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鋼の心 ~Eisen Herz~


第八話:舞姫と歌姫(前編)



「はっ!!」
 浅く、上下逆の放物線を描きながらの超低空フライパス。
 アーンヴァルの機動性から逃れられる神姫はそうは居ない。
 ましてやそれが、殆ど非武装の軽い機体ともなれば、皆無と言っても過言ではないだろう。
 当然ながらジルダリアの機動性をもってしても逃れることは出来ず、刹那の間だけ抜き放たれた刀の一閃で胴を薙がれた。
「―――っ!?」
 流石に手加減はしたので、真っ二つとまでは行っていない。
 しかしフレームに及ぶダメージは、バトルロイヤルにおける“DEAD END”を意味した。
「これで撃墜3!!」
 バトルロイヤルの戦闘開始からまだ2分たってない。
 刀使いのアーンヴァル、フェータはアフターバーナーを吹かし、四度目の上昇を行う。
 元来軽量なアーンヴァルと比しても尚、軽い彼女を飛ばすには過剰とも言える大出力エンジンは、大気を揺さぶり、轟音を撒き散らしながら超高速での上昇を可能にする。
 高度150まで僅か3秒で駆け上がり、高高度からの索敵を再開。
 程なくして荒野を移動するジュビジータイプを目視で発見、標的と定めパワーダイブにて急降下!!
 機首を下げたままアフターバーナーを全開にするという荒業が、フェータの身体を一瞬で亜音速にまで加速する。
 反転急上昇をかけるのは標的よりも遥かに上で。
 最適なタイミングでピッチアップ(上昇)すれば、惰性と重力が標的とすれ違える地上スレスレにまで高度を引き下げてくれる。
 当然、タイミングを誤れば、標的の遥か頭上を通るだけか、最悪の場合は地上に激突することになる。
 許される誤差はコンマ01秒。実に100分の1秒という短い時間だ。
 神姫の処理速度をもってしても、確実とは言い難い時間だが、非力なアーンヴァルの腕力で頑強なジュビジーの装甲を切断しようと思えば、どうしても支払わねばならないリスクであった。
 しかし…。
「…悪いが、こ奴は頂くぞ」
 攻撃まで後2秒というところで視界を横切る蒼い稲妻。
 地上を疾駆するそれに気づき、ジュビジーがその場で旋回、武装神姫最大の防御力を誇ると言われる可動装甲を閉鎖し、鉄壁の布陣を引く。
「無駄じゃ」
 衝撃が到達したのは、ジュビジーの計算よりごく僅かに遅かった。
 そして、その方向は真逆。
 前から迫って来た筈の蒼い閃光は、無防備な背後からジュビジーの身体を突き抜けていった。
「レライナさん、横取りは酷いです!!」
 停止すれば、その稲妻が蒼い甲冑を纏った騎士型の神姫だと分かるだろう。
 本来の騎士型、サイフォスタイプとは明確に戦法を異としながらも、その外見はスタンダードなサイフォスのそれを、さほど逸脱しては居ない。
 目を引くのは可動範囲を重視し、剥き出しのままにされた肩部と、背面に背負ったリングと翼剣で構成されるジュビジータイプの主兵装、フローラルリングだけだ。
「さっきも私が見つけたストラーフを横取りしたじゃないですか!?」
「なに、あのような堅物は苦手じゃろう? なればこそ、我が手を貸したまでの事…」
 騎士型、レライナと呼ばれた神姫はフェータを見上げてそう言った。
 事実、重装甲の相手を一撃で倒そうと思えば高速でのアプローチは必須であり、先程のようにリスクの高い機動を余儀なくされる。
「それに、この勝負。どちらがより多くの首級(しるし)を上げるかというものの筈、なればおぬしの邪魔をするのも、我の策と言う事になるのぅ?」
 現在の戦績はフェータが3、レライナが2。
 瞬間的な速度こそレライナに分があるが、広いフィールドから敵を探し出し倒しに行くのは空を飛べるフェータの方が圧倒的に有利な状況だった。

 元来、サイフォスはマオチャオやティグリースなどの高速格闘型の迎撃において最も力を発揮する。
 パワーと装甲に優れる反面、敵に近づく機動性に欠けるのが原因だ。
 それが、敵から接近して来るとなると、機動性を捨て装甲とパワーを高めたサイフォスのほうが有利になるのは明白だからだ。
 そして、それは戦法が大幅に変わったレライナでも、結果的には同じことである。
 短距離ダッシュの能力に優れるため、敵に近づく機動性は確保されているものの、それをなすために消費するバッテリーの問題から無制限にダッシュできるわけではないからだ。
 ダッシュ抜きでの巡航速度においては、それに脚部の機能を最適化してしまった分、通常のサイフォスよりも遅くなる。
 結局、どうしてもレライナの得意とする戦法は、敵から交戦圏に入って来るのを待つ迎撃的なものにならざるを得ない。
 それなのに今回の勝負は倒した敵の数で勝敗が決する。
 要するにこれは、圧倒的に不利な条件での勝負という事になる。
 しかし、それでも。騎士として、主であるリーナの神姫として。
 レライナは一歩も引く訳には行かなかった…。

 というのは彼女たちの事情。
 別の視点から見ればこうなる。

「あ、あわわわわわわわわわ」
「大惨になっとりますなぁ…」
「落ち着いてる場合ではありません!! あの子達なんて大した戦闘経験も無いんですよ、それなのにあれ程容赦無い相手が二体もいては…」
 戦場で繰り広げられる光景を、ようやく事態を把握した少女と、彼女の直属たる二体の神姫が見つめていた。
「あのアーンヴァル。戦闘ソフトではなく動作で抜刀してらっしゃりますのえ?」
「ですから、姉さま!! そんな冷静になっている場合ではなく!!」
 惨状を目にし、それを解して尚、平常心を崩さない紅緒タイプと、彼女を姉と呼ぶイーアネイラタイプの神姫。
 それぞれ名を、舞薙(マイナ)と歌憐(カレン)という。
「知ってのとおり、通常神姫が攻撃を行う時の動作は、購入した武器に付属する戦闘ソフトの動作をそのまま読み込むだけですえ?」
「ですから、姉さま!! 冷静に解説などしている場合では…」
 紅緒型、マイナは妹であるイーアネイラ型のカレンを無視して解説を続けた。
「要するに格闘ゲームで出す技のようなものですわ。攻撃を選択すれば一定の型を動作として実行する。最初は皆そこから始めますのん」
「…ええと、姉さま?」
「当然、実戦のさなか不都合もよう出ぇはります。それを修正して行き、神姫はやがて自分の型を、自分だけの型を持つんですのえ」
「…姉さま?」
 姉の視線が虚空を見つめている。
 その先には惨状を映し出すモニターがあるのだが、微妙に焦点があっていない気がするのはカレンだけなのだろうか?
「…ところがあのアーンヴァル。最初から戦闘ソフトの型を入れずに、動作の蓄積であの抜刀をしてはりますのん」
「………」
「人間と同じように、長い時間を修練に費やし、関節の一つ一つに動作を叩き込んで行った結果があの抜刀ですわ。あれはあきません。ウチでもよう対処し得ますかえ、微妙なところおすな…」
「…えっと」
「あのアーンヴァルのオーナーはん。よう時間かけて神姫との愛情を育みなはったんですえ?」
 フェータのオーナー、伊東美空に対するべた褒めとも取れる賛辞。
 実のところ単に美空は、付属武器以外には専用ソフトをインストールしなければならない事を理解していなかっただけだったりする。
「―――なるほど、ご高説拝聴いたしました。…所で姉さま?」
「かしわもち」
「は?」
「柏餅の葉って言うのんはな…」
「…やはり、現実逃避しておいでなだけでしたのね………」
 無理もない。
 軽い気持ちで戦場に立った劇団員10名が、不運にも壊し屋神姫2名の“狩りモノ競争”に巻き込まれ、全滅したのは僅か5分後の事だった。

「せ、責任を…!! 責任を取ってください!!」
「あんた誰?」
 バトルロイヤル終了後、いきなりやって来たのは見知らぬ少女だった。
 ちなみに開始後10分もせずに、他の参加者を一掃してしまったフェータとレライナはその後に直接対決。結果は交戦開始21秒でフェータが一刀の元に勝利している。
 参考までに“狩りモノ競争”の結果はフェータ6のレライナ4だった。
「また負けた…。我、実は弱いのじゃろうか…」
 落ち込むレライナ。
 日本に来て以来、戦績が振るわない。
 これでもイギリスに居たときは、ほぼ無敗の実績を持つチャンピオンだったのだ。
 それが最近ではアイゼンに惜敗、その後挑んだフェータとは三回戦い全敗。そのフェータを一度は破ったというセタを相手には勝ち越しているものの、戦績は2勝1敗と土を付けられている。
 ちなみにマヤア相手には三度戦い全てに圧勝。
 なおリーナ&レライナのペアは、そのマヤアが実はアイゼンを二度以上破ったことのある唯一の神姫だと言うことは知らない。
 マヤアは本来、戦績においてはアイゼン以上の実力者なのだ。
 こうなって来るともう相性の問題なのだが、レライナの目には日本には強敵多すぎ、としか映らない。
「ぬうぅ、こうなれば剣技をさらに磨き、せめてフェータに一太刀なりとも…」
 めげないのは良いですが、そのノリは武士道です。
「まあ、頑張りなさい。あたしのフェータは強いけど………」
 えっへん、と胸を張る美空。
「あの、聞いてますか?」
「ああ、ごめん。…で、誰よあんた?」
 レライナの決意に耳を傾けていた美空が、ようやく少女の方に体ごと向き直る。
「見たことない顔ね、美空の知り合いという訳でもないのでしょう?」
 僅か一月で日本語をマスターしてしまった天才児、リーナ・ベルウッドもまた、少女の方へ向けて座り直す。
「神姫のオーナーだというのは分かりますけど………、見たことの無い方たちですねぇ」
 フェータの言うとおり、少女の肩には左右それぞれに神姫がしがみ付いている。
 タイプはそれぞれ紅緒とイーアネイラ。
「わたしは、先程あなた方に全滅させられた『武装劇団そうき』のリーダー藤堂晴香(とうどうはるか)です!!」
「…リーダー?」
「…武装劇団?」
「…全滅ですか?」
 少女の名乗りに、美空、リーナ、フェータと三者三様の疑問符が浮かんだ。
 ちなみにレライナは反省が終わったのでお休みモード。
 我関せずとばかりにバスケットの中に潜り込み、眠りについていたりする。
「先程、そちらの刀使いのアーンヴァルと、異常に素早いサイフォスが私の劇団員を皆殺しにしてくれたじゃないですか!!」
「…いや、死んでませんから」
「…単に修理に時間を要するだけですえ」
 主、晴香の暴走に突っ込む彼女の神姫、カレンとマイナ。
「それが問題なんじゃないですか!!」
 晴香叫ぶ。
「どうするんです!! 公演は明日なんですよ!?」
「公演?」
「そうです、明日幼稚園で劇を公演することになっているんですよ!!」
「劇って、ひょっとして、神姫で劇を演じるんですか?」
 晴香の言葉に興味を持ったのはフェータだった。
「そうです、我らが宋基(そうき)女学園人形劇部の初公演だったのに、劇団員が全滅なんて~」
「いや、全滅してませんから。私とお姉さまがいらっしゃいますから」
 カレンが髪の毛引っ張るが晴香の暴走は止まらない。
「ああ、このままじゃ上演なんて不可能だわ。園長さんになんて言い訳すればぁ~!!」
「ねえ、美空?」
「…ん?」
「宋基女学園って、美空の高校じゃないの?」
「…ああ、そういえば。道理で聞き覚えのある名前だと…」
 美空は、基本的に人の話を聞いていない。
「貴女、ウチの学校の人だったんですか!?」
「…違うわよ、ソレはこっち」
 晴香に指差され不快そうに手を振るリーナ。
 …どうやら人の話を聞かないのはお互い様のようだった。
「―――あれ、何してるの?」
 そこに戻ってくる祐一とアイゼン。
 先程のバトルロイヤルにあぶれた祐一は、アイゼン用の新装備のテストに対戦台に篭っていた。
 このセンターではかなり名を知られているアイゼンの事、挑戦者募集の表示を出し対戦台を確保すれば戦う相手には困らない。
 最も、挑んでくるのは大半が一度破った相手なので、祐一もアイゼンも出方を知り尽くしている。
 慎重にやれば負けることはまず無いのが現状だった。
 時折、有名な神姫を倒して、一気に名を上げようとする初心者が挑んでくるが、その手合いに負けるようなアイゼンではない。
 結果として、アイゼンの戦績と知名度は今日も上がったようで…。
「いや、負けたし」
 って、モノローグぶち壊し。
 パタパタと手を振る祐一と、彼の肩の上で同じ動作をするアイゼン。
「え、マジで?」
「マジ」
「ん」
 美空に問われ頷く悪魔型。
「アイゼンを倒すなんて、一体どんな化け物が…」
 戦々恐々と表情を強張らせるリーナ。
 アイゼンはリーナの知る限り最強の神姫だ。
 自分のレライナを破ったのみならず、フェータにすら圧勝している。
 そして先日のデルタ1。
 神姫の常識を打ち破る非常識な対戦相手を前に一歩も引かず、ついには打ち破ったのがアイゼンなのだ。
 あれがもし、レライナならどうだっただろうか?
 複数方向からの断続的な射撃を何処まで捌けただろうか?
 結果は明白だ。
 どれか一方の敵に近づけば別の敵から射撃を受け、敵はそちらに移動したと信じ込み、そちらに移動してしまっていただろう。
 そうしてまた繰り返し。
 最後まで訳の分からぬままに移動を繰り返し、疲弊した所を蜂の巣にされるのがオチだ。
 つまりあの勝利は、想定外の方向からの攻撃に隙を見せなかったアイゼンと、敵の仕掛けを読み解いた祐一との勝利なのだ。
 そんなペアに勝つ神姫とは一体…。
「じゃーん、それはあたしです!!」
「は?」
 祐一の後から現れたのは幾度か対戦した相手、マヤアとその主だった。
「最近は負けが込んでましたからね。島田君相手の勝利は貴重な勝ち星ですわ」
 マヤアの主、祐一の担任教諭でもある斎藤浅葱が上機嫌で微笑む。
「アイゼンさん、今日は変なバルカンしか持ってなかったんで楽勝でしたわ」
「…マヤアを想定した装備じゃないからな………。お陰でまったくテストにならなかった」
「敵が来たと思ったらマヤアだった。びっくり」
 祐一とアイゼンにとってマヤアは専用装備でしっかりと挑みたい相手だ。
 返す返すも、実力では負けているのである。
「なるほど、本調子じゃなかったのね。どうりで…」
 そういう方向で納得したリーナ。
 言っておくがアイゼンは、対マヤア用に組んだ装備でも負けたことがある。
「あのー。…あたしの話、聞いてくれませんか?」
「…だれ、この人?」
 会話の中で完全に忘れされられた晴香だった。

「…要するに、対戦したいと言うことか?」
「そうです。それでわたし達が勝ったら貴方たちの神姫を貸してもらいます!!」
「ウチらの公演に必要なメンバー、全員壊してくれはりましたんはそちらさんおす。彼女らの復帰まであんじょう働いてもらいますえ?」
「…という事です」
 最後に強引に纏めの台詞を口にする晴香。
 ポニーテールなのは彼女の神姫たちと同じだが、妙に印象が薄い。
 存在感が無いというか、希薄だと言うか………。
 単に美空やリーナが濃いだけかもしれないが………。
「…って、言ってもバトルロイヤルの戦闘中の事だったんでしょ? ルール上、他の11人から袋叩きに在っても仕方が無いシステムだと思うんだけど?」
「参加メンバー12名のうち、10名まではウチの劇団員だったんです。残りの2名が貴方達の神姫みたいな化け物でなければ普通に終わったはずの事です!!」
「…って、実質10対2で負けたって事じゃん。卑怯というならそちらの方が卑怯だと思うけど………?」
「え、それは………」
 祐一の指摘に怯む晴香。
「それは承知しています。ですので、勝負はその事とは無関係だと思ってください」
「単に、そちらさんの進退を賭けてウチらが勝負を挑むだけどす」
 晴香に代わり、彼女の神姫たちが祐一との交渉を再開する。
「…それで、そっちが勝ったら君らの公演を手伝う?」
「さいどす」
「…それじゃあ、こっちが勝ったら?」
「そうどすなぁ。主様の実家の旅館に二泊三日程でいかがどす?」
「ちょ、ちょっとマイナ?」
 自分の実家に話が及び、慌てる晴香。
「主殿、この公演、成功させん訳にはいかんのと違います?」
「そうだけど、お父さんたちに何て言えばいいのよ?」
「素直に話すしかありませんね」
「ちょっと、カレンまで?」
「園長先生はんにアレだけ大見得切って………」
「いまさら中止に出来ますか………?」
「…できません」
 押しの弱いマスターは、神姫に論破されてしまっていた。
「…賭けの対象となる神姫の人数は、勝っても負けても同じどす。こちらが負けた場合、各々の主様方も招待させていただくと思えば、決して不利な話では無いのと違いますん?」
「無論、宿泊費、食費は只です。最高の部屋と食事を、全日程に置いてお約束しましょう」
「海も山も近く、海水浴もハイキングもお楽しみいただけますし、観光スポットとしては申し分ないはずどすえ?」
「近くには神姫センターの併設された遊園地もあります。そちらでの割り引き券もセットしましょう」
 至れり尽くせりである。
 相当切羽詰っているらしい。
「日程は?」
「そちらさんのお望みのままに………」
「わかった、少し相談してくる」
「では、お待ちしております」
 カレンがそう言って頭を下げた。

「…って話なんだけど?」
「いい話じゃない。来週からは夏休みに入るし、海、山、遊園地で遊び放題ってのも魅力だわ」
「参加人数はどうなるの? 祐一たちは一緒に行けるの?」
「それは大丈夫。負けたときに向こうで働く神姫と勝ったときに招待してもらえる神姫は同じだから………」
「直接勝負に参加せずとも、話に加われると言う訳ですわね?」
「…そうですけど、先生も来るんですか?」
「…島田君、何か問題が?」
「…いえ、その」
「………教職員の給料は薄給なんですのよ。………それにこの間マヤアが、マヤアが………」
「あたし? あたしがどうした?」
 名前を呼ばれて反応したマヤアがこちらにやってくる。
 ちなみに、どういう話になったのか、神姫たちは組み体操ごっこで遊んでいた真っ最中。
 マヤアの背後で、逆立ちして足を押さえて貰おうとしていたフェータがひっくり返っていた。
「あたしがどうしたって?」
「…ひょっとして、忘れてしまいましたの?」
「んに?」
「………。よーし、思い出させてやりますわ」
 浅葱は、一見華奢だが、その気になれば鉄板すら貫通する砲弾みたいな拳を握る。
「ま、待て浅葱!! 暴力反対!! ノーモア暴力!! いぢめカッコ悪い!!」
「問答無用ですわ…」
「あの、せんせ?」
「何ですの島田君?」
「本当に先生も来るんですか?」
「何か問題が?」
「はい、姉の件が………」
「あ゛っ、…み、雅ぃ!?」
 まともに顔色を変える浅葱。
 自体の大きさを把握したようだ。
「…っ」
 その隙にマヤアは脱走した。
「先生が行くとなると、絶対あの人も来たがります!!」
「ば、ばれなければ…」
「無理ですね」
「…確かに…」
「かと言って、セタを賭けの対象にして、万が一にでも負けたりしたら………」
「………」
「………」
 地獄を語る術は無い。
 沈黙こそがその表現に他ならなかった。
「…島田君。勝つ自信はお在りですの?」
「こいつ等に聞いてください」
 ぎぎぎ、と首を回し美空とリーナに目をやる浅葱。
「そりゃ、勝つに決まってるでしょ?」
「レライナに勝てる神姫なんてアイゼンとフェータとセタ位だわ」
 …少しずつ名前が増えていくんだろうな、と思いつつ祐一は浅葱を見る。
「せんせ?」
 浅葱は祐一の耳元で囁く。
「…マヤアとアイゼンで出る訳には行きませんの?」
「…いや、それは不味いでしょ?」
「でも、この子達の神姫、偏りが激しすぎません? 相性しだいでは格下の神姫にも敗北しかねませんわよ?」
「それは判っているんですけどね………」
 フェータ、レライナ共に、高速で近寄って強力な打撃を加え、一撃必殺を狙うタイプだ。
 両者共に射撃やトラップなどの攻撃は無い。
「フェータがあんなのに負けるわけ無いでしょ!? それに、レライナもいるなら楽勝に決まってるじゃない!?」
「まったくだわ、さっきのバトルを見てれば無用な心配だったのに」
「………俺の心配事は2つ」
「何よ?」
「…ん?」 
 祐一の言葉に首を傾げる美空とリーナ。
 従姉妹同士だけあって、動作がぴったり同じだった。
「まず第一に、向こうにイーアネイラが居る事」
「ああ、あの魚型?」
「水の外では只の雑魚でしょ、楽勝じゃない」
「水の中だったら?」
「え?」
「あ」
「ステージの話はまだしていないけど、水中戦になったらフェータもレライナもろくな移動手段はなくなるでしょ?」
 移動が出来ないということは、勿論、回避も出来なくなる。
 レライナはともかくフェータの装甲は脆弱だし、レライナにしても回避の為の機動力確保として、鎧が部分的に廃されており、サイフォスの中では比較的装甲が薄い。
 すなわち、回避が出来なければ彼女らの防御手段はなくなると言う事だ。
 更に、近接戦しか出来ないこの二名が移動できないという事は、要するに攻撃も出来ないということだ。
「…つまり、水の中ではお二方とも無力なのですわ」
 浅葱の言葉こそが最初の結論だった。
「だ、大丈夫よ。向こうには紅緒が居るじゃない。先に紅緒を倒しちゃえば、判定負けしないようにイーアネイラも水から出てくるって」
「そうね、二対一と言うのはアレだけど、流石にレライナとフェータを同時に相手できる神姫は居ないでしょう?」
「で、紅緒が水中戦に対応していない保障は?」
「…あ」
「…それは」
 向こうの提案は二対二のタッグマッチ。
 そして、使用するのが紅緒とイーアネイラ。
 連携してくるとは限らないが、相互に援護ぐらいはして来るだろう。
 と、なれば主戦場が食い違っているとは考えにくい。
 もし、主戦場が違うのなら先のリーナの言のとおり、二対一での戦局になるのを防ぐため、一対一の対戦を二回以上、恐らくは二本先取の形式で挑んでくるはずだ。
 それが無いと言うことは…。
「まって祐一。水中戦に紅緒を適応させるより、イーアネイラが陸戦型になっている方が確率は高くない?」
「それはそうだろうね。俺も、多分イーアネイラは陸戦で来ると思う」
 祐一はリーナの推測を肯定する。
「なら!!」
「でも、可能性は可能性」
「万一でもお二人のどちらかが撃破されてしまった場合、イーアネイラが水中に逃げるだけで敗色が濃厚になりますわ」
 どちらにせよ、水中戦と言う鬼門が存在してしまっているのは確かなのだ。
「そして、第二の問題」
「…な、何よ」
「………」
「さっきのバトルロイヤル、12名エントリーできるバトルに12名居る劇団員が10名しかエントリーしていなかった。…その理由は?」
「え?」
「………そうよ、遊ぶつもりでバトルロイヤルをするなら、全員で出ない方が不自然だわ」
 リーナの言うとおり、それは不自然な状況なのだ。
「つまり、あの二人が出ると実力が違いすぎて勝負にならないという事だ」
 その差が、低すぎるのか、高すぎるのか…。
 劇団員10名を打ち破った相手に挑んでくる事を考えれば、どちらなのかは明白である。
「ここからは推測だけど、他の10名を相手にするより、あの2名のほうが強いって事になると思う」
 祐一が口にした推測こそ、第二の問題。
 少なくとも、雅を賭けの対象に出来るほど確実に勝てると言い難い相手だということだ。

 結局、ばれないように気をつける。
 ばれたら雅の分は全員でワリカン。
 という事で話がついた。





 鋼の心の八話です。
 一応新キャラですが、レギュラーじゃないと思います。
 そしてきしぶし!の椿さんの影響を強く受けているキャラがいます。
 (きしぶし!の人さま、ご不快でしたらご一報を…。改変させて頂きます…。)
 次の話は2on2なのでザッピングっぽく場面切り替えを駆使して書いてみようかと思います…。
 リモコン神姫ネタを書きながら、詰ったらこっち書く、などとやっていたらこっちが先に出来ましたです。
 お読みいただきありがとう御座いました、ALCでしたです。




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