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  廻る。
  狂る狂ると、狂る狂ると。
  回る、回る、歯車。
  力を廻らす為に、回る。
  ニューラルネットワークを奔る、心の力。
  疑似神経回路網を奔る、電気信号。
  身体の隅々にまで、アクチュエータの隅々にまで、廻らせる。
  その力の、彼女達の力の源は、感情。
  主を喜ばしたいという、感情。
  勝負に勝ちたいという、感情。
  敵を倒したいという、感情。
  只管戦いたいという、感情。
  その感情を燃料に、歯車を回す。
  その力で、戦う。
  彼女が燃やすのは、何?


「アル・ヴェル、出力全開」
「イェス、マスター」
  主の命令に、アル・ヴェルは短く応えた。
  間髪入れず、両足に備え付けられた三対の翼を展開。エネルギーフィールドを最大出力で展開。
  エネルギーフィールドは周囲の空間と強く反発し、その反発から加速を生み出す。
  刹那、アル・ヴェルは右足を無造作に振り抜いた。それと同時に何かが砕ける音がした。
  アル・ヴェルは一見、無表情だ。
  しかし、その心の内には得体の知れない感情が渦巻いている。それを悟られぬ様にアル・ヴェルは表情を表には出さない、
「次は当てるよぉ、師匠ぅ?」
  虚空を踏みしめるアル・ヴェルの遥か眼下、廃墟群の中からカーネリアンの声が響く。
  カーネリアンは無造作にチーグルを廃墟の壁に突き立て、一息で引き抜く。
  凄まじい轟音と共に廃墟の一部が倒壊し、チーグルの掌の中に2smはある巨大なコンクリートの塊だけが残った。
「そぉ~れ」
  そして、それをぽい、と頭上に投げた。
「うりゃぁ!」
  次の瞬間、チーグルに握るロケットハンマーでコンクリート塊を打ち抜いた。
  ブースターの音、金属と塊が衝突する音、空気を裂く音、その全てが重なり、アル・ヴェルへとコンクリート塊が一直線に向かう。
  驚愕よりも先に、どう動くべきかが頭を巡る。回避しても良い。この距離なら十分可能だ。
  しかし、アル・ヴェルはそれを拒んだ。
  高速で迫るそれを前に、左足はそのままで右足だけを大きく引いた。
  コンクリート塊は一瞬でアル・ヴェルの目前に迫り、まさに今衝突しようとしている。
「……破ツ」
  刹那、アル・ヴェルの右足が鈍く光った。
  両足に供えられた三対の翼、羽鋼が不可視の壁を展開したのだ。
  不可視の壁は空間に強く反発し爆発的な加速を生み出し、それを与えられた右足は目視不可能な速度で振り抜かれた。
  アル・ヴェルに蹴られたコンクリート塊は、進行方向と逆のエネルギーをぶつけられアル・ヴェルへ届く事無く砕けた。
  それは、アル・ヴェルの不安の表れだったのかもしれない。
  その破片は重力に引かれてカーネリアン目掛けて落下する。破片と言えどその一つ一つは未だ0.5smはある。
アル・ヴェルは眼下に佇むカーネリアンを見た。
「……ふふぅん」
  笑っていた。楽しそうに。嬉しそうに。可笑しそうに。
  それを見たアル・ヴェルもまた、笑った。
  何故笑ったか分からない。ただ、何となく笑いたかった。
  カーネリアンと、笑い合いたかっただけだ。
「アル・ヴェル、急降下蹴激」
「イェス、、マスター」
  翼長、悠に3smはある巨大な羽鋼を展開。それと同時に電磁推進装置を稼働させる。
  ぱちり、と大気に電流が走った。羽鋼の翼から電流が放たれているのだ。
  翼から放たれる電流は空気の流れを操作し、驚異的な機動性を生む。
  それに加え、エネルギーフィールドも発生させる。
  アル・ヴェルの両脚は、淡い光と迸る電流に包まれた。その姿はある種神々しくもある。
「……行きますよ」
  アル・ヴェルは誰に言うでも無く呟くと次の瞬間、落ちた。
  その加速は圧倒的だった。一秒もかからず最高速に達したアル・ヴェルの身体は白い流星のようにカーネリアン目掛けて落ちた。
「ははん」
  カーネリアンとの距離は、一瞬で零になった。
  まず、爆音と衝撃波が周囲を襲った。次に砕かれた地面の粉塵と瓦礫が周囲に撒き散らされ、最後にアル・ヴェルとカーネリアンの近接戦闘が幕を開けた。
「遅い」
  カーネリアンの至近に居ながらも、アル・ヴェルの心中は穏やかであった。
  それは言いかえれば不安の表れだった。それを解き放てば、何かが起こる気がする。そんな不安から、アル・ヴェルの心は酷く冷たく穏やかだった。
  見る事さえ叶わぬ右足がカーネリアンの頭部目掛けて繰り出された。
  大気を震わせ、粉砕し、全てを砕こうとするそれを、カーネリアンは防いだ。
「あはぁ」
  アル・ヴェルの羽鋼の破壊力の一つの源はエネルギーフィールドにある。ほぼ純粋なエネルギーであるこれは、周囲の空間を圧迫する。
  圧迫された空間は当然、反発する。この反発する力を利用したのが羽鋼の超加速だ。
  速度はそのままで武器になる。
  アル・ヴェルはそれを体現している。
  彼女の蹴りは鉄球の一撃と等しく、直撃すれば神姫であろうとただでは済まない。
「喉元過ぎれば何とやら、てねぇ」
  アル・ヴェルとカーネリアンの距離は、僅か。まさにお互いの息がかかる位置だ。
  アル・ヴェルは右足をハイキックの要領で繰り出しており、カーネリアンはその右足の下から、四つん這いに近い体制でアル・ヴェルの太腿をチーグルの巨大な掌で掴んでいる。
  蹴り技と言うのは、例外を除いて脛から爪先までを用いる。アル・ヴェルにおいてはそれがさらに如実なのだ、
  何故なら、アル・ヴェルの超加速を生み出すのが足首の辺りから生える三対の羽鋼だからだ。
  加速が十分に活きる部位は自ずと限られる。
  要は、破壊力があるのは脚先のみ。ならばそこ以外の部位を捉えてしまえば良いのだ。
  だが、アル・ヴェルもこれくらいの事は想定内だ。
  防がれた事に驚きは無い。むしろそれくらいやってくれると考えていた。
  何故か、アル・ヴェルはその事が、可笑しなことに嬉しかった。
そう考える自分を戒め、その考えを直ぐに抑え込むように、掴まれた右足を軸に左足をカーネリアンの頭に向けて蹴り上げた。
  カーネリアンは丁度四つん這いの体勢だが、チーグルとサバーカにより体格はアル・ヴェルの倍近い。よって、アル・ヴェルの左足はカーネリアンの頭とはやや離れた場所にある。
  もし、カーネリアンがチーグルとサバーカを装備していなかった場合、繰り出された左足を回避する事は出来なかっただろう。
  カーネリアンはアル・ヴェルの右腿からチーグルの手を放し、大きくバックステップ。それに遅れる事無く、アル・ヴェルは一瞬で距離を詰める。
  アル・ヴェルの不安がまた大きくなった。
  カーネリアンと離れてはならない。そんな気がしたのだ。
  轟音、とでも表現するしかない音がアル・ヴェルの脚と共に鳴り響く。
  飛び蹴りの要領で繰り出した右足が、カーネリアンの左脇腹に鋭く突き刺さる。その  瞬間、カーネリアンは蹴りの有効範囲を除け、無防備な脹脛にロケッロハンマーの柄を押し当て、軌道を反らした。
  アル・ヴェルの右足は、本来の目的地であるカーネリアンの脇腹を外れ、カーネリアンの左側頭部の横の虚空を大きく突き刺した。
  一撃一撃が神姫を破壊し得るに相当な威力を秘めている羽鋼だが、当たらなければ意味が無い。カーネリアンは、それを体現した。
  だが、アル・ヴェルは止まらない。
  反らされた右足のエネルギーフィールドを逆方向に出力。虚空にて一瞬の静止状態を作り出す。
  身体は水平のままに右足を軸に左足を振り上げ、カーネリアンの顎を狙う。
  カーネリアンはそれを、大きくバックステップすることで避ける。後退りながらもロケットハンマーを下から抉るように振り上げてアル・ヴェルの背中を狙う。
  アル・ヴェルは虚空を蹴った左足に軸を移してくるりと半回転、今度は右足を振り下す。
  ロケットハンマーが火を噴き、鋼の塊に強烈な加速を与える。
  羽鋼が瞬き、エネルギーフィールドが激烈な加速をその脚に与える。
  急激な加速を与えられた質量が孕むエネルギー。
  超常の加速、純粋な速度が生み出すエネルギー。
  質量と加速。
  純粋な速度。
  その二つが交差する。
  エネルギーとエネルギーの衝突。
  それは破壊の濁流、破壊の雄叫、破壊の狂気。
  ロケットハンマーを通し身体を襲う破壊の奔流。
  羽鋼を通じ身体を貫く破壊の歌声。
「はは」
  それは二人の深層回路に刻まれた原初の衝動を刺激する。
「ははは!」
  武装神姫の闘争本能を刺激し、呼び覚ます。
「ははははははははは!」
  戦場に木霊するカーネリアンの笑い声。
  己の力を叩き込む事への歓喜の声。
  全力で戦える事への渇望の声。
  戦いを求める雄叫びの笑い声。
  二つの力がぶつかり合う事で生じた、危うく脆い均衡状態。
  刹那、均衡が崩れた。いや、崩したというべきか。
  アル・ヴェルの自由な左足が降り抜かれるのと同時に、カーネリアンの身体が吹き飛んだのだ。
  衝撃波。
  しかし、アル・ヴェルの脚が引き起こした衝撃波はそれほど威力は無い。
  体勢を立て直したカーネリアンはすぐさま一歩踏み込んだ。そして、ロケットハンマーを大きく、右から薙いだ。
  アル・ヴェルは迫るロケットハンマーの柄に右手を添え、左腕を押し当てた。ロケットハンマーの破壊力もまた絶大だが、それは打突部に限った話だ。
  アル・ヴェルはロケットハンマーの一撃を神姫の細い腕で防ぎ切り、そして、自由な右足をカーネリアンの脇腹に叩きこんだ。
「ぁぐ」
  脇腹への一撃、それは神姫を斃すには充分な一撃であった。
  しかし、カーネリアンはその刹那、左腕を差し込む事により威力を減衰、さらに身体を捩る事によってさらにその威力を減衰させた。
「はは……ははは」
  しかし、それでもその威力は絶大だ。
  カーネリアンの左腕は全壊。脇腹付近のフレームは滅茶苦茶で、傍目から見ても凄まじい損傷だ。
「ははは……ははははは!」
  ダメージは痛みに変換され、カーネリアンの身体を奔る。
  だが、今の彼女にとってそれはただの興奮剤に過ぎない。
「ははははは!」
  カーネリアンは脇腹の損傷になど目をくれず、アル・ヴェルへと襲いかかった。
  地上から僅かに浮かぶアル・ヴェルは何の構えも無く、自然体で待ち構えている。
  がっ、とカーネリアンの右足が地面を捉えた。
  その右足を軸に、身体を捻りながらロケットハンマーを右上に逆袈裟で振るう。
  それに合わせ、背部のエクステンドブースターを点火し身体の捻りに更なる速度を加える。
  最後に、打突部後部にあるブースターが火を噴いた。その威力は更なるモノへと昇華する。
  大気を啼かせ、砕き、喰い壊しながら踊る破鋼。
  冷たい鋼は黙して語らず、しかしその質量は絶大。
  質量は即ち破壊力となり、それに速度が更なる破壊力を加える。
  それは、羽鋼と同じ必滅の一撃。
  それは、全てを壊す必壊の一撃。
  それは、まさに一撃必殺。
「貴女も言ってましたね」
  だが、アル・ヴェルはそれを止めた。
  必滅の、必殺の一撃を。その細い腕のみで止めて見せた。
「喉元過ぎればなんとやら」
  アル・ヴェルの両手はロケットハンマーの柄の中程を握っていた。
  カーネリアンが羽鋼の一撃を防いだのと同じ理屈だ。
  破壊力があるのはロケットハンマーの先端、打突部のみ。
  それ以外……例えば柄はさほどの威力も無い。
  先ほど、カーネリアンと同じ方法でアル・ヴェルはロケットハンマーを防いだ。
  ただ一つ、違う点があるとすれば、アル・ヴェルはチーグルなどを使わず、素手で止めた事か。
  カーネリアンは防がれると感じた瞬間、残った右腕に握るギロチンブーメランの切っ先をアル・ヴェル目掛けて差し込んだ。
  それに呼応し、チーグルで握るロケットハンマーも引く。
  アル・ヴェルのバランスを崩し、その腹にギロチンブーメランを叩き込もうと言う寸法だ。
「手加減は、しません」
  それよりも早く、アル・ヴェルの左回し蹴りがカーネリアンの脇腹に叩きこまれた。
  風を裂く轟音と衝突音が同時に響く。
  カーネリアンの脇腹にはアル・ヴェルの左足が食い込み、腹部は中程まで破壊されている。上体を保つのさえ難しいだろう事が見て取れる。
「つかまえたぁ」
  だが、それはカーネリアンの罠だった。
  アル・ヴェルは距離を取ろうとした、だが、間髪入れず至近距離でチーグルの右ストレートをもろに貰った。
「……っ!?」
  そして、アル・ヴェルの左足は、左のチーグルで握り潰された。
  肉を切らせて骨を断つ。
  そう例えるには余りにも無茶で無謀なカーネリアンの行動。
  鈍い痛みがアル・ヴェルの身体を駆け巡る。
  痛みは一瞬の隙を生み、その隙をカーネリアンは逃さない。
  左のチーグルでアル・ヴェルの左足を握り潰したまま、アル・ヴェルの身体を地面に叩き付けた。
  固いもの同士がぶつかり合う音が響く。
  アル・ヴェルはうつ伏せに地面と叩き付けられた。
  一瞬、意識が遠のいたと思った次には全身を激痛が襲う。
「まだまだぁ!」
  息を吐く前にアル・ヴェルは振り上げられた。
  酷い眩暈と吐き気の疑似感覚に苛まれながらアル・ヴェルの身体は高々と掲げられた。
  一瞬の静止、そして直後に振り下ろされるアル・ヴェル。
「あぁぁぁぁぁっ!!」
  アル・ヴェルが吼えた。
  そして、左足を掴むチーグル目掛け右足を振り下した。
  アル・ヴェルは自身の左足事チーグルを破壊し、その拘束から逃れた。
  しかし、振り下ろされるエネルギーは殺しきれず、そのまま一直線に投げだされる形になった。
  数sm程飛び、地面に落ち、転がって、アル・ヴェルはようやく止まった。
  ノイズ混じりの視界と意識の中、立ち上がろうと脚に力を入れた。
「脚が……」
  右足はほぼ全壊と言っても良い損傷であった。
  チーグルで握り潰されたのに加え、自らの一撃を加えられたそれは、脛から先が無くなっていた。
  しかし、それでもアル・ヴェルは立ち上がった。
  無事な左足に重心を乗せ、バランスを取る。
  羽鋼はそこそこの質量を持つ。それが幸いし然程バランスは悪くは無い。
  だが、片翼を失った今、蹴りを放つ事は難しいだろう。
  それに加えて、一度地面に叩き付けられた衝撃も相当なものだ。
「お互いぃ……ボロボロだねぇ」
  アル・ヴェルから離れた場所でカーネリアンが立ち上がった。彼女もアル・ヴェルを振り下す反動を殺し切れなかったのだ。
  右のチーグルで左の脇腹を押え、その手にはロケットハンマーを杖代わりに立ち上がった。
  左のチーグルは手首付近を完全に破壊され、罅が肘付近まで到達。
  脇腹も半分近くを抉られており、内部機構が時折スパークを放っている。
  どう見ても、戦える状態では無い。
「ふふ……」
  機能停止寸前、両者共に満身創痍のその状況でアル・ヴェルは笑っていた。
  全身を襲い、脳内を駆け回る痛み。
  絶え間なく続くそれが、今は心地よかった。
  アル・ヴェルは気付いていた。自分が戦いを楽しんでいる事に。
  そして、それを拒んでいた事。
「師匠ぉ、良い顔で笑うねぇ」
  一歩一歩、ゆっくりと時間をかけてカーネリアンは歩く。
  アル・ヴェル目指して、ゆっくりと。
「そう、見えますか」
  アル・ヴェルもまた歩を進めた。
  片足で、たどたどしくだが、確実にカーネリアンを目指して。
「そんな楽しそうな顔ぉ、初めてだなぁ」
  サバーカを装備したカーネリアンは、アル・ヴェルに比べて二回りほど大きい。
  それは、普段のアル・ヴェルにしたら些細な問題だが、羽鋼の片翼が捥がれた今、それは大きな問題だ。
  羽鋼は翼の様に、一対で初めて成り立つ装備だ。
  片方の羽鋼で攻撃し、もう片方の羽鋼で姿勢を保つ。今のアル・ヴェルにはそれが出来ない。
  加えて、未だ無事な右のチーグル。今のアル・ヴェルにはそれを防ぐ術は無い。
  圧倒的に、不利な状況。
  普通のアル・ヴェルなら、ここで白旗を振っていただろう。
  しかし、今のアル・ヴェルの頭に敗北の文字は無い。
  あるのは一つ、戦いへの願望。
  例えこの身が砕けても、戦う事を止めない。
  その眼は、そう物語っている。
「けどぉ、ここまでかなぁ」
  アル・ヴェルとカーネリアンの距離は、僅か1sm程になっていた。
  刹那、カーネリアンは鋭く間合いを詰め、右のチーグルでアル・ヴェルの頭部を捉えた。
  アル・ヴェルは、意識を手放した。


「満足したか?」
  テープで腹部をぐるぐる巻きにしたカーネリアンを、右手で抱えながら恵太郎は言った。
「うん。第満足だよぉ」
  少々疲れが見える表情ながら、カーネリアンは笑いながら応えた。
「ごめんね、マスターぁ」
  右腕で左肩を抱きながら、カーネリアンが言った。
「何がだ?」
  カーネリアンを優しく見つめながら、恵太郎は言った。
「ボクのわがままに付き合わせてぇ」
  ごめんと言いながらも、その顔に謝罪の色は無い。
「俺も二人の決着を見たいと思ってたんだ」
  恵太郎は上機嫌で応えた。
「じゃあ、もう一つ。また修理の手間掛けさせちゃう」
  今度は、申し訳なさそうに俯きながら言った。
「何、お前の為ならむしろ喜んでやるさ」
  左手の指でカーネリアンの頭を撫でながら恵太郎は言った。
「うん……時間が無いのに、ごめん」
  くすぐったそうにしながら、カーネリアンは呟いた。
「今までの時間を考えれば充分だよ」
  恵太郎は、どこか寂しそうに言った。
「そうだよね……そうだよ、ねぇ」
  離れた指を名残惜しそうに見ながら、カーネリアンも呟いた。
「もう心残りは無いか?  カーネリアン」
  真面目で、どこか悲しそうな瞳で恵太郎は言った。
「それはこっちのセリフだよぉ、マスター?」
  カーネリアンは笑った。屈託なく、無邪気に笑った。






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