翠の月を越え、天翔る者(後編)
右腕に“鬼の手”を身につけたボクは、左手にコライセルを構えたまま、
その巨大な爪を使って、空に印を描くんだよ。そう、この腕は白兵戦より
魔術のブーストに適した物なんだよ。ボクが強く意思するまま、禍々しい
指は前方に複雑な制御用環状魔法陣を描き出して、準備は整ったんだよ。
その巨大な爪を使って、空に印を描くんだよ。そう、この腕は白兵戦より
魔術のブーストに適した物なんだよ。ボクが強く意思するまま、禍々しい
指は前方に複雑な制御用環状魔法陣を描き出して、準備は整ったんだよ。
「彼方の城より疾く来たれ剣王の宝具よ、超越せし力を顕現せよ!」
「な、光球が幾多も生まれて……剣ッ!?剣が光球から生えた……!?」
「これが“呪法錬成宝剣群”……“スペリオル・イグナイト”、だよ」
「……くッ!しかし、そんな十数本も貴女が振るうのですかッ!!」
「な、光球が幾多も生まれて……剣ッ!?剣が光球から生えた……!?」
「これが“呪法錬成宝剣群”……“スペリオル・イグナイト”、だよ」
「……くッ!しかし、そんな十数本も貴女が振るうのですかッ!!」
羽根の様な刃を持った、優雅な光の剣を幾つも周囲に展開する。そう、
この姿のボクは“剣の巫女”。剣型に圧縮した攻撃魔法を産み出す事に
特化した、特殊攻撃モードなんだよ……それは、こうして七種類もある
光の刃をアルマお姉ちゃんの様に一斉に操る事が、まず技の一つ……!
ボクは左腕を振り“ヘル”を光の剣に絡みつかせて、そして念じるよ。
この姿のボクは“剣の巫女”。剣型に圧縮した攻撃魔法を産み出す事に
特化した、特殊攻撃モードなんだよ……それは、こうして七種類もある
光の刃をアルマお姉ちゃんの様に一斉に操る事が、まず技の一つ……!
ボクは左腕を振り“ヘル”を光の剣に絡みつかせて、そして念じるよ。
「ボクが振るう必要はないよ……ゲーンッ(往きなさい、剣よ)!」
「な!?剣が、一斉に……槍襖にする気でしょうが、そう易々と!」
「……ッ、流石に早いんだよ……」
「な!?剣が、一斉に……槍襖にする気でしょうが、そう易々と!」
「……ッ、流石に早いんだよ……」
ボクの意を受けて、剣の雨は一斉にリュミエールさんへと飛びかかる。
でも素早さを誇る彼女の前に、単調な弾道の剣は避けられて……地面に
次々と突き立つんだよ。但し、“垂直”にね?……これが、奥義の鍵!
ついでに“ヘル”も回避されたけど、これも一応は計算の内なんだよ。
でも素早さを誇る彼女の前に、単調な弾道の剣は避けられて……地面に
次々と突き立つんだよ。但し、“垂直”にね?……これが、奥義の鍵!
ついでに“ヘル”も回避されたけど、これも一応は計算の内なんだよ。
「ふぅ……貴女の全力は、この程度なのですか」
「まさか。アルサス、見せてあげてほしいんだよ?」
『Ja(畏まりました)』
「……なっ!?鬼の手を、飛ばした!?……ぐぁっ!?」
「余所見は、感心しないんだよ……?」
「あぐうぅっ!?く、くぅぅ……馬鹿な、手が先程の騎士に……!」
「まさか。アルサス、見せてあげてほしいんだよ?」
『Ja(畏まりました)』
「……なっ!?鬼の手を、飛ばした!?……ぐぁっ!?」
「余所見は、感心しないんだよ……?」
「あぐうぅっ!?く、くぅぅ……馬鹿な、手が先程の騎士に……!」
ボクは真っ直ぐに右腕を伸ばして、“鬼の手”を射出したんだよ。同時に
アルサスは元の騎士型へと戻り、高速で駆け抜けて……先程撃った剣を、
両手に掴みUターン。そのまま背後から、剣の形に“凝集”した魔術を、
連続で叩き付ける!そう、光の剣を振るうのは仲間……アルサスだもん。
圧縮されていた魔術はインパクトの瞬間に炸裂して、炎や雷を撃ち放つ!
そうして彼女を剣の森へ叩き込み、ボクは更なる魔術を起動するんだよ!
アルサスは元の騎士型へと戻り、高速で駆け抜けて……先程撃った剣を、
両手に掴みUターン。そのまま背後から、剣の形に“凝集”した魔術を、
連続で叩き付ける!そう、光の剣を振るうのは仲間……アルサスだもん。
圧縮されていた魔術はインパクトの瞬間に炸裂して、炎や雷を撃ち放つ!
そうして彼女を剣の森へ叩き込み、ボクは更なる魔術を起動するんだよ!
「アルサス、戻ってきて!……貴女は嵌ったんだよ、蜘蛛の巣に!」
「な……?!な、これは……足下のワイヤーと剣が光っている!?」
「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前!神の怒りよ、今此処に!」
「う、うあぁぁぁあっ!?……しまった、逃げ──────」
「……遅いんだよ!秘儀魔法“レイジング・ディヴァイン”ッ!!」
「──────きゃあああぁぁーっ!!?」
「な……?!な、これは……足下のワイヤーと剣が光っている!?」
「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前!神の怒りよ、今此処に!」
「う、うあぁぁぁあっ!?……しまった、逃げ──────」
「……遅いんだよ!秘儀魔法“レイジング・ディヴァイン”ッ!!」
「──────きゃあああぁぁーっ!!?」
刀印を切り、光の剣“スペリオル・イグナイト”に込められていた各種の
エネルギーを一斉に展開させる、そして“鬼の手”がボクの手に戻った、
その瞬間に張り巡らせた“ヘル”を媒介として、力を解放するんだよッ!
同時に、宮廷の天井を劈いて立ち上る光の柱。これが“神の怒り”だよ。
渾然一体となり純化した光の嵐は、彼女に大きなダメージを与えるもん。
……でも、まだ立ち上がる力は残っているみたい。次が、最後かな……?
エネルギーを一斉に展開させる、そして“鬼の手”がボクの手に戻った、
その瞬間に張り巡らせた“ヘル”を媒介として、力を解放するんだよッ!
同時に、宮廷の天井を劈いて立ち上る光の柱。これが“神の怒り”だよ。
渾然一体となり純化した光の嵐は、彼女に大きなダメージを与えるもん。
……でも、まだ立ち上がる力は残っているみたい。次が、最後かな……?
「く、ぅぅ……流石です。ですが私も、騎士の矜持に賭けてッ!」
「……分かってるんだよ。最後はボクも、最大最強の技で立ち向かう」
「有り難うございます。“魔女”にしておくのは惜しいですね……」
「大丈夫。ボクは、魔女も戦乙女も越えて、大いなる者になるよ……!」
「……貴女の仲間も、先程そう言ってましたね。ですが、止めます!」
「……分かってるんだよ。最後はボクも、最大最強の技で立ち向かう」
「有り難うございます。“魔女”にしておくのは惜しいですね……」
「大丈夫。ボクは、魔女も戦乙女も越えて、大いなる者になるよ……!」
「……貴女の仲間も、先程そう言ってましたね。ですが、止めます!」
彼女は闇の剣を横一文字に構えて、力を貯める。ボクはそれを見届けて
コライセルの柄を二倍強まで伸ばすんだよ……彼女の最期の力を込めた
一撃に打ち克ってそのまま勝負を決する為には、一撃必殺のこの技しか
無いもんね。つまりそれは……前の模擬戦で見せた必殺技の、完成形!
コライセルの柄を二倍強まで伸ばすんだよ……彼女の最期の力を込めた
一撃に打ち克ってそのまま勝負を決する為には、一撃必殺のこの技しか
無いもんね。つまりそれは……前の模擬戦で見せた必殺技の、完成形!
「“マビノギオン”、充電カートリッジフルリロード!」
「……ッ、黒い炎が渦を巻いて杖の先端に固まっていく?!」
「これが“光と闇”の名を持つ貴女に供する、太陽の鎚だよ……」
「……ッ、黒い炎が渦を巻いて杖の先端に固まっていく?!」
「これが“光と闇”の名を持つ貴女に供する、太陽の鎚だよ……」
先程までの魔術で電力を消耗した左手の機械に、改めて力を注ぎ込み……
ボクは、一つのイメージを形成させていくんだよ。それは圧倒的な質量と
熱量に重力を誇る、太陽……その権能を今、この手に産み出すんだよッ!
左肘の輪転式カートリッジがフル稼動して、その為に用いるプログラムを
構築し、右の“メギンギョルド”を経由して“魔奏”に注ぎ込む……!!
ボクは、一つのイメージを形成させていくんだよ。それは圧倒的な質量と
熱量に重力を誇る、太陽……その権能を今、この手に産み出すんだよッ!
左肘の輪転式カートリッジがフル稼動して、その為に用いるプログラムを
構築し、右の“メギンギョルド”を経由して“魔奏”に注ぎ込む……!!
「いいでしょう、光と闇は私が得意とする所!返り討ちにします!!」
「……分かったよ。いざ、尋常に……」
『勝負ッ!!』
「……分かったよ。いざ、尋常に……」
『勝負ッ!!』
完成した“太陽の鎚”は、走り出したボクの気迫によって、更に大きさを
増すんだよ。同時に彼方からも、リュミエールさんが“闇の刃”を持って
走り寄ってくる。交錯はほんの一瞬、勝負はただこの一撃のみだよ……!
増すんだよ。同時に彼方からも、リュミエールさんが“闇の刃”を持って
走り寄ってくる。交錯はほんの一瞬、勝負はただこの一撃のみだよ……!
「はぁぁぁぁああああっ!!!」
「輝け、天上の炎!命の躍動を告げる、激しき証となれ!」
「全てを断ち切れ、我が刃ぁぁッ……!!」
「闇を砕け、“コロナ・ヴァニッシュ”……ッ!!!」
「輝け、天上の炎!命の躍動を告げる、激しき証となれ!」
「全てを断ち切れ、我が刃ぁぁッ……!!」
「闇を砕け、“コロナ・ヴァニッシュ”……ッ!!!」
剣と鎚が擦れ合い、エネルギーの波動と爆炎が周囲の全てを包み込む。
ボクが鎚に込めた“黒”の力……極小規模の疑似超重力素子が弾けて、
リュミエールさんの躯を激しく打ち付けるのと、ボクが彼女の刃を胸に
受けるのは、ほぼ同時だったんだよ……そしてそのまま、暫しの静寂。
ボクが鎚に込めた“黒”の力……極小規模の疑似超重力素子が弾けて、
リュミエールさんの躯を激しく打ち付けるのと、ボクが彼女の刃を胸に
受けるのは、ほぼ同時だったんだよ……そしてそのまま、暫しの静寂。
「……よくぞ、ここまで戦いました。クララ、と言いましたか?」
「うぅっ……うん、ボクはクララ……マイスター・槇野晶の妹……!」
「その人は、いい妹を持ったようですね……姉を、大切に……ッ」
「……ありがとう、リュミエールさん。そして、ごめんなさいだよ」
「うぅっ……うん、ボクはクララ……マイスター・槇野晶の妹……!」
「その人は、いい妹を持ったようですね……姉を、大切に……ッ」
「……ありがとう、リュミエールさん。そして、ごめんなさいだよ」
……ボクが杖で躯を支えるのと、剣の折れた彼女が倒れるのは、同時。
確認してみると、ライフは残り1……ギリギリ、ボクが勝ったもんっ。
意識が遠のきながらも、皆の祝福する声が聞こえてくるんだよ……!!
確認してみると、ライフは残り1……ギリギリ、ボクが勝ったもんっ。
意識が遠のきながらも、皆の祝福する声が聞こえてくるんだよ……!!
『ノックアウト!勝者、クララ!!』
『良くやったクララ、見事だッ!!』
『クララちゃん、頑張りましたの♪』
『大丈夫ですか、クララちゃん!?』
「……大丈夫だよ、皆。すぐ帰るね」
『良くやったクララ、見事だッ!!』
『クララちゃん、頑張りましたの♪』
『大丈夫ですか、クララちゃん!?』
「……大丈夫だよ、皆。すぐ帰るね」
──────“妹”としての矜持が、ボクを勝たせたんだよ。