叡智、輝いて──あるいは梓の日常
Σはつまり……あっ、気付かなくてごめんなさいなんだよ。ボクは、
犬型神姫のクララ……と言っても、この姿じゃ全然説得力無いかな?
今ボクは人型神姫インターフェイス・HVIFを装着して、学習塾の
“一応塾”って所に、女子高校生・槇野梓として通っているんだよ。
犬型神姫のクララ……と言っても、この姿じゃ全然説得力無いかな?
今ボクは人型神姫インターフェイス・HVIFを装着して、学習塾の
“一応塾”って所に、女子高校生・槇野梓として通っているんだよ。
「講義をおわーるッ!はい君達、次の時間まで自習しなさーい!」
「……ん。相変わらず、金鉢先生のは歯応えがある授業なんだよ」
「ん~……ねえ、もう出ていいでしょ?はぁい皆、そして梓さん」
「そっちも結構お疲れみたいだね、ジュピジーの“綺羅”さん?」
「あら分かる?神姫だって、ずっと同じ姿勢は大変なのよね……」
「……ん。相変わらず、金鉢先生のは歯応えがある授業なんだよ」
「ん~……ねえ、もう出ていいでしょ?はぁい皆、そして梓さん」
「そっちも結構お疲れみたいだね、ジュピジーの“綺羅”さん?」
「あら分かる?神姫だって、ずっと同じ姿勢は大変なのよね……」
隣の友達が持つバッグから這い出してきたのは、種型神姫の綺羅さん。
この塾では、神姫等の“ホビー”を持ち込んでも講義中に使わなければ
お咎めはないんだよ……流石に、ボク自身が神姫の姿で塾生になるのは
一蹴されちゃったけど。でもそれはある意味、仕方がない事だもんね。
この塾では、神姫等の“ホビー”を持ち込んでも講義中に使わなければ
お咎めはないんだよ……流石に、ボク自身が神姫の姿で塾生になるのは
一蹴されちゃったけど。でもそれはある意味、仕方がない事だもんね。
「にしても、やっぱ人間の学問って面白いわよねー聞いてるだけでも」
「……そう?神姫でそれを活かせる機会は、あまり多くないんだよ?」
「そうよ!メカメカしい種のアタシでも、色々と知る悦びはあるの!」
「その変換は危険なんだよ……ともかく、物事を知る事自体が好き?」
「そうねー……うん、そう!自分のまだ見えない世界が分かるのよ!」
「……そう?神姫でそれを活かせる機会は、あまり多くないんだよ?」
「そうよ!メカメカしい種のアタシでも、色々と知る悦びはあるの!」
「その変換は危険なんだよ……ともかく、物事を知る事自体が好き?」
「そうねー……うん、そう!自分のまだ見えない世界が分かるのよ!」
敢えて意地悪な振りをしてみたけど、彼女の本音を引き出す為だもん。
そしてこれは、少なくない姉妹達──神姫が持っている願望なんだよ?
勿論“人間の世界なんか関係ない”って言うスタンスの娘も多いけど、
ボクが実家……MMSショップ“ALChemist”と、この“一応塾”で触れた
神姫の中では、凡そ6:4の割合で積極派が多かった計算になるもん。
そしてこれは、少なくない姉妹達──神姫が持っている願望なんだよ?
勿論“人間の世界なんか関係ない”って言うスタンスの娘も多いけど、
ボクが実家……MMSショップ“ALChemist”と、この“一応塾”で触れた
神姫の中では、凡そ6:4の割合で積極派が多かった計算になるもん。
「秋葉原は、知り合いにも結構逢えるし。黙ってるのは辛いけど!」
「知り合い?……神姫センターにも近いもんね。バトルはするの?」
「アタシは防御力がどーだとか言うけど、あんまり興味ないかなー」
「……マスターの倭さんも、あんまりバトル派じゃないみたいだね」
「知り合い?……神姫センターにも近いもんね。バトルはするの?」
「アタシは防御力がどーだとか言うけど、あんまり興味ないかなー」
「……マスターの倭さんも、あんまりバトル派じゃないみたいだね」
そのマスター・倭未来さんは、一生懸命英単語学習ゲームで学習中だよ。
流石に塾内では構ってあげられないみたいだけど、綺羅さんは綺羅さんで
“勉強”を楽しんでるし、このコンビに取り立てて問題はない……かな?
そして、バトル重視ではなくファッション重視みたいなのはその服装から
分かるよ。汎用肌色素体に換装して“TODA-Design”の服を着てるしね?
流石に塾内では構ってあげられないみたいだけど、綺羅さんは綺羅さんで
“勉強”を楽しんでるし、このコンビに取り立てて問題はない……かな?
そして、バトル重視ではなくファッション重視みたいなのはその服装から
分かるよ。汎用肌色素体に換装して“TODA-Design”の服を着てるしね?
「あ。ねーねー梓さん!アンタん家、MMSショップなのよねッ?!」
「……そうだよ、よく調べたね綺羅さん?お姉ちゃんが経営してるよ」
「だって、“TODA-Design”にも並ぶ可愛い服作ってるって評判よ!」
「それ聞いたら、お姉ちゃんは『む、それは照れる』って喜ぶね……」
「自分の家なのに知らないのー?三月から、ちょっと話題なんだから」
「……そうだよ、よく調べたね綺羅さん?お姉ちゃんが経営してるよ」
「だって、“TODA-Design”にも並ぶ可愛い服作ってるって評判よ!」
「それ聞いたら、お姉ちゃんは『む、それは照れる』って喜ぶね……」
「自分の家なのに知らないのー?三月から、ちょっと話題なんだから」
時々ネットは見るけど、ボクらは余り評判のリサーチをしないんだよ。
そもそも経営してる晶お姉ちゃんが、世間の目を気にしない人だもん。
だから、それだけ密かな評判があるというのは……ちょっと驚きかな?
……お姉ちゃんに帰って報告したら、照れ笑いを浮かべて喜ぶかもね。
そもそも経営してる晶お姉ちゃんが、世間の目を気にしない人だもん。
だから、それだけ密かな評判があるというのは……ちょっと驚きかな?
……お姉ちゃんに帰って報告したら、照れ笑いを浮かべて喜ぶかもね。
「前の鳳凰杯だっけー?あそこで限定版売ってたそうじゃない、いーなー」
「……売れ残りが一セット位はあるから、今度持ってくる?綺羅さん用に」
「えっ、いいの!?ありがと梓さん!アタシのケチなマスタ……痛ッ!?」
「こら!人に集るんじゃありません綺羅ッ!梓さんも甘やかしちゃダメよ」
「え゛~!?いいじゃないせっかくくれるって言うんだし。ね、梓さん!」
「……売れ残りが一セット位はあるから、今度持ってくる?綺羅さん用に」
「えっ、いいの!?ありがと梓さん!アタシのケチなマスタ……痛ッ!?」
「こら!人に集るんじゃありません綺羅ッ!梓さんも甘やかしちゃダメよ」
「え゛~!?いいじゃないせっかくくれるって言うんだし。ね、梓さん!」
知らず知らずヒートアップする綺羅さんを止めるのは、常にマスターの
倭さん。今もやっと英単語ゲームから目を離して、綺羅さんを小突く。
結構騒がしくてケンカばかりだけど、ボクには仲良しに見えるんだよ。
決して“マイスター(職人)”の側だけでは知覚しきれなかった、神姫と
人の関係。それを知る“勉強”に、このHVIFは有用なツールかな。
倭さん。今もやっと英単語ゲームから目を離して、綺羅さんを小突く。
結構騒がしくてケンカばかりだけど、ボクには仲良しに見えるんだよ。
決して“マイスター(職人)”の側だけでは知覚しきれなかった、神姫と
人の関係。それを知る“勉強”に、このHVIFは有用なツールかな。
「構わないんだよ。“フィオラ”を着てもらえば宣伝にもなるから」
「……本当商売人ね、貴女達姉妹は。お姉さんが職人さんだから?」
「かな。晶お姉ちゃんの側にいると、色々とボクらも学べるんだよ」
「気苦労だけじゃないといいんだけど……本当、真面目ね梓さんは」
「物を学ぶって態度は、常に真摯な物だって思うからね……人生も」
「いっつも堅いねー梓さん。でも何故か面白いのよね、変なの……」
「……本当商売人ね、貴女達姉妹は。お姉さんが職人さんだから?」
「かな。晶お姉ちゃんの側にいると、色々とボクらも学べるんだよ」
「気苦労だけじゃないといいんだけど……本当、真面目ね梓さんは」
「物を学ぶって態度は、常に真摯な物だって思うからね……人生も」
「いっつも堅いねー梓さん。でも何故か面白いのよね、変なの……」
『貴女仙人?』ってツッコミを受けるけど、真理の一面だとは思うもん。
特に、ボクら神姫が人間の……具体的に言えば別の文化を学び取る上で、
真面目な志を欠かしてはいけない……と一体の神姫なりに考えるんだよ。
だってボクらを産み出した存在であり、ボクらの側にあるのが人だもん。
パートナーか主か或いは別の仲か、それぞれの神姫で異なるけどね……?
特に、ボクら神姫が人間の……具体的に言えば別の文化を学び取る上で、
真面目な志を欠かしてはいけない……と一体の神姫なりに考えるんだよ。
だってボクらを産み出した存在であり、ボクらの側にあるのが人だもん。
パートナーか主か或いは別の仲か、それぞれの神姫で異なるけどね……?
「兎に角、高いのをただでもらう訳に行かないし。今度何処か行く?」
「……ファーストキッチンのガーリックバターポテト、プラスαだよ」
「はぁ。貴女へのお願いってなんでもそれで片づくんだから……ねぇ」
「……貴女もっと欲張らないでいいの?って言いたいのかな、倭さん」
「神姫じゃ参考にならないけど、なんかそういうのは淡白かなアタシ」
「……ファーストキッチンのガーリックバターポテト、プラスαだよ」
「はぁ。貴女へのお願いってなんでもそれで片づくんだから……ねぇ」
「……貴女もっと欲張らないでいいの?って言いたいのかな、倭さん」
「神姫じゃ参考にならないけど、なんかそういうのは淡白かなアタシ」
機先を制されて黙る倭さんと、的確な感想を言う綺羅さん。これも二人の
一面なんだよ。そう。本当は神姫であるボクも、物質関係の欲望は希薄。
服飾や武装をもらって喜ぶ神姫は多いけど、人間程欲深くはないんだよ?
むしろ神姫は、何もないが故……周りと触れ合い“心”を満たしたがる。
そっち方面で言えば、物質社会が発展した人間よりもずっと欲深いかな?
一面なんだよ。そう。本当は神姫であるボクも、物質関係の欲望は希薄。
服飾や武装をもらって喜ぶ神姫は多いけど、人間程欲深くはないんだよ?
むしろ神姫は、何もないが故……周りと触れ合い“心”を満たしたがる。
そっち方面で言えば、物質社会が発展した人間よりもずっと欲深いかな?
「そんな人間もいたっていいかもね。もちろん神姫だっていていいもん」
「だねー、その方が面白いし。でさ、取引成立したんならいいでしょ!」
「しょーがないわね綺羅は……じゃあ、今度お願いね梓さん?ってヤバ」
「ほら席に着けぇ!そろそろ講義を始めるぞ、全員フィルムを出すッ!」
「だねー、その方が面白いし。でさ、取引成立したんならいいでしょ!」
「しょーがないわね綺羅は……じゃあ、今度お願いね梓さん?ってヤバ」
「ほら席に着けぇ!そろそろ講義を始めるぞ、全員フィルムを出すッ!」
渋々倭さんの鞄に戻る神姫の綺羅さん。また後でねー、と手を振る彼女に
ボクも軽く手を振って、筆記用のフィルムスクリーンを取り出すんだよ。
ボクも軽く手を振って、筆記用のフィルムスクリーンを取り出すんだよ。
「……ねぇ、そんな淡白で将来何になりたいとかあるの?梓さんって」
「敢えて言えば、大事な人の支えに……かな。お金は別にいいんだよ」
「それなのに塾ねぇ……つくづく変わり者なのね、っと続きは後でね」
「そこ私語禁止ッ!いいか、学問は力こそパゥワァーで──────」
「敢えて言えば、大事な人の支えに……かな。お金は別にいいんだよ」
「それなのに塾ねぇ……つくづく変わり者なのね、っと続きは後でね」
「そこ私語禁止ッ!いいか、学問は力こそパゥワァーで──────」
──────学びたくて学び、尽くしたくて尽くす。普通の欲望だよね?