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鋼の心 ~Eisen Herz~


第12話:夜の戦場(その3)





「行ってらっしゃいませ、ご主人様…」
 白髪に赤い瞳のアーンヴァルが、メイド服のスカート端を持ち上げ主である少年に礼を取る。
「明日は接続システムの最終調整があるので、本日は早めにお戻りになって、ゆっくりお休み下さいまし…」
「分かってる、って。……本当にお前は口うるさいよな。何でそんな性格設定になっちゃったんだ?」
「それはもちろん、ご主人様がズボラで、いい加減で、だらしなくって、機械関連以外は小学生以下のダメ人間だからですわ……」
「決めた。お前、絶対にいつかリセットして、従順な性格に再調整してやる!!」
 少年。村上衛の脅しを軽く微笑んで受け流すと、メイド服のアーンヴァルは彼方を見ながら嘯いた。
「では、リセット後の再設定に必要なフォーマットディスクと専用のイレイザーが、どの部屋のどの棚に仕舞われているのかは、ご自分で思い出してくださいまし」
「……お前、絶対性格悪いだろ?」
「ご主人様ほどではありませんわ」
 髪などかき上げ、優雅に微笑む小さなメイド。
「それから、私の見立てでは遅刻せずに学校まで到着できる限界許容時間が、あと48.175秒にまで迫っていますわ」
「げ、ヤバイ!?」
「……私、常に日本標準時を定める時計とリンクしておりますので、時間には正確ですわよ?」
「……くそ、覚えてろ。帰ってきたら酷いからな!!」
「ええ。帰宅後、どのような遅刻の咎を受けたのか、しっかり聞かせて頂くといたしましょう」
「……絶対イレイザー探し出してやる!!」
 棄て台詞を残し、走り出そうとする少年をアーンヴァルが呼び止めた。
「ご主人様。……お気をつけて行ってらっしゃいませ」
「……ああ、分かってる。行ってくるよ、――――」

 そうして、彼はその名を口にした。

 それが、生きている彼女を見た最期の光景となる。
 彼が帰宅したとき、そのアーンヴァルは無残に破壊され、胸部と頭部を持ち去られた後だったのだ。



「―――なるほど。お前には私に復讐をする権利があるな……」
 眼帯の女、土方京子は呟くようにそう口にした。
「権利。などと言うのなら、確かに貴女にはオリジナルCSCを手にする権利がある」
「……なに?」
 京子にとって、その言葉は多分に意外であった。
「……オリジナル、CSC……だと?」
「CSCの開発者である“彼女”の神姫を倒し、オリジナルを手にする資格は貴女にしかないかもしれない」

 眼を閉じた裏に甦る“死”の光景。
 焼き焦げ、引き千切られたメイド服と、そこから力なく伸びる手足。
 抉られ、奪い取られた頭と胸。
 それが、試作12機の“最初の死者”であった。

「ですが、貴女達が造ったとは言え彼女は生きていた。ならば、奪う権利は貴女にも無い!!」
「……なるほど。……どうやら芹沢に託されたと言う訳ではないようだな……」
「…?」
 村上と眼帯の女の会話が噛み合っていない。
 その違和感に雅は気が付いた。
「……託された?」
「……つまり、芹沢は結局。本気で私を止める気が無いと言う事か……」
 自嘲。
「……京子さん、貴女は一体何を……?」
 K2時代、村上にとって目標であった女は、狂ったような笑みを浮かべ、囁くようにそれを口にした。
「私はね、村上衛…。“いまさら”オリジナル等に興味は無いのだよ……」
「…なに?」
「ちょっと待ちなさい。それならどうしてフェータを狙うの!? それに天海の幽霊も!! 貴女が自分の神姫を使って天海の幽霊を探していたのは知っているのよ!?」
 そもそも、雅と村上が彼女の存在を最初に知ったのは、自分たちと同じく幽霊の出現条件を試すような行為を行う他者の存在に気付いたからだ。
「……そちらの少女には覚えが無いな。……誰だ?」
「初対面よ!!」
「……そうか。…だがまあ良いだろう」
 森の木々の合間から覗く満ちかけた月を背にし、眼帯の女はコートのポケットから両手を出した。
「……私の目的はな、……………………全ての神姫の破壊だ、よッ!!」
「―――なっ!?」
「…ッ!!」
 村上の驚愕はその言葉ゆえ。
 みやびの驚愕は。
 彼女の放った飛礫に反応してのものだった。
「村上君!!」
「…っ!!」
 村上に呼びかけると同時にその前に出て、投げつけられた飛礫を真上に蹴り上げる雅。
 雅の言葉に我に返った村上は、手にしていたコンテナケースのグリップに付けられたスイッチを押す。
 真上に蹴り上げられた飛礫が閃光を放つのと。
 村上の仕掛けが発動したのは全くの同時であった。

「―――なっ!?」
 驚愕の主は京子。
 それは、視界が閃光に閉ざされる瞬間、周囲に張り巡らされたレーザーセンサーを目にしての事であった。
 恐らくは、遮ると何かの仕掛けが発動するタイプだろう。
 同時に彼女自身の視界も閃光に閉ざされる為、いくら会話中に周辺の地形を把握したとしても、最早迂闊には動けない。
 双方の視界を封じることのアドバンテージは周到な罠によりあっさりと失われたのだ。

 村上が事前に設置した無数の対人センサー。
 その機能は大きく分けて2つ。
 一つは視界内に入ったモノを人かどうか判断し、そうだと断じた場合その旨を本体に伝える送信機の役目。
 そしてもう一つは……。

「対人テーザーガン…、か」
 閃光が消えると同時に、センサーの光筋に向けてナイフを放ち、その正体を見極める京子。
 ナイフが光を遮った瞬間、ナイフへ向けて奔った電光を見てそう判断を下す。

 テーザー。
 即ち電気銃である。

「なるほど、電極を射出するタイプではなく、レーザーセンサーが大気のイオンを変質させて、電流の通り道を作る現象を利用したという訳か?」
 レーザーの通り道に電流が流れやすいという現象。
 俗に言う『レーザー誘雷』である。
「……くっ!!」
「村上君、動いちゃダメ!!」
 閃光で視界を奪われた村上に警告を下した雅は、そのとき既に京子の背後に居た。
 距離は僅かに3メートル。
「レーザーの下を潜った訳か……。小さな体格を武器にするのも見事だが、それよりも良く閃光弾を見なかったものだな……」
「アレが爆弾だったとしても、見たからって防げるわけじゃないでしょ?」
 だが、普通は未知の物を投げ付けられれば“その正体を確めよう”とする。
 村上が、それで視界を奪われたように。
「そして、これで終わりよ―――」
 一歩、京子に近づく雅の手にはスタンガンが握られている。
「―――私と違って、貴女はこのセンサーの檻の中を自由に動けはしないでしょう?」
「たしかに、身を屈めて移動するのにも限界はあるな……」
 不敵な笑みを崩さない京子は、向き直ることすらせずに雅に答えた。
 雅より遙かに背の高い京子にとって、多少身を屈めたぐらいではこのレーザー網は潜れない。
 スタンガンと言う一撃で勝敗を決する武器がある以上、機動性が最大の武器となるのは明白であり、その機動性において、このフィールドは雅の独壇場と化していた。
 唯一つ。
 雅が切り捨てた“可能性”を別にして……。
「……言う事を聞いて貰うつもりは無いから“大人しくしろ”なんて言わない。“大人しくさせる”わ」
 もう一歩、距離を詰める雅。
 だがしかし、京子は表情を崩すことなく言う。
「……ふっ、良いのか? 言った筈だぞ。『身を屈めて移動するのにも限界がある』と」
「え?」

 ―――斬。

「―――!?」
 刹那の閃光と共に、雅はその場を飛び退いた。
 足元に落ちる黒い塊。
「…なっ!?」
 それは、雅の手にする“スタンガンの前半分”であった。
「―――神姫!?」
 既に通常のライトセーバーとは別格の威力を持つに到ったその光剣を振るい、スタンガンを叩き切ったのは京子の神姫、カトレア。
「カバンだ、壊せ!!」
 あえてその名を呼ぶ事無く、カトレアに命令を下す京子。
 カトレアの方もその意図は判っている。
 故に迷いは無かった。
「そんな、神姫を使うなんて…」
 雅の驚愕は、彼女の判断が間違っていたゆえの事。

 ―――神姫を狙うからといって、神姫を使わねばならない理由は無い。

 本当に効率を重んじるのなら、所詮ホビーの域を出ない神姫を使う事は無駄だと雅は判断した。
 故に、ならば敵も同じ事を考えるだろうと、京子が神姫を使う可能性は切り捨てていたのだ。
 神姫を武器代わりに使うぐらいならば、スタンガンでも使った方がより効率的に人間は無力化できる。

 それは確かに事実であり。
 それゆえに。
 雅は京子を読み違えたのだ。

「村上君避けて!!」
 閃光弾により奪われた視力の回復は始まっているだろうが、未だ村上はカトレアの姿をはっきりと捉えることは出来ていない。
 それが分かっていても、雅は叫ばずには居られなかった。
 村上の仕掛けが破壊されてしまえば、戦いの条件は五分と五分。
 そうなれば腕力に自信の無い雅と、荒事に自信の無い村上の勝ち目はかなり低くなる。

(ここで負けてしまったら……)

 最早フェータの奪取を阻止できる要素はなくなってしまう。
 それはつまり祐一の世界の一部を失う事で。
 ―――雅にとっての敗北だった。

(せめて浅葱を一緒にしておけば……!!)

 後悔しても始まらない。
 村上と二人きりで行動するための肝試し。
 しかし、祐一をリーナと二人にする不安から行った編成が今になって裏目に出る。

「……!!」
 カトレアに村上の持つ鞄を任せた京子が雅に迫る。
 雅の方から近づいていた為、間を遮るセンサートラップは僅かに一つ。
 低いそれを難なく飛び越えた京子の手には、弾ける電光。
「…スタンガンは、私も持って居る!!」
「―――っ!?」
 痛みを予期して硬くなる身体を必死に倒し、雅は真横に跳んだ。
 初撃は回避。
 ―――しかし。
「さて、後が無いな……」
 背後は複数のセンサートラップだった。
「………」
 距離は僅かに3メートル。雅がトラップを潜るより早く、京子は雅に触れることが出来るだろう。
 ―――その手にしたスタンガンで。
「私もお前と同じでね。……言う事を聞いて貰うつもりは無いから“大人しくしろ”なんて言わないさ。“大人しくさせる”よ!!」



 ―――そして、銃声が鳴り響いた。



 雅に比べ、村上衛はもう少し無駄に対して寛容だった。
 故に。迫るカトレアを前にして、とりうる手段を残していた。
「―――デルタ!!」
 村上の声に反応して、カトレアの横から神姫が飛び出してくる。
「―――!?」
 伏兵。
 そんな言葉が頭を過るが、カトレアは前進を止めるつもりは無かった。
 彼女には“飛び道具が効かない”。
 故に、その敵が警戒圏内に入らない限り、はどんな能力を持っていようが無力だからだ。
 ―――そして彼女は吹き飛ばされる。
 真正面。
 警戒していない方向からの体当たりによって。
「―――もう一体!?」
 組み付いてきた神姫は手に拳銃を持っている。
 ゼロ距離射撃は彼女にも有効だった。
 故に。
「―――このっ!!」
 カトレアは容赦なく、その神姫を光剣で両断した。
 組み付かれ、不自由な姿勢からの斬撃だが、京子の作ったこの光剣を扱うのには力は要らない。
 光の太刀筋に在る全ての物を両断してのける、究極の近接武装。
『レイブレード』
 要するにそれは、威力の高いレーザーソードでしかないが、その威力こそがカトレアの攻撃力の大半を支えるのである。



 大前提として、レーザー攻撃というのは通常、赤外線レーザーを使う。
 そもそもレーザーそのものが“波長を揃えた光”である以上、レーザーの種類は光の種類と等しい。
 そしてまた、その性質も選択した光に準じたものとなる。

 赤外線は中でも攻撃兵器としての性質が取り分け高い。
 可視外光線の中でも最も波長の長い光線であり、電波に近い性質を持っている(電波と光は同一のものであり、赤外線よりも波長が長い光はミリ波の電波になってしまう)のだ。
 そのため、大気中で散乱せず、収束したまま遠距離まで到達する事が可能。
 これは、実質光速と言う回避不可能な弾速を持つレーザー砲にとって、非常に大きなメリットとなる。
 実際に、充分な出力を持つ赤外線レーザーは、必中必殺の兵器足り得るのだ。

 ただし、必殺の威力を持つに到って、レーザーには致命的な矛盾が存在する。
 威力が高くなれば高くなるほど、目標に着弾した際にその表層を瞬間的に蒸発させてしまうのだ。
 そして、蒸発した物質は霧となり、レーザーに対して極めて効果的な防壁となってしまう。

 つまり、レーザーによる攻撃は、レーザーに対する最高の防壁を作る事に直結してしまうのだ。

 故に、レーザーとは強力な兵器でありながらも、究極的な威力において旧態依然とした実弾兵器には遠く及ばないのだ。

 唯一つの方法を除いては。

 それがレーザーとして使用する光線を変える事。
 即ち、赤外線に比べて圧倒的な浸透力を持つX線を使用した“X線レーザー”を使用することであった。

 X線の浸透力はレントゲン等で使用されることからも周知の事実だが、その反面、波長自体は極めて短く、大気による散乱率は非常に高い。
 つまり、X線レーザーとは、射程距離を犠牲に威力を高めた“近距離レーザー”なのだと言える。

 それを刀身とするレイブレードの威力は凄まじく、現存するあらゆる物質を切断することが可能なほぼ唯一の手段であるといって言い。



 万物を裂く光の剣。
 その威は余すところ無く発揮され、銃を持った腕を軽々と切断してのけた。
「―――っ!!」
 腕一本失い、これ以上は押さえきれないというのに、尚もカトレアに組み付き続ける神姫。
「これ以上は無意味です。大人しく道を空ければ―――っ!?」
 降伏勧告を行おうとしたカトレアの視界に映る光景。
 三体目の神姫。
「―――これでトドメぇ!!」
 それは、こちらに銃口を向け、躊躇う事無く、仲間諸共にカトレアを撃った。



 へヴィマシンガン。
 ヴァッフェバニーのガトリングガン(ミニガン)の連射力を活かし、ガトリング機構の排除と共に、冷却装置の付いた大口径銃身に換装。
 大口径の連射式滑空砲として、最大で毎秒30発もの1.2mm徹甲弾を発射するその威力は、神姫単体の携行火器としてはおおよそ望みうる最高のものの一つである。



 だがしかし。
 カトレアには通用しなかった。

「………………」
 デルタ1、3合わせて放った弾丸は100発を優に超える。
 その一つ一つが砲撃型神姫として名高いフォートブラッグ最大の火器、1.2mm滑空砲に類する威力なのだ。
 それはつまり、100機もの火力型神姫の砲撃を受けるのと同義である。
「…………そ、そんな……」
 それだけの火力を受けて。
 ほぼ無傷でいる神姫など。
 デルタは元より、村上にとってすら想定外であった。

 通用していない。
 避したのではなく。
 受けたのだ。
 背後に逸れた弾もあるだろう。
 装甲角度で跳弾したものも、無いとは言いきれない。
 だがしかし。
 3桁にも及ぶ砲弾の直撃。
 銃弾ではない。
 砲弾の直撃である。
 その全てが、カトレアには到達しなかった。

「電磁バリア!?」
 カトレアの周囲を取り巻くのは、余剰出力が可視光となって溢れるほどの磁力。
 周辺への放射を極限まで押さえ込み、循環して周囲を巡る。
 それこそ、攻撃力に勝るカトレアの最大の武器。
 防御力!! 
 通常のジュビジーの持つキュベレーアフェクション。
 出力こそ桁違い。
 文字通りの桁が違う出力では在るが機構そのものは通常のそれと大差は無い。
 だがしかし、桁一つではなく二つも違えば、それは最早別物と言うほか無い。
 故にそれはこの名で呼ばれる。
『イージスの盾』
 と。



 銃声と同時に手に走る衝撃。
「―――!?」
 奇しくも驚愕も、その後の行動すらも雅と同じくし、京子はその場を飛び退いた。
 ほぼ瞬間的に察するのは、銃弾が彼女の手からスタンガンを弾き飛ばしたという事実。
「……神姫か…!?」
 かなり離れた場所からの狙撃だったのだろう。
 夜の闇と森の闇の双方に遮られ、暗い視界の中には射手の姿は見えはしない。
 だがしかし、発射の際のマズルフラッシュを見ていたものが居た。
「―――不意打チ上等。ソッチガソノ気ナラ、コッチモ容赦シナイヨ!!」
 背中に背負った4機のブースターに点火し、アルストロメリアが―――。
 狙撃した神姫。セタの背後に。
 ―――現れた。
「……え?」
 伏兵だと思った。
 三体目の神姫が潜んでいたのだと。
 セタはそう思った。
 目の前に、辛うじて視認できる速度で飛び込んでくる“それ”を見なかったら。
 セタは敵の数すら把握できなかったに違いない。
「―――まさか!?」
 そして、“それ”を見て、その判断が出来たのは、神速を誇る騎士と手合わせした経験があればこそ。
 アルストロメリアは、X字に広がる4基のエクステンドブースターを背負い。
 セタの背後に確かに存在していた。

「遅イヨ。のろま」
 セタは反射的に振り向きながら防御!!
 ―――しかし。
 銃弾はその背後からセタを襲った。
「―――っ!?」
 振り向いた筈のセタの背後に依然としてアルストロメリア。
「……くっ!!」
 振り向く。
 しかし、その姿は既に“今この瞬間の背後”に移動している。
「―――そんな!!」
 振り向く。
 しかし、アルストロメリアはセタの背後に居続けた。
「ヤッパリ遅イネ。モウいいヤ飽キタヨ」
「―――くぅっ!!」
 最初の接敵以来、その姿を見ることも無く。
 セタは背後から叩きつけられた無数の銃弾によって意識を失った。

「フン、所詮コノ程度カ……。惰弱ダネ。ツマラナイネ―――」
 彼女のした事は何の事は無い。
 セタが振り返るより早く、彼女の背後に回りこんだだけだ。
 ただ単純に“早く動いた”だけだった。
「―――デモ私ハ優シイカラ、命マデハトラナイデ上ゲル。……ドウセ皆スグニ死ヌモノ。ソノ時マデハ、セメテ静カニ……」
 そうして彼女は飛び去った。
 セタの狙撃から始まり、僅か30秒も立たずにこの戦いは決着を迎えたのだ。



「―――くっ!!」
 銃撃が効かない。
 と、なれば基本性能が低いデルタに出来る攻撃は殆ど残されていない。
 ただでさえ近接戦を度外視したフォートブラッグがベースの神姫なのだ。
 格闘戦では真っ当な神姫に勝ち目は無い。
「だったら!!」
 手段を選んでいる場合ではない。
 組み付いているデルタ2は、迷う事無く自らの有する爆薬に点火した。
「ゼロ距離での自爆!! 防げるものなら防いで見るのです!!」
「―――なっ!?」

 カトレアの驚愕。

 そして、閃光と爆音が夜の闇を切り裂いた。

「カトレアッ!!」
 その光景に、思わず京子はその名を叫ぶ。
 村上衛の前では呼ぶべきではないその名を。
「……カト、レア……?」
 かつて、他ならぬ京子自身が殺した“村上衛の神姫の名”を―――。



「ご主人様。……お気をつけて行ってらっしゃいませ」
「……ああ、分かってる。行ってくるよ、カトレア」



 最期の会話が甦る。

 それは、死んだ筈の神姫の名であった。



 続く。









 セタ瞬殺。
 砲撃型と高機動型では相性が悪すぎですね。ALCです。

 いよいよバトル展開再開です。
 考えてみたら本編初の祐一が出ない回だったり。

 まあ、それとは全然関係なくカトレアの正体暴露。
 村上さんの最初の神姫がリセットされ、記憶だけ引き継いだ別人(別神姫)としての登場です。
 他の三人も、それぞれが当時既に起動していた試作アーンヴァルの記憶を引き継いでいます。
 つまり、殺された試作神姫の数と京子が所有する神姫の数が同じなのは、そういう理由からで……。

 ちなみにこれは死んだ神姫の復活でも、神姫の主換えでもありません。
 リセットされ、別の人格を得た神姫に過去の記憶を移植しただけの物です。

 京子さんがこのような自虐的とも取れる行為をしている理由は察して下さい。

 別に文章が投げやりなのは、映画を見に行ったらやってなかったとか、帰りに腹いせに買ってきたドラクエ4にハマって時間が無いからとか、やる予定も無いのに買ってきたナイトウィザードのルールブックを読みたくてうずうずしているとか、某好きなキャラが死にフラグばんばん立て始めて「やめて~」と思っているとかではないですよ?

 ………察して下さい。(←便利な言葉だ)

 所でこんな後書き需要があるのかと疑問に思いつつも好きだから書く。

 何故か試しに2ndで作った強化人間の女の子(巨乳←これ重要)が、虚/虚属性でしかもキャスターとか言うアホなデータ。
 これがホントの虚乳とか言って偽乳パッドにこだわる無感情っ子の誕生です。
 作り終わって何やってるんだろうと我に帰ったALCでした。




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