雷帝の御剣、神殺しの槍(後編)
仲間の姉妹を全て失い、万策尽き果てたかに見えたイリン。ロッテ一人と
戦うのならば単独でもまだ戦えたのだろうが、アルマとクララの加勢をも
凌ぎきるには、不十分……だからこそ、彼女は奇策を残しておいたのだ。
戦うのならば単独でもまだ戦えたのだろうが、アルマとクララの加勢をも
凌ぎきるには、不十分……だからこそ、彼女は奇策を残しておいたのだ。
「私達は、負けられないの!姉様にぎゅって抱きしめてもらうのッ!」
「まさか──────いけない、皆迎撃してくださいですのっ!」
「……ダメだよ、もう間に合わないッ!」
「まさか──────いけない、皆迎撃してくださいですのっ!」
「……ダメだよ、もう間に合わないッ!」
即ち、自らの強化パーツを姉妹に分割する事……そう、ミラとティニアが
残したあのパーツは、イリンが本来扱う強化パーツという事になる……!
そのパーツへと、ガンランスの反動で跳んだイリンは一直線に飛び込む。
残したあのパーツは、イリンが本来扱う強化パーツという事になる……!
そのパーツへと、ガンランスの反動で跳んだイリンは一直線に飛び込む。
「“花(フルール)”行くわよ……!さぁ、邪魔よッ!!!」
「ティニアさんの装甲スカートを装着して……更に変形しますの?!」
「“エアリアルフェザー”展開──────はぁぁあっ!」
「えっ!?イリンさんの姿が……見えない!?」
「ティニアさんの装甲スカートを装着して……更に変形しますの?!」
「“エアリアルフェザー”展開──────はぁぁあっ!」
「えっ!?イリンさんの姿が……見えない!?」
その不安はすぐ的中した。イリンがスライディングする様に、ティニアの
下半身パーツを穿き込んだのだ。すぐさまそのスカートは大きく変形し、
“華”を開かせる様にフィンを展開……直後、イリンは超高速で駆けた!
その先にあったのは……イリンの意思故か掌で立ち上がった、ミラの腕。
下半身パーツを穿き込んだのだ。すぐさまそのスカートは大きく変形し、
“華”を開かせる様にフィンを展開……直後、イリンは超高速で駆けた!
その先にあったのは……イリンの意思故か掌で立ち上がった、ミラの腕。
「“星(エトワール)”も、準備はいいわね!……装着、完了ッ!」
「あ、あぁ……ミラさんの腕まで、イリンさんに合体して……」
「……これで驚かれちゃ困るわよ、“風(スーフル)”ッ!」
「!?また、イリンさんの姿が──────うぁあッ!!?」
「あ──────きゃぅっ!?ろ、ロッテちゃん……ッ!」
「え……クララちゃん、アルマお姉ちゃん!?」
『アルマ、クララッ!?』
「あ、あぁ……ミラさんの腕まで、イリンさんに合体して……」
「……これで驚かれちゃ困るわよ、“風(スーフル)”ッ!」
「!?また、イリンさんの姿が──────うぁあッ!!?」
「あ──────きゃぅっ!?ろ、ロッテちゃん……ッ!」
「え……クララちゃん、アルマお姉ちゃん!?」
『アルマ、クララッ!?』
ミラの籠手はフレームと接続され変形、イリンの手をダイナモ諸共覆う。
……そこからは一瞬だった。イリンが駆け出した刹那、クララとアルマは
胸部に“雷を纏った拳”を喰らい、倒れ伏してしまったのだ。幸か不幸か
二人のアルファルは無事で、ジャッジも出てはいないが……立てそうには
無かった。ロッテが振り返ると、“陽光を背負う紅き地上の鳥”がいる。
……そこからは一瞬だった。イリンが駆け出した刹那、クララとアルマは
胸部に“雷を纏った拳”を喰らい、倒れ伏してしまったのだ。幸か不幸か
二人のアルファルは無事で、ジャッジも出てはいないが……立てそうには
無かった。ロッテが振り返ると、“陽光を背負う紅き地上の鳥”がいる。
「これが“トゥルーハンド”イリンの姿よ、別名──“雷帝の御剣”」
「……3on3では戦力均衡化の為に、敢えて装備を分解してましたの?」
「それもあるけど、本来はミラとティニアも別の方法で装備するの」
「……3on3では戦力均衡化の為に、敢えて装備を分解してましたの?」
「それもあるけど、本来はミラとティニアも別の方法で装備するの」
背部の黒翼、下半身の灼翼……それら全てを腰に集めてダウンバーストを
増幅した超高速走行、本来は伸縮する剛腕の機構を活かした絶大な膂力。
そしてイリン自身のテクニックと、両腕のダイナモから発せられる電撃。
まさに3on3の締めを担うに相応しい、三位一体の姿だった。だがッ!!
増幅した超高速走行、本来は伸縮する剛腕の機構を活かした絶大な膂力。
そしてイリン自身のテクニックと、両腕のダイナモから発せられる電撃。
まさに3on3の締めを担うに相応しい、三位一体の姿だった。だがッ!!
「……そちらが“雷帝の御剣”なら、わたし達にも手がありますの」
「手?……いいわよ、見せて。本気の戦いでないと意味がない物ッ!」
「アルマお姉ちゃん、クララちゃん……“二人”を借りますの」
「わ、わかりました……痛ッ。見せてあげて下さい……モリアン」
「“神殺しの槍”を、ね……アルサス、ロッテお姉ちゃんの元に……」
『No problem/Ja(了解しました)』
「手?……いいわよ、見せて。本気の戦いでないと意味がない物ッ!」
「アルマお姉ちゃん、クララちゃん……“二人”を借りますの」
「わ、わかりました……痛ッ。見せてあげて下さい……モリアン」
「“神殺しの槍”を、ね……アルサス、ロッテお姉ちゃんの元に……」
『No problem/Ja(了解しました)』
そう、ただ一つ残された希望……それは、アルファルの十五番目の形態!
“カラドボルグ”を“フィオナ”の姿に戻し、騎士達を侍らせたロッテが
徐に雷剣ライナストを掲げ……高らかに叫ぶのだ、勝利のキーワードを!
“カラドボルグ”を“フィオナ”の姿に戻し、騎士達を侍らせたロッテが
徐に雷剣ライナストを掲げ……高らかに叫ぶのだ、勝利のキーワードを!
「アルファル……ギガノイド・フィギュア、展開ですのッ!!」
『Yes,sir/No problem/Ja(ロック解除、合体します)』
「え、ええっ!?三体のぷち……じゃない、騎士が変形して……」
「これが、わたし達の“集団戦の切り札”ですの!ふっ!!」
『Yes,sir(合体完了、MMS側制御機構とリンクします)』
『Yes,sir/No problem/Ja(ロック解除、合体します)』
「え、ええっ!?三体のぷち……じゃない、騎士が変形して……」
「これが、わたし達の“集団戦の切り札”ですの!ふっ!!」
『Yes,sir(合体完了、MMS側制御機構とリンクします)』
“モリアン”と“アルサス”が両脚等の下半身を、上の“フィオナ”が
両腕・胴体……そして円形のフォールディング・シールドと巨大な槍、
即ち“Valkyrja”時代からの伝統たるレーザーガンランスを形成する!
その胸部や四肢にロッテが収まり、全神経を鋼の巨体とリンクさせる。
三色バラバラだった機体がロッテの証・蒼天の色に染まり……完成だ!
両腕・胴体……そして円形のフォールディング・シールドと巨大な槍、
即ち“Valkyrja”時代からの伝統たるレーザーガンランスを形成する!
その胸部や四肢にロッテが収まり、全神経を鋼の巨体とリンクさせる。
三色バラバラだった機体がロッテの証・蒼天の色に染まり……完成だ!
「こ、れは……私達と同じ、集中型の強化武装!?」
「流石に管理者権限を集中させておくアイデアは、無かったですの」
「……止めを刺しておけばよかったのね、でもロッテちゃんを倒せばッ」
「なんの、“神殺しの槍”ロンギヌスは伊達じゃないですのッ!」
「流石に管理者権限を集中させておくアイデアは、無かったですの」
「……止めを刺しておけばよかったのね、でもロッテちゃんを倒せばッ」
「なんの、“神殺しの槍”ロンギヌスは伊達じゃないですのッ!」
その名は、私がギガノイド・フィギュアに“立ちはだかる神姫を退ける”
最終手段の象徴として与えたコードネーム。剣と槍の戦いが、始まった!
三人分の力を注ぎ込んだ脚力・腕力・出力は、お互いに強大無比であり、
周囲に膨大な雷と衝撃波、そして演出用のホログラフを撒き散らす程だ!
イリンが鋭いアッパーカットを打ち込めばロッテがそれを盾で受け流し、
逆にロッテがレーザーガンランスで突けば、イリンが穂先を跳ね飛ばす!
最終手段の象徴として与えたコードネーム。剣と槍の戦いが、始まった!
三人分の力を注ぎ込んだ脚力・腕力・出力は、お互いに強大無比であり、
周囲に膨大な雷と衝撃波、そして演出用のホログラフを撒き散らす程だ!
イリンが鋭いアッパーカットを打ち込めばロッテがそれを盾で受け流し、
逆にロッテがレーザーガンランスで突けば、イリンが穂先を跳ね飛ばす!
「はぁああああっ!!!!!」
『ロッテ……実戦では切れ味が違うな。置いて行かれるなよっ!』
「……すごいもん。あのスピードとパワーで、ロッテお姉ちゃん……」
「一歩も、退かないです……雷撃も、ライナストの力で凌いでる……!」
『イリンも、何時になく本気ですな……フィールドに“雷の華”が……』
『本当ね、このエフェクトってセカンド昇進試合の時以来じゃない?』
『頑張ってイリン!ロッテちゃんになんとしても勝ってッ!!』
「せいやぁぁあっ!!ふっ、はぁっ!!!」
『ロッテ……実戦では切れ味が違うな。置いて行かれるなよっ!』
「……すごいもん。あのスピードとパワーで、ロッテお姉ちゃん……」
「一歩も、退かないです……雷撃も、ライナストの力で凌いでる……!」
『イリンも、何時になく本気ですな……フィールドに“雷の華”が……』
『本当ね、このエフェクトってセカンド昇進試合の時以来じゃない?』
『頑張ってイリン!ロッテちゃんになんとしても勝ってッ!!』
「せいやぁぁあっ!!ふっ、はぁっ!!!」
後で聞いた話では、この筐体には“オーロラ・エフェクト”という最新の
攻撃演出効果が搭載されていたらしい。全国各地でロケテスト中のそれは
CSCの機能作動率……つまりは気合の昂りに応じて、その組み合わせや
使った武装の効能に見合うホログラフが、フィールドに投影されるのだ。
それがイリンの“雷の華”であり、ロッテが放出する“金の雪”だった。
攻撃演出効果が搭載されていたらしい。全国各地でロケテスト中のそれは
CSCの機能作動率……つまりは気合の昂りに応じて、その組み合わせや
使った武装の効能に見合うホログラフが、フィールドに投影されるのだ。
それがイリンの“雷の華”であり、ロッテが放出する“金の雪”だった。
「ふっ!……ふぅ、ふぅ……やるじゃない、見た目だけじゃないのね」
「そっちも、これだけ攻め立ててるのに……イリンさん流石ですの」
「でも、お互いにもうバッテリーがないみたいね……こうなれば」
「勝負は次の一撃が全て……決闘(デュエル)ですの!」
「そっちも、これだけ攻め立ててるのに……イリンさん流石ですの」
「でも、お互いにもうバッテリーがないみたいね……こうなれば」
「勝負は次の一撃が全て……決闘(デュエル)ですの!」
壮麗な“舞闘”を見せてくれたロッテをイリンが、距離を取る。ロッテは
ここで初めて、レーザーガンランスにエネルギーを集中させた。この槍は
パイルバンカー的な用法、砲撃・レーザーによる斬撃の三用途に使える。
ロッテは必殺技である一番目の方法を、初めからずっと狙っていたのだ。
一方のイリンも、床を踏みしめてダイナモをフル回転し……紫電を纏う!
ここで初めて、レーザーガンランスにエネルギーを集中させた。この槍は
パイルバンカー的な用法、砲撃・レーザーによる斬撃の三用途に使える。
ロッテは必殺技である一番目の方法を、初めからずっと狙っていたのだ。
一方のイリンも、床を踏みしめてダイナモをフル回転し……紫電を纏う!
「3カウントで、行くわよ……」
「はいですのッ……では!」
「……3」
「2……」
「1!」
『ゲーン(突撃)ッ!!』
「その身に刻め……神儀、ハイリヘア・シュラークッ!!!」
「砕け、雷帝の剣よッ!神儀、マルト・ディヴァンッ!!!」
「はいですのッ……では!」
「……3」
「2……」
「1!」
『ゲーン(突撃)ッ!!』
「その身に刻め……神儀、ハイリヘア・シュラークッ!!!」
「砕け、雷帝の剣よッ!神儀、マルト・ディヴァンッ!!!」
そして、全ての力を武器に込めた二人の姫は……一直線に駆けた!速度は
比類が無く、青き光と紅き雷が瞬時に交錯する。そして、体育館は衝撃に
包まれた!その爆音と閃光に、皆が目を眩ませる。全ては、一瞬……その
光が止んだ時、神槍の騎士と雷剣の闘士は互いに背を向けて立っていた。
比類が無く、青き光と紅き雷が瞬時に交錯する。そして、体育館は衝撃に
包まれた!その爆音と閃光に、皆が目を眩ませる。全ては、一瞬……その
光が止んだ時、神槍の騎士と雷剣の闘士は互いに背を向けて立っていた。
『No,sir(駆動系にエラー発生、安全の為マスターを排出します)』
「……く、ぅっ……!!」
『ロッテ!?なんという事だ、“アルファル”が……』
「ろ、ロッテちゃん!?こうなったら……!」
「……待って、アルマお姉ちゃん」
「ふ、ふふ……流石ね、でもここまでやれたし……いっか」
『イリンッ!!!?』
「……く、ぅっ……!!」
『ロッテ!?なんという事だ、“アルファル”が……』
「ろ、ロッテちゃん!?こうなったら……!」
「……待って、アルマお姉ちゃん」
「ふ、ふふ……流石ね、でもここまでやれたし……いっか」
『イリンッ!!!?』
“アルファル”の駆動系がバースト、ロッテが緊急排出されて倒れ込む。
だが鋼の巨人自体は頽れることもなく、“雷帝の剣戟”に耐えたのだッ!
逆にイリンの胸には、レーザーで貫かれた痕跡がくっきりと残っている。
しかし彼女もまた頽れず限界点まで戦えた事を誇りに、消え去った……。
だが鋼の巨人自体は頽れることもなく、“雷帝の剣戟”に耐えたのだッ!
逆にイリンの胸には、レーザーで貫かれた痕跡がくっきりと残っている。
しかし彼女もまた頽れず限界点まで戦えた事を誇りに、消え去った……。
『イリン、脱落!勝者、“夜虹の戦姫”!!』
「ロッテちゃん……よく頑張りましたっ」
「……流石なんだよ。見ていて、綺麗だったもん」
『見事だ……全く見事だぞ、お前達!さぁ、帰ってこい!』
「ロッテちゃん……よく頑張りましたっ」
「……流石なんだよ。見ていて、綺麗だったもん」
『見事だ……全く見事だぞ、お前達!さぁ、帰ってこい!』
──────私達の真心だって、負けていなかったんだよ?