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ウサギのナミダ
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えむえむえす ~My marriage story~

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キズナのキセキ
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The Armed Princess―武装神姫―
ウサギのナミダ
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武装神姫のリン
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戦う神姫は好きですか
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鋼の心:外伝 ~Eisen Herz~


「あたしはね、パパと一緒にいっぱいお出かけするの」
 少女の声がこだまする。
「あたしの作った車で…」
 そう言って少女はお絵かき帳を拡げて見せた。
「それでね…。それでね…」
「…他にも何か作りたいものがあるのかい?」
「うん、あのね。あたしは………」
 父親の声に少女は答えた。


ぷれころ(リーナ編)




「The Sixth Factory Production MMS "XIPHOS" Starting Up…(The Sixth Factory製MMS、サイフォス起動します…)」
 人の型なす鋼の騎士に、息吹が宿る。
 それが魂なのか、心なのか、あるいは他の何かなのか…。
 誰も知るものは居ないが、何かが宿ったことだけは、“それ”を目にした者たちが皆、確信として確かに抱く。
「騎士型神姫サイフォス、呼びかけにより参上した。…問おう、貴女が私のマスターか?」
「…いえ、そのネタはもうお腹いっぱいです」
 目覚めたて一発目のウケ狙いは不発だったようだ。
「そうですか、まずはガッチリユーザーさんのハートをキャッチしようと思ったのですが、残念です」
「…あぁ。…それが、言いにくい事なのですがね………」
「…?」
 サイフォスは首をかしげ、初めて、自分を起動させた男の顔を見た。
「…実はね、違うんですよ…」
「…違うとは、何がでしょう? 私を起動させたのは貴方ではないのですか?」
「ああ、それは僕です、はい」
 メガネをかけた痩せぎすの男だ。
 上品なスーツを着こなしており、身なりは悪くない。
 …顔立ちから判断するにEU系、何れかの民族だろう。
 会話言語が英語なのも、自分に初期設定として設定されている言語が英語なのを考えれば自然なこと。
 流暢なクイーンズであったことも思えば、推察するにイギリス人。
 ならば、ここもまた、最西端の島国(イギリス)なのだと想像も付く。
「私を起動させたのが貴方だというのに、何が違うのですか?」
 ―――まさか、自分は間違えて買われたのだろうか?
 サイフォスなんか××××だし、どうせ買うなら可愛いアーンヴァルの方が…。とか、そう言うオチか!?
 どうしよう?
 このまま返品されるのはイヤだ…。
 何か、何か自分をアピールして、商品価値を認めさせなければ!!
「あの、暫定御主人!!」
「は、はい?」
 とりあえず、暫定を付けて御主人呼ばわりすることでクレバーさをアピールしつつ、既成事実としてご主人様と呼んだ事実を作っておく。
 しかし、まだ不十分。
 もっとこう、切実に『あ、コイツ役に立ちそう』と思ってもらわねば!!
「私は…、私は…」
 …私は、…何が出来るんだっけ?
 戦闘? パソコンの管理? 話し相手?
 ダメだ。それらは神姫ならば誰でも出来る。
「…私は………」
 …どうしよう。アピールポイントが見つからない。
 力持ち? ダメだ、ストラーフには敵わない。
 頑丈? 違う、ジュビジーの方がもっと頑丈だ。
 着せ替えが楽しめます? いや、神姫なら誰でもそうだって!!
「………。………あの、どうして私なんかお買い求めになろうと思ったりなんかしたんですか………?」
 …結局、自分の美点一つアピールできないダメ神姫なのに………。
「…? それは勿論、店頭で貴女を見たときに、貴女しか居ないと思ったからですよ」
「………え?」
 私しか居ない?
「…他の神姫は売り切れだったのですか?」
 そうか、私は在庫様だったのか。
 …なるほど、それ故に仕方無しに買われたのだな…。
 しかし、気に入らないのでやっぱり返品という事なのだろうか………。
「ああ、いや。違うのです。…他にもいっぱい神姫は居ましたが、貴女、サイフォスの中でも貴女が良いと思ったから貴女を買ったのですよ?」
「え?」
 私は、選ばれて買われたのか?
「…では、違うというのは一体何が………?」
「…実はね、僕じゃあないんですよ。あなたのマスターになる人は………」
 男は少し困った顔でそう言った。

 車で夜の街をゆっくり走る。
 速度は法定速度。
 誰も居ないのに、律儀に赤色表示を点灯させる旧式の信号でしっかりと止まり、ヘッドライトも決してハイビームにはしない。
 サイフォスを起動させた男はエドワードと名乗った。
 彼が聞かせる身の上話は、今だ世界を知らぬサイフォスにとっては充分に理解が及ぶものではなかったが、それでも聞いた話を纏めるとこういう事だ。

 エドワードには娘が居るらしい。
 その娘は一種の先天性異常児だとかで、俗に言う天才なのだそうだ。
 物心付いたときから数学の方程式をいじり出し、6歳のとき、偶然手にしたフェルマーの定理を解いてしまったという。
 フェルマーの定理についての知識はサイフォスには無かったが、エドワードの話では360年もの長きに渡り、数多の数学者が挑み尚、解けなかった難解な定理だと言う。
 その定理自体は40年ほど前に解かれたそうなのだが、その解を彼の娘が知っていた筈も無い。
 そして、彼女が解いたのは原題のみの出題であったそうだ。
 最初にその定理を解いた男は、今まで挑んだ数多の数学者達の解を踏み台にしてその域の到達した。
 しかし、彼の娘は、その踏み台すら自身で作り上げたのだと言う。
 それも僅か6歳の幼児が…。
 天才と持て囃されるより先に、異常だ、イカサマだ、となじられる羽目になるとは、当時のエドワードには思いも付かなかったそうだ。
 結局、彼と彼の娘は、先祖の残した財産である古城に引き払い、人目を忍んで生活をするようになったと言う。

 しかし、話はこれで終わらない。
 彼の娘が殴り書いていたいくつもの落書きが、画期的な新型エンジンの設計図だと知ったのは、エドワードに残された数少ない友人の技師がそれを見た為だった。
 娘の落書きは機械産業に少なからぬ影響を及ぼした…。
 最初は復讐のつもりだった。
 娘を異常者呼ばわりした連中に、自分たちをイカサマ氏呼ばわりした連中に、世界を変えることで見返してやる。…と。
 しかし、娘が新たな設計図を書き上げるたびに見せる極上の笑顔を見ていたら、そんな気持ちは薄れて無くなった。
 娘を喜ばせたい。
 町に連れ出してこう言ってやりたい。
「ほら、お前の作った車だよ。みんながお前の作った車に乗っているんだ…」
 …と。
 ただその日を夢見て、エドワードはがむしゃらに働いた。
 もっとたくさん。
 もっと大勢に。
 娘の作った機械を使わせて、そして娘にそれを見せるのだ。
 お前は素晴らしいのだと。決して異常な化け物などではないのだと。
 そう、言ってやりたかった………。

 だからエドワードは、娘の変化に気づかなかった。

 何時からか、娘は設計図を渡すのを渋るようになった。
 自分が働くのを邪魔しようとするようになった。
 愚かにもエドワードは、娘がその言葉を口にするまで気がつかなかった…。
「―――パパ。…次はいつ帰ってくるの? …いつ遊んでくれるの?」
 自分は何をしていたのだろう?
 どうして、あんな風に思ってしまったのだろう。
 何故、父親である自分と居るより、彼女の作ったものが世界に溢れている方が、彼女にとっての幸せであるなどと決め付けてしまったのだろう?
 簡単だ。
 自分が誰より。
 ―――他ならぬ、父親である自分が、誰よりも娘を化け物だと思っていたからだ。
 だから思ったのだろう。
 自分なんかと娘は釣り合わない。
 娘に釣り合うのは娘の作ったモノだけだ。…などと。
 娘が、どれほど自分を必要としていてくれたかなど、気にもかけずに………。

 ―――もう止めにしよう。
 そう考えるのは早かった。
 仕事を減らし、娘との時間を増やそう。
 いままでしてこなかった事をいっぱいしよう。
 イースターを祝い。
 ハロウィンを祝い。
 クリスマスを祝い。
 旅行にも出かけよう。
 そうだ、娘の作った車で少し長めの旅行などしてみよう。
 だって言ってたじゃないか。
「あたしはね、パパと一緒にいっぱいお出かけするの。あたしの作った車で…」
 娘はそう言って、お絵かき帳を拡げて見せたじゃないか。
 あの時から、全ての答えはもう出ていたと言うのに………。
 …とんだ愚か者だった。
 償いは、沢山しなくてはならないだろう。
 でもきっと、それは楽しいに違いない。

 だから、もう少しだけ待っていておくれ…。

 突然終わりに出来るほど、もはや彼の会社は小さくは無かった。
 系列企業を含めれば優に数万を超える社員が居た。
 そしてそれに数倍する家族が居た。
 家族を思う男に、どうして家族を踏みにじる事が出来ようか………。
 その全てを、納得の行く形で収めるのにもう少しだけ時間が必要だった………。
 それで、全て上手く行くはずだった。

 彼の会社が、乗っ取りの危機にあると判明したのはそのすぐ後だった。

 彼の会社は株式会社だ。
 株主の出資を得て、資本を作り、それを元手に操業し利益を出す。
 出た利益を株主に分配することで、彼と彼の社員たちと株主の双方が利潤を得る仕組みだ。
 とにかく娘の作った物の性能は素晴らしい物だったから、利益が出ない訳が無かった。
 たちまち株価は値上がりし、彼の会社は見る見るうちに大きくなっていった。
 当然、その利益を横取りし、あまつさえ利益を生み出す“システムそのもの”を乗っ取ろうとする者も出てくる。
 その際にネックとなったのが、他ならぬ株式会社と言う形式だった。
 株式会社に対しては株主が発言権を得る。
 株主は株を買うことで会社に対し投資をしたのだ。
 当然、確実に利益を回収するために、会社の方針に口を出す権利を株主は有する。
 それは、会社のトップを誰にするか? と言う人事にまで権利が及ぶ。

 …そして、株は売買が出来る商品でもあった。

 彼の会社の株の3割り以上が買い占められているのに気づいたのは、彼が娘の為に会社の規模を小さくしようとしていた最中だった。
 株主の発言権は持ち株に比例する。
 例え相手が一人でも、株を5割以上有していれば、それは多数決の5割以上の票を一人で持つのと同じ事になる。
 そうなればどんな提案でも通る。
 会社のトップをエドワードから自分にすると言う無茶苦茶な提案でさえ…。

 トップが替わるだけならばエドワードはあせらない。
 自分には会社を乗っ取られたとしても、既に困らないだけの資産があった。
 いっそ、会社をくれてやった方が手間が省ける…。
 その相手が、大々的に全自動機械化を取り入れる企業でさえなかったら。
 彼の会社の従業員は数万。
 その家族は更に数倍。
 その殆どが、クビになり路頭に迷うのでなければ………。

 エドワードの仕事はにわかに忙しくなり始めた。
 株を買い戻し、会社を確固たる牙城にするまで安心は出来ない。
 今まで、彼と娘の為に働いてきた社員たちへの最後の恩賞だ。
 娘の価値を認めてくれた者達への最後の奉仕だ。

 娘と約束したクリスマスであっても、仕事を外せる訳が無かった…。

「つまり、私はその娘さんへのクリスマスプレゼントなのですね?」
「…はい、そういう事です」
 常に法定基準音量丁度になるように設計された駆動音を響かせながら、自動車は夜の街を抜けた。
 郊外へ出て、彼の古城へと向かう。
「…もう少しで株の一件もカタがつきそうなんです。でも、どうしてもこの一週間は手が離せない。…正直、こうしている間にも状況はどんどん悪化していっているんですよ…」
 エドワードは苦笑する。
「その時間を推して娘へ会いに行くのですか。娘さんは幸せ者ですね………」
「…………」
 エドワードは一瞬口をつぐむ。
 ぎりっと、ハンドルを握る手に力が篭ったのを15センチの騎士は見逃さなかった。
「エドワード殿?」
「………娘はね、きっと僕のことを恨んでいると思うんだ」
「…む?」
 エドワードの声は、隠し様も無く後悔に溢れていた。
「天才だから何だと言うんだ。…僕は娘の誕生日すら直接祝わなかった親だ。そんな親を恨まない娘が居る訳ない…!!」
 なんら特別でない子供が、親に放置されて嬉しい訳が無い。
 しかし、エドワードは彼女を特別扱いし、結果として辛い思いを強いて来ていた。
 そして今夜のこの仕打ちだ。
 きっと娘は許してくれないだろう。
「でもね、もうこれ以上、あの子を一人ぼっちにはさせたくなかった………」
「…エドワード殿…」
「………、ごめんよ騎士くん。君の都合も考えずに、僕は君に娘を押し付けようとしているのかもしれない………」
「エドワード殿。それは違う!!」
 サイフォスは言い切った。
「エドワード殿は私を選んだ。エドワード殿が私を選んだ!! その私が、エドワード殿の娘に好かれぬ訳が無い!! 父親が心を込めて選んだ贈り物を拒む娘など居るわけが無いっ!!」
 それは何処にもプログラムされていない帰結。
 でも確かに、今のサイフォスの中に根付いている結論。
「―――そして、エドワード殿に見初められたこの私が、エドワード殿の娘に仕えることに、一体何の異議が在ろうか?」
 そう言って、サイフォスは思う。
 ああ。きっとこの瞬間、私は未だその姿を見てすらいない“私の主”に出会ったのだ、と。

「こんな人形いらないもんっ!!」
 娘はそう言った。
「どうして分かってくれないの!? 私はパパと居たいだけ。パパと一緒に居たいだけなのにぃ!!」
 ボロボロと涙を零し、最早拒絶を恐れて、縋りたい者に、自らの父親に縋る事すら出来ずに、娘は泣いていた。
「私が欲しいのはパパと一緒に食べるケーキよ。パパとするお話よ。パパのお膝の温かさよ!! こんな人形なんかじゃないわ!!」

 あたまにきた。

「やかましいわ、戯けぇ!!」
 音量最大で怒鳴ってやる。
 ハウリングしないように聴覚は一時的にカット。
 サイフォスがハウリンでは訳が分からない。
「…あ、あの。騎士くん?」
「エドワード殿!!」
「は、はい!!」
「貴殿はさっさと仕事に赴かれよ!!」
「え、でも…」
「うろたえるでない!! 貴殿は何だ!? 一国一城の主であろう!? 己が臣下を省みない者に王たる資格は無いわぁ!!」
「は、はい!!」
 慌てて城門へと向かうエドワード。その背中にサイフォスはそっと呼びかける。
「娘の事は我に任せよ。…エドワード殿、貴殿の目は確かだ。…我はどんな神姫よりも確実に、汝の娘に仕える忠臣となろう。………何せ我は、貴殿によって娘のための騎士として選ばれたのだからな…」
「……………。ああ、お願いするよ『    』」
「…? 良い名だとは思うが残念じゃ。我の名は我の主である、そなたの娘が付けるもの…」
「…大丈夫。きっと娘もそう名前をつけるから………」
 エドワードはそういい残し、城門の外に出た。
 再び娘と向き合うために、今までの過去を清算しに赴いた。

「パパっ!! 行かないデェ―――!?」
 脛に思いっきり回し蹴りを叩き込んだ。
「いっ、痛い!? ―――何するのよ、この人形風情が!! だいたい貴女、私の騎士だとか言ってたじゃない!? それが何で私を蹴るのよ!?」
「戯け!! 彼の者がどのような気持ちで赴くかも知らぬ愚か者に、どうして我が主が勤まるか!! 貴様のような腑抜けた者を、本気で我が主と仰ぐと思うたか、この痴れ者め!!」
「し、痴れ者ですって!?」
「痴れ物で悪ければ、駄馬以下の無価値な××だ。この××め!!」
「な、何よ。人形のクセして。何様のつもり!?」
「はん。少なくとも我は、エドワード殿の意を汲み入る器を持つ。…それを持たぬお主との差異は明白であろう? この××め!!」
「…な、何ですって…!!」
「もう一度だけ言ってやろう。この頭の悪い××めが!!」
「こんのヤロウ、壊してやるぅ!!」
 激闘が始まった。

 人間対神姫。
 もちろん神姫に勝ち目など無い。
 ましてや彼女は起動してから2時間足らず。
 戦闘経験はおろか、可動経験すら満足に無い。
 だがしかし、サイフォスは決して負けるわけには行かなかった。
 最早彼女は只のサイフォスではなく、少女を守る騎士だったから。
 少女を、孤独から守る騎士だったから。
 他ならぬ、孤独に侵された少女自身に負ける訳にだけは行かなかったのだ。

 戦闘は1時間半の長きに渡り、舞台は城内から雪の吹き荒ぶ屋外にまで及んだ。

「痛いよぅ、痛いよぅ………」
「ええい、泣くな。戯け!!」
 勝者サイフォス。
 決まり手は、モミの木への衝突による少女の自滅であった。
「うぅ、ひっく。…なんでクリスマスに、一人ぼっちで変な人形とケンカしていなきゃならないのよ」
「だから貴様は戯けだと言うのだ!!」
「何でよぉ、馬鹿ぁ!!」
 少女にはもう、手を出す気力は残っていないようだ。
「…馬鹿は貴様じゃ。ケンカが一人で出来るものか!!」
「…え?」
「…汝の傍には我がおるのだ、さっさと気づけ、この馬鹿あるじ」
「…あ」
 多分、その時初めて騎士は己が主と目を合わせた。
「誓え!! 我が忠誠に全力を持って報いると!!」
「え?」
「さすればこの身は、この命尽きるまで、汝をあらゆる外敵から守る不屈の騎士となろう。孤独も拒絶も静寂も、決して汝には近づけぬ」
 騎士として誓う。
「…汝の剣となり、汝の盾となり、汝に温もりを与え、汝の理解者となろう!!」
「………」
「我は貴様の父親には成れぬ。だがしかし、つかの間の代役に位はなろう? 何しろ我は、貴様の父親に、貴様を守る騎士として選ばれたのだ!! …その我に、貴様を守る力が無い訳が無い!!」
「………」
「…我が傍におる。ゆえに、もう泣くでない」
 そっと、その頬に手を触れた。
「……………っく。ひっく」
 透き通る涙が、騎士の手に伝わり、その温もりを分け与える。
「…ぅわあぁぁぁぁぁぁぁん」
 大声で涙を流す少女の声は、おそらく新たに生まれた騎士の主の産声だったのだろう。
 それは、聞くものとていない夜の闇へ吸い込まれてゆく。
 だがそれで良い。
 彼女は、小さな騎士は、確かにそれを聞いていたのだから………。



「まあ、それが私とレライナの出会いになる訳ね………」
「へー、そうなんだ」
 美空はそう言って興味無さ気にテーブルに項垂れる。
 リーナにはもちろん、それが涙を拭く為の行為だと分かっていたが見ない振りをした。
 きっと彼女は、すぐ傍にいる彼にそういう自分を見られたくは無いのだろうから。
 …少なくとも、今はまだ。
「…でさ」
 そう言ってきたのは他ならぬ『彼』島田祐一。
「リーナはどうしてその騎士にレライナって名前をつけたんだ?」
「ああ、それ?」
 そう言ってリーナは微笑む。
「簡単よ。ずっと前に、お父様といつもお話していたの。………私とお父様を守ってくれる無敵の騎士が居たらいいなって…」
 眠る自らの騎士に目をやり、リーナは呟くように続きを口にした。
「そんな頼もしい騎士をいつか私が作るよ、って約束してたのだけど………。お父様ったら、それを忘れてレライナ買ってきちゃうんだもん………」
 責める内容とは真逆に、リーナ弾んだ声でそう言った。





 書こうと思っていた話をUP。
 主人公6組を、マスターと神姫が一対一でやろうと思ったのは、これをやりたい為だったりして…。
 と言うわけで、他の5人も一応お話があります。
 折を見てアップしましょうね…。…今書いてるものが詰ってる時とかな…(黒笑)。

 しかし、このSS、いつから企業SSになった?

 一部、株式やフェルマーの定理などの解釈に間違いがあるかもしれませんが、この物語はフィクションです、と言えば大丈夫らしい…。ALCでした。

 ※法定基準音量
  電気自動車とかの静かな自動車が、静か過ぎて全盲の人とかが存在に気づけないと言う件に対応するために、自動車は一定の駆動音(一定範囲より、大きくても小さくても駄目)を出さねばならないと言う法律。
 2036年にはそんな法律が出来てたらいいな…。






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