疲れた時は、玉を磨いて(前半)
意識が闇の淵から、ゆっくり浮上していく。同時に、己の置かれた状況も
徐々に認識していく……そうだ、私・槇野晶は“アルファル”を製作中。
百枚近い設計図を引き終わり、コストも含めた要求に合致する電装部品を
アキバ全域のパーツ屋から調達……構造部品は自分でも作成していたな。
そして、そうだな。パーツを揃えた直後に朝六時の時報を聞いて……ん?
徐々に認識していく……そうだ、私・槇野晶は“アルファル”を製作中。
百枚近い設計図を引き終わり、コストも含めた要求に合致する電装部品を
アキバ全域のパーツ屋から調達……構造部品は自分でも作成していたな。
そして、そうだな。パーツを揃えた直後に朝六時の時報を聞いて……ん?
「し、しまった寝坊したッ!?今日は定休日じゃないぞロッテ!!」
「マイスター、落ち着いてくださいですの~っ!今日は定休日ッ!」
「な、何……ふ、うぅぅぅ……寿命が縮むかと思ったぞ。おはよう」
「おはよう、じゃないですよ!もうとっくにお昼過ぎですよ?全く」
「……それに、目の下にすごい隈。この三日間、根詰めすぎだよ?」
「む、むぅ……すまん。アイデアが大凡固まったので、つい……な」
「マイスター、落ち着いてくださいですの~っ!今日は定休日ッ!」
「な、何……ふ、うぅぅぅ……寿命が縮むかと思ったぞ。おはよう」
「おはよう、じゃないですよ!もうとっくにお昼過ぎですよ?全く」
「……それに、目の下にすごい隈。この三日間、根詰めすぎだよ?」
「む、むぅ……すまん。アイデアが大凡固まったので、つい……な」
半ば呆れ顔というか、怒っているアルマ・ロッテ・クララにたっぷりと
説教を喰らう。確かに“アルファル”の案が突如脳裏に浮かんでから、
私は殆ど寝食を忘れて作成に打ち込んだ。精度の高いパーツを三人分、
揃えるまでにどれだけの時間を使ったか……その間、彼女らには色々と
世話と迷惑を掛けてしまった様だな。だが彼女らは、それ以上に……。
説教を喰らう。確かに“アルファル”の案が突如脳裏に浮かんでから、
私は殆ど寝食を忘れて作成に打ち込んだ。精度の高いパーツを三人分、
揃えるまでにどれだけの時間を使ったか……その間、彼女らには色々と
世話と迷惑を掛けてしまった様だな。だが彼女らは、それ以上に……。
「もう、マイスターの顔が台無しですのっ!疲れが滲み出てますっ」
「これは“娘さん”としてどうかと思うんだよ。肌も荒れてるもん」
「熱帯夜に対抗する為、エアコン付けっぱなしでしたからねぇ……」
「……何、“妹”達よ。まず私の躯を、心配してくれるのか……?」
『当然ですっ!!!』
「これは“娘さん”としてどうかと思うんだよ。肌も荒れてるもん」
「熱帯夜に対抗する為、エアコン付けっぱなしでしたからねぇ……」
「……何、“妹”達よ。まず私の躯を、心配してくれるのか……?」
『当然ですっ!!!』
……本心では余り構ってもらえず寂しかっただろうに、無茶をした私を
案じてくれている。己の未熟を恥じると共に、彼女らへの感謝が沸く。
その心に堪らなくなり、私は疲れた躯を押して……そっと抱きしめる。
そこで気付く。空調で汗が乾燥し、私の肌に服が張り付いている事を。
案じてくれている。己の未熟を恥じると共に、彼女らへの感謝が沸く。
その心に堪らなくなり、私は疲れた躯を押して……そっと抱きしめる。
そこで気付く。空調で汗が乾燥し、私の肌に服が張り付いている事を。
「すまんな、ダメな“姉”で。よし、一つリフレッシュといこうか」
「え、ええと……リフレッシュってどうするんです?お風呂……?」
「有無。だがアルマよ、ここにあるただのユニットバスではないぞ」
「……ひょっとして、お台場の“大江戸大風呂敷物語”なのかな?」
「そうだ。心配してくれたお前達も、久々にリラックスさせよう!」
「わ~いですの~♪じゃあ早速、“お風呂道具”の準備しますのっ」
「え、ええと……リフレッシュってどうするんです?お風呂……?」
「有無。だがアルマよ、ここにあるただのユニットバスではないぞ」
「……ひょっとして、お台場の“大江戸大風呂敷物語”なのかな?」
「そうだ。心配してくれたお前達も、久々にリラックスさせよう!」
「わ~いですの~♪じゃあ早速、“お風呂道具”の準備しますのっ」
閉まりっぱなしだったシャッターに“本日定休日”の看板を掛け、荷物を
用意する。タオルに着替え、シャンプーその他と、神姫達専用の洗浄剤。
そう、少々無茶を言って神姫達の持ち込みを許可してもらっているのだ。
『洗浄剤は人体に強い苛性等の害が無いブランド』との条件付きだがな?
後は、神姫達が用いる躯拭き用のタオル……おっと、私も着替えねばな。
軽くシャワーを浴びて髪を洗う事とする。行水でもしないよりはマシだ。
用意する。タオルに着替え、シャンプーその他と、神姫達専用の洗浄剤。
そう、少々無茶を言って神姫達の持ち込みを許可してもらっているのだ。
『洗浄剤は人体に強い苛性等の害が無いブランド』との条件付きだがな?
後は、神姫達が用いる躯拭き用のタオル……おっと、私も着替えねばな。
軽くシャワーを浴びて髪を洗う事とする。行水でもしないよりはマシだ。
「マイスター?あたし達はみんな準備出来ましたけど、まだですか~?」
「ちょ、ちょっと待て。躯を拭かねば下着が着にくい……よし、後一分」
「……ちなみに、むやみやたらと覗いたら明日はないんだよ。要注意っ」
「ん?クララちゃん、誰に向かって話してますの?あ、出てきました!」
「ふぅ、すまんすまん……これで私も準備出来たぞ。待たせたな、皆ッ」
「ちょ、ちょっと待て。躯を拭かねば下着が着にくい……よし、後一分」
「……ちなみに、むやみやたらと覗いたら明日はないんだよ。要注意っ」
「ん?クララちゃん、誰に向かって話してますの?あ、出てきました!」
「ふぅ、すまんすまん……これで私も準備出来たぞ。待たせたな、皆ッ」
熱帯夜が過去の三割増しという事情故、暦上の“夏”よりずっと早く、
東京に住む私達は、夏服に着替える。生地は熱を吸わない色で統一し、
袖も短くなっている。と言っても、デザイン面では一切手抜きしない。
そう、これは……ついでに着替えも、私が自分で縫製した物だ。一応、
“Electro Lolita”のイメージソースとして買った既製品もあるが……
だってな、その……妹達とお揃いにしたいではないか、いいだろう!?
東京に住む私達は、夏服に着替える。生地は熱を吸わない色で統一し、
袖も短くなっている。と言っても、デザイン面では一切手抜きしない。
そう、これは……ついでに着替えも、私が自分で縫製した物だ。一応、
“Electro Lolita”のイメージソースとして買った既製品もあるが……
だってな、その……妹達とお揃いにしたいではないか、いいだろう!?
「よし、では行くとしようか。さあ、両肩とポケットに乗っておくれ」
「はいですの♪……くんくんっ、うん。甘いシャンプーの香りですの」
「う゛ぁっ!?こ、こらっ!髪の匂いを嗅ぐんじゃない、ロッテッ!」
「いいじゃないですかマイスター。あっちで、色々しますしね……?」
「うん、やっぱり“妹”としては綺麗になってほしいもん。行こう?」
「……ま、全く……秋葉原から電車に乗って、目指すはお台場だッ!」
「はいですの♪……くんくんっ、うん。甘いシャンプーの香りですの」
「う゛ぁっ!?こ、こらっ!髪の匂いを嗅ぐんじゃない、ロッテッ!」
「いいじゃないですかマイスター。あっちで、色々しますしね……?」
「うん、やっぱり“妹”としては綺麗になってほしいもん。行こう?」
「……ま、全く……秋葉原から電車に乗って、目指すはお台場だッ!」
そうなのだ。これから一緒の大きな風呂に入る……それがどの様な意味を
持つか。月に一度の、その……ええと。“裸の付き合い”である……何?
『普段から一緒に入ってるだろう』だと?!だ、黙れッ!!狭い風呂では
味わえぬ感覚だってある!……いいだろう、姉妹水入らずの温泉位ッ!!
持つか。月に一度の、その……ええと。“裸の付き合い”である……何?
『普段から一緒に入ってるだろう』だと?!だ、黙れッ!!狭い風呂では
味わえぬ感覚だってある!……いいだろう、姉妹水入らずの温泉位ッ!!
「ふぅ……しかし、暑いな。今日も真夏日か、汗が止まらんぞ……全く」
「スポーツドリンクとかちゃんと飲んでほしいんだよ。徹夜明けだもん」
「分かっている。この時間では昼食も喰えぬし……チーズ味でも買うか」
「スポーツドリンクとかちゃんと飲んでほしいんだよ。徹夜明けだもん」
「分かっている。この時間では昼食も喰えぬし……チーズ味でも買うか」
クララの助言に従い、固形栄養食とペットボトルのドリンクを購入する。
根を詰めた直後でしかも食事抜きある。この状態から極度に疲労すれば、
どうなるかは……神姫であっても、流石に分かる事なのだろうな。有無。
電車内へ持ち込む無粋はせずに手早く平らげて、ゴミ箱へ全て棄てるぞ。
根を詰めた直後でしかも食事抜きある。この状態から極度に疲労すれば、
どうなるかは……神姫であっても、流石に分かる事なのだろうな。有無。
電車内へ持ち込む無粋はせずに手早く平らげて、ゴミ箱へ全て棄てるぞ。
「ふぅ……冷たさが胃に染み渡るな。余程空っぽだったのか……むう」
「ちゃんと夕飯は、いっぱい食べましょう?ダメですよ、マイスター」
「そうだな、アルマ。風呂をたっぷり浴びたら、早めに夕食を喰おう」
「それならイタリアンがいいですの~♪ライスコロッケとか~……♪」
「はしゃぐなロッテや。その為には、お前達も風呂で精一杯くつろげ」
「ちゃんと夕飯は、いっぱい食べましょう?ダメですよ、マイスター」
「そうだな、アルマ。風呂をたっぷり浴びたら、早めに夕食を喰おう」
「それならイタリアンがいいですの~♪ライスコロッケとか~……♪」
「はしゃぐなロッテや。その為には、お前達も風呂で精一杯くつろげ」
ロッテを宥めつつも山手線に乗る。手荷物の所為か、座る事が出来た。
神姫が統一規格となって暫く経つが、未だに私の様な存在は多くない。
それでも冬の頃よりは、神姫連れのオーナーを見かける機会が増えた。
なんでも、神姫を連れてバイクで旅をしているオーナーもいるらしい。
全てが片づいて暇になったら、長期休暇を取るのもいいかもしれんな。
神姫が統一規格となって暫く経つが、未だに私の様な存在は多くない。
それでも冬の頃よりは、神姫連れのオーナーを見かける機会が増えた。
なんでも、神姫を連れてバイクで旅をしているオーナーもいるらしい。
全てが片づいて暇になったら、長期休暇を取るのもいいかもしれんな。
「……む、新橋駅だな。もう乗り換えか……ここからはゆりかもめだぞ」
「はいっ……平日でも、それなりにカップルとか乗ってますよね~……」
「全くだな。造成から数十年経っても、未だに人気を集め続けるとはな」
「問題はないんだよ。ボクらだって、言ってみれば“カップル”だもん」
「え、えぇ~と……流石に一対三はカップルって言わない気がしますの」
「はいっ……平日でも、それなりにカップルとか乗ってますよね~……」
「全くだな。造成から数十年経っても、未だに人気を集め続けるとはな」
「問題はないんだよ。ボクらだって、言ってみれば“カップル”だもん」
「え、えぇ~と……流石に一対三はカップルって言わない気がしますの」
──────事の問題は、そこじゃない気がするよ……?