約束されし、王妃の宝剣(前編)
いよいよその日がやってきた。覚悟を決めたアルマが、前回敗北を喫した
兎型の軍神・“隻腕の”ティールに申し込んだ指名再戦。その受理通知が
私のPHSに届いたのだ。これを乗り越えねば、アルマのセカンド入りは
恐らく成し得ないだろうな。私・槇野晶は、深夜彼女にこの旨を伝えた。
“ヨルムンガルド”での剣術練習をしていたアルマの面も、引き締まる。
兎型の軍神・“隻腕の”ティールに申し込んだ指名再戦。その受理通知が
私のPHSに届いたのだ。これを乗り越えねば、アルマのセカンド入りは
恐らく成し得ないだろうな。私・槇野晶は、深夜彼女にこの旨を伝えた。
“ヨルムンガルド”での剣術練習をしていたアルマの面も、引き締まる。
「ついに明日、ですか……マイスター。兼ねてのお願い通り、明日は!」
「有無。シルフィードに“レーラズ”と幾多の剣、か……良いのだな?」
「ええ……それこそが、あたしが今為すべき戦いなんだと思いますから」
「一応アルマのオーダー通りに剣を改良し、“マビノギオン”もあるが」
「“マビノギオン・アサルト”ですね?……これで、準備は万端ですっ」
「有無。シルフィードに“レーラズ”と幾多の剣、か……良いのだな?」
「ええ……それこそが、あたしが今為すべき戦いなんだと思いますから」
「一応アルマのオーダー通りに剣を改良し、“マビノギオン”もあるが」
「“マビノギオン・アサルト”ですね?……これで、準備は万端ですっ」
そう言って私は、改良が終わったばかりの“ヨルムンガルド”の鞘と、
不思議な形の、一対のナックルガードを渡す。左腕側が少々大きいな。
腰のジョイントに鞘を取り付けガードを手に填めたアルマは、真剣だ。
しかしそれは、前の様な思い詰めた表情ではなく……落ち着いている。
前の戦いで何かを悟ったというのは、誤魔化しや嘘ではないのだろう。
不思議な形の、一対のナックルガードを渡す。左腕側が少々大きいな。
腰のジョイントに鞘を取り付けガードを手に填めたアルマは、真剣だ。
しかしそれは、前の様な思い詰めた表情ではなく……落ち着いている。
前の戦いで何かを悟ったというのは、誤魔化しや嘘ではないのだろう。
「後は、あたしの戦いをするだけ。マイスター、明日はお願いします」
「分かった……今日はもう休め。明日への英気を養うのだ、アルマよ」
「大丈夫ですの。感じた事を信じて、アルマお姉ちゃんらしく……ね」
「マイスターの横でボクらも見てる。大丈夫だよ、一人じゃないもん」
「みんな……有り難うございますッ。精一杯、明日は戦いますッ!!」
「分かった……今日はもう休め。明日への英気を養うのだ、アルマよ」
「大丈夫ですの。感じた事を信じて、アルマお姉ちゃんらしく……ね」
「マイスターの横でボクらも見てる。大丈夫だよ、一人じゃないもん」
「みんな……有り難うございますッ。精一杯、明日は戦いますッ!!」
こうして皆に励まされたアルマは、特に緊張するでもなく眠りに就く。
むしろ、私の方が緊張して眠れん位だ……美容には好ましくないがな。
だがそれでも眠りは訪れ、気が付いた時には集光タワーからの陽光が、
私の頬を照らしていた。時刻は……五時半か。有無、何時も通りだな。
皆で早々に朝食を済ませて狭い風呂に入り、出かける身嗜みを整える。
──────こら貴様、乙女の入浴シーンを覗くな。首をへし折るぞ?
むしろ、私の方が緊張して眠れん位だ……美容には好ましくないがな。
だがそれでも眠りは訪れ、気が付いた時には集光タワーからの陽光が、
私の頬を照らしていた。時刻は……五時半か。有無、何時も通りだな。
皆で早々に朝食を済ませて狭い風呂に入り、出かける身嗜みを整える。
──────こら貴様、乙女の入浴シーンを覗くな。首をへし折るぞ?
「ふぅ~……この時期は寝汗をかくからな、シャワーが気持ちいい」
「……マイスター、マイスターっ。ちょっぴりふくらみましたの?」
「ぶっ!?な゛……お、お前らとてアレを着ればそうなるだろう!」
「シルフィードと“レーラズ”だね?……でもマイスターのは……」
「あうあう、見るなぁ!?は、恥ずかしいではないか……全くもぅ」
「ふふ……ですけど、きっと驚きますよ二人とも。アレを見たら♪」
「……マイスター、マイスターっ。ちょっぴりふくらみましたの?」
「ぶっ!?な゛……お、お前らとてアレを着ればそうなるだろう!」
「シルフィードと“レーラズ”だね?……でもマイスターのは……」
「あうあう、見るなぁ!?は、恥ずかしいではないか……全くもぅ」
「ふふ……ですけど、きっと驚きますよ二人とも。アレを見たら♪」
弟二世代型補助アーマー“シルフィード”には胸がある、と以前述べた。
しかしそれは、普通のパッド程度でしかない僅かな厚さのバッテリーだ。
だが“フィオラ”を下敷きにして作ったハイブリッド・アーマードレス、
“レーラズ”は違う。胸部には装甲と大型のサブバッテリーを搭載する。
それ故に、マーメイドタイプ・イーアネイラの如き豊満な胸となるのだ。
実際、風呂あがりのアルマに着せてみる事としたが……どうだ、これは?
しかしそれは、普通のパッド程度でしかない僅かな厚さのバッテリーだ。
だが“フィオラ”を下敷きにして作ったハイブリッド・アーマードレス、
“レーラズ”は違う。胸部には装甲と大型のサブバッテリーを搭載する。
それ故に、マーメイドタイプ・イーアネイラの如き豊満な胸となるのだ。
実際、風呂あがりのアルマに着せてみる事としたが……どうだ、これは?
「デザインは綺麗ですの。防御力も高そうですけど……お胸が……」
「ろ、ロッテちゃん零距離で見ないで下さい!?二人のも、ねっ?」
「有無、ちゃんとロッテとクララのも作っている。だから落ち着け」
「人魚型が神姫達の羨望を集める理由が、少しだけ分かったんだよ」
「ろ、ロッテちゃん零距離で見ないで下さい!?二人のも、ねっ?」
「有無、ちゃんとロッテとクララのも作っている。だから落ち着け」
「人魚型が神姫達の羨望を集める理由が、少しだけ分かったんだよ」
ただのパッドでは面白くないので、フィット感にも拘った。結果として、
“レーラズ”を着用したアルマのスタイルは、イーアネイラ程ではないが
極めて良好な格好になる。これは、私のデザインとしては初めての試み。
この方向性は、現在開発段階の戦術支援システムにも取り入れる予定だ。
尤も、美しさは躯のスタイルや顔面の造作だけで決まる物でもないがな?
“レーラズ”を着用したアルマのスタイルは、イーアネイラ程ではないが
極めて良好な格好になる。これは、私のデザインとしては初めての試み。
この方向性は、現在開発段階の戦術支援システムにも取り入れる予定だ。
尤も、美しさは躯のスタイルや顔面の造作だけで決まる物でもないがな?
「でも、見た目だけじゃなくて機能の面でもいろいろあるんですよねっ」
「有無……まあそれはアルマが戦闘で披露する……その積もりだろう?」
「楽しみにしてますの、アルマお姉ちゃん♪って、そろそろ時間ですの」
「指定の時刻だね。武器の荷造りも終わったし、このまま出ようかな?」
「そうだな、では往くぞ神姫センターへ……アルマのリベンジへとな!」
「有無……まあそれはアルマが戦闘で披露する……その積もりだろう?」
「楽しみにしてますの、アルマお姉ちゃん♪って、そろそろ時間ですの」
「指定の時刻だね。武器の荷造りも終わったし、このまま出ようかな?」
「そうだな、では往くぞ神姫センターへ……アルマのリベンジへとな!」
“レーラズ”姿のアルマと“Electro Lolita”姿のロッテ及びクララを
引き連れ、私も勝負服を着込み神姫センターに入る。眼鏡に陽光が差し
視界が揺らぐが、この時期はしょうがない事だな。センター内部には、
朝から高まる都会の熱気を避けようと、多くの人々が入り込んでいた。
とは言え此処は、毎日別の意味での熱気でムンムンしているのだがな。
引き連れ、私も勝負服を着込み神姫センターに入る。眼鏡に陽光が差し
視界が揺らぐが、この時期はしょうがない事だな。センター内部には、
朝から高まる都会の熱気を避けようと、多くの人々が入り込んでいた。
とは言え此処は、毎日別の意味での熱気でムンムンしているのだがな。
「さて、十三番デッキか……む、居たぞ。ティールとそのオーナーが」
「来たか、アルマとやらよ。再戦を挑む覚悟が出来上がったと聞くが」
「ええ……今度こそ貴女を倒して、次のステップに踏み込みますから」
「威勢は良し。だが、前の様に胸を抉ってやろう……さあ、始めるか」
「私の“妹”を侮らぬ方が良いぞ、ティールとやら。さ、準備だッ!」
「来たか、アルマとやらよ。再戦を挑む覚悟が出来上がったと聞くが」
「ええ……今度こそ貴女を倒して、次のステップに踏み込みますから」
「威勢は良し。だが、前の様に胸を抉ってやろう……さあ、始めるか」
「私の“妹”を侮らぬ方が良いぞ、ティールとやら。さ、準備だッ!」
相手の挑発を受けつつも、アルマは冷静である。少し彼女も変わったか。
腰にヨルムンガルドと魔剣エルテリアを装着、両腕に“マビノギオン”。
軽量ランクギリギリの超重武装だった前回とは真逆の、超軽量スタイル。
だが私は何も言わずに、そのまま笑顔でエントリーゲートへと送り出す。
再戦制度を利用して、バトルフィールドは前回と同じ浮遊島を指定した。
腰にヨルムンガルドと魔剣エルテリアを装着、両腕に“マビノギオン”。
軽量ランクギリギリの超重武装だった前回とは真逆の、超軽量スタイル。
だが私は何も言わずに、そのまま笑顔でエントリーゲートへと送り出す。
再戦制度を利用して、バトルフィールドは前回と同じ浮遊島を指定した。
『アルマvsティール、本日のサードリーグ第2戦闘、開始します!』
「さぁ、死合いましょう。ティールさん!……いつでもどうぞ!」
「──────良い覚悟だ、往くぞッ!」
「さぁ、死合いましょう。ティールさん!……いつでもどうぞ!」
「──────良い覚悟だ、往くぞッ!」
左右の腰から一本ずつ“ヨルムンガルド”を引き抜いたアルマが構える。
そこへ、風を押し潰す様にして一気呵成にティールが拳を打ち込んだ!!
その狙いは確実で、このままなら胸を貫かれただろう……だが、違った。
そこへ、風を押し潰す様にして一気呵成にティールが拳を打ち込んだ!!
その狙いは確実で、このままなら胸を貫かれただろう……だが、違った。
「おおおぉぉぉぉっ!!」
「……そこっ!」
「何……剣で、いや……体でいなした!?」
「……そこっ!」
「何……剣で、いや……体でいなした!?」
ふわり……と僅かに浮かび上がったアルマは、強化セラミックの黒刃で
拳の軌道を反らし、衝撃を無理に止めずそのまま後ろへ飛んでいった!
そう。レーラズに搭載されている機能の一つが、この浮遊機能なのだ。
本来は補助ブースターの性能を向上する為の、低出力飛行能力だがな?
拳の軌道を反らし、衝撃を無理に止めずそのまま後ろへ飛んでいった!
そう。レーラズに搭載されている機能の一つが、この浮遊機能なのだ。
本来は補助ブースターの性能を向上する為の、低出力飛行能力だがな?
「無理に逆らわず、一撃の威力を殺したのか……!」
「防御力だけに頼っていては、すぐに砕かれてしまいますから」
「防御力だけに頼っていては、すぐに砕かれてしまいますから」
──────本当の覚悟は、まだまだこれからだよ。