星空に想うは、遙か遠けき人の影
夜。うだる様な陽炎も収まった……と思いきや、温暖化著しい東京では、
深夜になろうとも熱気は収まらぬ。冷房がなければとても寝ていられんが
私・槇野晶は何となく作業が終わっても眠る気になれなかった。そこで、
肩ひものない服を纏って、地上に赴く。胸元に、ロッテを入れてな……。
深夜になろうとも熱気は収まらぬ。冷房がなければとても寝ていられんが
私・槇野晶は何となく作業が終わっても眠る気になれなかった。そこで、
肩ひものない服を纏って、地上に赴く。胸元に、ロッテを入れてな……。
「どうしましたの、マイスター?“アルファル”完成して脱力ですの?」
「ん……それもあるのだが、ふいに思い出してな……“あの人”の事を」
「“歩さん”、ですの?そう言えばあの人が失われたのも、こんな……」
「夏の日だったと記憶している。地中海の沿岸だったからな、より暑い」
「ん……それもあるのだが、ふいに思い出してな……“あの人”の事を」
「“歩さん”、ですの?そう言えばあの人が失われたのも、こんな……」
「夏の日だったと記憶している。地中海の沿岸だったからな、より暑い」
何を惚けている?そうか。以前“歩”について、私は語らなかったな。
私には姉が居てな、いや……居たんだ。その人こそ“槇野歩”だった。
技術者だった彼女の薫陶を、受けていないとは言えない。立派な人だ。
だが、海外で死亡した。その辺の事情は複雑なので、今回は伏せよう。
ロッテ達“妹”のCSCと、決して無関係ではないのだが……済まん。
私には姉が居てな、いや……居たんだ。その人こそ“槇野歩”だった。
技術者だった彼女の薫陶を、受けていないとは言えない。立派な人だ。
だが、海外で死亡した。その辺の事情は複雑なので、今回は伏せよう。
ロッテ達“妹”のCSCと、決して無関係ではないのだが……済まん。
「やっぱり夏になると、マイスターはちょっとクールダウンしますの」
「毎年一回は考えるのさ、歩姉さんは今の私をどう思っているのかと」
「……少々無茶はするけど、頑張ってるって認識すると思うんだよ?」
「そ、そうですよ……マイスターはうんと、神姫を愛してますしっ!」
「アル……茜、それにクララ!寝ていろと言っただろう、二人とも?」
「毎年一回は考えるのさ、歩姉さんは今の私をどう思っているのかと」
「……少々無茶はするけど、頑張ってるって認識すると思うんだよ?」
「そ、そうですよ……マイスターはうんと、神姫を愛してますしっ!」
「アル……茜、それにクララ!寝ていろと言っただろう、二人とも?」
万世橋無線会館の外壁に寄りかかり、都会の夜空を見上げていた私達。
そこに肩を置くのは、アルマのHVIF……茜。そしてクララだった。
彼女らも大分前に、ロッテから大まかな事情を聞いていた……筈だな。
故に私の感傷を悟ったのか、茜は寂しそうな顔で私の隣に寄りかかる。
クララは二人の肩を伝い私の素肌に腰掛け、ロッテはその隣へと登る。
そこに肩を置くのは、アルマのHVIF……茜。そしてクララだった。
彼女らも大分前に、ロッテから大まかな事情を聞いていた……筈だな。
故に私の感傷を悟ったのか、茜は寂しそうな顔で私の隣に寄りかかる。
クララは二人の肩を伝い私の素肌に腰掛け、ロッテはその隣へと登る。
「普段気丈なマイスターも、歩さんの時だけは……って聞きました」
「むむ……ロッテ、人の弱点まで教えてどうするか。この悪戯っ子」
「だって、わたし達はマイスターの“妹”ですの。だからこそね♪」
「理由も無く哀しまれても、ボクらが助ける術は見いだせないもん」
「むむ……ロッテ、人の弱点まで教えてどうするか。この悪戯っ子」
「だって、わたし達はマイスターの“妹”ですの。だからこそね♪」
「理由も無く哀しまれても、ボクらが助ける術は見いだせないもん」
幼い外見ながらも腰まで伸びた黒髪が印象的な、歩姉さんの面影を思う。
その姿、今は悲しい記憶だ。故に側にいる“妹達”の存在が今は嬉しい。
神姫は、常にマスターの為にのみ動く。ただ一人のマスターだけを思う。
だからこそ、側にあるマスターの苦悩を知ったなら……それは己の痛み。
私にこの認識を教えてくれたのも、そう言えばロッテ達だったか。有無。
その姿、今は悲しい記憶だ。故に側にいる“妹達”の存在が今は嬉しい。
神姫は、常にマスターの為にのみ動く。ただ一人のマスターだけを思う。
だからこそ、側にあるマスターの苦悩を知ったなら……それは己の痛み。
私にこの認識を教えてくれたのも、そう言えばロッテ達だったか。有無。
「案じてくれるのか、お前達……私は今も、ちゃんとしていられるか?」
「まだ大丈夫ですよマイスター!ずっとあたし達が、一生側にいますッ」
「永遠なんかないけど、可能な限りマイスターの力になりたいんだよ?」
「そう言う事ですの~♪掛け替えのない“妹”なのが、嬉しいですし♪」
「まだ大丈夫ですよマイスター!ずっとあたし達が、一生側にいますッ」
「永遠なんかないけど、可能な限りマイスターの力になりたいんだよ?」
「そう言う事ですの~♪掛け替えのない“妹”なのが、嬉しいですし♪」
熱気に火照った茜の体温と、冷たいロッテとクララの表面温度を感じる。
それは相反する躯なれど、私は心地よい“伴侶”の感覚として認識する。
そう言えば“彼女”もそうだ。常に皆の力としてすぐ側に存在している。
む?……“彼女”については、また何れ語る時が来るだろう。出来るなら
語らずに済んでほしいのだが、こればっかりは運命に任せるしかないな。
それは相反する躯なれど、私は心地よい“伴侶”の感覚として認識する。
そう言えば“彼女”もそうだ。常に皆の力としてすぐ側に存在している。
む?……“彼女”については、また何れ語る時が来るだろう。出来るなら
語らずに済んでほしいのだが、こればっかりは運命に任せるしかないな。
「しかし、いよいよ明日か。お前達のセカンド昇進を賭けた三連戦は」
「同時に“アルファル”の本格的なお披露目だよ。CSCが疼くもん」
「今までずっと特訓を繰り返してきましたけど、九形態は大変ですね」
「3on3でない限り、使えるのは八種類ですけど……“業物”ですの」
「同時に“アルファル”の本格的なお披露目だよ。CSCが疼くもん」
「今までずっと特訓を繰り返してきましたけど、九形態は大変ですね」
「3on3でない限り、使えるのは八種類ですけど……“業物”ですの」
話題転換は奏功して、明日に控えた大事な試合へと皆の注目が移った。
果たして『戦乙女を越えていく三人の姫』が、どこまでやれるのかッ!
皆、それを知りたくて興奮が高じて浮き足立っているのだ。この娘らは
これだから可愛くて仕方がない。まるで舞踏会に行くお姫様の様だな。
正確には、そう演出したのも私自身なのだが。そこは言いっこ無しだ。
果たして『戦乙女を越えていく三人の姫』が、どこまでやれるのかッ!
皆、それを知りたくて興奮が高じて浮き足立っているのだ。この娘らは
これだから可愛くて仕方がない。まるで舞踏会に行くお姫様の様だな。
正確には、そう演出したのも私自身なのだが。そこは言いっこ無しだ。
「私に歩姉さんが居た様に、お前達には“私”が常にいる。案ずるな」
「……そう言えば、そうだよ。姉妹の絆は、何時どうなっても固い物」
「マイスターが見ててくれるのは、不安や緊張でもありますけど……」
「でもそれ以上に、とても安心したり戦意の増進に繋がりますのッ!」
「そう言ってくれるなら、私もお前達を信頼しよう!期待しているぞ」
「……そう言えば、そうだよ。姉妹の絆は、何時どうなっても固い物」
「マイスターが見ててくれるのは、不安や緊張でもありますけど……」
「でもそれ以上に、とても安心したり戦意の増進に繋がりますのッ!」
「そう言ってくれるなら、私もお前達を信頼しよう!期待しているぞ」
茜の肩を揺らし、神姫二人に頬ずりをする。明日は戦場に立つ身の三人。
死ぬ訳ではないが、負ければ戦う者の誇りは傷つくし、辛い物ではある。
だが人がそうである様に、神姫も信じる“何か”の為戦う時が最も強い。
私を信じてくれるのならば、彼女らは機体に違わず勝ってくれるのだッ!
即物的な戦だけではない。日々の暮らしさえも、暖かい物になるだろう。
だから、私も神姫達も今を生きる活力が漲る。“絆”とはそう言う物だ!
死ぬ訳ではないが、負ければ戦う者の誇りは傷つくし、辛い物ではある。
だが人がそうである様に、神姫も信じる“何か”の為戦う時が最も強い。
私を信じてくれるのならば、彼女らは機体に違わず勝ってくれるのだッ!
即物的な戦だけではない。日々の暮らしさえも、暖かい物になるだろう。
だから、私も神姫達も今を生きる活力が漲る。“絆”とはそう言う物だ!
「さて、汗が噴き出る前にベッドに戻るか。一緒に寄り添って、寝よう」
「……はい。マイスター、今日はずっと抱きしめていてくれませんか?」
「ずるいですのアルマお姉ちゃん~!わたしも次、抱いてもらいますの」
「ボクは神姫素体のままでいいから、ぎゅっと抱きしめてほしいんだよ」
「……はい。マイスター、今日はずっと抱きしめていてくれませんか?」
「ずるいですのアルマお姉ちゃん~!わたしも次、抱いてもらいますの」
「ボクは神姫素体のままでいいから、ぎゅっと抱きしめてほしいんだよ」
──────賑やかな姉妹の絆、何よりも眩しいよ。