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えむえむえす ~My marriage story~

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The Armed Princess―武装神姫―
ウサギのナミダ
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神姫☆こみゅにけ~しょん
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双子神姫
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武装神姫のリン
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戦う神姫は好きですか
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SHINKI/NEAR TO YOU
Phase02-3 air




 そびえ立つ高層ビル群の合間に、チカとゼリスは降り立った。

 バトルステージ『スカイスクレーパー(摩天楼)』。

 種型ジュビジーの標準武装に身を包んだチカは、慣れていない様子でおっかなびっくりフィールドの周囲をキョロキョロと見渡している。
ジュビジーの特徴的な多形成装甲を纏った手や腰を動かしてみては、その表情が不安そうだったり驚いたり緊張したりと繰る繰る変わるのは、ひょっとしたらバトルどころか武装すること自体が初めてなのかも知れない。

 慣れた様子で街路の先に佇むゼリスとは対照的だった。

 そのゼリスは仮想現実世界で再現された建造物のせめぎ合う交差点の中ほどで、チカに向き合う形で立っている。専用の天馬型武装、蒼と白を基調にした流線的なフォルムに身を包み、トレードマークのポニーテールが風に揺れる。
戦闘前に精神集中力を高めるためか、友人と相対することに思うところがあるのか。瞳を閉じたその姿からは、ゼリスの考えは分からない――。
 出し抜けに二人の間の空間に、CGで描かれた文字が浮かび上がる。



BUSOUSHINKI BATTALE

PLAY A MATCT ZERIS VS CHIKA



 筐体に座った耕一が緊張に身を強張らせ、フィールド上のチカもギュッと手を握り締める。耕一の後ろで見守るシュンたちも自然と力が入る。
 筐体の円形を挟んだ反対側には、神楽さんが悠然と構える。その口元が、筐体から漏れた明かりに彩られる中、薄く笑みを結び――



GAME START



 瞬間、ゼリスが緑の両眼を見開き、フィールドを蒼い風が駆け抜けた――。



   ♪♪♪



 試合開始の直後、チカは突如眼前に現れたゼリスの姿に驚愕した。
状況の認識よりも人工知性に刻まれた本能として、チカはとっさに身を丸め防御の姿勢を取ろうとする。
しかしチカのがく状のアームガードがその身を覆う前に、地を這うような低いフォームでそれを避けたゼリスの、伸び上がるような掌低の一撃が極まっていた。

「ああいっ!?」
「うえ?」
「おお!」

 一堂がそれぞれ驚きの声をあげる中、宙を舞ったチカの体はビルのショーウインドウを突き破り、派手な音と共にガレキに埋もれた。
 開始わずか数秒足らずの、あまりにあっけなさ過ぎる展開。見守っていた誰もが声を失う中、当事者の片方は、しかし落ち着き払った様子でガレキの前へと進み出た。

「……どうしました、この程度で終わりということはないでしょう?」

「う……けほっ」

 ゼリスの呼び掛けに答えるように、ガレキの中からチカが這い出してきた。
 筐体上の立体モニターを仰ぐと、チカのライフポイントは削られはしたもののまだ残っている。

「チカ、大丈夫っ!?」

 上ずったように名を呼ぶ耕一を片手で制し、チカはよろけながら立ち上がる。

「平気……まだまだやれます!」

 手に銃を構え、対戦相手に向き直る。それを見たゼリスは、片足でトントントンと軽くリズムを取りながらゆっくりと語る。

「安心です。あまりにもあっけ無く幕切れてしまうリサイタルなど、興醒めですからね」

 トンッと大きくアスファルトを踏みしめ、ゼリスが疾駆する。それを追いかけるようにチカはスプレイヤーで攻撃。が、大きく横に飛んでその場から離脱されてしまう。
 建物の影に隠れ、ゼリスの姿が視界から消える。慌ててチカは街路を追いかけるが、曲がり角の向こうにもう姿は見えない。

「――チカちゃん、右よっ」

 伊吹の声援でとっさにチカは右に銃弾を放つ。そびえ立つビルのガラスに弾痕が刻まれる中、外壁を飛び移る蒼い影がビルの樹海へ消えていく。

(疾いっ――!?)

 ゼリスの動きに、チカの射撃の腕では追いつかない。もっと距離を詰めようと追いかけてビルに飛び移ろうとするが、戦闘経験のないチカでは思うようにいかず、あっという間に引き離されてしまう。
 追いかけるだけで必死なチカに対し、ゼリスは隙をついてはビルの頭上から猛然と、構造の合間から忽然と、時にはガラスや扉を蹴破り突然と姿を現して攻撃してくる。

「何故あなたは、そこまでヴァイオリンを弾くことにこだわるのですか?」

的確に有効打を与えては、ヒットアンドアウェイ。

「私には、どうしても本物のヴァイオリンが必要なんです」

チカはとっさに反撃に転ずるが、銃を構える先でゼリスは再びビルの奥へと姿を消してしまう。

ゼリスの声がビルの間に反響する「貴方はすでにあれだけの曲が弾けるでしょう?」。

チカは懸命にそれを追う「それはあくまで神姫用のレプリカを使ってです」。

 形こそ逃げているように見えるが、戦いの主導権を握っているのはゼリスの方だ。
 チカも必死のガードで序盤のようなクリーンヒットこそなんとか防ぐものの、ゲージは削られていく一方だ。
 試合経験ゼロのチカとランキング上昇中のゼリスとの勝負なのだから、当然といえば当然の展開といえる。

「ふふ……どうしたい? 防戦一方だね」

 余裕の笑みを浮かべる神楽さんは、いかにもこの状況を楽しんでる様子。……本気で自分が楽しむためにやってるんじゃないだろうな、この人。
 本当に。こんな勝負で一体何になるっていうんだろう?

「チカ……っ」

 耕一は呟きながら、悔しそうに唇を噛んだ。チカと同じく経験のない耕一では、的確な指示で戦いをサポートすることはできない。頑張るチカのためにできることが、ただ見守るしかない。それが歯がゆくて仕方ないのだろう。

 戦況を眺めながら、シュンは思考する。
スピード勝負だと装甲重視のジュビジーじゃ、瞬発力重視のゼリスには敵わない。そうすると、速さで負ける相手に攻撃を当てるには……

「諦めるのは早いわ。ぜっちゃんがどんなに速くても、確実にチカちゃんの攻撃が届く瞬間があるもの」

 伊吹の言葉に耕一が「えっ」と振り向く。伊吹のヤツ……気がついたか。

「〝攻撃する瞬間〟……つまりはカウンターよ。ぜっちゃんが攻撃してくる瞬間を狙うの」

 追いかけても追いつけないなら、相手の方からやってくるのを待てばいい。
 さっきの神楽さんの台詞ではないが、まさしく発想の転換だ。
 攻撃する瞬間なら、チカにもゼリスのいる場所が分かるし、ゼリスといえどとっさの回避はできない。ジュビジーは接近戦型の神姫だ。軽量のゼリス相手なら、タイミングさえあえば一発逆転も可能だろう。

 ただ、この作戦にはひとつ問題がある。

「でも、ゼリスちゃんが攻撃する〝たいみんぐ〟がわからないと、うまくいかないの~」

 伊吹の肩に乗ったワカナが、のんびりした口調で鋭く指摘する。
 その通り。カウンターを狙う作戦はジリ貧な今の展開からすれば、唯一といえる打開策。でも、せっかくのカウンターもタイミングが合わなければ意味がない。
変幻自在の攻めを披露するゼリスからそのタイミングを掴むには、チカは戦闘経験がなさ過ぎる――。

「ぜっちゃんの攻撃してくる瞬間が分かる、いい方法があればいいんだけど……」

 伊吹はそう言いながら、「う~ん?」と唸る。
 その方法が見つけられない限り、作戦が成功する確率は低いだろう。しかし、こうしている間にも、チカのゲージはジワジワ減っている。悩んでいられる時間もあまりない。

 チカの銃撃をゼリスが巧みに避ける。

 タンッタンッタンッ、タターンッ。構造物の間を飛び跳ね、すかさずゼリスは飛び蹴りを放つ。辛うじて防御したチカが体勢を立て直す前に、ゼリスは繰る繰る繰ると軽業師のようにバック転で間合いを取り、素早く物陰に隠れてしまう。
 それでも諦めずに、チカはゼリスを追いかける。チカは必死に頑張っているのに、このまま試合は終わってしまうのか。このまま――

「タンッ、タンッ、タンッ、タターンッ……」

 ふいに聞こえた声にはっとする。
 気づけば耕一が呟きながら、ジッとフィールドの戦いに見入っていた。

「やっぱり……いや、そうだ。……間違いない」

「耕一さん、何か……分かったのか?」

 さっきから独り言のように呟きを繰り返す耕一に、シュンは問いかける。答える耕一の声は確信に満ちていた。

「はい、リズムです。壁や地を駆ける音を聴いていて気づいたんですが、ゼリスさんの動きのリズムが一緒なんですよ。メロディ――立ち回りはつねに変化しているようで、核となる動作のリズムは一定なんです」

 シュンは驚いて耕一を見た。隣から伊吹が期待に声を弾ませる。

「じゃあ、それに合わせてカウンターを決めれば……!」

 耕一は頷くと、決意した表情でそっとチカに呼びかけた。

「チカ……聞いていたかい?」

『はい、ご主人様』

 シートのスピーカからチカの通信音声が送られてくる。耕一はためらいを振り切るように一度瞬きすると、静かにチカに声を掛ける。

「難しい作戦だけれど……君は僕の指揮を信じてくれるかい、チカ?」

 問いかける耕一に、バトルフィールドを駆けるチカが立ち止まる。ゆっくりと振り向いた彼女、自らの信頼するオーナーを見つめる顔にはひかえめな笑みが浮かぶ。

『はい、もちろんです。私は、貴方のコンダクトを信じます』




 筐体のシートにかけながら、耕一が両手をゆっくりと構える。タクト(指揮棒)を持つように軽く握った右手を、ゆっくりと振り出だす。


 タンッ、タンッ、タタッ……


 謡うような囁きに乗って、チカが動きだす。
 はじめはお互いに呼吸を確かめ合うように、アンダンテ(歩くような速さで)。
 街路を駆けながら、チカの動きが変わったことに気づいたのか「何をするつもりか分かりませんが……」ゼリスが問いかける。

「ヴァイオリンがレプリカなら、神姫の奏でるヴァイオリンも、フェイクということになるのですか?」

「それは……」

 チカはゼリスの動きに無理に着いていこうとせず、最小の動きで視界に捉える。

「……違います。ただ……今のままじゃ神姫の作った音色としか聞いてもらえない……」


 防御に徹しつつ、ストリンジェンド(だんだん速く)。


 ゼリスがビルの外壁に足をかけ、そのままナナメに駆け上がる。
 その動きを追いながら、チカはアスファルトを走る。カウンターを合わせるためのタイミングを冷静にうかがう。

「あなたの奏でる音色も、まがい物に過ぎないと?」

「……今のままじゃダメなのっ。だってみんなそう言うもの。これは本物の音色じゃないって……」

「それは偽物の音色……」

「本当のわたしの音色が、聞いてもらえてるんじゃない……わたしの音色を聞いてもらえないっ」

 チカがスプレイヤーを撃つ。

「それでは……あなたの音色とは何ですか?」

 射線をかわすゼリスは、高く飛んで大きく宙返り――そのまま落下と共にかかと落し!

「それは……きゃうっ!?」

 それを何とか抑えたチカは、たたらを踏んで踏み止まる。

「チカさん……あなたの奏でたい音色とは、何ですか?」

 続けてゼリスが身を沈ませる。相手の足を払い手首を、腕を。つかまれた箇所から合気の要領で、チカの体が宙に投げ飛ばされる。

「――――っ!」



 タンッ、タンッ、タタッ……



(私の……私の音色、私の創る音色は……)

 チカは空中で力いっぱい身を捻る。不恰好に、だがしっかりと。受身を取り、体勢を立て直す。
 聞こえる。耕一のささやきが。感じる。耕一のタクトを。

「私の……私の創る音色は……!」

 チカは地を踏みしめる。
 耕一の指揮が、チカに力を、勇気を、想いをくれる。

「私の音色は……ご主人様と共に。耕一さんと創る音色ですっ!」

大きく距離を取ったゼリスが、ビルを周り込みチカの頭上から迫る。



タンッ、タンッ、タンッ、タターンッ……



「――今だっ!」

 耕一が両手を大きく振り下ろす。その指揮の動きと、ゼリスの攻撃、チカの動作がひとつのリズムでもって、調和を満たす。

「私は、耕一さんと共に私の音色を創りたいのっ!」

 力いっぱい、想いを込めて。想いを乗せて。


 アパッシオナート(情熱的に)――!


 ジュビジーの特徴である背部ユニット、キュベレイ・アフェクションが呼応するように、大きく広がる。あたかも種から芽生えた若葉のように――。

「スティンガー・シェルズ零(レイ)!!」

 完璧なタイミングによって作られたアンサンブル(重奏)、迫るゼリスの突きに、チカの渾身のアフェクションが鋭い衝角となって迎え撃つ。
 チカがカウンターを挑んでくることは予想外だったのか、ゼリスが翡翠の瞳を大きく見開いた。

「チカ――っ」

 耕一が叫ぶ。

「ゼリス、避けろっ」

 無数の衝角がゼリスに襲い掛かるのを見て、シュンも思わず身を乗り出す。




 ――激突。眩いエフェクトと轟音の乱舞。




 互いに攻撃を受けたふたりの神姫が弾け飛ぶ。相打ちだ。
 吹き飛ばされたチカとゼリスが、それぞれ別々の場所に落下ダウンする。

「おい、ゼリス大丈夫かっ」

 慌てて飛び出したシュンは、神楽さんを押しのけてゼリスの側に駆け寄る。筐体の向こう側では同じように耕一がチカに呼びかけている。

「ゼリス――っ」

「…………うるさいですね、もう」

 上ずるシュンの声を遮る涼やかな口調。動転するシュンが見つめる前で、ゼリスがむくりと立ち上がった。

「シュン。そのように名を連呼されては、まるで私が『朝遅刻しそうなのに布団から離れられないお子様』のようではありませんか。恥ずかしいです、激しく冷汗三斗です。ただちに中止してください」

 いつも通りのとぼけた台詞。シュンは「ふう」と胸を撫で下ろす。

「よかった、なんともないんだな」

「その通りです。心配する必要など皆無なのですよ」

 それからゼリスはぷいっと横を向く。「……もっとも、バトルには負けてしまいましたが」
 フィールドの向こう側で、片手をつきチカが身を起す。立体モニターに写された表示は、ゼロになったゼリスに対し、わずかながらチカのゲージが残っている事を標している。
 タイムアップ間際での逆転劇。それは確かに、チカを想う耕一と彼を信じるチカの、ふたりの絆が招いた勝利だった。

「やった――っ! チカちゃん、すっご~い♪」

「やった、やったよ~」

 筐体に乗り出さんばかりの伊吹に、ワカナが祝福する。

「あ、あの……私本当に……? あ……」

「ありがとうございます」

 はにかむチカに代わって、耕一が礼を言う。

「耕一さん……」

「頑張ったね、チカ」

 筐体から耕一の元に戻ったチカ。スッと耕一の手が伸び、彼女の頭を優しく撫でる。

「そんな……耕一さんのお陰です。耕一さんが指揮してくれたから……」

「いや、指揮者は奏者の支えをするだけだよ。あくまでも奏者があってこその、楽曲だろう?」

「……はい」

 チカは耕一の手の下で、嬉しそうに頬を赤く染める。
 ふたりの間を温かい光が差す。
いつの間にか止んでいた雨。天井のトップライトからの光が、ふたりを祝福しているかのようだった。
 その光景を見ながら、シュンは頬に手をつき呟いた。

「……結局はこれでよかったってことかな?」

「いえ、まだです」

 そう返すゼリスの視線の先で、神楽さんは「ふっ」と薄い笑いを浮かべた。














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