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えむえむえす ~My marriage story~

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キズナのキセキ
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浸食機械
引きこもりと神姫
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白濁!? 阪高神姫部
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The Armed Princess―武装神姫―
ウサギのナミダ
PRINCESS BRAVE
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アルトアイネス奮闘姫
ロンド・ロンド

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双子神姫
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犬子さんの土下座ライフ。
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武装神姫のリン
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戦う神姫は好きですか
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妄想神姫
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武装神姫~ストライカーズ・ソウル~
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ホワイトファング・ハウリングソウル
ハウリングソウル
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「『メッセージ』、と仰ると?」
「はい。起動直後の私は、プログラムの規定を疑いもせず、まだ未完成ゆえに実行不可能と認識しました。
そして、ある程度経験をつんだ私は、それに疑問を抱きました」
なぜ、未完成の状態のものがプログラムされているのか。
なぜ、ほかのものと同じように完成された歌やダンスがプログラムされていないのか。
そもそも、このケースにおける『オリジナル』の定義はなんなのか。
すでにプログラムされた歌やダンスを、自ら編集すればいいのか。
あるいは自身のデータベースにないものを検索調査し、それを模倣すればいいのか。
あるいは、既存のあらゆるそれとは別の、完全な独創を開発せねばならないのか。
最後が該当するのであれば、武装神姫には困難を極めます。
我ら武装神姫は心を持つに至った機械。しかしあくまで機械としての属性が根強い以上、与えられたプログラムを実行する事には長けていても、自らがそれを生み出すことには不向きです。
そのあたりは素体やコアユニット、CSCの組み合わせからくる個性によって違いはありましょうが、どちらにせよそれが可能となるには、辛抱強く『心』の成長を待たねばなりません。
ましてやそれが見る者の主観に依存する、言い換えれば曖昧な評価基準しか持たない歌やダンスといった芸事であればなおさらです。
「そういったことを考えた末に、私はようやくのこと、一つの結論に達しました」
「お聞きしてよろしいですか?」
「はい。私の達した結論は、発想を転換することでたどり着きました。
即ち、『その芸を、どなたにお見せするのか』と考えたことで」
それは当然、人間の皆様と言うことになるでしょう。いえ、あえて断言するなら、自身のオーナーに他なりません。
自身の仕えるオーナーにお見せするのであれば、独りよがりな芸であってはなりません。
オーナーに気に入ってもらえる、喜んでもらえる、褒めてもらえる、そんな物でなくては意味がないのです。
そう考えると、このケースにおける『オリジナル』の定義もおぼろげながら見えてきます。
自身のデータベースになかったものならばよいのでなく、世界のどこにもない物ならばいいのでなく。
いえ、極論すれば、逆に既存のモーションをそのまま流用したものであっても構わないのでしょう。
それが、お見せする相手の好みに沿うものであるならば。
そう、このケースにおける『オリジナル』とは、『出荷時点ではまだ誰ともわからない、武装神姫を目覚めさせるオーナー自身の、今はまだ知り得ない好み』を示すのではないでしょうか。
そしてオーナーの下で目覚めたのであれば、その好みを学習し、体現せよ、と。
「つまり、この芸に秘められたメッセージとは、
『自身のオーナーを知れ』、
『自身のオーナーが何を求めるかを知れ』、
『その求めに応じられる存在たれ』。
残念ながら、今の私の成長は、それが可能と自己判断できうる域まで達しておりません。
……ですが」
私は自身の決意を込めて、まっすぐにマスターさんを見詰めて言葉を続けます。
「ですがいつか、その域にまで達したいと考えております。
マスターさんの嗜好を理解し、その嗜好を体現しうる歌とダンスを身につけ、それをマスターさんにお見せし、喜んでいただきたいと願っております」
一息つき。
「……即ち、それこそが答えなのではないでしょうか? つまり、

『そのオーナーの、よりよい武装神姫であらんと弛まぬ努力をせよ』、

 と――」

「……なるほど」
マスターさんがまた一口、お茶を飲まれました。そして、何かを思案するように、天井を見つめます。
会話が途切れますが、私自身としてはこういった沈黙も嫌いではなくて。
私は特に口を挟むこともなく、マスターさんのお言葉を待ちます。
「……僕の考えを、お話ししてよろしいでしょうか?」
ややあって、マスターさんが視線を戻しそう仰いました。
「拝聴させていただきます」
もちろん、私に異存があろうはずがありません。
マスターさんは一呼吸置くように再び湯飲みを口元に運び、途中で何かに気付いて、それを卓袱台の上に置かれました。
私はその湯飲みに、急須を抱えてお代わりを注ぎます。
「ありがとうございます」
深々。
「どういたしまして」
深々。
「それで、今の犬子さんのお話を聞いて思った、あくまで僕個人の考えなのですが……」
新たにお茶の注がれた湯飲みを口に運ぶでなく、両手で包み込むように持ちながら、マスターさんは再び天井を見つめつつ一言一言を確かめる様にお話くださいました。
「僕はその芸に、『開発者の方の祈り』を感じました」
「祈り、ですか」
「はい」
そして、お茶を一口。
「犬子さんの考える『メッセージ』、その意味もまた、あるのだと思います。
ですが、単に向上心を持つように促すのなら、なぜハウリン芸の中に用意したのでしょうか?
武装神姫の一般的な使われ方であるバトルや、僕が主に活用している生活サポートの方にその旨があれば、それで十分ともいえるのではないでしょうか?
――武装神姫を、単に『良き道具』として見たのであれば」
「そうでは……ないと?」
マスターさんは、一つ頷かれました。
「そもそもが、ハウリン芸の存在です。『良き道具』としてあるだけならば、不要な機能とも言えます。
それをわざわざ残したのは、なぜでしょうか?
僕はそこに、『祈り』を感じました。
『この芸で、オーナーに楽しんでもらえるといいね』、
『そうして、オーナーにもっともっと気に入ってもらえるといいね』、
『オーナーに、もっと喜んでもらえることもできるようになるといいね』、
『そんな風に頑張れるくらいに、オーナーのことを好きになれるといいね』、
『そのオーナーのために、取って置きを用意できるといいね』」
そこで、一度言葉を切り。

「――『そんな風に大好きになれる、オーナーのところに行けるといいね』、と……。

さながら、愛娘を嫁がせる両親のような気持ちだったのではないのでしょうか?」

――言葉がありません。
私の未熟な『心』は、今感情回路を駆け巡るパルスの表現の仕方を知らないのです。
それでも、今は沈黙を守るべきではありません。
未熟な私の『心』が、未熟なりに『何かを答えるべきだ』と判断しています。
マスターさんは、それきりお口を閉ざされています。
そんな沈黙の中、ゆっくり、ゆっくりとマスターさんのお言葉を咀嚼し……私はようやく、一つの言葉を紡ぎ出します。
「私は――」
胸に――私の『心』が宿るCSCを装填された胸部ユニットに手を当てながら、私はその言葉を口にしました。
「私は、愛されているのですね」
マスターさん何も言わず、ただはにかんだように優しい笑顔で頷かれています。
私も笑顔を浮かべ……いえ、訂正します、知らないうちに浮かんでいた笑顔を改めてマスターさんに向けなおします。
そして満ちる、心地よい沈黙。
……正直なところ、いかにマスターさんのお言葉を鵜呑みしやすい私とて、今のマスターさんのお考えはいささか楽観が過ぎると考えます。『開発』『企業』『商業』といったキーワードが絡む世界は、もっとシビアであってしかるべきでしょう。マスターさんのお言葉を信じたい私もいますが、それを冷静に否定する私もまた存在するのです。
であるからして、マスターさんの今の推論から汲み取れる確たる事実は、僅かに二つのみ。

マスターさんが、そのようなお優しい考え方をするお方であるということと、
私は、そんなマスターさんにお仕えすることが出来てとても幸せだということです。

ややあってマスターさんが、照れくさそうに頬をかきつつ、口を開きました。
「さて、かく言う僕自身は、犬子さんにとってよいオーナーなのでしょうかね?」
おそらく、ご自身の台詞が恥ずかしくなったのでしょう。
あからさまな照れ隠しにそんなことを言い出すマスターさんに、私はいたずらっぽく笑ってちょっとイジワルをしてみることにします。
「マスターさん、そのような質問のことを、何と言うかご存知ですか?」
「はい? ええと、『他人に評価を求める』……それとも、『信頼関係の確認』といったあたりでしょうか?」
戸惑うマスターさんに、私は笑顔のままで首を横に振ります。
「残念さまでした。正解は……」
そして、「してやったり」の笑みを浮かべて。
「『野暮』、でございます」
一瞬、あっけに取られたような表情になったマスターさんでしたが、すぐに小さく吹き出します。
「これはこれは……犬子さんに一本取られてしまいましたね」
「はい、ご油断なさりませぬよう。隙をお見せされたなら、容赦なく攻め立てますので」
「あははは、怖いですねぇ。では、今の質問は取り消して、改めて聞きなおします。
――いつか、犬子さん会心の『オリジナルダンス』を、見せてくださいね?」
「はい、ご期待ください!」
私たちの間に、暖かい空気が満ち溢れます。
……マスターさんが、ごく軽く次のお言葉を口にされるまでは。
「そういえば犬子さん、公開できないもう一つの方の芸は、どのようなものなのですか?」
すかさず私は表情をロック。笑顔を保ったまま、その裏で戦慄します。
とうとう、聞かれてしまいましたか……武装神姫たるもの、人間に対して嘘はつけません。そして聞かれたことに対して、ごまかすのも容易ではありません。
いえ、これでも文脈に留意して、マスターさんの興味が『オリジナルダンス』の方へ向くよう誘導したつもりだったのでしたが……思いのほか話題が重くなりすぎて、その気分転換のためにそちらの話題を使われてしまったようです。
その話題は、マスターさん向けの話題でないことを明かして、お耳に入れないようにした方がよいかとも考えましたが、それもかえって負の想像力に働きかけてしまう可能性もあります。
「……犬子さん?」
いけません、表面上とはいえフリーズ状態で長くいすぎたようです。マスターさんに不審に思われてしまったご様子。
ここは観念いたしましょう。
私は表情ロックを解除、表面上はにこやかに答えます。
「はい、そちらは『ア○レちゃんごっこ』と銘打たれております」
「『ア○レちゃん』、というと……鳥○明のですか?」
「鳥○明のです」
さすがは日本が世界に誇るコミックアーティスト、主に活躍したのは前世紀でも、その打ち立てた金字塔の知名度は衰えません。
「それで、この『ア○レちゃんごっこ』はですね」
ここで私は、両手を頭の脇に添えまして。
「こう、頭部パーツを引っこ抜きます」
言いながら、両手を上に差し上げます。
……いえ手だけですよ? あくまでジェスチャーですよ? 頭部パーツは、変わらずに素体本体と接続されたままです。
あー、予想通りといいますか、マスターさん絶句されています。ですからあまり言いたくはなかったのですが。
「あの……そんなことをして、大丈夫なのですか?」
心配そうに尋ねられるマスターさんに、私は意図的に淡々と解説を続けます。
「再起動が可能か、後遺症が残らないか、と言う意味では大丈夫です。
その状態で自律行動が可能か、と言う意味では大丈夫ではありません」
それはもう、頭部ユニットは本体バッテリーから、素体本体は中枢指令ユニットから切り離されるわけですから、どちらも機能停止に陥る他ないわけです。
「それで……そのあとは、どうするのでしょうか?」
「はい、その後は制御を失った腕関節が、頭部ユニット及び自重でヘタって徐々に下がってきます。
それがうまく元の位置に戻れば、再接続が可能となります。
むしろ正確に申しますと、最初からそれを計算して頭部ユニットの接続を切り離し、見事計算どおりに復帰まで成し遂げると成功となって見ている皆様からやんややんやの拍手喝采をいただける、そんな芸でございます」
「……つかぬ事をお伺いしますが……もし、それに失敗した場合は……?」
「当然、自力での復帰は不可能ですので、どなたかに再接続をしていただく必要があります」
ですからハウリン芸でも難易度ナンバー2、危険度ならばアドリブダンスをも遥かに上回る芸と位置づけられているわけです。
「………………………………」
「………………………………」
あまり心地よくない沈黙が満ち溢れます。
おそらく、今マスターさんと私とが考えていることは同じかと推測されます。
『いくらマスターさんでも、外れた頭部ユニットを差し込むくらいなら……』という考えが、いかに希望的観測に基づいているか……いえ、あえて言うなればいかに現実に即していないかは、今までの生活経験の中でわりと保護優先度の高いメモリー領域に刻み込まれているのです。
「犬子さん……その『ア○レちゃんごっこ』も、封印指定と言うことでよろしくお願いします」
「承知しました。他にも、すでに封印指定されている『ゾンビ・ハンド』を除き、4つの接続切り離し系統の芸がございますが、それも同様に封印指定と言うことでよろしいでしょうか?」
「そのようにお願いします」
「はい、ではそのように」
「………………………………」
「………………………………」
再び、少々居心地がよろしくない沈黙が場を満たします。
「ところで犬子さん」
「何でしょうかマスターさん」
「ふと思ったのですが……ハウリン芸というのは、もしかして基本的に素面でない方にお見せするものだったりしませんか?」
「ご明察です。なにしろ『 宴会芸 』とカテゴライズされている代物ですから」
基本的に、アルコールを嗜まれて程よく理性のタガが緩んだ方々に、少々下品な言い方をすれば「指差してゲタゲタ笑って」いただくための芸です。
「………………………………」
「………………………………」
「なんとなく、なのですが……先ほどの僕たちの『メッセージ』とか『祈り』とかの話し合いが、わりと根底から根こそぎ台無しになったような気がするのですが、気のせいでしょうか?」
「お気になさらぬがよろしいかと」
「そうですか」
「そうです」
「………………………………」
「………………………………」
「あ、9時になりましたね」
「おっと、チャンネルを変えませんと。ありがとうございます」
深々。
「どういたしまして」
深々。


こんな風にして、私とマスターさんのどうにもならない夜もまた、容赦なく更けていくのです。









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