鋼の心:番外編 ~Eisen Herz~
パイソン・リターンズ(ギャグです)
永倉辰由(ながくらたつよし)。
近隣を支配する極道。伊藤組組長、伊東観柳斎の懐刀とまで呼ばれる男である。
実質、伊藤組のナンバー2と言っても過言ではない。
誰が呼んだか通称“パイソンの辰”。
先祖代々極道で、古くは江戸の賭博を取り仕切っていた顔役、永倉興三郎まで遡れる由緒正しい生粋のヤクザ者である。
近隣を支配する極道。伊藤組組長、伊東観柳斎の懐刀とまで呼ばれる男である。
実質、伊藤組のナンバー2と言っても過言ではない。
誰が呼んだか通称“パイソンの辰”。
先祖代々極道で、古くは江戸の賭博を取り仕切っていた顔役、永倉興三郎まで遡れる由緒正しい生粋のヤクザ者である。
「がははははは、私利私欲のため幼稚園バスを乗っ取り、親御さんから現金10万円を強奪しようとした罪は重い。貴様は懲役3年だぁ!!」
覆面をした黒ずくめの男、バスジャック犯にそう言って指を突きつけたのは異形の怪人だった。
楕円を描く頭部のシェルエットの中に、怒りの形相もあらわにした相貌が張り付いている。
突きつけた太い指先には、凶悪な曲線を描く鉤爪。
身体は頭よりも小さく、全体的なラインは3頭身に近い。
しかし、この異形こそが現行最強の怪人『しがみ付きコアラ男』であった。
その名の由来ともなった必殺のしがみ付きを、黒ずくめの犯罪者に下さんと両腕を左右に広げ、じりりと一歩距離を詰める。
「や、止めてくれ。俺には年老いた娘と3人の妻がぁ!!」
黒ずくめの男、幼稚園バスジャック犯は覆面の上からでも分かるほどに恐怖を浮かべた表情で後退。
しかし、その背後は既に幼稚園バスの後部シートに密着してしまっている。
最早、逃げる場所は無かった…。
「喚いても無駄だ、貴様は俺様にしがみ付かれ、刑務所に送られるのだぁ!!」
男とも女ともつかぬ、声すら異形の怪人は、今、正に覆面男に掴みかからんとする…!!
しかし…。
覆面をした黒ずくめの男、バスジャック犯にそう言って指を突きつけたのは異形の怪人だった。
楕円を描く頭部のシェルエットの中に、怒りの形相もあらわにした相貌が張り付いている。
突きつけた太い指先には、凶悪な曲線を描く鉤爪。
身体は頭よりも小さく、全体的なラインは3頭身に近い。
しかし、この異形こそが現行最強の怪人『しがみ付きコアラ男』であった。
その名の由来ともなった必殺のしがみ付きを、黒ずくめの犯罪者に下さんと両腕を左右に広げ、じりりと一歩距離を詰める。
「や、止めてくれ。俺には年老いた娘と3人の妻がぁ!!」
黒ずくめの男、幼稚園バスジャック犯は覆面の上からでも分かるほどに恐怖を浮かべた表情で後退。
しかし、その背後は既に幼稚園バスの後部シートに密着してしまっている。
最早、逃げる場所は無かった…。
「喚いても無駄だ、貴様は俺様にしがみ付かれ、刑務所に送られるのだぁ!!」
男とも女ともつかぬ、声すら異形の怪人は、今、正に覆面男に掴みかからんとする…!!
しかし…。
「―――意義ありっ!!」
ドカーン!!
ドカーン!!
大爆発を背後に背負い、ヒーローが現れた!!
………あの、ここって都心部なんですけど。背後のビル群は大丈夫ですか?
爆発の中をよく見れば、誰でも知っていそうな有名高層ビルが倒壊してゆくのが見えたりもする。
「き、貴様は!?」
「わーい、サイバーンだあ!!」
怪人『しがみ付きコアラ男』に答えたのはとらわれの幼稚園児たち。
台詞が棒読みなのは勘弁してほしい。
「弁護を続けて西東、邪魔するものは皆殺し。『逆転・サイバーン』参上っ!! コアラ男よ、人間誰しも過ちを犯す。それに罪を問うことはこの私が許さん!!」
「おのれ、サイバーン!! ここであったが百年目、あくまでも我らが『K殺』の邪魔をすると言うか…!!」
百年目も何も、あんたは今日が初登場です。
そんな突っ込みを入れる者はこの場に居ない。
「死ねぇ、サイバーン。しがみ付きビーム!!」
脈絡無しに指先から放たれる怪光線。
「うわぁ!! こいつは強敵だ!!」
ビームはサイバーンの周囲で大爆発を起こし、あたりのビルを粉砕してゆく。
しかし、しがみ付きビーム?
何がしがみ付きなんだろう?
「頑張って、サイバーン!!」「負けるなサイバーン!!」
幼稚園児たちの声援(棒読み)をうけ、サイバーンが立ち上がる!!
いや、良く見ればビームなんて一発も当たってません。
そんな突っ込みも最早不要!!
「行くぞ!! 皆殺しキック!!」
サイバーンの全身から立ち上るジェノサイドオーラ!!
「ぐあぁ!! くっ、苦しい…!!」
サイバーン以外のあらゆる生物に対し致死毒となる粒子を無差別に撒き散らしながら、サイバーンが決めポーズをとった。
「くらえ!!」
設定ではマッハ20の猛ダッシュから繰り出される必殺キックが、怪人『しがみ付きコアラ男』に突き刺さった。
音速突破の衝撃波とかは大丈夫ですか? 特に園児と犯人。
「ぐはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
大量のジェノサイドオーラを蹴り込まれたコアラ男が大爆発!!
周囲にあまったオーラを撒き散らす。
………あの、ここって都心部なんですけど。背後のビル群は大丈夫ですか?
爆発の中をよく見れば、誰でも知っていそうな有名高層ビルが倒壊してゆくのが見えたりもする。
「き、貴様は!?」
「わーい、サイバーンだあ!!」
怪人『しがみ付きコアラ男』に答えたのはとらわれの幼稚園児たち。
台詞が棒読みなのは勘弁してほしい。
「弁護を続けて西東、邪魔するものは皆殺し。『逆転・サイバーン』参上っ!! コアラ男よ、人間誰しも過ちを犯す。それに罪を問うことはこの私が許さん!!」
「おのれ、サイバーン!! ここであったが百年目、あくまでも我らが『K殺』の邪魔をすると言うか…!!」
百年目も何も、あんたは今日が初登場です。
そんな突っ込みを入れる者はこの場に居ない。
「死ねぇ、サイバーン。しがみ付きビーム!!」
脈絡無しに指先から放たれる怪光線。
「うわぁ!! こいつは強敵だ!!」
ビームはサイバーンの周囲で大爆発を起こし、あたりのビルを粉砕してゆく。
しかし、しがみ付きビーム?
何がしがみ付きなんだろう?
「頑張って、サイバーン!!」「負けるなサイバーン!!」
幼稚園児たちの声援(棒読み)をうけ、サイバーンが立ち上がる!!
いや、良く見ればビームなんて一発も当たってません。
そんな突っ込みも最早不要!!
「行くぞ!! 皆殺しキック!!」
サイバーンの全身から立ち上るジェノサイドオーラ!!
「ぐあぁ!! くっ、苦しい…!!」
サイバーン以外のあらゆる生物に対し致死毒となる粒子を無差別に撒き散らしながら、サイバーンが決めポーズをとった。
「くらえ!!」
設定ではマッハ20の猛ダッシュから繰り出される必殺キックが、怪人『しがみ付きコアラ男』に突き刺さった。
音速突破の衝撃波とかは大丈夫ですか? 特に園児と犯人。
「ぐはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
大量のジェノサイドオーラを蹴り込まれたコアラ男が大爆発!!
周囲にあまったオーラを撒き散らす。
こうして戦いは終わった。
荒野の中、夕日を背に佇むサイバーン。
ビル街が荒野になるほどの強烈な威力のキックの前にコアラ男は消滅したのだ。
『今日も悪の怪人の手で多大な犠牲が出た。しかしサイバーンは負けないぞ。頑張れサイバーン、戦えサイバーン。逆転・サイバーン!!』
当然、園児も犯人もコアラ男と運命を共にした。
荒野の中、夕日を背に佇むサイバーン。
ビル街が荒野になるほどの強烈な威力のキックの前にコアラ男は消滅したのだ。
『今日も悪の怪人の手で多大な犠牲が出た。しかしサイバーンは負けないぞ。頑張れサイバーン、戦えサイバーン。逆転・サイバーン!!』
当然、園児も犯人もコアラ男と運命を共にした。
続く…。
テレビの轟音で目を覚ました辰由は、テーブルの上で身を乗り出して画面に食い入っている神姫を見た。
「あ、おはようございます旦那様」
「ええ、おはようございます。プリン」
「………。いや~、サイバーン、良いですよねぇ旦那様?」
「………」
辰由は微かに頷く。
「所でプリン、自分はニュースを見たいのですが?」
「いいえ、旦那様。半からは『魔女っ子神姫 ドキドキ☆ハウリン』の時間です」
魔法世界ドキドキ☆ワールドから不思議な杖を受け取った鋼の少女が、全世界を愛と幸せで満たすために全世界に散らばる百人の魔女っ子神姫を相手に壮大なマジカルバトルを繰り広げる少女向けアニメだ。
「それは、録画ではダメなのですか?」
「はい。録画の方では『Mighty Magic』を録画するのです」
「…そうですか…」
言って仕方なく辰由は新聞に手を伸ばす。
「旦那様、今日は花姫の活躍する回ですよ。旦那様が好きだとおっしゃった花姫です」
「………はい、わかりました」
見てないとダメらしい。
ちなみに、花姫が好きと言うのは、プリンちゃんに『誰が一番好きですか?』と問われて答えた物だ。
ここで『誰にも興味ない』と答えられる位なら今日の地獄は無かったはずだ。
仕方が無い、辰由は微妙なむず痒さを伴う羞恥を押し殺し画面に向き合った。
「あ、おはようございます旦那様」
「ええ、おはようございます。プリン」
「………。いや~、サイバーン、良いですよねぇ旦那様?」
「………」
辰由は微かに頷く。
「所でプリン、自分はニュースを見たいのですが?」
「いいえ、旦那様。半からは『魔女っ子神姫 ドキドキ☆ハウリン』の時間です」
魔法世界ドキドキ☆ワールドから不思議な杖を受け取った鋼の少女が、全世界を愛と幸せで満たすために全世界に散らばる百人の魔女っ子神姫を相手に壮大なマジカルバトルを繰り広げる少女向けアニメだ。
「それは、録画ではダメなのですか?」
「はい。録画の方では『Mighty Magic』を録画するのです」
「…そうですか…」
言って仕方なく辰由は新聞に手を伸ばす。
「旦那様、今日は花姫の活躍する回ですよ。旦那様が好きだとおっしゃった花姫です」
「………はい、わかりました」
見てないとダメらしい。
ちなみに、花姫が好きと言うのは、プリンちゃんに『誰が一番好きですか?』と問われて答えた物だ。
ここで『誰にも興味ない』と答えられる位なら今日の地獄は無かったはずだ。
仕方が無い、辰由は微妙なむず痒さを伴う羞恥を押し殺し画面に向き合った。
辰由の部屋は、先日知人の神姫技術者の手により赤外線リモコン機能を組み込まれたプリンちゃんによって、完全にチャンネル権が制圧されていた。
そして深夜。
「さて、プリンは寝ましたね」
クレイドルの上で静かに眠るシュメッターリング。
安らかそうな横顔には、もはやあの日の面影は無い。
「では、私は久しぶりにモンティ・パイソンでも見るとしましょう」
ビデオシリーズは海外音声版、邦訳、字幕と全てそろっている。
どれもそれぞれに良いものだった。
「えっと、リモコンリモコン…」
そこまで言ってはっと気づく。
リモコンは、プリンちゃん自身であった。
「…ひょっとして、プリンを起こさないと見られないのでしょうか…?」
もちろん、プリンちゃんを起こせばアニメか特撮を見る事になる。
辰由の地獄は幕を開けたばかりであった…。
「さて、プリンは寝ましたね」
クレイドルの上で静かに眠るシュメッターリング。
安らかそうな横顔には、もはやあの日の面影は無い。
「では、私は久しぶりにモンティ・パイソンでも見るとしましょう」
ビデオシリーズは海外音声版、邦訳、字幕と全てそろっている。
どれもそれぞれに良いものだった。
「えっと、リモコンリモコン…」
そこまで言ってはっと気づく。
リモコンは、プリンちゃん自身であった。
「…ひょっとして、プリンを起こさないと見られないのでしょうか…?」
もちろん、プリンちゃんを起こせばアニメか特撮を見る事になる。
辰由の地獄は幕を開けたばかりであった…。
おしまえ
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二段オチ。
村上「さあ、プリンちゃん。今度はエアコン用のリモコンと蛍光灯のリモコンを内蔵してあげましょう」
辰由「む、村上さん。それは勘弁してください」
村上「何故です、便利ですよ?」
辰由「自分は、自分は手動が好きなんです」
村上「判りました、ではプリンちゃんに手動型リモコンを搭載しましょう」
辰由「…?」
村上「出来ました」
辰由「早っ!?」
村上「蛍光灯のON/OFFは右胸を、エアコンのON/OFFは左胸にタッチです」
辰由「え?」
村上「温度調節や冷暖房の切り替えは服を脱がせて直に触ってください。右胸で温度、左胸で冷暖房切り替えです」
辰由「………ぬ、脱がせて?」
村上「風向きと風量はお腹です。服ありで風向き、脱がせれば風量です。………では、用事もあるのでこれで失礼します」
辰由「……………。え?」
プリンちゃん「さあ、旦那様試してみましょう?」
辰由「自分が、プリンを裸にして胸やらお腹をまさぐる、と?」
村上「さあ、プリンちゃん。今度はエアコン用のリモコンと蛍光灯のリモコンを内蔵してあげましょう」
辰由「む、村上さん。それは勘弁してください」
村上「何故です、便利ですよ?」
辰由「自分は、自分は手動が好きなんです」
村上「判りました、ではプリンちゃんに手動型リモコンを搭載しましょう」
辰由「…?」
村上「出来ました」
辰由「早っ!?」
村上「蛍光灯のON/OFFは右胸を、エアコンのON/OFFは左胸にタッチです」
辰由「え?」
村上「温度調節や冷暖房の切り替えは服を脱がせて直に触ってください。右胸で温度、左胸で冷暖房切り替えです」
辰由「………ぬ、脱がせて?」
村上「風向きと風量はお腹です。服ありで風向き、脱がせれば風量です。………では、用事もあるのでこれで失礼します」
辰由「……………。え?」
プリンちゃん「さあ、旦那様試してみましょう?」
辰由「自分が、プリンを裸にして胸やらお腹をまさぐる、と?」
無理でした。チーン。
こうして辰由の部屋は電気つけっぱなしの、冷暖房無しと言う魔界へと変貌したのである。
もちろん、チャンネル権は戻ってこなかった………。
こうして辰由の部屋は電気つけっぱなしの、冷暖房無しと言う魔界へと変貌したのである。
もちろん、チャンネル権は戻ってこなかった………。
こんどこそおしまえ
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※作中にて『ドキドキハウリンの中の人(通称:ドキ(ry)』さま、および『マイティのひと』さまの作品と“一方的に”コラボしております?
TV番組にしてしまいましたが、両作者さま、何か問題があればご一報を…。
TV番組にしてしまいましたが、両作者さま、何か問題があればご一報を…。
さて、一度きりのつもりで出したプリンちゃんが再登場です。
辰由との出会いのエピソード(ぷれころではなく)もあるので、後一回は出番がある筈。
辰由との出会いのエピソード(ぷれころではなく)もあるので、後一回は出番がある筈。
この作品のアイデア元になって頂いたドキ(ryさまにこの作品をささげつつ、ALCでした。