回の00「不変ではいられない僕ら」
2037年9月。高校二年の夏休みを満喫しきった藤原雪那(ふじわら・せつな)は、その長い休暇のほとんどを自分の武装神姫、マオチャオのティキと共に過ごした。
例えば初めて大きな大会に参加してみたり、ティキをつれた家族旅行に出かけたりなど。
当然、今までに知り合った仲間たちとの交流も大切にし、何かのたびに待ち合わせては地元の神姫センターなどに通ったりもしていた。何も変化が無かった、というわけではないが。
特別な何かがあった訳ではないが、それでも昨年までとは違う夏休みを終え、それでも厳しい残暑に打ちのめされながらも、一年前では予想もしていなかった新たな習慣が繰り返されている。
先週も一人で都内にまで足を伸ばし、ホビーショップ・エルゴでバトルをしたばかりだった。エルゴでの、初めてのシルヴェストルのお披露目をかねたそのバトルは――なんと言うか、散々な目に遭わされたのだが。
そして3連休の真ん中日曜日、シルヴェストルの改良もあったので雪那もティキも空調の利いた自室にこもっていた。
「そう言えば……」
細かいパーツに苦戦しながら、雪那は口を開く。雪那の手伝いをしているティキは、自分のオーナーの言葉に視線を向けて反応した。
「……そろそろこの家に来て一年がたつんじゃないの?」
「えーっと、うーん?」
なにやら考え込み始めるティキ。
神姫のこういった見せ掛けの記憶の揺らぎは、人とのコミュニケートを潤滑にするための、いわば機能の一つだ。
記録を参照するだけなのだから、わざわざ考え込むような、思い出すかのような時間は必要ない。しかし、そうある方が人間はその“個体”と“対話”した気分になるものだ。
「そうですよぉ! 今日でちょうど一年になるのでっすよぉ♪」
思い出し、そしてティキは飛び跳ねて喜ぶ。
「そっかー。じゃあ、今日がティキの誕生日だなあ」
作業を中断し、大きく伸びをしながらティキに微笑む。
「なんかお祝いでもしなきゃね」
「お祝いですかぁ!」
目をきらきらと輝かせるティキ。それに、どうしようかねー、といいながら雪那が頭を傾げていると、呼び鈴の機械音が響く。
この時間雪那の母、藤原舞華(ふじわら・まいか)は自宅に接している店舗の方に居る。その事を知っている人ならば、たとえ郵便公社の配達員でさえ店舗に行くはずなのだが、なぜか自宅の呼び鈴が鳴った。
「僕に、かな?」
ティキに向けてそう言うと、雪那は玄関に向かう。
しかし程なくして自室に帰ってきた雪那は、怪訝な顔で大きな段ボールの箱を抱えていた。
「? 何なのですかぁ?」
なんとも形容しがたい表情の雪那に、ティキが質問する。
「……それが、なんて言うか」
歯切れが悪い。
「?」
「ティキ宛の、宅配物なんだ。……しかも親父から」
例えば初めて大きな大会に参加してみたり、ティキをつれた家族旅行に出かけたりなど。
当然、今までに知り合った仲間たちとの交流も大切にし、何かのたびに待ち合わせては地元の神姫センターなどに通ったりもしていた。何も変化が無かった、というわけではないが。
特別な何かがあった訳ではないが、それでも昨年までとは違う夏休みを終え、それでも厳しい残暑に打ちのめされながらも、一年前では予想もしていなかった新たな習慣が繰り返されている。
先週も一人で都内にまで足を伸ばし、ホビーショップ・エルゴでバトルをしたばかりだった。エルゴでの、初めてのシルヴェストルのお披露目をかねたそのバトルは――なんと言うか、散々な目に遭わされたのだが。
そして3連休の真ん中日曜日、シルヴェストルの改良もあったので雪那もティキも空調の利いた自室にこもっていた。
「そう言えば……」
細かいパーツに苦戦しながら、雪那は口を開く。雪那の手伝いをしているティキは、自分のオーナーの言葉に視線を向けて反応した。
「……そろそろこの家に来て一年がたつんじゃないの?」
「えーっと、うーん?」
なにやら考え込み始めるティキ。
神姫のこういった見せ掛けの記憶の揺らぎは、人とのコミュニケートを潤滑にするための、いわば機能の一つだ。
記録を参照するだけなのだから、わざわざ考え込むような、思い出すかのような時間は必要ない。しかし、そうある方が人間はその“個体”と“対話”した気分になるものだ。
「そうですよぉ! 今日でちょうど一年になるのでっすよぉ♪」
思い出し、そしてティキは飛び跳ねて喜ぶ。
「そっかー。じゃあ、今日がティキの誕生日だなあ」
作業を中断し、大きく伸びをしながらティキに微笑む。
「なんかお祝いでもしなきゃね」
「お祝いですかぁ!」
目をきらきらと輝かせるティキ。それに、どうしようかねー、といいながら雪那が頭を傾げていると、呼び鈴の機械音が響く。
この時間雪那の母、藤原舞華(ふじわら・まいか)は自宅に接している店舗の方に居る。その事を知っている人ならば、たとえ郵便公社の配達員でさえ店舗に行くはずなのだが、なぜか自宅の呼び鈴が鳴った。
「僕に、かな?」
ティキに向けてそう言うと、雪那は玄関に向かう。
しかし程なくして自室に帰ってきた雪那は、怪訝な顔で大きな段ボールの箱を抱えていた。
「? 何なのですかぁ?」
なんとも形容しがたい表情の雪那に、ティキが質問する。
「……それが、なんて言うか」
歯切れが悪い。
「?」
「ティキ宛の、宅配物なんだ。……しかも親父から」
ほぼ時を同じくして、ここは結城邸。
「で、あの男の子とはどうなったの?」
その顔には隠そうともしない好奇心でいっぱいになっている。
その朔良=イゴール(さくら・――)に、少し寂しげな顔を見せて結城セツナは答える。
「多分、フラれちゃった。かなあ……」
「多分? かなあ、って?」
「はっきり言われたわけじゃ、ないから」
セツナはそう言うと、自分のカップのふちを指でなでながら話し始めた。
「で、あの男の子とはどうなったの?」
その顔には隠そうともしない好奇心でいっぱいになっている。
その朔良=イゴール(さくら・――)に、少し寂しげな顔を見せて結城セツナは答える。
「多分、フラれちゃった。かなあ……」
「多分? かなあ、って?」
「はっきり言われたわけじゃ、ないから」
セツナはそう言うと、自分のカップのふちを指でなでながら話し始めた。
さらに同時刻。
式部敦詞(しきぶ・あつし)は自分の部屋で昨日の事を思い出し、また怒りを顕わにしていた。
「ったく、あのトウヘンボク! あんなんだったらまだ朴念仁の方がましだ!!」
自身の神姫、きらりとTVゲームをしながら昨日から何度目かにもなる言葉を繰り返す。
「そんな事言っても、仕方が無いでしょう? マスターだって雪那さんの言い分、納得してたじゃない」
人が使うものとは大きさも機能もまるで違うコントローラを駆使しながら、きらりは言った。
「そうだけどよー」
「大体マスターは司馬さんを応援してたんじゃない。だったら雪那さんの考えも、歓迎こそすれ責めるのはどうかと思うわ」
ここで言う司馬とは神姫を通して知り合った友人、司馬仙太郎(しば・せんたろう)の事である。
「いや、別にオレは司馬のダンナを応援してるわけじゃネーよ?」
「アレ? 違うの?」
「オレは周りがハッピーになれば良いと思ってるだけだ。だから、誰かを好きな奴がいて、そいつと付き合えるようになるならそれが良い、てだけ。司馬のダンナが結城を好きなら応援するし、だけど結城が雪那を好きなら雪那をたきつけるさ」
それって立派な三角関係の出来上がりだよ?
己のマスターのその言い分を聞き、どこら辺がハッピーなのかきらりにはチョット理解出来なかった。それでもあえて口にはしなかったが。
「つまりさ、雪那が結城の事が好きになるなら、それでそこの二人はハッピーだろ? ま、司馬のダンナは泣く事になるけど。でも万が一、結城が司馬のダンナの事好きになるなら、それでもハッピーじゃん。でさ、結城が司馬のダンナを好きになるよりも、雪那が結城の気持ちに応える方が、確立としては高いと思ったわけ。なのにさ、結城の気持ちに気付いてないならまだしも、只はぐらかしていたって言うアイツは、ヤッパリどうかって思うわけよ」
器用に自分の自機を操作しながら、敦詞は思う所を吐き出す。
敦詞の意見が正しいのかどうかはさておき、それでも敦詞の思いをきらりは理解した。
しかし昨日、雪那の言い分も聞いてしまったわけだから、雪那も考えも一応理解しているわけで。
きらりは途方にくれる。
その途端、きらりが操作していた機体が、敵機に撃ち落されてしまった。
式部敦詞(しきぶ・あつし)は自分の部屋で昨日の事を思い出し、また怒りを顕わにしていた。
「ったく、あのトウヘンボク! あんなんだったらまだ朴念仁の方がましだ!!」
自身の神姫、きらりとTVゲームをしながら昨日から何度目かにもなる言葉を繰り返す。
「そんな事言っても、仕方が無いでしょう? マスターだって雪那さんの言い分、納得してたじゃない」
人が使うものとは大きさも機能もまるで違うコントローラを駆使しながら、きらりは言った。
「そうだけどよー」
「大体マスターは司馬さんを応援してたんじゃない。だったら雪那さんの考えも、歓迎こそすれ責めるのはどうかと思うわ」
ここで言う司馬とは神姫を通して知り合った友人、司馬仙太郎(しば・せんたろう)の事である。
「いや、別にオレは司馬のダンナを応援してるわけじゃネーよ?」
「アレ? 違うの?」
「オレは周りがハッピーになれば良いと思ってるだけだ。だから、誰かを好きな奴がいて、そいつと付き合えるようになるならそれが良い、てだけ。司馬のダンナが結城を好きなら応援するし、だけど結城が雪那を好きなら雪那をたきつけるさ」
それって立派な三角関係の出来上がりだよ?
己のマスターのその言い分を聞き、どこら辺がハッピーなのかきらりにはチョット理解出来なかった。それでもあえて口にはしなかったが。
「つまりさ、雪那が結城の事が好きになるなら、それでそこの二人はハッピーだろ? ま、司馬のダンナは泣く事になるけど。でも万が一、結城が司馬のダンナの事好きになるなら、それでもハッピーじゃん。でさ、結城が司馬のダンナを好きになるよりも、雪那が結城の気持ちに応える方が、確立としては高いと思ったわけ。なのにさ、結城の気持ちに気付いてないならまだしも、只はぐらかしていたって言うアイツは、ヤッパリどうかって思うわけよ」
器用に自分の自機を操作しながら、敦詞は思う所を吐き出す。
敦詞の意見が正しいのかどうかはさておき、それでも敦詞の思いをきらりは理解した。
しかし昨日、雪那の言い分も聞いてしまったわけだから、雪那も考えも一応理解しているわけで。
きらりは途方にくれる。
その途端、きらりが操作していた機体が、敵機に撃ち落されてしまった。
「でもそれって、全部憶測なんでしょ?」
そう言って、朔良はわずかに残ったカップのお茶を飲み干す。
「まあ、ね。あくまでそういう風に感じた、ってだけ。それ以上は別に避けられているわけでもないし」
その会話をそばで聞いていたセツナの神姫、海神ⅡY.E.N.N(わだつみ・せかんど・わい・いー・えぬ・えぬ)こと焔(えん)は、実は気が気じゃなかった。
焔は昨日、雪那と敦詞の会話を偶然にも聞いてしまっていた。しかもその後に敦詞に見つかってしまい、セツナには秘密だと一方的に約束されてしまった。
実際問題、セツナと敦詞では、セツナの方が焔の中では上位に存在している。オーナーの友人でしかない敦詞より、オーナーであるセツナの方が優先されるのは当たり前だ。
しかし、だからと言って、その会話のありのままをセツナに話してしまうのは、あまりにも憚れた。
決して大げさな話ではない。大それた決意でもない。でもだからこそいえない事もある。
「ま、あんまり考えていても、なんともならないわね。この話はこれでおしまい」
セツナのその一言に、焔は安堵の息を吐く。その話題が長引けば、ぼろを出す危険が増すだけだ。
「で、今日は本当は何の用なの?」
まさかその話題だけで家まで訪ねて来たわけじゃないのでしょう? と、セツナは空になったカップにお茶を注ぎながら朔良に促す。
朔良は、ヤッパリ判ってた? と、茶化したように言うと、言葉を続けた。
「実はね、セツナに引き取ってもらいたいものが有ってサ」
そう言うと朔良はかばんの中から小さな箱を取り出す。
「実は、私も武装神姫やってみたいと思ってさ、ちょうど良いからってこれを注文したんだ。……だけど、これが届いた頃には、興味が無くなっちゃったんだよネ。まぁ、色々理由はあるんだけど、それは追求しない方向で。で、何もしないで寝かしちゃうのもこの娘に悪いから、有効に活用できそうな人に、って思って」
「って、それってリペイント版の!」
朔良が取り出したその箱には、MMS TYPE DEVILと印刷されていた。
そう言って、朔良はわずかに残ったカップのお茶を飲み干す。
「まあ、ね。あくまでそういう風に感じた、ってだけ。それ以上は別に避けられているわけでもないし」
その会話をそばで聞いていたセツナの神姫、海神ⅡY.E.N.N(わだつみ・せかんど・わい・いー・えぬ・えぬ)こと焔(えん)は、実は気が気じゃなかった。
焔は昨日、雪那と敦詞の会話を偶然にも聞いてしまっていた。しかもその後に敦詞に見つかってしまい、セツナには秘密だと一方的に約束されてしまった。
実際問題、セツナと敦詞では、セツナの方が焔の中では上位に存在している。オーナーの友人でしかない敦詞より、オーナーであるセツナの方が優先されるのは当たり前だ。
しかし、だからと言って、その会話のありのままをセツナに話してしまうのは、あまりにも憚れた。
決して大げさな話ではない。大それた決意でもない。でもだからこそいえない事もある。
「ま、あんまり考えていても、なんともならないわね。この話はこれでおしまい」
セツナのその一言に、焔は安堵の息を吐く。その話題が長引けば、ぼろを出す危険が増すだけだ。
「で、今日は本当は何の用なの?」
まさかその話題だけで家まで訪ねて来たわけじゃないのでしょう? と、セツナは空になったカップにお茶を注ぎながら朔良に促す。
朔良は、ヤッパリ判ってた? と、茶化したように言うと、言葉を続けた。
「実はね、セツナに引き取ってもらいたいものが有ってサ」
そう言うと朔良はかばんの中から小さな箱を取り出す。
「実は、私も武装神姫やってみたいと思ってさ、ちょうど良いからってこれを注文したんだ。……だけど、これが届いた頃には、興味が無くなっちゃったんだよネ。まぁ、色々理由はあるんだけど、それは追求しない方向で。で、何もしないで寝かしちゃうのもこの娘に悪いから、有効に活用できそうな人に、って思って」
「って、それってリペイント版の!」
朔良が取り出したその箱には、MMS TYPE DEVILと印刷されていた。
話は雪那とティキに戻る。
今は亡き父の名で送られてきたその箱を前に、雪那とティキは何も出来ずにいた。
冷静に考えれば父、修芳が生前に日時指定して送った物だろう。だが、判ってはいても一寸した不気味さを醸していた。
……少々時期がずれたとはいえ、夏場という季節のせいもあるかもしれない。怪談の旬はやはり夏場であろう。
なにより、昨晩見た心霊番組がいけない。その内容をついつい思い出してしまう。
「……よし」
意を決して雪那はその段ボール箱に手をかけ、箱を封じているガムテープをはがし始める。
はたしてその中には、更なる段ボール製の箱が収められてあった。
しかし不気味さはさらに増す。
何が不気味と言えば、その段ボール製の箱は、その見える全てを完膚無く、一部の隙も無く、真っ黒に塗りつぶされているのだ。
ティキは恐怖に震えながら、ぎゅっ、と雪那の腕にしがみつく。
「は……ははは。一体、これは何なんだろうね」
引きつった笑いを浮かべながら、雪那は恐る恐るその箱を取り出す。
案外、軽い。
箱の大きさの割には重くは無い。
持ち上げて裏も見てみるが、案の定裏面も一切の余白も無く真っ黒に塗りつぶされてあった。
雪那はそっ、とその箱を部屋の真ん中に置く。
「……どうしようか?」
ティキに聞いても返事は無いだろうと予測してはいたが、それでも思わず聞いてしまう。そして予測をまったく違えることなく、ティキはただ雪那につかまって震えているだけだった。
埒が明かない。そう思った雪那は、頭を振ると勢いに任せてその箱を開封する。
恐る恐る覗き込む雪那の目に、どこかで見たようなブリスターパックが入る。
「???」
いぶかしみながらパックを引っ張り出す。
雪那によって姿を現したそれをティキは覗き見る。そしてそれを確認した途端――
「みぎゃぁぁぁぁぁああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
すさまじい悲鳴を上げて、部屋の隅に逃げ出した。
雪那とティキが目にしたそれは
今は亡き父の名で送られてきたその箱を前に、雪那とティキは何も出来ずにいた。
冷静に考えれば父、修芳が生前に日時指定して送った物だろう。だが、判ってはいても一寸した不気味さを醸していた。
……少々時期がずれたとはいえ、夏場という季節のせいもあるかもしれない。怪談の旬はやはり夏場であろう。
なにより、昨晩見た心霊番組がいけない。その内容をついつい思い出してしまう。
「……よし」
意を決して雪那はその段ボール箱に手をかけ、箱を封じているガムテープをはがし始める。
はたしてその中には、更なる段ボール製の箱が収められてあった。
しかし不気味さはさらに増す。
何が不気味と言えば、その段ボール製の箱は、その見える全てを完膚無く、一部の隙も無く、真っ黒に塗りつぶされているのだ。
ティキは恐怖に震えながら、ぎゅっ、と雪那の腕にしがみつく。
「は……ははは。一体、これは何なんだろうね」
引きつった笑いを浮かべながら、雪那は恐る恐るその箱を取り出す。
案外、軽い。
箱の大きさの割には重くは無い。
持ち上げて裏も見てみるが、案の定裏面も一切の余白も無く真っ黒に塗りつぶされてあった。
雪那はそっ、とその箱を部屋の真ん中に置く。
「……どうしようか?」
ティキに聞いても返事は無いだろうと予測してはいたが、それでも思わず聞いてしまう。そして予測をまったく違えることなく、ティキはただ雪那につかまって震えているだけだった。
埒が明かない。そう思った雪那は、頭を振ると勢いに任せてその箱を開封する。
恐る恐る覗き込む雪那の目に、どこかで見たようなブリスターパックが入る。
「???」
いぶかしみながらパックを引っ張り出す。
雪那によって姿を現したそれをティキは覗き見る。そしてそれを確認した途端――
「みぎゃぁぁぁぁぁああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
すさまじい悲鳴を上げて、部屋の隅に逃げ出した。
雪那とティキが目にしたそれは
一週間前エルゴに行った際、ティキをデータ上とはいえ破壊ギリギリまで追い込んだ、ネメシスという名の神姫と同型同色の
黒い、アーンヴァル。