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えむえむえす ~My marriage story~

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 ヒュゥン……。
 軽やかな作動音と共に、私の意識は覚醒した。
 機体各所の動作チェックの終了を受けて、ゆっくりと視覚素子を起動させる。
 目の前にあるのは、人間の顔。
 性別は女性。まだ少女と呼んだ方がいいのか、幼さの抜け切らないあどけない表情で、こちらをにこにこと見つめている。
「おはよう。気分はいかが?」
「あなたは……マスターですか?」
 いきなりの問いに少女は面食らったのか、軽く目を見開いた。
「あの……」
 けれど、マスターの認証は私達神姫にとって一番大事なこと。マスターを定めなければ、私はどう振る舞えばいいのかさえ分からないのだから。
「ふふ、せっかちなコね?」
 艶やかな長い黒髪を揺らし、少女はくすりと笑う。
「……申し訳ありません。慣れていないもので」
「いいわ。考えたら、あたしも初めてだもの」
 少女の手が私の方へ伸びてくる。色白の細い指が、私の頭をそっと撫でてくれた。
「あ……」
 そのまま背中に手を回され、ひょいとお尻からすくい上げられてしまう。
 バランスを取り戻すよりも早く、少女の細い指が私の足とお尻を包み込み、私を支える椅子となってくれた。
「私は戸田静香。あなたのマスターよ」
「戸田静香様……マスターと認証しました」
 登録完了。
 これで、最初にすべきことは終わった。
「マスターっていうのも堅苦しいわね。静香でいいわ、ココ」
「……ココ?」
「あなたの名前。孤高に哮るモノと書いて孤哮。……気に入らない?」
「いえ、いきなりだったもので……」
 そういえば、私自身の名前のことなど思いつきもしなかった。
「だって、そう呼びたくてたまらなかったんだもの」
 ずっと考えてたのよ、と、静香はぷうと頬を膨らませて拗ねてみせる。
 話し方こそ大人びているが、仕草はどちらかといえば子供っぽい人だ。
「マスタ……静香も相当せっかちですね」
「似たもの同士、ってこと?」
「……はい」
「じゃ、さっきのあたしはココみたいな顔してたわけ……?」
「え? 私、そんな変な顔してましたか?」
「してたわよ。すごく」
 私と静香。
 顔を見合わせ、くすくすと笑う。
「ま、いいわ。似たもの同士なら、仲良くやれるはずよね。きっと」
「はい!」
 笑顔の静香は私を手に乗せたまま立ち上がり……。
「それじゃ……」

 そして。
 私にとって、地獄の日々が始まった。


魔女っ子神姫ドキドキハウリン

その1



 廃墟を貫いたのは、一条の閃光だった。
 直線軌道の粒子砲だ。左から放たれた光条の源には、相手であるアーンヴァルが……。
「ココ、右に突撃っ!」
「え!?」
 けれど、静香の出した指示は正反対。
「いいから!」
「は、はいっ!」
 黒いコートの裾を翻し、言われるがままに突撃する。

 果たして、そこにいた。

「くっ!」
 正面には、砲撃戦どころか近接装備に身を包んだ純白の神姫の姿。
 なら、後ろには……?
「……ぷちマスィーンズ!」
 本来ならマオチャオのオプションであるはずの、子猫型のメカニック。使い方にクセが有りすぎて、他の神姫は滅多に使わないのだが……。
 そこまで見据えて、フェイントに使っていたらしい。
「だがっ!」
 叫ぶより迅く短刀を放ち、粒子砲の次弾を放とうとしていたぷちマスィーンズを叩き落とす。
 走りながらコートの裾に仕込まれた替えの短刀を引き抜き、一気に間合を詰める。空から砲撃を仕掛けられてはこちらに勝ち目はないが、同じ近接戦装備なら互角の勝負に持ち込めるはず。
「甘いですわ!」
 振り抜かれたのはアーンヴァル標準装備のビームサーベルではなかった。両手持ちの大剣が鋭く閃き、私の構えていた短刀を力任せに弾き飛ばす。
「ちっ!」
 拾いに行く暇などない。コートの裾から次の短刀を引き抜き、バックステップ。
 相手が構え直すと同時、こちらも構えを取り直す。
「ココ、突撃よ!」
「ですが静香!」
 大剣の間合は広く、打撃は重い。私の戦闘コートには装甲が仕込まれているとはいえ、一撃食らえば大ダメージは免れない。
「アレを使えば、あなたのスピードなら大丈夫でしょ?」
 静香の言葉に、私の反応が一瞬遅れた。
「覚悟なさい!」
 ……迅いっ!
 相手の斬撃を避けきれず、振り下ろされた鋼の刃にコートの裾が引きちぎられる。
 バラバラと散らばる短刀からとっさに二本を拾い上げ。駆け抜けた相手の背を見れば、翼を外した飛行ユニットの姿があった。どうやらあれが超加速の秘密らしい。
「あ……アレ、ですか」
 小さなターンで切り返し、超低空飛行で迫り来るアーンヴァルを見据えたまま、私は呟く。
「それとも、いきなり全開で行きたい?」
 それだけは、嫌だった。
「う……」
 背に腹は代えられない。
「これで最後!」
 大剣を正面に構え、アーンヴァルは全速の突撃。ランスの突撃に等しいそれは、避けられなければ私の体を容易に貫くだろう。
「そうは……」
 だが。
 迫り来る戦乙女の視界を、闇が覆い尽くした。
「なっ!?」 
 突然の視界の暗転に、アーンヴァルの悲鳴が響き渡る。
「いかないっ!」
 脱ぎ捨てたコートに視界を奪われた白き戦乙女に、私は両手の短刀を叩き込んだ。
「よくやったわ、ココ」
「……光栄です」
 消えていく近接戦アーンヴァルの姿を見下ろしながら、私はぼんやりと呟いた。
「稼働中の神姫は貴女を入れてあと三体よ。もう一息、頑張って」
「……はい」
 それは視界の隅に呼び出した戦況表示で分かっている。交戦中であろう二体のうち、勝ち残った一体がこちらにやって来るはずだ。
「どうしたの? 元気ないわね」
「いえ……」
 アーンヴァルが消えた後には、裾を引き裂かれ、背中を貫かれた黒いコートだけが残っている。
 散らばった短刀を二本拾い、腿の追加ホルスターに放り込んでおく。
「コートなら気にしないで。バーチャル戦闘なのだから、本当に破れたわけではないし」
「それは分かっているのですが……」
 腰の後ろに付けていた予備装備を外し、とりあえずの戦闘準備は完了する。
「ああもう、可愛いわね……」
 どうやら、静香は私が破れたコートを気にしていると思っているらしい。
 別に、そういうわけではないのだけれど……。
「あ、あと二体になった。来るわよ、ココ」
「……はい」
 それを今言っても仕方がない。
 私は武器を提げ、相手の到着を待つ。


 現われたのは、黄色い大型鎧を身に付けたマオチャオだった。
「……キミが最後の一人?」
「そうだ」
 今更ハウリンタイプが珍しいとは思わないが……マオチャオは、静かに立つ私を驚いたような顔で見つめている。
「……その格好で戦ってたの?」
 う……。
「だってそれ、どう見ても……」
「い……言うなっ!」
「セーラー服……」
「言うなーっ!」
 そう。
 黒いコートの下は、あろうことか……セーラー服だった。もちろん市販の物なんかじゃない。戦闘に耐えうる強度を持ち、ちゃんと黒コートの下に着られるよう、静香が作ったものだ。
 ご丁寧に、通学カバンまで付いている。
「へぇ……」
「マスターの趣味なんだ。そんな目で見ないでくれ……」
 ……静香が器用すぎるんだ。いくら学校で手芸部の部長だからって、こんなものまで作らなくて良いのに。
「ま、いいや。キミに勝って、ご主人様にほめてもらうんだからっ!」
 それが、開戦の合図となった。


 マオチャオが迫ってくる。
 重厚な鎧に身を包み、爪をはめた両腕を大きく広げ、大地を素早く蹴りつけて迫り来る。
 上体は揺るがず、こちらの動きに即応できる体勢だ。無理な姿勢で走っているため本来ならスピードが幾らか落ちるはずだが、素のスピードが速いからかそんな気配は全く見られない。
「てええええいっ!」
 スピードに乗せての正拳突きかと思いきや、放たれたのは上から振りかぶる大振りの一撃だった。
(素人か……?)
 こんなもの、右のステップで大振りをやり過ごして、そのままカウンターを叩き付ければお終いだ。
「あま……」
 私のシミュレート通り、右のステップで大振りをやり過ごして……。
「ココ、右防御っ!」
「!!」
 静香の声に、考えるより速く体が反応する。
 直後。とっさに構えた学生カバンに来たのは、横殴りの衝撃だった。
 しかも、右から。
 装甲板を仕込んだカバンを挟んですら、その一撃は強く、重かった。
「……何!?」
 マオチャオの攻撃は右手、上からだったはず。なぜ、攻撃の来るはずがない右側から……。
「ココ、弾幕!」
「はっ!」
 盾代わりの学生カバンで相手の謎の攻撃を押し返し、そのまま取っ手のトリガーを引き絞った。カバンに仕込まれたマシンガンが火を吹き、私の前を扇状に薙ぎ払う。  弾幕を避け、後ろに飛んだマオチャオの背中にあるのは……。
「四本腕!?」
 ストラーフの使うサブアームがセットされているではないか。
「ありゃ、バレちゃった」
 くるくると宙返りをして、マオチャオはその場にすいと降りたった。
「……よく考えたものだ」
 サブアームの関節を限界まで後ろ側に回し、こちらの不意を突いて攻撃する。まとった鎧と大型腕は、攻撃のためでも防御のためでもなく、サブアームを隠すための覆いだったのだ。
「せっかく上手くいくと思ったのに。ちぇー」
 ぶー、と口をとがらせるマオチャオに、ダメージを受けた様子はない。いくら覆い代わりの鎧とはいえ、鎧は鎧。私のマシンガンは牽制以上の意味を持たなかったらしい。
「ま、いいや。キミの武器、全然痛くないし」
 ……さて困った。
 今の私の武器は、カバンに仕込まれたマシンガンと、足の短刀だけ。短刀で装甲の隙を狙うことは出来るけれど、それにはサブアームが邪魔だし……かといって距離を置いてはそもそも戦いにならない。
 どうするか……。
「楽しそうね、ココ」
 攻勢に転じたマオチャオの乱打をバックステップで捌きながら、私はやれやれとぼやく。
「楽しいわけないでしょう」
 そう言いながらも、私は自分の口元に笑みが浮かんでいることを自覚していた。
「静香の作ってくれた服がボロボロだ」
 短刀が腕の重装甲に弾かれ、その隙を突いてサブアームが襲いかかって来る。
「嬉しいこと言ってくれるじゃない」
 わざと体勢を崩して地面を転がり、落ちている予備の短刀を拾い上げ、ひと挙動で起き上がって再びダッシュ。
「でも、楽しくてたまらないでしょ?」
「……」
 もう否定できなかった。
 私は武装神姫……戦士だ。
 戦うために生まれた私が、戦いを楽しまぬはずがない。
「上に翔んで!」
 そして静香の助言は、私をさらに強くしてくれる。
 最高の主人だと、胸を張って……
「ココ。そろそろ、切り札を切るべきじゃなくて?」
 ………………。
 胸を……張って……。
「ちっ!」
 迷う私に対してマオチャオには寸分の迷いもない。サブアームを支えに、無茶苦茶な体勢から蹴りを叩き込んでくる。足の装甲が強靱なキック力をさらに倍加させ、私の体を吹き飛ばした。
「ココ!」
 空中で大地に片手を叩き付け、全身を使って姿勢制御。両足に大地の感触を得た瞬間、伸びきった足でムリヤリに跳躍する。
 足元を駆け抜けるのは、四本の腕を正面に構えたマオチャオの姿だ。あと一瞬回避が遅れれば、あの槍ぶすまの餌食になっていたはず。
「……はぁ」
 着地する。
 こちらに向きを変えようとしている四本腕の猛獣を見据え、はぁとため息。
 無理だ。
 勝てない。
 ……今のままでは。
「やります、静香」
「そうこなくっちゃ」
 私が大ピンチだというのに、静香の声は底抜けに明るい。
 たぶん、この大会中で一番楽しい瞬間なんだろう。
「……にゃ?」
 学生カバンを天高く放り投げ、私はヤケクソ気味……いや、全てを捨てて叫んだ。
「変身っ!」
 カバンに仕込まれた閃光弾が炸裂し、世界を真っ白に変えていく。


「にゃ……にゃああっ!」
 四本腕のマオチャオは真っ白な世界の中、思わず悲鳴を上げていた。
「……にゃ!?」
 その光の中、容赦なく牙を剥くのは凄まじく重い衝撃だ。
 それこそ、マオチャオのまとう甲冑を打ち砕くほどに。
「にゃああっ!」
 こんな強力な火器、あのハウリンは持っていなかったはず。
 ならば……誰が……?
「にゃぁ……」
 ようやく視界が戻ってきた。  周囲に誰もいないのを確かめ、ダメージログをチェック。弾着のあった方向を割り出せば……。
「な……」
 そこにいたのは、先程のハウリンだ。
「うう……」
 唯一違っていたのは。
「近寄られる前に、カタを付けたかったのに……」
 先程のセーラー服など影も形もない。
 ふわふわのスカートに、ひらひらのドレス。戦闘動作を妨げないよう、入念に位置決めされた大きなフリル。
 そして両手で抱えるのは、妙に愛らしい装飾を施された長銃身砲。
 まさか、こんなものをセーラー服の下に仕込んでいたなどとは……誰も思わないだろう。
「ほら、ココ! 名乗って名乗って!」
 呆然としているマオチャオを前に、静香はこの上なく楽しそうに指示を送る。
「あ、愛ある限り戦いましょう! ま、ま、ま……」
「ココ! 教えたでしょ!」
「ま、魔女っ子神姫ドキドキハウリン! ここに、はいぱー☆降臨っ!」
 ふりかざした身の丈ほどの長銃身砲は、魔法のステッキを模しているらしい。これも、背部のアタッチメントに折り畳んで付けてあったものだ。
「……それ、なんてコスプレ?」
「い、言うなーーーーーーーーーーーーーーーっ!」
 ごすっ。
 振り下ろされた魔法のステッキが、マオチャオの頭部を直撃した。
「……魔法じゃないじゃん……」
「…………言うなって」
 倒れ込むマオチャオよりも力なく、ドキドキハウリンは静かに呟くのだった。


 その帰り道。
 静香のトートバックには、バトルロイヤル優勝のトロフィーが無造作に突っ込まれていた。
「…………静香」
 私はバッグの反対側の肩に座り、呟く。
 我ながら、弱々しい声だけれど……優勝を喜ぶ気分には、とてもなれない。
「なぁに?」
 私とは対照的に、静香の機嫌はすこぶる良好だ。
「あれ、やめませんか?」
「あれって?」
 分かってるクセに……。
「あの魔女っ子です」
 それ以上は口にもしたくない。
「ああ、ドキドキハウリン?」
 だから、言わないでくださいってば。
「どして? 可愛いのにー。他のみんなにも大好評だったじゃない」
「いやもうなんというか、恥ずかしくてたまらないのですが……」
 セーラー服でさえ恥ずかしいのに……あんな格好、恥ずかしすぎてAIがオーバーヒートしそうになる。
 今着ている黒いコートだけで、十分なのだけれど。
「えーっ! あたし、あれやらせたくてあなたを買ってきたのよ?」
 いやもう、ホントに勘弁してください。
 美人で優しくて、服や小物も作ってくれて、戦闘指揮は近辺ではトップクラス。これさえなければ、才色兼備の本当にいいマスターなのに……。
「静香……」
 私はしばらく考え、以前からずっと考えていたことを口にしてみた。
 「こういうのは、どちらかといえばアーンヴァルとかマオチャオの方が似合うんじゃないでしょうか……」
 静香の神姫は私一人で、他の神姫を持っていない。
 彼女のたった一人の神姫というのは誇らしくはあるけれど、あんな格好を毎度毎度させられてはその誇りもボロボロだ。
 それくらいなら、あの格好を喜ぶ神姫をもう一人買ってきてくれた方がどれだけ幸せなことか。
 私はバトルランキング専用でいい。静香と共に戦えるだけで、私は十分幸せなのだから。
 っていうか、戦うだけにしてください。お願い。
「あなただからいいんじゃない」
「……うう」
 それ、卑怯です、静香。
「……静香もあの格好をしてみればわかります」
 思わず口にして、後悔する。
 いくら嫌な主とはいえ、あんな格好をさせるのは……。
「あら、奇遇ね」
 しのびな……。
「もうちょっとであたし用のコスチュームが出来るのよねー。さすがに三段早着替えのギミックは入れられなかったけど……完成したら、お揃いよ?」
「ちょ、ちょっと!」
 正気ですか、静香。
「さて。ココもものすごく乗り気だし、頑張って仕上げなくっちゃ!」
「か、勘弁してくださいっ!」

 私の地獄の日々は、まだ当分終わりそうにない。





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