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 第十二幕、上幕。


 ・・・。

 長い沈黙。

 耳が痛くなるような沈黙だけが続く。
 瞳から光を失ったマーチは。やがて操り人形の糸が切れるように、かくん。と上に向けていた顔を下ろした。
 その横顔から。完全に表情は消えていた。
 震えることも無く。先のような怯えるような仕草さえない。
 ただ、その場に立ち尽くすだけ。

 小幡は流石に眉をも顰めて、その落胆という言葉では言い表せぬほどの、正に魂が抜けたような姿を見つめる。
 ・・・よもや、ここまでの大きな衝撃を受ける事だったのか。
 とすれば、やはり早まったのだろうか・・・。
 しかし悔やんでいる時間は残されていない。彼女はそっと腕時計に目をやった。・・・夜も随分と更けてきた。最早。
「・・・」
 だが。それでも。
 たとえそれでも、小幡は待ち続ける事にした。それだけが、今の彼女がするべきであると確信できる唯一の行為だから。

 既に、その神姫の中では答えが出ている・・・出てしまっている事を、彼女が知る術はない。

 マーチはもう一度、完全に感情そのものを欠落させた顔のまま。白い部屋を見回した。
 わたしは、ずっと。どこにいたのだろう。
 それが、何故か気になった。そのベッドは飾り気は少なく、自分が置かれていたであろう場所は無い。枕側にあるのは・・・黒と銀の冷たい物だけ。

 わたしはどこで。
 マスターの声を、聞いていたのだろう。

 彼女はただ、それだけを考えて。
 ふと。
 『色』が視界に入った。
 最初は何かの見間違いかとも思ったが。視界の端に、確かに色がある。
(・・・?)
 虚ろな瞳のまま、マーチはそちらに顔を向けた。

 枕側。その、ベッドの外。
 見たくも無い黒と、銀器具が並ぶその横・・・。その隣。
「・・・。・・・」
 僅かに見開かれた青い瞳は、しかし光さえ照り返すことは無い。
 だが、小幡に背を向ける形になりながらも、そのままマーチは冷たいマットレスシーツの上に小さく足音を立てて、そこに近づいていく。おぼつかない足元が絡まり、一度ぽすんと引っくりかえりながらも。のろのろと立ち上がり、それに真っ直ぐ向っていく。

 目指すそれは。ベットに備え付けられているキャスター。

「・・・マーチ?」
 小幡の声が聞こえていないのか。振り向きもせずに彼女は、そのキャスターに飛び乗る。
 かたっ。という軽い音と共に。
 マーチはそこに立った。

 白い、うっすらとした影以外は映り込みさえしない合成樹脂の上。
 そこは見事に彩られていた。色が、踊っていた。
 そのうちの一つを、そっと持ち上げた時。
 表情を失ったままのマーチの瞳が潤み、やがて。一筋、二筋と・・・涙がその目から零れだした。ぽたぽたと、その雫を受け止める色。
 色とりどりの、丁寧に作られたと一見して解る・・・小さなマーチよりも、更に小さなそれらの上に、涙は降り落ちる。

 折り紙。

 彼女は知っている。これが、一体なにを意味するのかを。
 鮮やかな色をしたそれらが。何の為に折られて、どうしてここに置かれているのか。
 その折り紙が囲むようになるキャスターテーブルの真ん中・・・そこに、ちょうど開いた空白の場所。
 そこに、何が置かれていたのか。彼女は知っている。

 きっと。ここにいた。

 色とりどりの折り紙を手でどかしながら、その空白の場所に立ち。ベッドの方を見る。

 近い。
 こんなに近い場所に。私はいたんだ。
 マーチは震える手を伸ばす。そこに届きはしない、だけど。声なら、心なら。いくらでも届く距離じゃないか。
 私はここにいたんだ。マスターの・・・こんなに近くに。


 ・・・。
「・・・小幡、さん?」
 不思議な行動に唖然としている小幡に対し、マーチは初めて声を発した。
「これ。私の・・・なんです。全部、全部。私にくれたんです」
「!?」
 その言葉を聞き。小幡は驚愕から目を見開いた。

 マーチはそこに腰を下ろした。
 膝を弱々しく抱え込む。そのまま見回せば・・・色が、視界を支配していた。
「あ・・・っ」
 そうか・・・そうだったんだ。
 冷たい、ただ白いだけの部屋の中で。
 赤、青、緑、黄・・・様々な色の折り紙が、彼女の周りを美しく彩っていた。

 私が寂しくないように。
 私が悲しくないように。
 私が、直ったときの為に。

 真っ白な世界の中で。
 ・・・色を、くれたんだ。
 毎日。ひとつずつ。
 優しい声と共に。
 ・・・日々、弱っていく声と共に。それでも。

『マーチにあげる』

 ・・・どれほど、どれほど疲れた声の時も。どんなに苦しげな声の時も。
 毎日、ひとつずつ。
 彼女の近くで、その音は聞こえていた。

『マーチが、はやく良くなりますように』

 その声に咳が混じった日もあった。
 その声が聞こえない時もあった。
 だけど。

 だけど、その音が、止む日は無かった。
 一つずつ。私の周りに『色』を増やしてくれていた。

「マスター・・・」
 彼女ははじめて。その言葉を、口にした。
「・・・マーチ、貴女は。まさか」
「はい」
 その、能面のような表情のまま。彼女は頷いて、小幡に向き直った。
「起きていました・・・あの日。マスターが私にCSCをセットしてくれた日から」
 抑揚が無い声。空虚さだけを湛えた瞳から、止め処なく涙が零れ落ちていく。
「私が良い、って言ってくれた時から。私は・・・ずっと起きていました」

 夢なんて見ていなかったんだ。
 眠ってなんていなかったんだ。
 起きていたんだ。ずっと。

「・・・私は」
 瞳を閉じる。
 感情を表現する術は、今の彼女には既に無かった。
 それでも。マーチは目を閉じたまま、ゆっくりと立ち上がる。

「私は、マスターの神姫です。私は、遠野弥生をマスターとする・・・神姫です」

 はっきりと。彼女はそう言った。
「・・・」
 小幡はその、決意を口にした神姫の姿を見つめた。
「良いのですね、とは聞きません」
「はい」
 その問いに、静かに俯いて。マーチはゆっくりと目を開けた。
 暗い虚無を映す瞳。涙だけが、零れ落ちる瞳。
 しかし、そこには確かに・・・。

 ・・・。
(彼女は、私だ)

 小幡はふと。そんな事を思う。
 ゼリスに会い。神姫から、この心を生んでもらった自分。
 マーチはきっと。
 ヤヨイから・・・まだ、ちゃんと会ってもいない自分のマスターから。

 ほんの少しだけではあるが。
 しかし。確かに『心』を、貰っていたのだ。
 それは。そう、全ての神姫が。
 そして、そのマスターとなった者が・・・。交わす、何よりも大切な事。

 そして。
 ただそれだけ、ひとかけらのそれを頼りに。
 重い・・・重過ぎる、その全てを受け入れようとしている。

 ヤヨイという少女を、彼女もまた。良く知らない。
 それでも解る。
 その少女が、どれほどに。
「・・・」
 しかしそれでも。それが確固たる想いならば。
(・・・良い、ですか?)
 小幡は、誰かに問いかけた。


 ・・・。
 数時間後。マーチと小幡は、その部屋の前にいた。
 どこまでも続く錯覚さえ覚える、無機質な薄暗い廊下。がらんとした空間だけが延々と連なり、人は彼女ら以外にはいない。
 銀色の冷たい扉。赤いランプが煌々と灯り、手術中という白い文字が浮かび上がっている。
 小幡はその前のソファに座り。マーチはその手の上で、じっとその扉を見続けている。時間は深夜。既に3時を回っていることを考えれば、早朝といっても良いだろう。
 ・・・ヤヨイの母は、手術室内にいるという。会わない方が良いかもしれない。

 遠く、かたん。という何かが落ちるような音がした。

 それを介する事なくマーチはただ、変わらず虚ろな表情で、その扉を見続けている。
(これで・・・良かったのだろうか?)
 小幡は。未だ問い続けていた。
 マーチは全てを受け入れる事を決意した。
 折れそうな、毀れそうなそれを必死に・・・その殻で守りながら。それでも、全てを受け止めようとしている。
(・・・)
 その、小さな胸の奥。ほんの少しの心で。

 いや・・・既にそれは・・・。
 一歩も動こうともせず、ただ。立ち続ける手の上の神姫を見つめる。
 もしもその結果がどうなろうとも。
 自分は。
 後悔せずに。それを見続けることが出来るのだろうか・・・。

 高い、電子音が鳴った。ランプが消える。
 小幡は、ゆっくりと立ち上がった。
「・・・」
 マーチをちらりと見る。
 彼女は、何も秘めぬ、何も映らない虚ろな瞳を閉じて。
 一度肩で深呼吸をした。
 そして・・・再び目を開けると・・・。

 一迅の風が、吹きぬけた。

 小幡は目の前でマーチが見せたそれに、息を飲んだ。
(ゼリス・・・!)
 それはいつしか。
 『彼女』が、自分に見せた姿だった。

 最初に目覚めたとき。何も知らない、その神姫が見せた姿。
 死を受け入れるとき。全てを断たれて尚、心を信じた神姫が見せた姿。
 それこそは・・・。


 ・・・。

 何で。気付かなかったんだろう?
 どうして、解らなかったんだろう。
 こんなに近くに。私は・・・こんなに大きな物を持っていたのに。

 扉の向こうから。音が聞こえてきた。
 小さな話し声が、どのような結果を話しているかは聞き取れない。
 マーチは目を閉じて、両手を胸元で合わせた。
 重く、辛いと感じたそこは。今は不思議と暖かい。誰かに包まれているように。
 体の中。確かに暖かい。
 宝石のような音が聞こえる。自分が、自分である証拠。自分がマスターの神姫である証拠。
 ・・・優しく波打つ。新しい音。
(ママ・・・ありがとう)
 マーチは、知らず。心の中で、その名を呼んだ。

 顔を上げて、目を開ける。
 澄んだ青い目には美しい涙が滲み。明るい光が舞っていた。


 ・・・マスター?

 あなたに、伝えたいことがあります。
 お話したいことが、いっぱいあるんです。
 いろんなこと。たくさんのこと。
 当たり前に神姫とマスターが交わす。ひとつひとつがステキな言葉。

 私を選んでくれて・・・ありがとうございます。
 そう、伝えたいんです。

 聞こえるんです。
 私の中の私が言っています。
 きっと大丈夫。
 これがあれば。きっと大丈夫。


 マーチは、優しげな笑みを。浮かべていた。
 彼女の前で。銀色の扉が開いていく。


 ・・・。

 何があっても前を向こう。
 明るい声で、あなたを呼ぼう。
 たとえ。世界が目を伏せても。


「はじめまして、マスター」


 笑顔はきっと、何よりも強いから。



 第十二幕。下幕。





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