れる前に交換しとけ」
「はいっ!」
 砲身冷却が始まると同時にヒューズユニットを排莢。ころころと転がるガラス管のヒューズが……。
 エナメルの靴に、踏みつぶされた。
 無論、この戦場でそんな洒落た靴を履いている者など、たった一人。
「じゃ、ミドリも出るですから……。ここはジム太達と死ぬ気で守るですよ」
 足元まである髪をゆらりとなびかせ、ミドリはメガランチャーの横をゆっくりと通り過ぎていく。
 その身長は六十センチ。人間と比べれば三分の一ほどで、人間の感覚に慣れたノリコからすれば決して大いわけではないが……。
 それでも単純なサイズ差でいえば、十五センチのノリコの四倍もある。
「……え?」
 ノリコ達のチームの指揮官にして、最終兵器である彼女はゆっくりと前へ。
「本隊前衛、来ます! 距離2000!」
 D2の言葉に彼女が足を止めたとき。彼女の目の前で、ゆらりと空気が揺らいで踊る。
「ホログラフィックカモフラージュ……姑息な時間稼ぎですの」
 幻とも陽炎ともつかぬ空間の中から現れたのは……棺桶のようにも見える、漆黒の飛行要塞。その箱状の物体から、腕が生え、足が伸びて、両脇の装甲が大型の盾として一つに組み合わされていき。
「サイコガンダム……PGスケールで出てたのか……」
 姿を見せる、ミドリと同サイズの黒い巨人。
「ふっふっふ。今度こそあの世に送ってやるのです!」
 たった一機でこちらの戦力の大半を粉砕出来るであろう最終兵器の登場に……。ミドリは、提げていた長い鎖をじゃらりと鳴らすのだった。



 問題の場所に着いたのは、トイズ・メッセンジャーのオフィスを出て十分もしないうちだった。
 それはまあ、いいんだけど……。
「で、何でお前がここにいるんだ? 峡次」
 その会場……何の会場かは相変わらず分からないんだが……にいたのは、何というか。
「……バカ兄貴」
 イヤになるほど見知った顔だったわけで。
「それは俺が聞きたいわけだが。つーか店はどうしたんだよ!」
 今朝も鳥小さんはバイトで出掛けたはず。その店の店長はお店を空けてこんな所か。おめでてーな。
「いや、鳥小さんいるし」
 しかも両肩にはあのツガル姉妹まで乗せている。本当にお店には鳥小さんとベルしかいないらしい。
「何? 隆芳君と武井君、知り合い?」
「……名字言ってる時点で気付け。向坂」
「あー」
「ダメダメですね……」
 ミドリは溜息を吐いてるけど、個人的にはそんなの関係ねえ。
「つか、神姫バトルはしないんじゃなかったのかよ」
 それより気になるのは、この会場の有り様だ。
 ずらりと並ぶノートPCに、神姫のバーチャルバトルで使われるハイパースキャナー。それも普通の神姫バトル筐体に使われるサイズだけじゃなくて、その何倍も大きい物まで置かれている。
 そもそもミドリがいる時点で、ただの神姫バトルの会場……ってわけじゃなさそうだけど。
「いやこれ神姫バトルじゃねえし。メイドハンマー、知らね?」
「ちょっ!」
 上は六十センチ級の自動人形から、下は十センチのミクロマンまでが戦うという、何でもありの無差別バトルだ。
 あまりにルール無用過ぎて、大都市のごく一部でしかやられてないって聞いてたけど……そんなものにまで首突っ込んでるのかこいつは。
 なんか、頭痛くなってきた。
「……せめてSRWにしてくれよ」
「あんなカビの生えたルールじゃ、ミドリのウルトラスーパープリティーな魅力は発揮できないのですっ!」
 つか、ホントにこの自動人形も戦うのか!
 六十センチの自動人形を使うなら、確かに神姫サイズのハイパースキャナーじゃ足りないけどさ……。
「……自動人形は基本ルールじゃ対応してないのよね。だからって、War-Kingもミドリの性格には合わないっぽいし」
「War-Kingなんて、武井の所のスカした金髪チビ神姫にやらせとけばいいのです!」
 バカ兄貴の所の金髪神姫って……ベルのことか?
 ベルさん、War-Kingなんてやってたのか。
 ……まあそれはいいとして。
「つか、碧さん。そもそも自動人形にバトルさせんといて下さいよ」
 確かミドリの素体ひとつで、ちょっとした高級外車が買えるくらいの値段がしたはずだ。ノリコの中古素体がそれで何体買えるかなんて、計算したくもない。
 もちろん、貧乏学生が踏み込める領域じゃない。
 社長って儲かるんだな……。
「自動人形がバトルしちゃいけないなんて、不公平なのですっ! ミドリもはらわたをぶちまけさせたいのですよっ!」
 けど、その初めて出会ったオーナー付きの自動人形が、こんな性格だとは……。
「……確かに、War-Kingには向かないですね」
 正直、ショックだ。
「でしょ」
「で、今日はお前もそっちの軍なわけか」
 まあ、こいつがいることに比べたら些細なもんだが。
「砲手の百式が風邪ひいちゃってね。たまたま、武井君がノリコちゃん連れて面接に来てたから……」
「神姫連れてバイト面接か。おめでてーな」
 神姫連れて仕事さぼってる奴よりはマシだろ!
 そして、それより問題なのは……だな。
「……あの、碧さん。何で、バイトとメイドハンマーが関係あるんですか?」
「ないけど」
「ちょっ!」
 ないのかよ!
「……トイズ・メッセンジャー社の社長兼メイドハンマー同好会会長としては、百式がいない戦力低下は我が社の業績と同じくらい見過ごせない問題だったのよね……」
 ……公私混同というやつか。
「………………ふっ」
「笑ったな! なんかすげー鼻で笑ったな!」
 つか、お前も公私混同だろ! バカ兄貴!
「ま、笑いたくもなるわな」
 とりあえずバトルなのは間違いない。こいつのツガルは倒す! 絶対倒す!
「なあ、ミドリ」
「ミドリさんと呼ぶです! ミドリさまでもいいのですよ!」
 俺は六十センチのミドリの手を掴み、そっと握りしめた。神姫より大きい手でも、人間よりもはるかに小さい。それに気を使える程度の力加減は、ノリコで十分身に付けていた。
「ミドリさん! 今日の戦い、絶対に勝とうな!」
「当たり前なのですっ!」



 うなりを上げる鉄鎖の先に付けられていたのは、自動人形の頭ほどもある巨大な鉄球だった。
「でえええええええええええええええええいっ!」
 噴射炎をまとい、螺旋軌道で叩き付けられる。いかに巨大なサイコガンダムといえど、その重さと衝撃に耐えられるはずもない。
 機体が揺らぎ、その体勢を戻すよりも早く、次撃が分厚い装甲を穿つ。歪み、砕け、弾けてもなお、ミドリの攻撃が緩むことはない。
「……つか、ミドリさんの標準装備って、如雨露じゃないのか」
 峡次も自動人形のサイトくらいは見たことがある。
 そこで戦うミドリのオリジナルモデルは、メイン装備である如雨露を操り、相手に強力な状態変化をもたらす支援キャラだった……はずなのだが。
「……初陣でそれで相手をぶん殴って、一発で壊したんですよ」
 隣で砲撃をしていた緑色のジムスナイパーの言葉に、ため息をひとつ。
「ノリコさん。キリコとプライムの支援はもういいですから、左翼のケンプ達の支援お願いします」
「了解です。けど……」
 メガランチャーで高速の敵は狙えない。そもそもメガランチャーは範囲砲撃の武器であって、狙撃装備ではないのだ。
「マスターが、このライフルを使ってくださいと。むかしアプサラスを墜とした逸品ですから、対空性能は折り紙付きですよ」
「……いいんですか?」
 頷くジムにお礼を返し、ライフルを受け取る。
 GFF規格の武装だから、使うことに関しては問題ない。そのうえ都合の良いことに、ビーム兵器ではなく、ノリコの得意な実弾装備のドライバが使えるようだった。
「でりゃあああああああああああああああああっ!」
 構えたところで、地響きがひとつ。
 バイザーを上げてみれば、ミドリがサイコガンダムを大地に沈めたところだった。
「……あんな凶暴な自動人形、初めて見た」
 思わず呟いた峡次の声に、ノリコの隣にいたD2がゴーグルを淡く光らせる。
「峡次さん。それ以上言わないことを忠告します」
 ついでにジムスナイパーも、その台詞に続く。
「同意します。マスターから『彼女はアシモフプロテクトを外してるから』との伝言が」
「…………」
 現行のロボット法では、全高六十センチ以上の『人間に酷似した』ロボットの製造と販売を規制している。
 その理由が、峡次は何となく理解できた気がした。
「だらっしゃあああああああああああああああっ!」
 がぁん、という鈍い音がして、サイコガンダムの巨体が今度こそポリゴンの欠片となって消滅する。
「本隊来ます! 数三機! サイズは……1/60級!」
「え? まだあんなでかいのが……?」
 サイコガンダムの時と同じく、実視界にその姿はない。どうやら本隊とやらも、ホログラフィックカモフラージュを使っているらしい。
「来たですの! でええええええええええええい!」
 裂帛の気合と共に、ハイパーハンマーが飛翔する。
 だが響き渡るのはサイコガンダムの時のような破砕音ではなく、がぁんという鈍い金属音。
「はっはっは! 超合金を甘く見るなぁっ!」
 光学迷彩の内から現れた黒光りする装甲は、プラスチックの質感ではない。
 宙を舞うペンギンと地を駆けるガゼルが変形し、その上にハンマーを弾いた巨大な影……金属装甲をまとったゴリラが、変形・合体した。
「ゲキゲキゲキゲキゲキゲキゲキゲキゲキゲキ!」
 ゴリラの腕が変形した巨大なアームがぐるりと回り、ミドリに向かって振り下ろされる。
「きゃあああああああっ!」
「ゲキゲキゲキゲキゲキゲキゲキゲキゲキゲキ!」
 続けざまに叩き付けられる拳の雨に、ハイパーハンマーを振り回す隙もない。
「……人の可愛い悲鳴に被るとか、いい加減に……」
「ゲキゲキゲキゲキゲキゲキゲキゲキゲキゲキ!」
 その動きに対抗して、ミドリが選んだのは……。
「しさらせですのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
 固く握った、両の拳。
 それを、超合金の装甲に一直線に叩き付け!
「ゲキゲキゲキゲッ!」
 超重量級の巨体が、吹き飛んだ。
 横に。
「……へ?」
 ミドリが放ったのは真っ向からのストレート。
 斜め横に叩き付けるフックではない。
「ZG……ゴジュラスから入電。『我、敵大将機ゲキファイヤーを撃墜せり! とったどー!』」
 その報告を呟いたのは、当然ながらD2だった。
「あンのバカ恐竜ーーーーーーーーーーーっ!」
 ポリゴンと化して消えていくゲキファイヤーを背に負って。
 そこに現れた炎のエフェクトは……間違いなく、実際の熱量を持っていた。
「きゃーっ! ミドリさんっ!」
「人の獲物を横取りするなんて、礼儀を教えてやるのですっ!」
「て、撤退! 撤退ーー!」
「総員に通達! 総司令官がご乱心召された! ご乱心ーーーっ!」
「プライムから定型入電! 『私にいい考えがある』」
「絶対ウソだーーーーーっ!」



 戦いは、終わりました。
「……いつも、こんな感じなんですか?」
「このバカ恐竜! バカ恐竜っ!」
 特大サイズのハイパースキャナーから出て来たミドリさんは、動かなくなったゴジュラスさんをぽかぽか殴り続けてます。さすがに、あの大きなハンマーは使ってないみたいですけど。
「だいたい、ミドリさんが暴走して終わるよねー」
「面白いだろ?」
「……はぁ」
 神姫バトルもメイドハンマーも、敵同士なのは試合の間だけ。だからこうして、峡次さんのお兄さんの神姫……アキさんと、タツキさんともお話出来てるんですけど。
「バカ恐竜! バカ恐竜っ!」
 ミドリさんが殴り続けてるZGさんは、どう見ても味方のような……。
 あれ?
「そういえば、D2さんやジムスナイパーさんは?」
 メイドハンマーの会場は、撤収作業が始まっています。私たちのおしゃべりも、お手伝い……PCに繋がれたケーブルを外すくらいなら、神姫でも出来るんですよ……をしながらです。
「ああ。連中は戦闘特化AIの載ってるタイプだから、電源落とされてるんじゃね?」
「そうなんですか」
 メガランチャーを貸してくれたケンプファーさんや、ライフルを貸してくれたジムスナイパーさんにも、お礼を言いたかったんですけど……。
「うん。あたしらみたいな長時間バッテリーも無いから、稼動時間も厳しいし」
 だったら、帰りにケンプファーさんとスナイパーさんのマスターさんに、お礼を言うことにしましょう。
「おし、これで終了っと」
 最後のケーブルを抜き終わって、私達の作業はおしまいです。さすがにPCを運んだりケーブルを片付けるのは、私たちの力じゃ難しいですし。
 まだあそこでZGさんをぽかぽか叩いてる、ミドリさんなら簡単なんでしょうけど……。
「ノリコちゃん、お疲れさまー」
 とりあえずする事もなくなったので、ケンプファーさんとスナイパーさんのマスターさんを探そうと思ったら……社長さんがやって来ました。
「あ、社長さん」
 対決に勝ったのが嬉しいのか、すごくご機嫌です。
「ノリコちゃんも碧でいいわよ。武井君はなんかお兄さんと戦ってるみたいだから、ノリコちゃんに伝えとくわね」
「はい」
 峡次さんは、またお兄さんとケンカしてます。
 なんでお兄さんとケンカするんでしょうか? 良く分かりません。
「中間テストが終わったら、なるべく早く連絡をもらえるかな? シフトも決めたいし」
「お仕事の方も、採用……なんですか?」
 事務所での「採用!」がこのメイドハンマーに対しての物だったことくらい、私にも分かります。
 けど、この言葉は間違いなくバイトの採用、なわけで……。
「試験採用だけどね。あの自転車と足見れば、体力の方は問題なさそうだし。あのくらいチーム戦が出来るなら、責任感とか協調性も大丈夫でしょ。後は実際に働いてみて……って感じかな?」
「分かりました! ありがとうございます!」
 峡次さんの代わりに、私はぺこりと頭を下げました。
「それじゃ、私たちは帰るから。ミドリー」
「はーい」
 そして、コンテナに収められていくZGさんを名残惜しそうに見つめているミドリさんの手を引いて。
 碧さんは、帰って行きました。



 夜の街を、軽自動車が走っている。
 旧式とはいえ、限りなく無音に『近い』電気車両だ。本来なら完全に無音にも出来るのだが、完全に無音だと事故の元になるため……わざわざバンパーに内蔵されたスピーカーから、擬似的なエンジン音を出しているのである。
「ほらほら。勝負には勝てたんだから、帰ったらお祝いしましょうよー」
 そんな車の中だから、女性の呟きもよく通る。
「……ねえ、碧。今思いだしたですけど」
 碧の言葉に返すのは、助手席に座る自動人形。
「何?」
「あのチビ人間たち、どうやって帰るです?」
「…………へ?」
 自動運転にしていたのが幸いした。ここで手動運転だったなら、急ブレーキがかかっていた所だ。
「あいつらの自転車、事務所に置きっぱなしですよ」
「………………」
 自宅に向かうよう設定した車は、止まらない。
「そのうえ、ガレージも鍵かけちゃいましたし」
「………………」
 止まれといえば止まるだろうが、止める気も、ない。
 オフィスは自宅とは別方向で……。
 何より、早く帰ってミドリとお祝いしたかった。
「ま、何とかするでしょ。男の子だし」
「ですね」
 夜の街を、わずかな音をまとう電気自動車が、ゆっくりと走っていく。





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