第5話「白子とご主人様の戦闘準備」
「ご主人様にお願いがあります」
三人でのんびりくつろいでいたとき、白子が妙にかしこまって俺に声をかけた
「ん? なんだ? 改まって」
「実は私…。バトルに、参加してみたいんです!」
「ぎゃにぃい!?」
「し、白ちゃん!?」
まさか、こんな事を言うとは…
「黒ちゃんが毎日うなされてて、私たちにはどうすればいいのか分からない…」
「それは俺だって考えている。でも…」
「そんな、だって…。白ちゃんまで怖い目にあうこと無い!」
あわてて止めようとする俺達二人を白子はかぶりを振って静止する
「一杯、考えたんです。…私も、一度戦場に行ってみたら…何か分かるかも…」
白子が一瞬うつむくが、すぐに凛と顔を上げ
「もう、決めたんです」
その表情を見て、俺も黒子も、白子の説得は不可能だと察した
しばし沈黙が流れ、やがて意を決したように
「ボクも、出る!」
「黒ちゃん!?」
「ボクが原因なのに、白ちゃんばっかりにやらせることなんてできない!」
俺は頭痛を感じたが、戦場の恐ろしさに立ち向かうことで黒子のトラウマも軽減されるかもしれない
そう思えば、俺に出来ることはたくさんある
「タッグマッチの部門もある。二人ペアで参加するのがいいだろう」
「ご主人様…!」
白子がとがめるような声を出す。過保護な部分がある彼女は黒子を止めるべきだと考えているんだろう
しかし、俺はそれを黙殺し、
「それと、二人に、新しい名前をつけてあげよう」
「ご主人様?」
「え? なんで?」
「せっかく試合に出ると決めたんだ。それなのに白子黒子じゃあまりにおざなりだろ?」
「あ、やっぱり自覚あったんですね…」
「じゃあ、ご主人様はボクが試合に出るのに賛成してくれるんだ!」
「ああ、いずれこういう日がくるかもと思って考えていた名前があるんだが、…マリンとアニタってのでどうだ? 白子がマリンで、黒子がアニタだ」
「マリンと、アニタ…ですか」
「いい名前です! 気に入りました!」
「そうか、気に入ってくれたか…。なら、お前達が史上最強の神姫として君臨できるような武装も用意せねばならんな…」
「は?」
「えっと?」
「クククク、待っていろ二人とも、俺が持つすべての技術を結集して究極の装備を開発して見せるぞ! フフフフフ、ハァーッハッハッハッハッ!」
「ご主人様!?」
「き、気を確かにしてください!」
なんか二人が心配していたが、俺は体中にやる気とアイデアが満ち溢れるのを感じていた
三人でのんびりくつろいでいたとき、白子が妙にかしこまって俺に声をかけた
「ん? なんだ? 改まって」
「実は私…。バトルに、参加してみたいんです!」
「ぎゃにぃい!?」
「し、白ちゃん!?」
まさか、こんな事を言うとは…
「黒ちゃんが毎日うなされてて、私たちにはどうすればいいのか分からない…」
「それは俺だって考えている。でも…」
「そんな、だって…。白ちゃんまで怖い目にあうこと無い!」
あわてて止めようとする俺達二人を白子はかぶりを振って静止する
「一杯、考えたんです。…私も、一度戦場に行ってみたら…何か分かるかも…」
白子が一瞬うつむくが、すぐに凛と顔を上げ
「もう、決めたんです」
その表情を見て、俺も黒子も、白子の説得は不可能だと察した
しばし沈黙が流れ、やがて意を決したように
「ボクも、出る!」
「黒ちゃん!?」
「ボクが原因なのに、白ちゃんばっかりにやらせることなんてできない!」
俺は頭痛を感じたが、戦場の恐ろしさに立ち向かうことで黒子のトラウマも軽減されるかもしれない
そう思えば、俺に出来ることはたくさんある
「タッグマッチの部門もある。二人ペアで参加するのがいいだろう」
「ご主人様…!」
白子がとがめるような声を出す。過保護な部分がある彼女は黒子を止めるべきだと考えているんだろう
しかし、俺はそれを黙殺し、
「それと、二人に、新しい名前をつけてあげよう」
「ご主人様?」
「え? なんで?」
「せっかく試合に出ると決めたんだ。それなのに白子黒子じゃあまりにおざなりだろ?」
「あ、やっぱり自覚あったんですね…」
「じゃあ、ご主人様はボクが試合に出るのに賛成してくれるんだ!」
「ああ、いずれこういう日がくるかもと思って考えていた名前があるんだが、…マリンとアニタってのでどうだ? 白子がマリンで、黒子がアニタだ」
「マリンと、アニタ…ですか」
「いい名前です! 気に入りました!」
「そうか、気に入ってくれたか…。なら、お前達が史上最強の神姫として君臨できるような武装も用意せねばならんな…」
「は?」
「えっと?」
「クククク、待っていろ二人とも、俺が持つすべての技術を結集して究極の装備を開発して見せるぞ! フフフフフ、ハァーッハッハッハッハッ!」
「ご主人様!?」
「き、気を確かにしてください!」
なんか二人が心配していたが、俺は体中にやる気とアイデアが満ち溢れるのを感じていた
―――次の日の夜
「う~、ご主人様遅い…」
いつに無く落ち着きが無い白ちゃん…じゃなかったマリンちゃん
確かにちょっと遅いけど、まだ電車一つ分くらいしか遅れてない
「マリンちゃん…探しにいっちゃだめだよ」
ボクは面白くなって、ちょっと意地悪な声を出しちゃう
それにマリンちゃんがぷぅ、と頬を膨らましてちょっと怒ったような声を出そうとした瞬間
バターーン! という、玄関を蹴り開けるような音が響き、
「ただいまぁ!!」
いつもと比べて異様にパワフルなご主人様の声が響く
昨日はひたすら紙にボクたち用武装ユニットの設計図を書きなぐって一晩明かし、
始発が動き始める時間には「早速上司を説得だ!」とか叫んで家を飛び出していったので非常に不安だったけど、一日中ハイテンションは続いたようだ
「マリン! アニタ! 所長を説得して、スポンサー契約を取り付けたぞ! これでうちの研究所が総力を上げてお前たちのバックアップを行う体制になった!」
急な展開に思わず呆れるボク。マリンちゃんは一瞬ふらついたが、すぐに気を取り直してご主人様に噛み付く
「何でいきなりそこまで話が大きくなってるんですか!?」
そんな言葉をご主人様は全く無視してまくし立てる
「二人のための武装も、マリンのは4日後、アニタのも8日でロールアウト予定だ」
完全新規設計の武装ユニットをたった4日で…。でも
「ボクのは後なの?」
「ああ、それだけでなく、マリンのはサード基準、アニタのはセカンド基準の出力になっているから、セカンド昇格まではマリン一人で戦ってもらう」
「ど、どうしてですか?」
「マリンちゃんだけ戦わせるなんて…!?」
「厳しいことだが、これはスポンサー契約の条件の一つだからどうにもならんことだ。ついでに3ヶ月以内にセカンドに昇格できなければスポンサー契約は打ち切られる」
「たったの?」
「一人でやるのに、それは短いよ!」
あまりに無茶な条件にボクは大声を出してしまう
「大丈夫、サードからセカンドに上がった最短レコードは1週間だ。まあ、シングルで、八百長試合の噂が耐えない奴だったが…。それに比べれば競技人口の少ないタッグなら3ヶ月くらいでいける、かもしれない」
「でも一人でなんて!」
「まって、アニタちゃん…。いいの、私やる。ご主人様が出来るって言ってるんだから、それを信じる」
「マリンちゃん…? だって戦うのって危ないんだよ! 怖いんだよ!」
「わかってる。でも、怖いものから逃げちゃ駄目なの。アニタちゃんもそれに立ち向かうって決めたんでしょ?」
「マリンちゃん…」
「大丈夫、サードはヴァーチャルが基本だから、危険は無い、はず」
無責任な事を言うご主人様
「ご主人様…!」
ボクは思わず咎めるような声を出してしまう。でもマリンちゃんはそれを制して
「アニタちゃん、ご主人様を信じられないの?」
「そうじゃないけど…!」
「そうだ、俺を信じろ。俺の何よりも誇れることは、技術力だ。この世の何よりもな」
そう力強く宣言するご主人様。ボクは長らく黙っていたけど
「…はい」
と頷くしかできなかった
「とりあえず、武装データは先行して完成させてきたから、これでヴァーチャルトレーニングできるぞ」
といって、押入れから訓練機を引っ張り出してくるご主人様。そんなの持ってたんですね…
「それと、これもだ。昔、知り合いの研ぎ師に遊び半分で作らせたものだが、本物の業物だ。これも信頼しろ。俺の次にな」
そういって取り出したのは二振りずつのナイフとマチェットだった。鈍く輝き、見るからに鋭そうな…
「これは…?」
「作ったのは俺じゃないが、設計自体は俺がした。製法も素材もこだわってあるから、硬度も切れ味も並じゃないぞ」
「ご主人様…、本当はボク達にバトルさせたかったの?」
「まあ、そういう気持ちも無くは無かったが、バトルにはあまり興味ないといわれて諦めていたよ」
そういって笑ったご主人様。いつも以上に生き生きしているように見えるけど気のせいだと思っておこう
「とりあえず、俺は出来る事をすべてやった。後はお前達に任せるよ」
「はーい!」
「ご期待に沿えるよう努力します!」
誤配送のときには感じなかった、ゆっくりと温まっていく高揚感。戦うのは怖いけど、ご主人様とマリンちゃんが一緒なら大丈夫
そんな気持ちがボクの心の奥底から湧き上がってくる。やっぱり、ボクも武装神姫なんだ…
「う~、ご主人様遅い…」
いつに無く落ち着きが無い白ちゃん…じゃなかったマリンちゃん
確かにちょっと遅いけど、まだ電車一つ分くらいしか遅れてない
「マリンちゃん…探しにいっちゃだめだよ」
ボクは面白くなって、ちょっと意地悪な声を出しちゃう
それにマリンちゃんがぷぅ、と頬を膨らましてちょっと怒ったような声を出そうとした瞬間
バターーン! という、玄関を蹴り開けるような音が響き、
「ただいまぁ!!」
いつもと比べて異様にパワフルなご主人様の声が響く
昨日はひたすら紙にボクたち用武装ユニットの設計図を書きなぐって一晩明かし、
始発が動き始める時間には「早速上司を説得だ!」とか叫んで家を飛び出していったので非常に不安だったけど、一日中ハイテンションは続いたようだ
「マリン! アニタ! 所長を説得して、スポンサー契約を取り付けたぞ! これでうちの研究所が総力を上げてお前たちのバックアップを行う体制になった!」
急な展開に思わず呆れるボク。マリンちゃんは一瞬ふらついたが、すぐに気を取り直してご主人様に噛み付く
「何でいきなりそこまで話が大きくなってるんですか!?」
そんな言葉をご主人様は全く無視してまくし立てる
「二人のための武装も、マリンのは4日後、アニタのも8日でロールアウト予定だ」
完全新規設計の武装ユニットをたった4日で…。でも
「ボクのは後なの?」
「ああ、それだけでなく、マリンのはサード基準、アニタのはセカンド基準の出力になっているから、セカンド昇格まではマリン一人で戦ってもらう」
「ど、どうしてですか?」
「マリンちゃんだけ戦わせるなんて…!?」
「厳しいことだが、これはスポンサー契約の条件の一つだからどうにもならんことだ。ついでに3ヶ月以内にセカンドに昇格できなければスポンサー契約は打ち切られる」
「たったの?」
「一人でやるのに、それは短いよ!」
あまりに無茶な条件にボクは大声を出してしまう
「大丈夫、サードからセカンドに上がった最短レコードは1週間だ。まあ、シングルで、八百長試合の噂が耐えない奴だったが…。それに比べれば競技人口の少ないタッグなら3ヶ月くらいでいける、かもしれない」
「でも一人でなんて!」
「まって、アニタちゃん…。いいの、私やる。ご主人様が出来るって言ってるんだから、それを信じる」
「マリンちゃん…? だって戦うのって危ないんだよ! 怖いんだよ!」
「わかってる。でも、怖いものから逃げちゃ駄目なの。アニタちゃんもそれに立ち向かうって決めたんでしょ?」
「マリンちゃん…」
「大丈夫、サードはヴァーチャルが基本だから、危険は無い、はず」
無責任な事を言うご主人様
「ご主人様…!」
ボクは思わず咎めるような声を出してしまう。でもマリンちゃんはそれを制して
「アニタちゃん、ご主人様を信じられないの?」
「そうじゃないけど…!」
「そうだ、俺を信じろ。俺の何よりも誇れることは、技術力だ。この世の何よりもな」
そう力強く宣言するご主人様。ボクは長らく黙っていたけど
「…はい」
と頷くしかできなかった
「とりあえず、武装データは先行して完成させてきたから、これでヴァーチャルトレーニングできるぞ」
といって、押入れから訓練機を引っ張り出してくるご主人様。そんなの持ってたんですね…
「それと、これもだ。昔、知り合いの研ぎ師に遊び半分で作らせたものだが、本物の業物だ。これも信頼しろ。俺の次にな」
そういって取り出したのは二振りずつのナイフとマチェットだった。鈍く輝き、見るからに鋭そうな…
「これは…?」
「作ったのは俺じゃないが、設計自体は俺がした。製法も素材もこだわってあるから、硬度も切れ味も並じゃないぞ」
「ご主人様…、本当はボク達にバトルさせたかったの?」
「まあ、そういう気持ちも無くは無かったが、バトルにはあまり興味ないといわれて諦めていたよ」
そういって笑ったご主人様。いつも以上に生き生きしているように見えるけど気のせいだと思っておこう
「とりあえず、俺は出来る事をすべてやった。後はお前達に任せるよ」
「はーい!」
「ご期待に沿えるよう努力します!」
誤配送のときには感じなかった、ゆっくりと温まっていく高揚感。戦うのは怖いけど、ご主人様とマリンちゃんが一緒なら大丈夫
そんな気持ちがボクの心の奥底から湧き上がってくる。やっぱり、ボクも武装神姫なんだ…
その夜、久しぶりに、ボクは悪夢を見なかった