注:18禁描写ありのお話です。嫌いな方はご注意下さい。
鳴ったチャイムにドアのレンズを覗き込めば、そこにいるのは見知った顔だった。
鍵を開けて、ドアを開く。
立っているのは、笑顔の美人。
「おかえりなさい! 鳥小さん」
柔らかな鳥小の笑顔に、少女も笑み。
「ベルが千喜ちゃんの部屋に来てるってメールもらったから、迎えに来たんだけど……」
「はい、鳥小」
答えたのは千喜ではなく、彼女の右肩に立つ小さな姿だ。玄関の段差のおかげで同じ高さになった目線で、ふたり穏やかに笑い合う。
「ベル。峡次クンの力にはなってあげられた?」
微笑みながらの主の問いに、小さなベルがはいと答えようとすれば。
「すごく助かったって言ってたよー。ね、プシュケ」
「ええ。ベルのサポートがなければ、あそこまで早く終わらなかったはずですわ」
それより早く言葉を紡ぐのは、千喜と彼女の左肩にいる、ベルと同じ背丈の少女。
「……客観的に見れば、そのような評価をいただけたようです。鳥小」
二人のフォローに、ベルは軽く肩をすくめて笑みをひとつ。
「そう。なら良かった」
ベルは自分に高い評価を下さない。いつもなら「何とか」と答えて終わりだったろう。
だからこそ、二人のフォローは鳥子にとっても嬉しいものだとしても、邪魔に思うものではない。
「じゃ、帰りましょうか。ベル」
くすくすと笑いながら、鳥子は買い物袋を下げた左手をすいと延ばす。
それに応じて、向かい合う千喜もベルのいる右手を持ち上げれば。
「あ……」
ほんの少し触れ合うのは、互いの細い指の先。
「あ、ごめんなさい、千喜ちゃん」
「ううん。それより……良かったね。鳥小さん」
鳥小の言葉に千喜は少し頬を赤らめて、嬉しそうに目を細める。先程までの笑みとは違う、祝福するかのような笑み。
「……ええ」
鳥小が答えと共に見せるのも、嬉しいような、恥ずかしがるような、そんな表情だ。
「鳥小」
腕の橋を伝ってベルが鳥小の肩に移ってしまえば、再び橋は途切れ、鳥小の左手はドアノブを後ろ手に。
「それじゃ、私、帰るわね。二人とも、また明日」
「うん。また……明日ね」
その言葉を残し、201号室のドアはバタンと閉じられた。
鍵を開けて、ドアを開く。
立っているのは、笑顔の美人。
「おかえりなさい! 鳥小さん」
柔らかな鳥小の笑顔に、少女も笑み。
「ベルが千喜ちゃんの部屋に来てるってメールもらったから、迎えに来たんだけど……」
「はい、鳥小」
答えたのは千喜ではなく、彼女の右肩に立つ小さな姿だ。玄関の段差のおかげで同じ高さになった目線で、ふたり穏やかに笑い合う。
「ベル。峡次クンの力にはなってあげられた?」
微笑みながらの主の問いに、小さなベルがはいと答えようとすれば。
「すごく助かったって言ってたよー。ね、プシュケ」
「ええ。ベルのサポートがなければ、あそこまで早く終わらなかったはずですわ」
それより早く言葉を紡ぐのは、千喜と彼女の左肩にいる、ベルと同じ背丈の少女。
「……客観的に見れば、そのような評価をいただけたようです。鳥小」
二人のフォローに、ベルは軽く肩をすくめて笑みをひとつ。
「そう。なら良かった」
ベルは自分に高い評価を下さない。いつもなら「何とか」と答えて終わりだったろう。
だからこそ、二人のフォローは鳥子にとっても嬉しいものだとしても、邪魔に思うものではない。
「じゃ、帰りましょうか。ベル」
くすくすと笑いながら、鳥子は買い物袋を下げた左手をすいと延ばす。
それに応じて、向かい合う千喜もベルのいる右手を持ち上げれば。
「あ……」
ほんの少し触れ合うのは、互いの細い指の先。
「あ、ごめんなさい、千喜ちゃん」
「ううん。それより……良かったね。鳥小さん」
鳥小の言葉に千喜は少し頬を赤らめて、嬉しそうに目を細める。先程までの笑みとは違う、祝福するかのような笑み。
「……ええ」
鳥小が答えと共に見せるのも、嬉しいような、恥ずかしがるような、そんな表情だ。
「鳥小」
腕の橋を伝ってベルが鳥小の肩に移ってしまえば、再び橋は途切れ、鳥小の左手はドアノブを後ろ手に。
「それじゃ、私、帰るわね。二人とも、また明日」
「うん。また……明日ね」
その言葉を残し、201号室のドアはバタンと閉じられた。
「……マスター?」
ふらふらと部屋に戻った千喜は、ぽすんとベッドに倒れ込む。
「ね……プシュケぇ……」
その頬は朱く染まり。
小さな唇から漏れる吐息は、淡い熱を含んでいた。
ふらふらと部屋に戻った千喜は、ぽすんとベッドに倒れ込む。
「ね……プシュケぇ……」
その頬は朱く染まり。
小さな唇から漏れる吐息は、淡い熱を含んでいた。
マイナスから始める初めての武装神姫
その3 後編
ベッドの上に飛び降りて、私はマスターの顔を覗き込んだ。
「もう。はしゃぎすぎですわよ、マスター」
とろんと潤んだ大きな瞳には、私の顔が映り込んでいる。体温も、少しだけど上がってるみたい。
「ん……ごめん。でもアイツ、あたしのことすごく意識してるんだもん……アテられちゃって、さ」
ベッドに顔を埋めたまま、艶っぽい息を長く吐いて。マスターは、乾いた唇をぺろりと小さくひと舐めする。
「当たり前ですわ。あれだけ近い距離にいて」
こうなる事だって、分かってたでしょうに。
「だって……ああしないと、分かんないじゃない? アイツ、説明へたっぴだし」
まあ……その気持ちは分からないでもないですけれど。
あれだけ細かい物が転がっている状況で、アレとかコレとか言われてもね。
「でも、非道いマスターですわね。本当のことを知ったら……峡次さん怒りますわよ?」
私はため息をついて、横になったマスターのおでこにそっと身をもたせかける。薄く浮いた汗がひたりと背中を濡らすけど、マスターの汗だ。気になんかならない。
「そうならないと、いいなぁ」
もぅ。この子ったら。
みんながみんな、倉太さんや鳥小さんのようではないのだから……。
「ふふ。あんなだけど、倉太も結構えっちだよ?」
「もぅ、マスターったら」
私は体の向きを変え、マスターのおでこに抱き付くように。胸元やお腹がマスターの汗に濡れて、てらてらと光ってる。
それが何だか嬉しくて、私は右の頬も額に押し付けた。
マスターの汗の匂いが、私のセンサーを優しく包み込んでくれる。
「マス……タ……ぁ」
あ。声……出ちゃった……。
「ね……プシュケぇ」
「ひぁっ! な、なんですのっ?」
ふと掛けられた声に、慌てて自分を取り戻す。
「プシュケは私のこと、千喜って呼んでくれないの?」
最初にマスターって呼ぶように決めたの、マスターでしょうに。
「そうだけど……ココも静香さんのこと名前で呼ぶし、ベルもそうだから、ちょっとうらやましいかな……って」
もぅ。せっかく気持ちいい所だったのに……。
「台無しですわ、マスター」
「なにが?」
ぜーんぶ知ってるクセに。そんな嬉しそうに言わないでくださる?
バカマスター。
「でも、プシュケの口から聞きたいじゃない?」
「もぅ……ばか」
そう言いながら、私は額に左の頬を触れ合わせる。湿った感触と、淡い汗の匂い。
ダメ。マスターの……千喜の匂いから離れられない。
愛しい額に、そっと唇を……。
「それにね、プシュケ」
「ぁ……」
その瞬間、私の体は千喜の右手に捕らえられ、額から引き離されてしまう。起き上がった千喜は、目の前にいて……。
「舐めるなら、もっと……気持ちの良いところにしてよ。……ね?」
あ……。
それは、もっと千喜の匂いがするところ?
「……だよ」
千喜の匂いに冒されたセンサーが、システムを誤動作させてるみたい。
「分かってるんでしょ? プシュケ」
……はい。
承知いたしました、マイマスター。
「もう。はしゃぎすぎですわよ、マスター」
とろんと潤んだ大きな瞳には、私の顔が映り込んでいる。体温も、少しだけど上がってるみたい。
「ん……ごめん。でもアイツ、あたしのことすごく意識してるんだもん……アテられちゃって、さ」
ベッドに顔を埋めたまま、艶っぽい息を長く吐いて。マスターは、乾いた唇をぺろりと小さくひと舐めする。
「当たり前ですわ。あれだけ近い距離にいて」
こうなる事だって、分かってたでしょうに。
「だって……ああしないと、分かんないじゃない? アイツ、説明へたっぴだし」
まあ……その気持ちは分からないでもないですけれど。
あれだけ細かい物が転がっている状況で、アレとかコレとか言われてもね。
「でも、非道いマスターですわね。本当のことを知ったら……峡次さん怒りますわよ?」
私はため息をついて、横になったマスターのおでこにそっと身をもたせかける。薄く浮いた汗がひたりと背中を濡らすけど、マスターの汗だ。気になんかならない。
「そうならないと、いいなぁ」
もぅ。この子ったら。
みんながみんな、倉太さんや鳥小さんのようではないのだから……。
「ふふ。あんなだけど、倉太も結構えっちだよ?」
「もぅ、マスターったら」
私は体の向きを変え、マスターのおでこに抱き付くように。胸元やお腹がマスターの汗に濡れて、てらてらと光ってる。
それが何だか嬉しくて、私は右の頬も額に押し付けた。
マスターの汗の匂いが、私のセンサーを優しく包み込んでくれる。
「マス……タ……ぁ」
あ。声……出ちゃった……。
「ね……プシュケぇ」
「ひぁっ! な、なんですのっ?」
ふと掛けられた声に、慌てて自分を取り戻す。
「プシュケは私のこと、千喜って呼んでくれないの?」
最初にマスターって呼ぶように決めたの、マスターでしょうに。
「そうだけど……ココも静香さんのこと名前で呼ぶし、ベルもそうだから、ちょっとうらやましいかな……って」
もぅ。せっかく気持ちいい所だったのに……。
「台無しですわ、マスター」
「なにが?」
ぜーんぶ知ってるクセに。そんな嬉しそうに言わないでくださる?
バカマスター。
「でも、プシュケの口から聞きたいじゃない?」
「もぅ……ばか」
そう言いながら、私は額に左の頬を触れ合わせる。湿った感触と、淡い汗の匂い。
ダメ。マスターの……千喜の匂いから離れられない。
愛しい額に、そっと唇を……。
「それにね、プシュケ」
「ぁ……」
その瞬間、私の体は千喜の右手に捕らえられ、額から引き離されてしまう。起き上がった千喜は、目の前にいて……。
「舐めるなら、もっと……気持ちの良いところにしてよ。……ね?」
あ……。
それは、もっと千喜の匂いがするところ?
「……だよ」
千喜の匂いに冒されたセンサーが、システムを誤動作させてるみたい。
「分かってるんでしょ? プシュケ」
……はい。
承知いたしました、マイマスター。
「ふぁ……」
有明ノリの箱に置かれたクレイドルの上、ティッシュとテープで作られた服を着て、ゆっくりと瞳を開いた神姫は不思議そうに俺を見上げてる。
「え、ええっと……」
「表皮パターン、展開出来ない?」
俺の言葉に、神姫はしばらく意識を集中するように小さな声を上げていたけど、ティッシュから覗く腕や脚、首の周りには何の変化も起きていない。フォートブラッグのデフォルトパターンは全身を覆う迷彩に近い装いのはずだから、初期設定のパターンが起動したならそのあたりにも変化が起きるはずだけど。
やがて彼女は、諦めたようにため息を一つ。
「……はい。どうやら、不良のようです」
「悪いけど、しばらく修理代が都合出来そうにないんだ。それに素体は中古品だから、初期不良の保証対象外なんだって」
さすがに、甥っ子の進学祝いをハードオブで買ってきたのか……なんて、叔父さんに聞けるはずもない。夏休みになったら叔父さんとは顔を合せることになるだろうし、上手く解決する方法を見つけておかないとな。
「そう……ですか」
「それと、ノリコ」
「……はひ?」
「君の名前。それと、俺の名前は武井峡次。マスター登録、まだだったよね?」
言われてようやく気が付いたんだろう。
フォートブラッグははっとしたように表情を変える。
「マスター認証、マスター登録、神姫名登録、完了しました! お名前は、何てお呼びすればいいですか?」
「峡次でいいよ」
「はい。……峡次さん」
それで安心してくれたのか、ノリコはふわりと柔らかい笑みを浮かべてくれた。
う……なんか、すごく可愛いぞ。
「それじゃ、これからよろしくな。ノリコ」
そう言って、俺はノリコに手を伸ばす。
ノリコもクレイドルの上からそっと身体を起こして。
響いたのは、薄い紙が破れる音と。
「きゃああああーーーーーーーーーーーーっ!」
女の子の、悲鳴だった。
有明ノリの箱に置かれたクレイドルの上、ティッシュとテープで作られた服を着て、ゆっくりと瞳を開いた神姫は不思議そうに俺を見上げてる。
「え、ええっと……」
「表皮パターン、展開出来ない?」
俺の言葉に、神姫はしばらく意識を集中するように小さな声を上げていたけど、ティッシュから覗く腕や脚、首の周りには何の変化も起きていない。フォートブラッグのデフォルトパターンは全身を覆う迷彩に近い装いのはずだから、初期設定のパターンが起動したならそのあたりにも変化が起きるはずだけど。
やがて彼女は、諦めたようにため息を一つ。
「……はい。どうやら、不良のようです」
「悪いけど、しばらく修理代が都合出来そうにないんだ。それに素体は中古品だから、初期不良の保証対象外なんだって」
さすがに、甥っ子の進学祝いをハードオブで買ってきたのか……なんて、叔父さんに聞けるはずもない。夏休みになったら叔父さんとは顔を合せることになるだろうし、上手く解決する方法を見つけておかないとな。
「そう……ですか」
「それと、ノリコ」
「……はひ?」
「君の名前。それと、俺の名前は武井峡次。マスター登録、まだだったよね?」
言われてようやく気が付いたんだろう。
フォートブラッグははっとしたように表情を変える。
「マスター認証、マスター登録、神姫名登録、完了しました! お名前は、何てお呼びすればいいですか?」
「峡次でいいよ」
「はい。……峡次さん」
それで安心してくれたのか、ノリコはふわりと柔らかい笑みを浮かべてくれた。
う……なんか、すごく可愛いぞ。
「それじゃ、これからよろしくな。ノリコ」
そう言って、俺はノリコに手を伸ばす。
ノリコもクレイドルの上からそっと身体を起こして。
響いたのは、薄い紙が破れる音と。
「きゃああああーーーーーーーーーーーーっ!」
女の子の、悲鳴だった。
そっと触れたそこは、べちゃりという音を立てて私の手を包み込んでくれた。
白いコットンのショーツに広がるシミは、もう全体に広がりきっていて、元の色も分からないほど。千喜ったら、一体いつから濡れていたんだろう。
「あ……ぁぅ……」
ショーツの上、手のひらをゆっくりと滑らせてみる。ほんの少し動かすだけで、染み出した水気は私の手のひらに絡み付いてきた。
とろりと濡れた手のひらを、そっと鼻に寄せてみれば。
「……千喜の匂い……すごいですわ」
汗なんかよりもっと濃い匂いに、私の背中に甘い痺れが走り抜ける。
ショーツの表面、指先で触れるだけでこうなんだ。
ここに顔を押し付けたら……ショーツの奥を拓いたら、私いったい、どうなるんだろう。
「ね……プシュケぇ……」
そのドキドキを遮るように、千喜の声。
「もぅ。私、あなたの性欲処理のためにいるわけでは……ありませんのよ?」
私の想い、私の望むこと。
もっとしたい。もっと、千喜の匂いに包まれたい。千喜の甘い声を、聞いていたい。
みんなみんな、千喜に筒抜けなのは分かってる。
でも、それが分かっても、こんな言い方になってしまう。
「でもプシュケの大好き、すごくキモチイイんだよ……。それに、匂いフェチの神姫だって聞いたことないしさ」
千喜も、私の本当の気持ちを口に出したりはしない。
知っていて、それでもなお……意地悪な言い方をしてくれる。
「……もぅ」
ショーツを少しだけずらして、顔を近付けてみた。
「ぁは……千喜、すご……です…わぁ……」
むわりと広がるショーツの奥からの香りに、私のセンサーは悲鳴を上げっぱなし。
「ひぁ…あぅ……ぅぅ……っ!」
崩れ落ちそうになる膝、力の入らない腕。システムはセンサーの感度を落とすよう警告を鳴らしてるけど……そんな勿体ないことしたくない。
アラートを切って、千喜の匂いに包まれたまま。濡れた襞を押し広げ、その内側に腕と顔を押し込んで。
白いコットンのショーツに広がるシミは、もう全体に広がりきっていて、元の色も分からないほど。千喜ったら、一体いつから濡れていたんだろう。
「あ……ぁぅ……」
ショーツの上、手のひらをゆっくりと滑らせてみる。ほんの少し動かすだけで、染み出した水気は私の手のひらに絡み付いてきた。
とろりと濡れた手のひらを、そっと鼻に寄せてみれば。
「……千喜の匂い……すごいですわ」
汗なんかよりもっと濃い匂いに、私の背中に甘い痺れが走り抜ける。
ショーツの表面、指先で触れるだけでこうなんだ。
ここに顔を押し付けたら……ショーツの奥を拓いたら、私いったい、どうなるんだろう。
「ね……プシュケぇ……」
そのドキドキを遮るように、千喜の声。
「もぅ。私、あなたの性欲処理のためにいるわけでは……ありませんのよ?」
私の想い、私の望むこと。
もっとしたい。もっと、千喜の匂いに包まれたい。千喜の甘い声を、聞いていたい。
みんなみんな、千喜に筒抜けなのは分かってる。
でも、それが分かっても、こんな言い方になってしまう。
「でもプシュケの大好き、すごくキモチイイんだよ……。それに、匂いフェチの神姫だって聞いたことないしさ」
千喜も、私の本当の気持ちを口に出したりはしない。
知っていて、それでもなお……意地悪な言い方をしてくれる。
「……もぅ」
ショーツを少しだけずらして、顔を近付けてみた。
「ぁは……千喜、すご……です…わぁ……」
むわりと広がるショーツの奥からの香りに、私のセンサーは悲鳴を上げっぱなし。
「ひぁ…あぅ……ぅぅ……っ!」
崩れ落ちそうになる膝、力の入らない腕。システムはセンサーの感度を落とすよう警告を鳴らしてるけど……そんな勿体ないことしたくない。
アラートを切って、千喜の匂いに包まれたまま。濡れた襞を押し広げ、その内側に腕と顔を押し込んで。
じゅぶ……。
「ひぁ……プシュ…ケぇぇ……っ! な、かぁ……!」
肉の襞の向こうから、じゃない。薄桃の襞が直接、千喜の押し殺した声を伝えてくる。
その声に導かれるように、私は頭を膣奥に向けて進めていく。
「ぁ…はぁ……あぁぁぁ……っ!」
千喜の胎内。奥まで延ばした右腕を軽く動かす度に、その声は長さや高さを変えて、私の聴覚センサーを刺激する。
「あ……い…いひ……いいよぅ……っ!」
私も千喜の匂いと鳴き声にAIを占領されて、そう叫ぶことしか出来なくて。
大好き……。
大好きですわ……マスター!
マスター! マスター!
「プシュケ……すご……すごぉい……っ! あたしも、すきぃ……大好き、大好きぃぃ……」
私の体をきゅうきゅうと締め付ける圧力が、一際強く……。
「…………」
……なりかけて、そのまま止まってしまう。
「……ふぇ?」
そう呟いた瞬間、千喜の体がぐらりと揺れた。
絶頂なんかじゃない。単に立ち上がっただけだ。
「ひぁっ!」
私の体もずるりと千喜の膣内から滑り落ち、ベッドの上にぽすんと尻餅をつく。
「どうしたんですの? 千喜」
四つん這いの姿勢から起き上がった千喜は、こちらにお尻を見せて黙ったまま。
「ねぇ、千喜……」
千喜の愛液にまみれた躯のままで、しっとりと汗に濡れた足の指にしがみつく。
私、やりすぎました? 痛かったですの?
いつもと同じくらいしか、していないはずですけれど……。
「……プシュケが悪いんじゃないよ。下」
見て分かるほどに不機嫌な様子で、千喜はベッドを指差している。
「……下? 倉太さん、帰ってきましたの?」
その割には……。
「ならもっと喜んでるって」
ですわよね。
考えても分からないので、聴覚センサーを指向性に切り替えてそちらに向けてみる。感度を最大にすれば、巴荘の薄い床板なんか障害にもならない。
「……何ですの、これ」
聞こえてきたのは、きゃあきゃあ言う女の子の悲鳴。
座標測定……102号室。
音紋照合……登録無し。
登録はないけど、テレビからの音じゃない。パターンを簡易解析してみれば、人間の声でもなかった。
「……神姫の声?」
再度チェックを掛けてみる。間違いない、神姫の声だ。
けど、いま巴荘にいる神姫は、私とベルだけのはず。峡次さんの神姫は、明日来ると言っていたけれど……。今日届いたのかしら。
でもこの内容は……。
「……最低」
千喜はベッドに腰掛けて、スカートをもそもそと穿いている。そのまま大股で玄関に……。
「あ、ちょっと、千喜!」
垂れてますわ! 垂れてますってば!
でも、私の声は千喜には届かない。慌てて追い掛けようとしたけれど、私の体も千喜のものでドロドロな事に気が付いた。
「ちょっと、千喜ってば! お待ちなさいな!」
あとぱんつ穿きなさいなー!
肉の襞の向こうから、じゃない。薄桃の襞が直接、千喜の押し殺した声を伝えてくる。
その声に導かれるように、私は頭を膣奥に向けて進めていく。
「ぁ…はぁ……あぁぁぁ……っ!」
千喜の胎内。奥まで延ばした右腕を軽く動かす度に、その声は長さや高さを変えて、私の聴覚センサーを刺激する。
「あ……い…いひ……いいよぅ……っ!」
私も千喜の匂いと鳴き声にAIを占領されて、そう叫ぶことしか出来なくて。
大好き……。
大好きですわ……マスター!
マスター! マスター!
「プシュケ……すご……すごぉい……っ! あたしも、すきぃ……大好き、大好きぃぃ……」
私の体をきゅうきゅうと締め付ける圧力が、一際強く……。
「…………」
……なりかけて、そのまま止まってしまう。
「……ふぇ?」
そう呟いた瞬間、千喜の体がぐらりと揺れた。
絶頂なんかじゃない。単に立ち上がっただけだ。
「ひぁっ!」
私の体もずるりと千喜の膣内から滑り落ち、ベッドの上にぽすんと尻餅をつく。
「どうしたんですの? 千喜」
四つん這いの姿勢から起き上がった千喜は、こちらにお尻を見せて黙ったまま。
「ねぇ、千喜……」
千喜の愛液にまみれた躯のままで、しっとりと汗に濡れた足の指にしがみつく。
私、やりすぎました? 痛かったですの?
いつもと同じくらいしか、していないはずですけれど……。
「……プシュケが悪いんじゃないよ。下」
見て分かるほどに不機嫌な様子で、千喜はベッドを指差している。
「……下? 倉太さん、帰ってきましたの?」
その割には……。
「ならもっと喜んでるって」
ですわよね。
考えても分からないので、聴覚センサーを指向性に切り替えてそちらに向けてみる。感度を最大にすれば、巴荘の薄い床板なんか障害にもならない。
「……何ですの、これ」
聞こえてきたのは、きゃあきゃあ言う女の子の悲鳴。
座標測定……102号室。
音紋照合……登録無し。
登録はないけど、テレビからの音じゃない。パターンを簡易解析してみれば、人間の声でもなかった。
「……神姫の声?」
再度チェックを掛けてみる。間違いない、神姫の声だ。
けど、いま巴荘にいる神姫は、私とベルだけのはず。峡次さんの神姫は、明日来ると言っていたけれど……。今日届いたのかしら。
でもこの内容は……。
「……最低」
千喜はベッドに腰掛けて、スカートをもそもそと穿いている。そのまま大股で玄関に……。
「あ、ちょっと、千喜!」
垂れてますわ! 垂れてますってば!
でも、私の声は千喜には届かない。慌てて追い掛けようとしたけれど、私の体も千喜のものでドロドロな事に気が付いた。
「ちょっと、千喜ってば! お待ちなさいな!」
あとぱんつ穿きなさいなー!
私もテーブルのウェットティッシュを引っ張り出して、千喜を追い掛ける事にする。
「きゃーっ! きゃーーーっ!」
ノリコの悲鳴は、いまだ収まる気配がない。
「だ、だから、落ち着けって」
俺もそう言ってはいるけれど。
いい加減悲鳴にも慣れてきて、落ち着くまで放ったらかしといてもいいかな……とか思い始めた頃だった。
だんだんだん。
ドアを乱暴に叩かれる音がして。
「ちょっと峡次! うるさいわよっ!」
バタンと開いた扉の向こうにいるのは、千喜……って俺、ちゃんと鍵掛けてなかった……!?
「……へ?」
俺と、千喜との視線が合って。
千喜の視線は、そのまま下へ。
「ふぇ……っ!?」
怒りのこもった千喜の視線に、ノリコはびくりと身を震わせて、そのまま言葉を失ってしまう。
「って、アンタ……」
……。
えー。
あの、その、なんだ。
「い、いや、これは……だな」
男の一人部屋。
ティッシュ製の破れた服をまとった半裸の神姫が、悲鳴を上げて泣きじゃくってる。
何があったかなんて、だいたい予想がつくわけで。
「神姫でいきなり何やってんの!」
ノリコの悲鳴は、いまだ収まる気配がない。
「だ、だから、落ち着けって」
俺もそう言ってはいるけれど。
いい加減悲鳴にも慣れてきて、落ち着くまで放ったらかしといてもいいかな……とか思い始めた頃だった。
だんだんだん。
ドアを乱暴に叩かれる音がして。
「ちょっと峡次! うるさいわよっ!」
バタンと開いた扉の向こうにいるのは、千喜……って俺、ちゃんと鍵掛けてなかった……!?
「……へ?」
俺と、千喜との視線が合って。
千喜の視線は、そのまま下へ。
「ふぇ……っ!?」
怒りのこもった千喜の視線に、ノリコはびくりと身を震わせて、そのまま言葉を失ってしまう。
「って、アンタ……」
……。
えー。
あの、その、なんだ。
「い、いや、これは……だな」
男の一人部屋。
ティッシュ製の破れた服をまとった半裸の神姫が、悲鳴を上げて泣きじゃくってる。
何があったかなんて、だいたい予想がつくわけで。
「神姫でいきなり何やってんの!」
それ全部誤解だけどな!
なんて聞く相手じゃない!
部屋に土足で飛び込んだ千喜は一瞬で廊下を駆け抜け、気付いたときには俺の目の前に。
「この、へんたーーーーーーーーい!」
そのまま、右のこめかみに横殴りの回し蹴りがぶち込まれた。
「千喜! 見えてますのっ!」
「ふぇっ!?」
な、何が……見えてっ!?
「げ、原子の単位まで分解されろーーーーっ!」
俺は何が見えたかも分からないまま。
二撃目の回し蹴りを、左のこめかみに叩き込まれるのだった。
部屋に土足で飛び込んだ千喜は一瞬で廊下を駆け抜け、気付いたときには俺の目の前に。
「この、へんたーーーーーーーーい!」
そのまま、右のこめかみに横殴りの回し蹴りがぶち込まれた。
「千喜! 見えてますのっ!」
「ふぇっ!?」
な、何が……見えてっ!?
「げ、原子の単位まで分解されろーーーーっ!」
俺は何が見えたかも分からないまま。
二撃目の回し蹴りを、左のこめかみに叩き込まれるのだった。
CLOSEDの看板を出し、鍵をかけてカーテンを閉じる。
これで店の閉店作業は終了。後は二階で、貯まっている書類の類を片付けるだけ。とはいえそれも、届いていたファックスや納品書の束と業務ソフトを突き合わせて、未処理分を確かめれば良いだけだ。
「なあ、アキさん」
二十分もあれば終わるだろうと思ったところで、一枚目で手が止まる。
「なんだい? オーナー」
二階の作業場を片付けていたスタッフの一人が、声だけを投げ返してきた。
「この納品書なんだが……」
複写式の紙束をひらひらと振ってみれば、アーンヴァル装備を背負って飛んでいた彼女はこちらにやって来る。
「んー? ああ、前にオーナーが注文しといてって言ってたヤツだろ。フォート」
おじさんから頼まれたアレか。
大砲がどうこう言ってたから、フォートでいいとは思うんだけど。
「そうなんだけど、フォートって素体ないじゃない。セットにしなくて良かったの?」
「あの後、叔父さんって声の大きい人から電話掛かってさ。素体はこっちで安く手に入ったから、他の一式だけ送ってくれればいいって」
「あ、そう」
そんな話、してたっけなぁ。
ま、いいか。
「それはいいんだけど……」
そんな事を話していると、下に続く階段から間延びした声が聞こえてきた。
「オーナー。下の片付け、終わったよぉ」
ウチのもう一人の住み込みスタッフだ。
「ああ、お疲れさま、タツキさん」
俺とアキさんが難しい顔で話しているのに気付いたんだろう。とてとてとこちらにやってきて、小さく首を傾げるタツキさん。
「ん? 何かあったの?」
タツキさんは飛行ユニットを持っていないから、テーブルの上に拾い上げてやる。
「アキぃ。こないだ、フォートの注文入れたじゃんか」
「うん。お姉ちゃんやタカちゃんと決めた、あれだよね?」
……タカさんまで絡んでるのか。
だったらまあ、今日はもう遅いし、明日確認するんでいいか。
「何か問題あった?」
「いや。三人が聞いてることなら、いいや」
人手不足の我が店の方針として、スタッフ三人にはある程度の裁量を与えてある。その三人が揃って判断したのなら、店長の自分としても言うことはない。
「にしても叔父さん、神姫のことなんか全然知らないのに、素体とかどうやって都合してきたんだ……?」
というか素体を手に入れられるくらいの知識があるなら、俺に頼らないで自分で一式揃えたんで良かったんじゃないのか?
地元の経済的にも。
「……まあ、いいか」
嫌な予感がしないでもないけど、仮にも工業科に進むくらいなら、その程度のトラブルは自力で何とかしてくれたまえ。
我が弟よ。
これで店の閉店作業は終了。後は二階で、貯まっている書類の類を片付けるだけ。とはいえそれも、届いていたファックスや納品書の束と業務ソフトを突き合わせて、未処理分を確かめれば良いだけだ。
「なあ、アキさん」
二十分もあれば終わるだろうと思ったところで、一枚目で手が止まる。
「なんだい? オーナー」
二階の作業場を片付けていたスタッフの一人が、声だけを投げ返してきた。
「この納品書なんだが……」
複写式の紙束をひらひらと振ってみれば、アーンヴァル装備を背負って飛んでいた彼女はこちらにやって来る。
「んー? ああ、前にオーナーが注文しといてって言ってたヤツだろ。フォート」
おじさんから頼まれたアレか。
大砲がどうこう言ってたから、フォートでいいとは思うんだけど。
「そうなんだけど、フォートって素体ないじゃない。セットにしなくて良かったの?」
「あの後、叔父さんって声の大きい人から電話掛かってさ。素体はこっちで安く手に入ったから、他の一式だけ送ってくれればいいって」
「あ、そう」
そんな話、してたっけなぁ。
ま、いいか。
「それはいいんだけど……」
そんな事を話していると、下に続く階段から間延びした声が聞こえてきた。
「オーナー。下の片付け、終わったよぉ」
ウチのもう一人の住み込みスタッフだ。
「ああ、お疲れさま、タツキさん」
俺とアキさんが難しい顔で話しているのに気付いたんだろう。とてとてとこちらにやってきて、小さく首を傾げるタツキさん。
「ん? 何かあったの?」
タツキさんは飛行ユニットを持っていないから、テーブルの上に拾い上げてやる。
「アキぃ。こないだ、フォートの注文入れたじゃんか」
「うん。お姉ちゃんやタカちゃんと決めた、あれだよね?」
……タカさんまで絡んでるのか。
だったらまあ、今日はもう遅いし、明日確認するんでいいか。
「何か問題あった?」
「いや。三人が聞いてることなら、いいや」
人手不足の我が店の方針として、スタッフ三人にはある程度の裁量を与えてある。その三人が揃って判断したのなら、店長の自分としても言うことはない。
「にしても叔父さん、神姫のことなんか全然知らないのに、素体とかどうやって都合してきたんだ……?」
というか素体を手に入れられるくらいの知識があるなら、俺に頼らないで自分で一式揃えたんで良かったんじゃないのか?
地元の経済的にも。
「……まあ、いいか」
嫌な予感がしないでもないけど、仮にも工業科に進むくらいなら、その程度のトラブルは自力で何とかしてくれたまえ。
我が弟よ。