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2036の風
剣は紅い花の誇り
クラブハンド・フォートブラッグ
ホワイトファング・ハウリングソウル
ハウリングソウル
ウサギのナミダ
アスカ・シンカロン
引きこもりと神姫
キズナのキセキ
魔女っ子神姫☆ドキドキハウリン
浸食機械
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2015年

えむえむえす ~My marriage story~

2014年

ぶそしき! これから!?
デュアル・マインド
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悪魔に憑かれた微駄男
Nagi the combat princess
えむえむえす ~My marriage story~

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深み填りと這上姫
キズナのキセキ
武装食堂
二アー・トゥ・ユー

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類は神姫を呼ぶ
浸食機械
引きこもりと神姫
ライドオン204X
フツノミタマ
白濁!? 阪高神姫部
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流れ流れて神姫無頼
アスカ・シンカロン
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天海市神姫黙示録
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車輪の姫君
樫坂家の事情!
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おまかせ♪ホーリーベル
戦うことを忘れた武装神姫
Gene Less
The Armed Princess―武装神姫―
ウサギのナミダ
PRINCESS BRAVE
神姫☆こみゅにけ~しょん
アルトアイネス奮闘姫
ロンド・ロンド

2009年

せつなの武装神姫
双子神姫
鋼の心 ~Eisen Herz~
犬子さんの土下座ライフ。
狛犬はうりん劇場
Memories of Not Forgetting
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武装神姫のリン
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師匠と弟子
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橘明人とかしまし神姫たちの日常日記
戦う神姫は好きですか
スロウ・ライフ
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妄想神姫
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武装神姫~ストライカーズ・ソウル~
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ホワイトファング・ハウリングソウル
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 夜。
 寒さが強くなってきた、夜の商店街。
 そこに氷雪恋は立っていた。
 玩具屋のショーケース、そこに飾られている武装神姫。
 それを恋はずっと見つめていた。
 買えない。お金がない。小学生のお小遣いではとても足りない。
 そこに男たちが声をかける。
「ねぇお嬢ちゃん、神姫欲しいの?」
「俺たちが買ってあげようか?」
 下心丸出しの下卑た笑い。
「ちょっとビデオ撮らせてくれるだけでいいからさぁ」
「そうそう」
 無言を肯定と受け取ったか、男たちは恋の手首を掴み、路地裏へと連れて行く。
 恋はただ無言のまま連れられ、夜の闇に消えていった。


神姫狩人 第三話


FOUNDLING DOG WALTZ


「納得、いかねぇ」
 時刻は土曜の昼、場所は警察署。
 桐沢静真(きりさわしずま)は、不貞腐れていた。
「なんで俺がケンカでしょっぴかれなきゃならねーんだ、くそっ!?
 おまけにあのクソ兄貴っ!」
 ここから回想。
『あ、もしもし警察ですけど。仕事中に申し訳ありません。実はお宅の弟さんが…』
『ウチにそんな弟はいないので煮るなり焼くなり犯すなり好きにしちゃってください。あと伝言よろしく。強く生きろ赤の他人、さいでに泊まってけ。兄は忙しいのだ。以上』
『……だそうだが?』
 警官が同情したような目で見る。
『チクショーッ!?』
『なんかお前も大変だな……まあ強く生きろ少年』
 短いが回想終わり。
「あーくそ、気分悪っ」
 足元に転がっていた空き缶を思いっきり蹴飛ばす。からん、といい音を立てて盛大に転がっていく。
 空を大きく飛んだ、わけではないのはご愛嬌。
「きゃっ」
 空き缶が転がった先から、女の子の声が聞こえた。
「んぁ?」
 静真がその方向を見る。
「お前は……昨日の」
 そこには、沈んだ表情で恋が立っていた。
「あの……昨日は、ありがとうございました……」

 状況を端的に記すと、恋が男たちに連れ込まれたときに静真が都合よく現れて助けた、
 ただそれだけの話である。うん、よくある話だ。
 ただ、ちょうど静真が腹の虫が最悪に悪かった時だったので路地裏どころか表通りでの大乱闘になってしまい、血ぃ出るわ粗大ゴミは飛ぶわの大立ち回り。
 恋はそのあまりの乱闘ぶりに怖くなって逃走。まあ小学生の女の子だから当然といえば当然である。
 かくて、「女の子を助けに入った」という美談部分は被害者逃亡のために無かったことになり、あとはものすごい大乱闘だけが残る。かくして見事に警察行き。
 いちいち女の子を助けに入った、とあえて言うのもかっこつけてるみたいでなんか嫌だし、相手の男たちは自分らの悪事を自分から吐く訳もない。
 ギャラリーのみなさんは事情を知らず喧嘩しか見ていない、かくして単なる傷害事件の出来上がり、というわけであった。
 まあ、静真や相手が未成年の高校生なのが幸いであった。相手は元々普段から素行の悪い不良たちであったため、静真も停学ぐらいで済むという話。
 ちなみに、いまさら停学になった所で問題はない。何故なら皆勤賞の野望は先月に兄によって阻まれてしまったからである。おのれ。

「ま、そういうわけだから気にするなよ。元々ムシャクシャしてたから丁度いい、ってばかりに自分で売ったケンカだし。だからお前にどうこう言うつもりはねぇし」
 静真は歩きながら恋に言う。
「でも……」
「そうよ。静真の自業自得だもの。貴女が気にする必要はないわ」
 静真の鞄から声がする。
「!?」
「おい、ベル…っ、外で出るなって」
 静真の静止も聞かず、カバンのジッパーが内側から開けられ、小さな人影が飛び出す。
「武装…神姫…?」
 静真の肩にのったそれは、悪魔型、ストラーフタイプ。
 ただひとつ違うのは、ボディがまるでアーンヴァルタイプかのように、白い事。そして、巫女服のような神姫サイズの衣服を着ていることだった。ちなみに、巫女服のような、と称したのは、袴部分がミニスカート状になっているからである。
「ええ、そうよ。初めましてお嬢さん。私はベル。よくありそうな名前なのは静真のネーミングセンスの悪さだから気にしないで」 
「だからお前はオーナーを敬うって気持ちをだな…ん? どうした?」
 恋がベルを凝視していることに気づいた静真が問いかける。
「いえ……なんでもないです」
「なんでもないことないだろ。あ、いやな、この服は俺の趣味じゃないぞ、こいつが服を着せろってうるさくて」
「そうじゃないんです。ただ……ちょっと、思い出してしまって」
「武装神姫…?」
「はい……」
 それきり、恋はしばらくの間、口を閉ざす。ややあって、ぽつり、と言った。
「私も、神姫が欲しかったんです。そして、その願いはかなったけど……」
「けど?」
「……殺されたんです。いきなり襲われて。
 わかってる、本当はそれでよかったんだって。私は……でも、それでも、あの子は私の友達だった…」
(……)
 事情はわからない。静真にはわかるはずもない。彼女はきっと色々な事があったのだろう。
 その傷は彼女自身のもので、知り合ったばかりの自分が口を出していいものではないのだろう。
(でもまあ、ほっとけねぇよなぁ)
 関係ないと突き放すのは簡単だが、それはなんというか嫌だと思う。美学、なんて大層なものじゃない。性分、ってやつだろう。
 静真は恋に追いついて言う。
「恋ちゃん、だったっけ。今時間ある? ちょっと見せたい、面白い場所があるんだけど」




「レンタルシンキブース…?」
 恋は、その店の看板を読み上げる。
「ああ。ま、入って入って」
「お邪魔します…」
 自動ドアの前に立ち、中に入る。すると、
「いらっしゃいませにゃーーーっ☆」
 いきなり、甲高い声が響いた。
 テーブルの上にさらにテーブル。小さい。そしてそこに猫型MMS、マオチャオが座り、笑顔で手を振っている。
「ここは…? え、ええと、こんにちは……」
「うにゃ。お客さん初めてだネ? アタシは受付嬢のマオファ。よろしく。んー、しかし…しずっち、まさかお前さんがロリコンだったとは痛たっ!?」
 静真のデコピンがマオファに炸裂する。
「黙れバカ猫。香織さんは?」
「てんちょーならすぐくると思うけど。それよりも誰がバカ猫だにゃ、だいたい…」
「え、ええと……?」
 展開においつけずにうろたえる恋。
 そのとき、受付の奥のドアが開く。
 そこから現れた20代半ばぐらいの眼鏡の女性が、マオファをひょい、と掴みあげる。
「うにゃ?」
「はいごめんねー。あら静真君じゃなーい、久しぶりやなー。何やそちらのお嬢さんは? 何、キミロリコンやったん?」
「はははははははははあんたら揃いも揃ってなあこんちくしょう」
「日ごろの行いね」
「てめぇまでっ!? あー、ごほん。えーと、ここはだな」
「まあまあ」
 女性…香織が静真の言葉をさえぎる。
「百聞は一見にしかずや。見てもらったほうが早いし、びっくりすると思うけどな?」


「わぁ……」
 思わず声が漏れる。
 広い部屋は、デパートや遊園地の遊具スペースのような様々なおもちゃが置いてあり、そこには子供たちと、武装神姫が遊んでいた。
「武装神姫……こんなに」
「そや。たくさんおるやろ? この店はな、武装神姫を貸し出して遊んでもらう店やねん。
 ある意味、神姫たちの孤児院みたいでもあるわな」
「孤児院…?」
 香織に続き、ベルが言う。
「そう。ここの半数の子たちはね、捨て神姫なの。人間の都合で捨てられた子、飽きられた子、壊されてそのまま廃棄を待つだけだった子……それを物好きなこの人が、借金してまで買い集めたりあるいは貰ったりして来て」
「ベルちゃんあのな。物好きはないやろ」
「じゃあ酔狂、ね。新しく売るんじゃなくて、子供のお小遣いで借りれるような金額で貸し出すなんて、酔狂もいいところ。儲け、出てないんでしょう? まったく、理解できないわ」
「あいかわらず言うことキツいなぁ。まあソコがかわいいんやけどね」
「そぅかぁ?」
 静真が嫌な顔をする。
「そうや。んーと、こほん。まあそんなワケでな。武装神姫って、結構高いやろ? 特に拡張パーツやらなにやらそろえたりとかはとても子供じゃ無理や。
 親に買ってもらえたり、お年玉貯金でどうにか出来る子はまだええ。
 でも買えん子はぎょーさんおる。わかるやろ」
「はい……」
「そんな子たちのためにやな、武装神姫を貸し出して、遊んだり話したりする店や、ここは。
 武装神姫は人間の友達、パートナーや。人間は、特に子供たちはもっともっと神姫と触れ合わなあかん。ロボット技術が発達して文明が豊かになっても、大切なものは何も変わらん。
 心や。心と心の触れ合い、コミニュケーションが大切や。
 そしてせっかくの心をもった人間のパートナーとなれるロボット。こりゃもう、触れ合う機会はあればあるほどええ。違うか?」
「違わないと、思います…」
 目を輝かせる香織に、恋も頷く。
「まあ、えらそな事言うとるけどな、確かにベルちゃんの言うとおりに酔狂かもしれへん。
 だけど見てみ。ここに来てくれる子供たちの笑顔。
 私はこれが見たくてこの商売やってんねや」
 香織に促されて、恋は見回す。
 確かに、そこには笑顔があった。

 ……私も、あんなふうに笑えるのかな。

 恋は思う。
 思えば。サマエルと共にいた時、私はこんな風に笑えていただろうか。
 覚えていない。
 それが、寂しかった。



 この店には、神姫サイズの遊戯場から、神姫のオンライン仮想バトルの機械まで揃っていた。
 バトルに関しては店の性質上、公式リーグへの登録は行わずにオンラインでの草バトルを行っているらしい。
 確かに、レンタル屋という性質上、ひとつの神姫のオーナーは毎回変わるし色々と面倒だから、だ。だがそれで特に不都合はないとのことである。
 確かにこの店の客層は、いずれ神姫を購入し公式リーグで戦うための練習を行うユーザーや、単純に神姫と遊ぶ目的の子供などが大半を占めている。
 まあ、中には……

「はぁはぁ犬子たんの素体萌え~」
「お股を開いたり閉じたりさせて下さい!」

 なんてのもいるのだが。あ、撃たれた。
 閑話休題。
 客はここに用意されている神姫たちを指名して借り受ける。値段は、店内では一日500円、一泊二日で800円。
 人気のある神姫は中々借りることもできないのも、「レンタルビデオ屋と同じ」である。
 そこ、間違ってもホ○テ○みたいと言うな。

「……」
 だが、恋はその光景を黙って見ているだけだった。
 お金は確かに、神姫と遊ぶくらいのお金はある。しかし、どうにも気が乗らないのだ。
 考えることが多すぎる。考えてしまうことが多すぎる。
 捨てられた神姫。壊された神姫。ここにいる大半は、そうして死んでいく運命だった成れの果て。
 捨て犬。捨てられたペット。ゴミ。いらない子。
 そういう単語が次から次へと浮かぶ。
 だから、思ってもいないこと、思ってはいけないことが次々と浮かぶ。
 サマエルの眼差し。友達だった。友達だった? 本当に?
 あの女は言った、操られていると。
 それは嘘。私は自分の意思で。自分の意思で? 自分の意思で多くの神姫を操った?
 違う。
 何が違うの?
 友達? 笑わせる。道具のように扱った。道具のように扱われた。だから道具のように。
 友達という言葉で隠して、自分の醜い欲望を隠して。
 何が違う。
 ここにいる神姫たちを捨てたオーナーたちと……何が違う!
 ――何も、違わない。
 だから私は、ここにいる子たちのように笑う資格はない。笑う権利もない。
「お、おい恋ちゃん!?」
 恋は、罪悪感に苛まされて立ち上がり、走り去る。静真はあわてて後を追おうとするが、しかしベルに止められた。
「放っておきなさい」
「でもよ……!」
 ベルは神姫サイズの湯のみにお茶を淹れて飲みながら静かに言う。
「構って慰めるだけが優しさじゃないわ。どんな物語も、乗り越えるのは本人よ」
「だからって、見捨てられるかよ」
 それに、ここに連れてきたのがまずかったのかも知れないし。そういう静真にベルは平静に答える。
「見捨てるのと放っておくのは違うわ。それにね静真、あなたは彼女をここに連れてきた、それでよかったのよ。
 どんな形であれ、前進することはいい事よ。ただ立ち止まるよりは」
 後は、道を間違ったり踏み外すようならそのときに支えてあげればいい。でも、今は違う。
 ベルはそう続けて、お茶を飲み干した。
「――――でも、それでも。賢い思考よりも愚直な行動を取るのよね」
 律儀にも聞くだけ聞いた後で再び追いかけて走り去った自分のマスターを見送る。
「本当に愚かで――――人間って、本当に理解できないわ」
 その光景を香織はカウンターで眺めて、思う。
 確かにそうかもしれへんな。でもね、ベルちゃん?
 そう憎まれ口を叩くあんたの顔、いっぺん鏡見てみぃや。
 すごく、優しい……いい顔、しとるよ?




「はぁ、はぁ……」
 走った。恋は荒い息を整える。ここはどこだろう。
 まだ店の中、建物の中のようだ。
「倉庫……?」
 暗い部屋の中に陳列された棚。神姫のパーツやそのほかの玩具が並んでいる。

「誰」

「!?」
 恋の耳に声が聞こえた。
「誰……誰かいるの?」
「人間は質問に質問で答えるのか?」
 恋の言葉に、声は答える。
 やがて恋の目が暗闇に慣れる。棚の奥に、それは座っていた。
「神…姫?」
 犬型MMS、ハウリン。それが棚に座っていた。
「そうだよ。見れば判るだろ」
 その神姫は、ぶっきらぼうに言い放つ。
「用がないんなら出てけよ。オレは人間は嫌いなんだ」
「人間は、嫌い……?」
「ああ。好きになれって言うほうがどうかしてる。勝手に作り出して勝手に戦わせて、勝手に捨てる。
 どの道壊すのなら、心なんて付けるなって言うんだ」
「そう…嫌いなの。
 気が合うね、私も……嫌いになったところ、人間がじゃなくて、自分自身がだけど」
「はぁ?」
 その言葉に、神姫は怪訝そうに声を返す。
 恋は、ゆっくりとそのハウリンの元に歩き、腰を下ろす。
「あなたの言うとおりだと思う……人間(わたし)は、本当に身勝手で。
 私も……自分の気持ちしか考えなくて。ずっと一人だったから、だから……自分のさびしさを埋めるための道具としか見てなかったんだと思うの。
 それに、もっと早く気づいていたら……そしたらあの子と、本当に友達になれてたのかも……」
「……よくわかんねぇけどお前も大変だったんだな。
 いつだってそうさ。気がついたときには遅すぎる。
 オレだって、マスターとは強い絆で結ばれてた。そう思ってた。……オレの場合は、気づかなきゃよかったのかもな。
 オレがマスターに、道具としてしか見てもらえなかったって。
 勝ち続けてきた便利な道具は、一度負けたときにその理由を失うって」
「……」
「オレはね、結構有名なランカーだったんだ。常勝無敗。いずれはトップに近づけるはずだった。
 だけど……あの時全てが狂ったのさ。いや、最初から狂ってた、か。
 オレのマスター、不正してたんだ。オレも知らなかった。そして本部から刺客が送られてきた。
 神姫狩り、ってヤツさ。非公式のハンター。九ツ首のヴァッヘバニー、クトゥルフオブナイン。
 強かったよ。それで負けちまってさ。
 オレが戦ってる間、マスターはどうしたと思う? 逃げたんだよ。オレを置いてな。ああ、でもそれでもよかった。マスターが無事だったら。
 そしてオレは壊れた体を引きずって、なんとか家に戻ったら……笑い話さ。もう家には何も残ってなかった。小さなアパートだったけど、オレたちにとってそこは大切な、帰る場所だったはずなのに。
 何もかもなくした、んじゃない。最初からオレは……何もなかった。ただの、捨て駒だったんだ。
 それに気づいてしまうぐらいなら、いっそ何も知らないまま壊れて死ねばよかったんだろうけどな」
 ハウリンは自嘲する。
「いつだって、遅すぎんだよ。だから……?」
 ハウリンは言って気づく。となりの人間の肩が震えていることに。
「お前……泣いてんのか?」
「だって……ごめんなさい、ひどいことして……本当に……」
「……」
 その恋の言葉にハウリンは少し黙り、
 ばこん。
「痛っ!?」
 恋の手を思いっきり蹴飛ばした。
「バカかお前。なにがごめんなさい、だ。お前がやったんじゃねぇ、それとも何か。人間代表のつもりか? うぬぼれんなよ、バーカ」
「バ、バカって……バカって言うほうがバカで……」
「なにベタな返ししてんだよ。小学生かおめーは」
「……小学生です。五年生……」
「……マジかよ。くそ、しくじったな畜生。
 あー、まあ、そのなんだおめー。とにかくお前が悪いわけじゃねぇから泣くなバカ。
 ……まあ、でもその気持ちだけはありがたくうけとっといてやるよ」
 そっぽを向き、ハウリンはつぶやく。
「うん……ありがとう」
「謝ったり礼いったりちぐはぐなやつだな、えーと……」
「恋、です。ひゆき、れん。恋する、って書いて恋」
「そうか。オレは……普通にハウリンでいいよ。名前なんかとっくに捨てた」
 オーナーに捨てられたときに。そう続けるハウリンに、恋は少し考えて言った。
「じゃあ……私が名前をあげるよ」
「は?」
「名前がないと、誰からも呼ばれないでしょ。それって、悲しいと思うから」
 自分が、そうだったように。
「……ハティ。どうかな。月を呑む狼、フェンリルの仔、ハティ」
「……ハティ、か……」
 ハウリンは、その響きを反芻するように何度か口にする。
「気に入らなかった?」
「さあな。だけど、もらえるものはもらっといてやるよ、レン」
 そっぽを向きながらハティは答える。その言葉に、恋は笑顔を浮かべた。

「……出番なし、か」
 倉庫の前のドアを背に、静真は笑いながらかるくため息をつく。
「ま、邪魔者は退散、かな。追いかけてって何もせずに戻るってぇのは、ベルの奴に色々とまた言われそうだけど……ん?」
 立ち去ろうとすると、廊下の向こうから見知った顔の子供が走ってくる。
「静にーちゃん、大変だよ!」
「どうした?」
「なんか怖い男の人達が店に!」
「なんだって!?」



「という訳でしてね。悪い話ではないと思うんですがねぇ」
「どう聞いたって悪い話やろ!」
 店の前で、黒服たちの言葉に香織が反論する。
「金の問題やあらへん。私はな、子供たちのために、子供たちに喜んで欲しくてこの商売やっとんのや」
「それが邪魔だっていってるんですがねぇ。正直ね、そういう商売を勝手にやにれると、神姫業界にとってマイナスにしかならないんですよ。
 自己満足の偽善で、善良な同業者の邪魔をしないでもらえますか」
「何が善良や、この銭ゲバが!」
 香織の怒声に黒服たちは肩をすくめて笑う。
「なんやーーーーーー何がおかしいんやこのすっとこどっこいがーーーーーーー!!!!!!!!」
「だあっ落ち着け香織さん!」
 表に出てきた静真が後ろから香織を取り押さえる。
「だからさぁ、鶴畑コンツェルンに逆らったら色々とまずいってわかりませんかねぇ?」
「わかるかいだぁほぉ! 喧嘩売っとんのなら高く買うでぇ! 簀巻きにしてドブ川に頭から放り込んだあとでカー○ル君をさらに上からマッ○ルドッキングのよーに叩きつけてセメントをケツから流しこんだろうかぁー!!!???」
「ストーーーップストッブ、頼むから落ち着けっ!」
「ほう、買ってくれますか。いいですねぇ、ではコトが武装神姫だけに、バトルで決着をつけるというのはどうでしょうか」
「「え゛?」」
 香織と静真の声がはもり、止まる。
「自分が喧嘩を買うといわれたのです。まさか嫌とは言いませんよね?」
「……」
 拙い。何が拙いかというと、そもそもこの店にある神姫たちはぶっちゃけバトル用に特化しているわけではない。
 そもそも香織にそこまでの武装パーツをそろえる資金もない。神姫たちの経験も足りない。
「…………ふ、ふん。当たり前や。女に二言はないで。戦ってやろうやないか、
 彼がな!」
「俺かよっ!?」
 静真を指差す香織。
「当たり前や、私とマオファがそんなガチバトルなんか出来るかい!」
「……ったく、あーもう、またもめ事かよ、俺は平凡に生きたいってのに……」
 わしゃわしゃと頭をかきむしる静真。
「ま、だけどここが潰れるのも困るしな。いいぜ、やってやるよ」
 静真が一歩前に出る。ベルもまた構える。だが……
「おっと、お嬢さんも戦ってもらうに決まってるじゃないですか。誰が一対一といいましたか?」
 黒服が笑い、指を鳴らす。後ろに停めてあった車から、二人組の男たちが出てきた。
「な……?」
「二対二のタッグマッチ、ですよ」
「聞いてねぇぞ!?」
「言ってませんからねぇ。でもバトルを受けるといったのはあなた達ですからしたがってもらいますよ?」
「……どこまで腐ってやがる、てめぇら!」
「さてねぇ。鶴畑に逆らうから悪いんじゃないでしょうか? さて、それでは始めましょうか」
「っクソ、仕方ない。香織さん、とにかく俺たちがなんとかするからマオファは後ろで…」

「待ってください!」

 割り込んだ声は、恋のものだった。
「……恋ちゃん?」
「私が、戦います……」
 そこには、ハティを手に乗せた恋が立っていた。
「……無理だ。だいたい……」
「非公式バトルなら、私にも経験が、一応ありますから……」
 半ば操られていた夢うつつだったけど。
「それに……ここに来たばかりで、私、まだここで一度も遊んでいない。なのにここが無くなるなんて……この子も、ハティも……戦ってくれる、って」
「イヤイヤだけどな。オレみてぇなはぐれモノは行く場所なんてねぇ。少なくともそこのバカネコよりは戦える」
「あなたたち……本気なんか?」
「はい」
「ああ」
 香織の視線を受け止め、うなずく。
「おい、ちょっと……」
「よっしゃあ! 細かい経緯は知らんが、なんかもう100人力や!」
「香織さん、いやそれは」
「静真くん、あんたも男なら覚悟ぉ決めぇや!」
「いや、だからオレの覚悟は決まってますけどね、だけどそれとこれとは」
「静真。どのみち戦うしかないのよ。だったら……まだあの子のほうが、香織とマオファよりはましなのは判るでしょう?」
「……とことんまでみんなして俺の意見は無視かよ。あーわかったわかりました! こうなったら覚悟決めるさ」
 ため息ひとつ。しかしこうなればやるしかない。
「ふん、しかし…」
 車から出てきた目つきの悪い男が言う。
「どんなのが相手かと思ったら、ほぼ素体じゃねぇか」
「本当だね。これなら俺たちが用心棒でくる必要もなかったかな?」
 その揶揄に静真は、ただ不敵な笑顔で答える。
「言ってろ。油断は命取りだぜ。いくぞ、ベル、恋ちゃん、ハティ」
「ええ」
「はい!」
「ああ……!」
 構える四人。対する男たちもまた構える。


    非公式試合、開始。
    悪魔型MMS『ベル』
    犬型MMS『ハティ』
                VS
                   天使型MMS『シザーウイング』
                   天使型MMS『リッパーリング』
    このバトルは非公式試合である。
    そのため、戦闘結果によるポイントの付加・ランキングの変動は行われない。

 シザーウィングは後背部のウィングに武装を集中させたタイプのアーンヴァルだった。
 羽の一本一本が鋭利な刃物であり、それを射出する遠距離攻撃および剣として使う近接攻撃の両方を扱うタイプである。
 対するベルは、ほぼ素体のみ。武装は小型の刃物を幾重に重ねた扇がふたつ。盾としても剣としても使えるそれだが、シザーウィングの攻撃を防ぐのがやっとであった。
「ははははははは! どうしました!」
 実弾の羽毛を撃つ攻撃、それゆえに弾切れを誘う予定だったが、シザーウィングは両手や肩に装備した重火器も撃ってくる。
 この弾幕を防ぎきるだけの余裕はなく、衣服の端も次々と切られる。
「……っ、本当にしつこい攻撃……!」
 地を蹴り後退するベル。彼女の居た場面を羽の刃が次々とえぐっていく。

 リッパーリングは両腕をストラーフタイプの腕へと換装し、剣を装備した近接格闘特化のアーンヴァルだった。
 高出力の格闘攻撃を、ハティは両手に持った剣で捌く。
「くっ、間合いが長げぇ……!」
 リーチはどうしてもリッーパリングに分がある。ハティもまたその攻撃を受けるだけで精一杯。
 ベルもハティもどうしても防戦にまわざるを得ない。まずい状況だった。
「ははっ、口ほどにもない!」
 男が笑う。
「そもそも鶴橋の金の力でガッチガチにチューンした俺たちの神姫にかなうはずないんだよね。何カッコつけちゃってんだか、そういうのを自己満足って言うんだよ」
「……ふん」
 しかし静真は、真っ向からその嘲笑を受け止める。
「ああ、確かにな。自分でもバカだとは思うさ。だけどさ、男なら」
 掌を突き出す。
「退けない事もある。カッコつけだって笑うんなら笑えよ。
 醒めた振りして言い訳に逃げるほど、俺は大人じゃねぇんでね、悪いけど!」
「はっ、言うだけならなんとでもならぁな。だが現にてめぇの神姫は――――あ?」
 キィ――ン、と耳鳴りが響くことに男は気づく。いや、耳鳴りではない。これは――飛行音。
「やっと到着したか…! ベル、来たぞ!」
「まったく、ずいぶん待たされたわね!」
 ベルが扇子で攻撃をはじき、一気に後方に跳躍する。
 その上空に飛来するのは、アーンヴァルのレーザーライフルを主軸にウイングやストラーフの手足などで組み上げた、純白の飛行機だった。
 その名、フリューゲルヴァイス。
 ベルは跳躍し、巫女服を一気に剥ぎ取った。
 純白の素体があらわになる。
「合体コード起動! 汝、東守護せし魂の運び手!」
 静真が叫ぶ。その言葉に従い、MMSの自動合体システムが起動する。
 ベルもまた唱える。
「闇に落ちて尚輝くは白き翼。我らは誓う」
「絶望に突き立てし暴食の牙! その手に掴みし切なる希望!」
 戦闘機を構成するパーツが空中で分離。
 ベルの脚にはストラーフ脚部装甲。
 胸と肩、腕にはアーンヴァルの装甲。背にはストラーフのバックパックとアーム、そしてアーンヴァルの背部ウイング。
 白く輝くそれらのパーツがベルの体を包み、装着されていく。
 そこに現れたのは、翼を広げた、一回り巨大に見える威容。純白の魔神の姿。

「「その名――――白亜の翼、ベルゼヴァイス」」

「何…!? 白い、ストラーフだと……!」
「そのようなハッタリ――!」
 シザーウイングが撃つ。圧倒的な火力物量。次々と着弾し、爆発が巻き起こる。
「はははははははははは!!!!!! このシザーウィングに切り裂けぬ敵など……!?」
 煙が晴れる。
 ただ、悠然と。
 白亜の翼は、そこに立っていた。
「な――――、にぃ……!?」
「これで全力? 受けてみたら思ったより火力が低いのね」
 冷徹に言い放つベルゼヴァイス。
「遊びは、ここまで。後悔なさい、ゆっくりと」



 リッパーリングの一撃が大地を切り裂き、砕き、そしてハティを叩き潰す。そのリーチを活かした高速連続攻撃に土煙が舞う。
「どう? 潰れてモンチになったぁ!?」
「ハティ……っ!」
 恋が叫ぶ。土煙が晴れる。そこには切り刻まれたハティの姿が――――なかった。
 あるのは、リッパーリングのアームを、交差した剣で受け止めているハティの姿。
「なんだ――――つまらない。
 しばらくオレが戦場から遠ざかってる間に、神姫の質は落ちたのか?」
 バキィン、と音がしてアームが砕ける。
「ぐああっ!?」
「ああ、あの時のアイツに比べたらカスもいい所だ。せっかくのオレの一大決心をどうしてくれる。
 これじゃあ、あまりにもつまんねぇーだろうが!」
 ハティが跳ぶ。その高速の跳躍にリッパーリングの動体視力は追いつけず、容易に懐への侵入を許してしまった。
「くたばれよ、トリ野郎」

「バ、バカな……っ!? あいつら二人とも上位ランカーだぞ!?」
 黒服がうろたえる。
 簡単な仕事だったはずだ。急に飛び込んできた、事業の邪魔者を排除するだけの簡単な仕事。
 なのに何故――――

「敗因は、ただ一つだよ」
 静真が言う。
「金や権力で肥え太ったブタには、判らねぇだろうな――――
 必死に生きるちっぽけな者たちの底力が」

 そう告げる静真の言葉と同時に。
 シザーウイングとリッパーリングが、戦闘不能となり、地に伏した。

    勝者、悪魔型MMS『ベルゼヴァイス』&犬型MMS『ハティ』。
    このバトルは非公式試合である。
    そのため、戦闘結果によるポイントの付加・ランキングの変動は行われない。
    賭け試合のため、敗者である鶴畑グループはレンタルシンキブースへの干渉権を放棄するものとする。


「まったく……楽しませてくれる」
 モニターでその一部始終を、男は見ていた。
「他人事みたいに言うね。キミだろ? 鶴畑をけしかけたのは」
「さて、どうだかね」
 黒い服に身を包んだ青年のからかうような声に、彼はこともなげに答える。
「こうやって、あの白いストラーフを公式リーグに引っ張り出すつもり? 身内びいきは程ほどにしておいたほうがいいんじゃないかな」
「あの少女をけしかけたお前に言われたくはないな。道化はでしゃばらないのではなかったか、「無価値(ワァスレス)よ」」
「でしゃばらなきゃ何のための道化さ。ま、確かに些細なことだよ。キミもこれで満足なんだろ? 桐沢一真(かずま)」
「さぁな」
 眼鏡をなおし、一真は席を立つ。
「しかし利用された鶴畑も哀れだね。グループの下っ端とはいえ、これじゃ面目丸つぶれ……でもないか」
「ああ、所詮はただの下っ端。痛くも痒くもないだろうさ。
 さて、計画の見直しだ。面白くなってきそうだとは思わないか?」
「違うね」
 一真の言葉に、無価値は平然と言った。
「物語は、最初から面白いものなのさ」






「恋ちゃん、手ぇ」
「え?」
 言われるまま、手を出す。静真は、それを勢いよく叩いた。
「ミッションコンプリート、ってな。よくやった!」
「え、でも私は何も……」
「そんなことないわ、恋。あなたがいて、ハテイを信じて見守った。あなたの勇気と信念が彼女に力を与えたの。そうでしょ?」
「オレが知るか」
 ハティはそっぽを向く。その姿に、恋は微笑む。
「いっやーーーーー、私感動したわーっ! 二人ともバリ強やん!」
 いきなり、香織が二人をがばっと抱きかかえる。
「うわっ!?」
「きゃっ!?」
「ああんもう私めっちゃ感動したわーーーー!」
「だああっ、ちょっと落ち着け香織さん、痛っ、ていうかあたってるあたってる!」
「くっ、くるし……」
 騒ぎ立てる香織たち。
 それを呆然と、憎憎しげに見つめるシザーウイングのオーナー。
「バカな……オレが、負けた……!?
 再起動だ……シザーウイング! てめぇもこのままで終わらせるワケにゃあいかねぇだろうが!」
 男の言葉に、シザーウイングは無理やり体を起こす。そして、砕けたウイング部分の刃物を掴み、走った。
「――!?」
 香織の凶行に気を取られていたベルは、反応が一瞬遅れる。
 手負いとはいえ、その一瞬で十分。その刃がベルに食い込む――――はずだった。
 ギィン、と甲高い金属音。
 刃が地面に落ちる。
「な……!?」
 黒い影が割り込み、その凶刃を防いでいた。
 漆黒の甲冑。陽光を照り返して尚黒く輝く装甲に身を包んだその武装神姫は。
「サイフォス……? 何でや、まだ発売されとらんのに」

「それは、彼女が我が社の試作品だからです」

 凛とした声が響く。いつのまにか新しい車がそこに停まっている。そしてそのドアが開いた。
「それにしても。鶴畑の人もずいぶんと往生際が悪くなったものですね」
 現れたのは、静真と年のころが変わらない美少女だった。
「なんだ、てめぇ……!」
 男が叫ぶ。その殺気を少女は受け流し、名乗った。

「篠房留美那(しのふさ・るみな)と申します。そして彼女は、騎士型MMSサイフォス、「エクエス」。
 以後、お見知りおきを」


続く




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