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 長い長い坂を上り、その先にある門を抜け。
 車が止まったのは、広い駐車場の一角だ。
「……俺はここで待ってるわ。どうせ中、禁煙なんだろ?」
 そう呟いて、運転手の男はタバコに火を着けた。彼は一同をここに連れてくる事だけが目的で、それ以上のことをする気はないらしい。
「あ……うん」
 助手席で途方に暮れていると、ドアが開かれるのは外側から。
「さ、降りて。十貴子ちゃん」
 長身の青年のエスコートを受けて。十貴子と呼ばれた少女は動きを止めたままの相棒を胸に抱き、並ぶ校舎の奥へと進んでいく。
 歩きながら目に入るのは、大ホールに会議場、体育館に講義棟。つい先日、入学試験の受験会場として使われたそこは、十貴子の記憶にもまだ新しい。
 東条学園。
 それが、この場所の名だ。
「少し……急ごうか」
 すいと十貴子の手を取って、青年の歩みが速くなる。十貴子の歩幅に合わせてくれているのか、十貴子が走らなければならないほど速くはないが……それでもペースは確かに上がっていた。
 さらに進んで、二人が辿り着いたのは古びた木造校舎の一つ。ギシギシと鳴る床を無遠慮に踏んで、やがて立ち止まるのは古びたドアの前だ。
「本当は、歓迎会の一つでも開きたいところだけどね……」
 青年はその声と共に、勢いよくドアを開けようとして……立て付けが悪くなっていた扉につんのめり、そのままひっくり返る。
「……やれやれ」
 立ち上がった青年は肩を一つすくめると、今度は両手でドアを持ち上げ、横へガタガタとずらし直す。
「ここは……」
 部屋の中も何のことはない、外と同じ木造の古い作りだった。設備もひととおり整ってはいるようだが、それほど新しいようには見えない。
「さ、そこにジル君を」
 だが、今頼れるのは彼しかいないのもまた事実。
 十貴子は青年に言われるまま、スチール製のメンテナンスベッドに自らの神姫を横たえさせる。普段なら不敵な笑みを見せるストラーフの彼女が、今は死んでいるかのように、ぴくりとも動かない。
「……時間がないからね。すぐ始めるよ、エリアーデ」
 傍らのデスクに着いた青年の言葉に、彼の肩に載っていた神姫……エリアーデが、ベッドの傍らにひょいと飛び降りる。
「ええ」
 ポニーテールに結ばれた赤茶の髪をはらりとなびかせれば、その奥から現れたのはUSBケーブルのコネクタだ。
「フォローよろしくね、倉太」
 そう呟いて、エリアーデはジルを抱きかかえ。

 そっと、唇を重ね合わせた。


マイナスから始める初めての武装神姫

番外編1 後編



 重ねられた唇に、動きを止めていたジルがわずかに身をよじらせる。
「ん……んぅ……っ!」
 口の周りを舐め回され、ねぶるように唇を押し付けられた。繋がった処から中から聞こえてくるぺちゃぺちゃという水音は、ジルの口の中を這い回るエリアーデの舌の音だろうか。
「ン…ちゅ、ちゅぱ………じゅる……」
 時折、エリアーデの喉がこくこくと動いているのが見えた。ジルの口の中から溢れ出した潤滑液を吸い上げ、飲み下しているらしい。
「こ、これ……。何……を?」
 慌てて近寄ろうとすると、長い腕がすいと延ばされ、ボクの動きを遮ろうとする。
 倉太さんだ。
「今の彼女に必要な事さ。神姫同士のこういうの、見たことない?」
 そりゃ、神姫同士のキスシーンを見たことがない……ワケじゃない。けど、こんな非常時にする事でもないはずだ。
「本当は、レディに手荒なことはしたくないんだけどね……」
 でも、倉太さんは自分の神姫のしていることを気にも掛けず。彼女のポニーテールから伸びるUSBケーブルをひょいと取り上げ、パソコンにそのまま接続してみせる。
「ぺちゃ、くちゅ……接続、確認。ちゅぷ…倉太、そろそろ……んっ、いい、わよ……」
 ジルの口内を犯しながら、エリアーデの声が静かに響く。神姫の声は喉で出してるわけじゃないから、キスしながらでも普通に喋ることが出来る。
「ぁ……や、あ……だ、めぇぇ……」
「……ジル?」
 弱々しい拒絶の声は、間違いなくジルの声だった。
 エリアーデが唇を求め、喉を鳴らすたび、ジルの指先がぴくりと震え、発声ユニットからかすれた声がこぼれ落ちる。
「……レディの秘密を無理矢理覗き見るのは趣味じゃないけどね。君を助けるためなら、仕方ない」
 部屋中に濃厚なキスの水音が響く中、倉太さんの周りだけは冷徹なキーボードの音が結界のように取り囲んでいた。
 する事のないボクは、エリアーデに犯されるジルの姿を見ておくことしか出来ないわけで……。
「や、ぁ……ダメ、そこ…見ない……でぇ……。そんな、奥……入っ…ちゃ……ひぁ、アクセス…拒否、できな……っ」
 ……ああ、そうか。
 どうやらボクは、相当頭に血が上っていたらしい。
「見ないでって、言われてもね……」
 滅多に使うことはないけれど、神姫の口はデータ通信のコネクタも兼ねている。USBケーブルを咥えれば簡易的なメンテナンスも可能だし、今のエリアーデのように神姫同士でデータのやりとりも出来るんだった。
 もっとも、それを好んで行う神姫を見たことは……なかったけど。
「こ、ら……ぁ。そんな、とこ……見るな、て……。触る、のも…だ、めぇ……っ」
 胸元をまさぐられ、唇を唾液まみれにされながら、ジルは力なく首を振ろうとするけど……完調のエリアーデに逆らえるだけの力はないらしい。胸部の保護材がふにゃりと形を変えられるたび、聞いたこともないような甘い声を漏らすだけ。
「残念。もう、チェックメイトだよ」
 かちゃりとエンターキーを叩く音がして。
「あ、ひゃぁぁぁぁあぁああぁぁっ!」
 ジルの儚い叫びが、部屋に響き渡る。


 怒った顔。
 困った顔。
 呆れた顔。
 寝顔によそ見、マンガを読んでいる顔に、工具を持った真剣な顔。
 倉太さんのディスプレイに映し出されるのは、いくつもの顔、顔、顔。
 静姉と話してる時の穏やかな顔もあれば、父さんの玩具談義を苦笑混じりに聞いてる顔もある。
 そして、最後に出て来たのが……。
 長髪のカツラを付けた、照れたような笑顔。
「これ……ボク?」
 そう。
 倉太さんがエリアーデを経由して暴こうとしていたもの……ジルのシステムメモリの一番奥にあったのは、一つ残らずボクの顔、だった。
「君、男だったのか……」
 倉太さんが何だか嫌そうな顔をしてるけど、そんなことはどうでもいい。
「見られ、ちゃった……十貴に、見られちゃった…よぅ……」
 まともに動かない体を時折ヒクヒクと痙攣させながら、ジルはうっすらと涙さえ浮かべてる。
「なんで、ジル……」
 ジルはボクの事なんか、別に何とも思ってなかったはずだ。それよりも、大好きなココや、気の合う静姉の記憶を大事にしてそうなものだけど……。
「何でじゃ……ねえよ。……空気くらい、読めるだろ? バカ」
 だって、ここまで予想外のコトされて、空気を読めとか無理じゃない……。
「あーあ。壊れるときまで黙っとこうって思ったのに……。恥ずかしいったら、ありゃしねえ……」
 いつもなら、手が出た後に出るセリフだ。それも、ここまでやったなら、チーグルどころかマオチャオのドリルで何かされてもおかしくない……はずなのに。
 動かないジルの体は、ボクに文句以上に何かすることを許さない。
「……神姫はマスターを慕うものだもの。恥ずかしがる事なんか、ないわ」
 ようやく唇を離したエリアーデが、ジルの目元に浮かんだ涙の粒をそっと拭ってくれた。
「ごめんなさいね、非常時だったから。もしかして……初めて、だったかしら?」
 ついでに新しいティッシュを取ってきて、唾液まみれのジルの口元も綺麗にしてくれる。その様子は、さっきまでジルが蕩けるほどの愛撫をしていた神姫と同一機体だとは……とても思えなかった。
「さて。良い場面だから野暮はしたくないんだけど……これを見てくれるかい? 十貴君」
 エリアーデ達にも見えるよう液晶ディスプレイを回しながら、倉太さんがボクに声を掛けてくる。
 ディスプレイに映るのは、もうボクの顔じゃない。代わりに映し出されたリストを見た瞬間、ボクは自分の目を疑うしかなかった。
「これ……!」


 画面を埋め尽くすチェックリストを彩るのは、エラーを示す真っ赤な文字の列。
 赤のないところは警告のオレンジか、要注意の黄色のどちらかだ。正常・安定を示す青や緑のマーキングなど、どこにも見当たらない。
「心当たりはない? 十貴君」
 倉太さんの言葉に、ボクは首を横に振る。
「だって、今朝チェックしたときだって、問題なかったんですよ? そんな……はずが……」
 そうだ。定期メンテにもちゃんと出してるし、クレイドルの簡易メンテは充電の時に毎日やっている。
 もちろん、そこでエラーが出ればすぐに修理していたし、そもそもこんな大きなエラーが出たことなんか一度もなかったはずなのに。
「ログに偽装の痕跡があったからね。多分、そのせいじゃないかな」
 ……偽装?
 何でそんなことを……。
「ジル君。R18プロテクト、自分でクラッキングしただろ?」
 R18プロテクトっていうのは、いわゆる「エッチなのはいけないと思います」の名言で知られる青少年向けプロテクトの事だ。最近はオンオフがオーナーの自己責任になってる機能だけど。
 自力でクラッキングなんて、そんなことが出来るなんて……。
「……それが?」
 倉太さんの問いを、ジルはあっさりと肯定した。
「そこで出るようになったエラーコードも、自分で矯正プログラムを仕込んだね?」
「したよ」
 再び、肯定。
「……そんな事したら、メインシステムがおかしくならない?」
「なったよ」
 さらに、肯定。
「それも……」
「当然」
 肯定。
 肯定。
 肯定。
 生まれたエラーを、修理を依頼するわけではなく、自ら生成したプログラムで隠蔽する。そこで生まれたエラーも、さらに追加のプログラムで隠蔽する。
 隠蔽に次ぐ隠蔽の果て、それが行き着く先は……。
「今のチェックでシステムを強制解析させてもらったんだけど……メインシステムの致命的なエラーが、千箇所を超えてるんだよね。よくもまあ、今まで保ったものだと思うよ」
「ジルっ!」
「……だって、バレたら怒られるじゃんよ」
 エリアーデの腕の中。ぷい、と視線だけをそらすジル。本当は顔をそらしたいんだろうけど、その余力も残っていないんだろう。
「当たり前だろっ!」
 オンオフの仕様がなかったR18プロテクトも、度重なるパッチで最初期モデルもオンオフが出来るようになっている。それを使えば、自力でクラッキングするなんて危ないことをしなくても、安全に機能をオフにすることが出来るはずなのに……。
 そもそも僕達は今年で十八歳なわけで……もう、R18プロテクトの干渉を受けることはない。
「あ。でも、システムの問題なら……修復ソフトで何とかなりますよね?」
「……ソフト側はね」
 僕の言葉に、倉太さんの表情は変わらない。
「既にCSC・コアユニット・素体基盤のハード面にも致命的な影響が出始めてるから……難しいと思うわよ」
 繋がったままのUSBケーブルから、簡単な操作なら出来るらしい。エリアーデの言葉に従い、エラーだらけのチェックリストが三画面ほどスクロールする。
 ハード側のチェックリストも、赤とオレンジと黄色の三色に染め分けられていた。
「……じゃあ、どうしたら」
 CSCとコアユニット、それを納める素体の基盤。この三つは不可分で、交換することは許されない。
 CSCと基盤を新品に取り替えた今の花姫は先代の花姫とは別人だし、コアユニットをリセットしたクウガは静姉のもとでココに生まれ変わった。
 コアユニットの記憶を転送する方法もあるにはあるけど、受け継がれるのはデータとしての記憶だけ。CSCが生み出す思考パターンや根っこの性格まで受け継ぐことは出来ない。
 そして、そうして生まれた神姫は……以前の神姫とは完全な別存在だ。
「方法は無いワケじゃない」
「え……?」
「そのための、僕だからね」
 そう呟いて、倉太さんは静かに立ち上がった。


 関係者以外立ち入り厳禁。
 大きくそう書かれた部屋の中には、さらに小さな部屋が作られていた。
 木造校舎の中で明らかに浮いている金属製の巨大な箱の中には、ボク達が精密作業に使う工作ケースを大きくしたような物体が置かれている。
「これこそ我らが網延研究室の切り札……量子加工機だよ」
 聞いたことのない名前だ。大学の研究室で切り札扱いされる機械ってことは、日本に何台しかないとか、そのレベルの工作機械なんだろうか。
「これを使えば、現在のジルのCSCや素体基盤を完全に修復再生した状態で……複製することが出来ます」
「それじゃ……!」
 ジルは、ジルのままで元気になるって事?
 ぜひお願いします、と頭を下げようとしたボクだけど……その割には乗り気でない倉太さんの様子に気が付いた。
「ただ……ね。コレをフル稼働させて物作るのって、すごくお金がかかるんだよね」
「……どのくらい、ですか?」
 ものすごい工作機械を使ってオーダーメイドの工作をするんだ。数万とか数十万の単位じゃない、って事は確かだろう。
「聞かない方がいいと思うけどなぁ……。見て分かるだろ? このゼミの機材、中古品ばっかりだって」
 それは薄々感づいていた。逆を言えばこの量子加工機という工作機、他の機材を全て犠牲にしても釣り合うほどの設備、って事なんだろう。
「教えてください」
「後悔しないでよ?」
 くどいほどに前置きして倉太さんが教えてくれた額は、マルの数がなんだかおかしかった。
「……すいません。無理です」
 その数が幾らを意味するのかようやく理解して、ボクはもう一度頭を下げる。
 ボクのバイト代どころか、鋼月家の全財産をはたいても、間違いなく無理っぽい。
「僕だって無理さ。……けど、タダにできる方法がないわけじゃない」
「ホントですか!?」
 だって、あの額だよ?
 普通の学生の稼ぎどころか、普通の社会人のお給料でも無理な額を……タダで!?
「うん。ジルを、ボクのモノにぐふぁっ!」
 言いかけた倉太さんは、横殴りの打撃に吹き飛ばされた。
 いや、あの、高価な機械のある部屋で、そういう事をするのは……。
「ちゃんと方向を決めて殴ってるから、大丈夫よ」
 ……あ、そうですか。
 あと人のモノローグ読まないでください、エリアーデさん。
「ジルには……倉太ではなく、網延ゼミの備品になってもらう事になるわ」
「……備品?」
 ボクの言葉に小さく頷くエリアーデ。
「正確に言えば、『神姫複製実験』の被験体として、網延ゼミの所属下に入ってもらうわ。日常生活も神姫バトルも今までどおりでいいんだけど……週一回の経過報告と、月一回のレポート提出だけお願いしていいかしら?」
「それは、モニターって事?」
「ま、そういう事ね」
 ジルは元々、父さんがEDENから預かってきたモニター神姫だ。
 延長が続いていたそのモニター期間も、去年の春には正式に終了していた。それと同じと思えば、気は楽だけど……。
「あと、これは実験のデメリットなんだけど……複製品の再現率は、現状99.9パーセントなのよね」
 ……え?
「残りの0.1パーセントは……?」
「今のジル君と同じでは、なくなるという事さ。それが記憶か、性格か、何も問題ない箇所かは……分からないけど」
 ようやく起き上がってきた倉太さんが、ボクの問いに答えてくれた。
 それを調べるのも、実験の一部ということなんだろう。
「ま、0.1パーセントが嫌なら、手伝わないのも一つの手よね。ソフト的な補修をして、高い負荷のかかる行動を控えれば……これ以上、症状が進むことはないわ」
 神姫で一番負荷の掛かる行動は、もちろん神姫バトルだ。それをしなければ、ジルは普通に生きられる、って事か。
「そうそう。再生した時は神姫の登録もやりなおしになるからね。バトルも、サードリーグからの再出発になる」
 かといって、生まれ変わっても、今までの戦いの記録は全てリセット。
 どっちも一長一短だ。
「……決めるのは君だよ、十貴君」
 倉太さんはそう言ってくれたけど、考えるまでもない。
 ボクの答えはもう決まっていた。

「お願いします」

 即答したボクに、倉太さんとエリアーデは少し驚いたみたいだった。
「……早いね。相棒の意見は聞かないのかい?」
 倉太さんは呆れ気味にそう呟く。エリアーデは神姫の意見を聞かずに答えたボクに、明らかな非難の目を向けていた。
 だってそんなの、聞くまでもないし。
「戦えないジルは、ジルじゃありませんから」
 彼女はただの神姫じゃない。
 武装神姫だ。
 バトルフィールドに降り立ったときの生き生きとした表情や、強い相手にぶつかった時の隠そうともしない不敵な笑顔。
 戦いの中に喜びを見いだし、強い相手とぶつかる事に生き甲斐を感じる悪魔型に……パッチを当てて穏やかに余生を過ごす姿なんか似合わない。
「いいよね? ジル」
 ちらりとジルのほうを見れば、凍り付いた表情の中、紅い瞳だけがキラキラと輝いていた。
「……答え、聞くのかよ」
 良かった。言い方は怒ってるみたいだけど、喜んでる時の目だ。
「まあ……なんだ。無事に帰れたら、お前自分の神姫をファックしていいぜ」
「ありがと」
 とりあえずそう答えておいたけど、それ、自分のことだって分かってるんだろうか。
「ま、そういう事ならいいんじゃない? 倉太」
 ジルの意志を無視した結論じゃないって事を分かってくれたんだろう。エリアーデは軽く肩をすくめると、大きく広がるポニーテールを揺らし、軽く頷く倉太さんの肩へと飛び乗った。
「やれやれ。またモニターだとよ……。なかなかお前だけの物になれねえな、十貴」
「いいんじゃない? ジルと一緒にはいられるんだから」
 ジルの表情はやっぱり変わらなかったけど、ボクにはいつもの不敵な笑みがしっかりと見えていた。
 成功率は99.9パーセント。残りの0.1パーセントを、何事もないように……そう、祈ろうと思った。
「それからさ、十貴。一つだけ、頼みがあるんだけど……」
「何? ジル」
 ジルは言葉を続けない。何事も即断即決で話す彼女が、この時ばかりは……どうやら、迷っているらしい。
 黙って彼女の言葉を待っていると、やがてジルは言いにくそうに、口の中でいくつかの言葉を転がした。
「……うん。わかってる。いいですよね? 倉太さん」
「キミが構わないなら、ね」


 そしてボクは、ジルの願いどおり、ボク自身の手でジルを部品に戻して、家に帰り……。

 エリアーデさんに唇を奪われ、弱々しい姿となったジルの事を思い出して。
 初めて彼女で、オナニーをした。





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