「幻を紡ぐ少年」(2007/05/30 (水) 21:19:41) の最新版変更点
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*● デカ神姫 ●
**◆ 第一話 「幻を紡ぐ少年」 ◆ ※幻さんの[[幻の物語]]とのコラボです。
目が覚めると、もう朝の10時を廻っていた。夏休みだからって遅すぎだけど、
昨夜はずっとネロの事を考えてて眠れなかったんだ。
「慎一、起きましたか?」
何時からそこにいたのか、枕元にネロがいた。
ネロ。悪魔型の神姫。記憶を無くして彷徨っていた。
僕は彼女に、行方不明のマスターを探してあげる約束をしたんだ。
「お早うネロ。起こしてくれてもよかったのに」
「いえ、気持ちよさそうに眠っていたので……」
そう言ってネロはニッコリ微笑んだ。
遅い朝食を済ませると、服を着替えて外出の準備をする。
正直に言うと外出は苦手だ。いや、人との関わりが苦手と言うか。
数年前に父が犯した罪。周りの自分を見る目。自分が周りを見る目。
あれ以来、確かに僕の世界は変ってしまった。でも変えてしまったのは
自分なのか世界の方なのか。……何かそんな小説があったっけ。
「慎一、大丈夫ですか?」
黙り込んでいた僕に、ネロが心配そうに声を掛けた。
「大丈夫だよ。ちょっと考え事をしてただけ」
「あの……体調が悪いなら今日はセンターに行かなくても……」
「ううん、何かマスターの情報が入っているかもしれないから…行ってみようよ」
僕はネロをカバンの中に収めると、御影市神姫センターへ向った。
夏の日差しの中、街の中を歩いて行く。暑い。イヤになるぐらいに暑い。
通行人達も気だるい雰囲気を漂わせている。
ハンカチを被ってうつむいている人。
半袖を肩まで捲って歩いている人。
センターが見える曲がり角で座り込んでいるサラリーマン風の男性。
……こういう人とは、特に関わりたくないな……
無視してその側を通り過ぎようとすると、突然その男性に腕を掴まれた。
「し…………少年、頼みがある」
ビックリして思わずその手を振り払ってしまう。
「な、何ですか貴方は!」
「何って……敢えて言うなら正義の味方か?」
…………ホントに何なんだ、この人は……
「別に大した事じゃない。ちょっとコンビニで食い物を買ってきて欲しいんだ」
そう言ってサイフを差し出した。
「そんなの自分で行けばいいじゃないですか」
「俺はココを離れる訳にはいかないんだ。理由は言えないが……」
言わなくていいです。聞きたくもありません。
勿論断りたかったけど……このままじゃセンターに入れないし、仕方なくコンビニに行く。
買物カゴの中に適当にパンと飲み物を放り込む。レジで会計をしようとサイフを開けると
中には230円しか入ってない。ふぅ……自分のサイフを出してお金を払う。
「少年、すまなかったな!」
僕から買物袋とサイフをひったくると、猛烈な勢いでパンを食べ始めた。
「モグモグ……昨日から何も食べてなくてね……モグモグ……今日は相棒も居ないし……」
「それじゃ僕はこれで……」
「そうだ、何かお礼をしなくちゃいけないな!」
「いえ、いいですいいです!」
そのまま逃げるように立ち去る。今日はセンターに行くのは諦めよう……
その夜。ネロの事を心配して梓が電話をしてきた。
『そう、それでセンターに行きそびれたのね』
「うん。変な人だったな……」
『でもその人、昨日から何も食べてないって言ったのよね?それじゃ昨日から
ソコにいたのかしら?』
「そういえば……どうなんだろう?」
『センターに何かする気なのかしら…気になるわね。明日の朝、一緒に見に行かない?』
「えっ、流石にもう居ないと思うけど……」
次の日の朝。まだ居た。同じ場所に。
「あの人だよ」
「う~ん…ずっとセンターの方を窺っているわね」
それを離れた場所から窺ってる僕と梓。
ネロがカバンから顔を出して、
「昨日はカバンの中で声しか聞いてませんけど、悪い人には思えませんでした……」
「でも見た感じは不審者以外の何者でもないですね」梓の肩でミナツキが言った。
みんなで考え込んでいると、突然ネロがカバンから飛び出した。
「なっ……ネロ!?」
目で追いきれない程のスピードで動き回る。激しい衝突音。
稀に目の端に映るもう一つの影。……ネロ、戦っているのか!?
『ラン!!その子達は違う!!!!!』
遠くから例の男性が叫ぶと、ネロ達の動きが止まった。
目の前に、ネロの他にもう一体の神姫がいた。
男の子みたいな格好。髪はショートカット。銃とナイフを構えている。
例の男性が走りよってきた。その手にはアタッシュケースをぶら下げている。
「ラン、この子が昨日言っていた少年だよ」
ランと呼ばれた神姫が、僕達の方を向いて申し訳なさそうに言った。
「ご、ゴメンなさい!ボクてっきり『連中』の仲間だと思ったヨ……」
「れ、れ、れ、連中って……」
梓の言葉に、男性が困ったように言った。
「まいったな……これは全部話さなくちゃいけないか……」
男性の名前は松田敏郎、刑事さんらしい。
何でも最近多発している神姫の武装強奪事件を追っているとの事。
「正直、窃盗自体はそんなに大変な事じゃないんだ。問題はプロトタイプの強力な武装が
盗難されて更に改造され、犯罪に使われてしまう事なんだ」
刑事さんは最近の被害状況パターンから、次のターゲットはココだと予想して
ずっと張り込みをしていたんだそうだ。
「それなら隠れてないでセンターの人に言って協力してもらえば……」
梓のもっともな質問に、刑事さんは答えた。
「……ココは別件で色々あってね。出来れば接触したくなかったんだ。
でも君たちが身内となると……もう接触してしまったも同然か」
そう言うと刑事さんは、彼の神姫ランを肩に乗せて言った。
「センターに案内してくれないか?君の言う通り、協力を依頼しよう」
センターでは若い女性職員が対応してくれた。
「つまり、研究所で開発中の武装が狙われているという事ですか?」
「そうです。どうやらココは色々と『特殊な物』を扱っているようですしね」
刑事さんの目つきが変った。ゾッとするような冷たい目。
「………………解りました。とにかく所長室にお通しします」
「ありがとう。ランはココで待っていてくれ」
「解ったヨ!」
そうして二人は奥に行ってしまった。
暫くして刑事さんが戻ってきた。
「ラン、一回戻るぞ」
「何か解ったんだネ?」
「さっきの職員さん、ココの研究員でもあるんだが……明日、野外での武装データを
取る為に近所の公園で実験をする予定なんだそうだ」
「それじゃ……」
「ああ、連中が襲ってくるとしたらその時だ。一回戻って準備をしてこよう」
「了解だヨ!」
センターから出ようとした刑事さんが、ドアの所で急に立ち止まった。
「そうだ少年、いや慎一くん。パンのお礼がまだだったね。すぐソコに
ケーキの美味しい喫茶店があるんだけど、一緒にどうだい?」
「あの…いえ、僕は……」
「遠慮するなって!それに……ネロちゃんの事も聞きたいしね」
ドキッとする。これは……変に断ったらネロが疑われる……
「……解りました。ご一緒させていただきます」
「あっ、それじゃ私も……」梓が慌てて言った。
「悪いけど君は遠慮してくれ。給料日前であまり金が無いんだよ!」
そして僕と刑事さんは、梓を残してセンターを後にした。
「……これ、美味しいんですか?」
「口に合わなかったかい?『マヨネーズホイップケーキ』」
最低だ。いろんな意味で最低だ……
刑事さんに連れてこられた喫茶店。もう二度と来ない……
「さて、と。それじゃネロちゃんの事を聞かせてもらおうか」
テーブルの上のネロが不安そうにしている。
「何の事ですか?ネロは普通の……」
「隠すのは無し。時間のムダ。ランと戦った時の動き、どう見ても普通の神姫じゃない」
刑事さんがジッと僕を見つめる。冷たくはないけど、とても鋭い視線。
沈黙を破ったのはネロだった。
「あの……全部私が悪いんです。全部私がお話しします」
「ネロ!何を言ってるんだ!」「でも慎一!」
「二人とも落ち着きなヨ!」
ずっと黙っていた刑事さんの神姫、ランが口を開いた。
「ボクもトシローも『たかが違法改造』ぐらいで大騒ぎしないヨ!
問題なのは違法改造や盗難されたプロトタイプが犯罪に使われる事なんだ!」
ランはネロの手を取ると、優しく続けた。
「ボクの使ってる銃だって銃刀法に触れる物なんだ。問題はその「心の在処」だ。
トシローはキミ達の心が知りたいんだヨ!」
心の、在処……………
「解ったよ……刑事さん、全部話します。残らず」
僕は全てを話し出した。
ネロの事。記憶喪失の事。不法所持の可能性。
インストールしたプログラムの事。(入手先は勿論言わなかったけど)
そして……父の事件の事さえも。
「そっか……色々と大変なんだな」
「いえ、そんな……」
「俺も何かしてあげたいけど、下手に動くと逆に迷惑を掛けそうだな。
その代わり、助けが欲しくなったら何時でも言ってくれ。何があっても飛んでくるから」
「刑事さん……ありがとうございます」
「刑事さん、なんて水臭い。俺のことは『アニキ』って呼んでくれ!」
「あ、あ、アニキ、ですか……」
「そう、ア・ニ・キ!」
突然ランが刑事さんの頭を殴る。
「バカ言ってんじゃないヨ!慎一くんが困ってるじゃないカ!!」
「困ってるのは俺の方だ!その暴力癖、いい加減何とかしろ!!」
二人がケンカを始めてしまった。
結果、僕たちは店から追い出されてしまった。
別れ際、刑事さんが言った。
「慎一、一つだけ約束してくれ。
君は辛い記憶を持っている。でもそれを否定する事だけは止めるんだ。
どんな記憶だって君の一部。それを否定することは自分を否定する事なんだ。
失われた記憶を求めて頑張っているネロちゃんの為にも、その事だけは忘れないでくれ」
「刑事さん……」
「だから俺のことはアニキと……イテテテッッ、ラン、止めろってば!!!」
後日。センターで聞いたんだけど、あの後で刑事さん達、窃盗グループと大立ち回りを
やったそうだ。何でも軍用兵器まで出てきて、知り合いのファーストランカー達の力も
借りたとか。
「ネロ……僕は強くなれるかな……」
「えっ、慎一、何か言いましたか?」
「いや……何でもないよ。さぁ、頑張ってネロのマスターを探さないとね!」
「はい!」
ネロが明るく答えた。
第二話 作成中? へ進む
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*● デカ神姫 ●
**◆ 第一話 「幻を紡ぐ少年」 ◆ ※幻さんの[[幻の物語]]とのコラボです。
目が覚めると、もう朝の10時を廻っていた。夏休みだからって遅すぎだけど、
昨夜はずっとネロの事を考えてて眠れなかったんだ。
「慎一、起きましたか?」
何時からそこにいたのか、枕元にネロがいた。
ネロ。悪魔型の神姫。記憶を無くして彷徨っていた。
僕は彼女に、行方不明のマスターを探してあげる約束をしたんだ。
「お早うネロ。起こしてくれてもよかったのに」
「いえ、気持ちよさそうに眠っていたので……」
そう言ってネロはニッコリ微笑んだ。
遅い朝食を済ませると、服を着替えて外出の準備をする。
正直に言うと外出は苦手だ。いや、人との関わりが苦手と言うか。
数年前に父が犯した罪。周りの自分を見る目。自分が周りを見る目。
あれ以来、確かに僕の世界は変ってしまった。でも変えてしまったのは
自分なのか世界の方なのか。……何かそんな小説があったっけ。
「慎一、大丈夫ですか?」
黙り込んでいた僕に、ネロが心配そうに声を掛けた。
「大丈夫だよ。ちょっと考え事をしてただけ」
「あの……体調が悪いなら今日はセンターに行かなくても……」
「ううん、何かマスターの情報が入っているかもしれないから…行ってみようよ」
僕はネロをカバンの中に収めると、御影市神姫センターへ向った。
夏の日差しの中、街の中を歩いて行く。暑い。イヤになるぐらいに暑い。
通行人達も気だるい雰囲気を漂わせている。
ハンカチを被ってうつむいている人。
半袖を肩まで捲って歩いている人。
センターが見える曲がり角で座り込んでいるサラリーマン風の男性。
……こういう人とは、特に関わりたくないな……
無視してその側を通り過ぎようとすると、突然その男性に腕を掴まれた。
「し…………少年、頼みがある」
ビックリして思わずその手を振り払ってしまう。
「な、何ですか貴方は!」
「何って……敢えて言うなら正義の味方か?」
…………ホントに何なんだ、この人は……
「別に大した事じゃない。ちょっとコンビニで食い物を買ってきて欲しいんだ」
そう言ってサイフを差し出した。
「そんなの自分で行けばいいじゃないですか」
「俺はココを離れる訳にはいかないんだ。理由は言えないが……」
言わなくていいです。聞きたくもありません。
勿論断りたかったけど……このままじゃセンターに入れないし、仕方なくコンビニに行く。
買物カゴの中に適当にパンと飲み物を放り込む。レジで会計をしようとサイフを開けると
中には230円しか入ってない。ふぅ……自分のサイフを出してお金を払う。
「少年、すまなかったな!」
僕から買物袋とサイフをひったくると、猛烈な勢いでパンを食べ始めた。
「モグモグ……昨日から何も食べてなくてね……モグモグ……今日は相棒も居ないし……」
「それじゃ僕はこれで……」
「そうだ、何かお礼をしなくちゃいけないな!」
「いえ、いいですいいです!」
そのまま逃げるように立ち去る。今日はセンターに行くのは諦めよう……
その夜。ネロの事を心配して梓が電話をしてきた。
『そう、それでセンターに行きそびれたのね』
「うん。変な人だったな……」
『でもその人、昨日から何も食べてないって言ったのよね?それじゃ昨日から
ソコにいたのかしら?』
「そういえば……どうなんだろう?」
『センターに何かする気なのかしら…気になるわね。明日の朝、一緒に見に行かない?』
「えっ、流石にもう居ないと思うけど……」
次の日の朝。まだ居た。同じ場所に。
「あの人だよ」
「う~ん…ずっとセンターの方を窺っているわね」
それを離れた場所から窺ってる僕と梓。
ネロがカバンから顔を出して、
「昨日はカバンの中で声しか聞いてませんけど、悪い人には思えませんでした……」
「でも見た感じは不審者以外の何者でもないですね」梓の肩でミナツキが言った。
みんなで考え込んでいると、突然ネロがカバンから飛び出した。
「なっ……ネロ!?」
目で追いきれない程のスピードで動き回る。激しい衝突音。
稀に目の端に映るもう一つの影。……ネロ、戦っているのか!?
『ラン!!その子達は違う!!!!!』
遠くから例の男性が叫ぶと、ネロ達の動きが止まった。
目の前に、ネロの他にもう一体の神姫がいた。
男の子みたいな格好。髪はショートカット。銃とナイフを構えている。
例の男性が走りよってきた。その手にはアタッシュケースをぶら下げている。
「ラン、この子が昨日言っていた少年だよ」
ランと呼ばれた神姫が、僕達の方を向いて申し訳なさそうに言った。
「ご、ゴメンなさい!ボクてっきり『連中』の仲間だと思ったヨ……」
「れ、れ、れ、連中って……」
梓の言葉に、男性が困ったように言った。
「まいったな……これは全部話さなくちゃいけないか……」
男性の名前は松田敏郎、刑事さんらしい。
何でも最近多発している神姫の武装強奪事件を追っているとの事。
「正直、窃盗自体はそんなに大変な事じゃないんだ。問題はプロトタイプの強力な武装が
盗難されて更に改造され、犯罪に使われてしまう事なんだ」
刑事さんは最近の被害状況パターンから、次のターゲットはココだと予想して
ずっと張り込みをしていたんだそうだ。
「それなら隠れてないでセンターの人に言って協力してもらえば……」
梓のもっともな質問に、刑事さんは答えた。
「……ココは別件で色々あってね。出来れば接触したくなかったんだ。
でも君たちが身内となると……もう接触してしまったも同然か」
そう言うと刑事さんは、彼の神姫ランを肩に乗せて言った。
「センターに案内してくれないか?君の言う通り、協力を依頼しよう」
センターでは若い女性職員が対応してくれた。
「つまり、研究所で開発中の武装が狙われているという事ですか?」
「そうです。どうやらココは色々と『特殊な物』を扱っているようですしね」
刑事さんの目つきが変った。ゾッとするような冷たい目。
「………………解りました。とにかく所長室にお通しします」
「ありがとう。ランはココで待っていてくれ」
「解ったヨ!」
そうして二人は奥に行ってしまった。
暫くして刑事さんが戻ってきた。
「ラン、一回戻るぞ」
「何か解ったんだネ?」
「さっきの職員さん、ココの研究員でもあるんだが……明日、野外での武装データを
取る為に近所の公園で実験をする予定なんだそうだ」
「それじゃ……」
「ああ、連中が襲ってくるとしたらその時だ。一回戻って準備をしてこよう」
「了解だヨ!」
センターから出ようとした刑事さんが、ドアの所で急に立ち止まった。
「そうだ少年、いや慎一くん。パンのお礼がまだだったね。すぐソコに
ケーキの美味しい喫茶店があるんだけど、一緒にどうだい?」
「あの…いえ、僕は……」
「遠慮するなって!それに……ネロちゃんの事も聞きたいしね」
ドキッとする。これは……変に断ったらネロが疑われる……
「……解りました。ご一緒させていただきます」
「あっ、それじゃ私も……」梓が慌てて言った。
「悪いけど君は遠慮してくれ。給料日前であまり金が無いんだよ!」
そして僕と刑事さんは、梓を残してセンターを後にした。
「……これ、美味しいんですか?」
「口に合わなかったかい?『マヨネーズホイップケーキ』」
最低だ。いろんな意味で最低だ……
刑事さんに連れてこられた喫茶店。もう二度と来ない……
「さて、と。それじゃネロちゃんの事を聞かせてもらおうか」
テーブルの上のネロが不安そうにしている。
「何の事ですか?ネロは普通の……」
「隠すのは無し。時間のムダ。ランと戦った時の動き、どう見ても普通の神姫じゃない」
刑事さんがジッと僕を見つめる。冷たくはないけど、とても鋭い視線。
沈黙を破ったのはネロだった。
「あの……全部私が悪いんです。全部私がお話しします」
「ネロ!何を言ってるんだ!」「でも慎一!」
「二人とも落ち着きなヨ!」
ずっと黙っていた刑事さんの神姫、ランが口を開いた。
「ボクもトシローも『たかが違法改造』ぐらいで大騒ぎしないヨ!
問題なのは違法改造や盗難されたプロトタイプが犯罪に使われる事なんだ!」
ランはネロの手を取ると、優しく続けた。
「ボクの使ってる銃だって銃刀法に触れる物なんだ。問題はその「心の在処」だ。
トシローはキミ達の心が知りたいんだヨ!」
心の、在処……………
「解ったよ……刑事さん、全部話します。残らず」
僕は全てを話し出した。
ネロの事。記憶喪失の事。不法所持の可能性。
インストールしたプログラムの事。(入手先は勿論言わなかったけど)
そして……父の事件の事さえも。
「そっか……色々と大変なんだな」
「いえ、そんな……」
「俺も何かしてあげたいけど、下手に動くと逆に迷惑を掛けそうだな。
その代わり、助けが欲しくなったら何時でも言ってくれ。何があっても飛んでくるから」
「刑事さん……ありがとうございます」
「刑事さん、なんて水臭い。俺のことは『アニキ』って呼んでくれ!」
「あ、あ、アニキ、ですか……」
「そう、ア・ニ・キ!」
突然ランが刑事さんの頭を殴る。
「バカ言ってんじゃないヨ!慎一くんが困ってるじゃないカ!!」
「困ってるのは俺の方だ!その暴力癖、いい加減何とかしろ!!」
二人がケンカを始めてしまった。
結果、僕たちは店から追い出されてしまった。
別れ際、刑事さんが言った。
「慎一、一つだけ約束してくれ。
君は辛い記憶を持っている。でもそれを否定する事だけは止めるんだ。
どんな記憶だって君の一部。それを否定することは自分を否定する事なんだ。
失われた記憶を求めて頑張っているネロちゃんの為にも、その事だけは忘れないでくれ」
「刑事さん……」
「だから俺のことはアニキと……イテテテッッ、ラン、止めろってば!!!」
後日。センターで聞いたんだけど、あの後で刑事さん達、窃盗グループと大立ち回りを
やったそうだ。何でも軍用兵器まで出てきて、知り合いのファーストランカー達の力も
借りたとか。
「ネロ……僕は強くなれるかな……」
「えっ、慎一、何か言いましたか?」
「いや……何でもないよ。さぁ、頑張ってネロのマスターを探さないとね!」
「はい!」
ネロが明るく答えた。
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