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「妄想神姫:第二十五章(前編)」(2007/04/14 (土) 23:08:47) の最新版変更点
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**舞い踊る、白鳥の乙女達(前編)
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GWには遠い休日。私・槇野晶と三人の神姫は、秋葉原の神姫センターへ
足を運んだ。目的はただ一つだけ……3on3形式バトルでの勝利である!
武装運搬専用ケースも三人分の重量となり、この小さな躯には少々辛いが
ロッテは無論の事、アルマとクララも三人共に戦う事を望んでいるのだ。
そうとなれば、“姉”たる私は全力で応えねばならない。そう言う物だ!
「あ、マイスターお帰りなさいですの~。参戦申請通りましたの?」
「有無、軽量級ランクの確認だけだったぞ。対戦ナンバーは、18」
「うんと……17番目との対戦ですね。えーと、相手の名前は……」
「……あれかな。“黒鳥の戦鬼”って登録ネームになってるんだよ」
そう言って武装を着込んでいるクララが示した電光掲示板には、確かに
“黒鳥の戦鬼”なるユニット名と、所属神姫タイプが表示されていた。
私はここで、奇怪な事に気付く。相手神姫は三人とも同タイプなのだ。
それで“黒鳥”……どうやら、私達の商売敵とも言うべき相手かもな。
「なるほどな……精一杯蹴散らしてこい、“夜虹の戦姫”達っ!!」
「や、やこう?……えっと、それがあたし達のユニット名ですか?」
「……夜の虹、オーロラ。ボクらの三色も並べればそれっぽいもん」
「わたし達の二つ名だって全部“せんき”ですの。だから、ねっ?」
「深い意味があるんですねぇ~……分かりました、マイスターッ!」
準備も整い、程なくアナウンスが掛かって私達はブースへと移動する。
重量級ランク用の追加ポッドがあるそれは、本来多人数のエントリーに
対応する為のシステムを流用した物であった。なるほど、経費節減か。
さて、三人をエントリーゲートに入れて相手を確認……って待てッ!?
「灯!碓氷灯かッ!?貴様、こんな所で何をしているんだおい!」
「あ、灯じゃありませんな。碓氷なんてそんな人知りませんなっ」
「嘘を付け、そのバリトン用ボイスチェンジャーとサングラス!」
「う……お、お久しぶりですな。晶ちゃん、相変わらず厳しくて」
「そう言う貴様は、まだ人前が怖いのか。不審な幼女だぞこれは」
“目”を相手に見られたくないと、蛙の様な巨大サングラスを着用し、
わざわざ機械で鈴の鳴る様な可愛い声を、渋いバリトンに変える幼女。
碓氷灯。私の遠縁の従姉であって、年に数度も合わぬ様な遠い間柄だ。
この通り変人で、首都圏を半端に離れた山奥から滅多に出ぬ臆病者だ。
……待て、誰だ『お前も十分変人だ』とか洩らしたのは。死にたいか?
「幼女って、晶ちゃんも十分幼女じゃないですかいな……って、あわわ」
「灯……貴様は私を怒らせるのが何時も上手だな、後で梅干しだぞッ!」
「えーと、君達そろそろ着席してもらえるかな?機械はセット出来たし」
見かねたセンター係員に窘められ、私達はお互いオーナー席に……ん?
なんで灯が“相手側の”オーナー席に座るんだ?……まさか、奴が!?
どういう事なのか良く分からんが、戦いの手を緩める事は絶対できぬ。
試合開始の合図を待ち、地形確認を行う……月面基地、低重力環境か!
『夜虹の戦姫vs黒鳥の戦鬼、サード3on3・第9戦闘、開始します!』
「よし。散開して、αをベースに柔軟に対応してくれ」
『はいッ!!!』
「ミラ、イリン、ティニア。教えた通りに、できるかな?」
『姉様、自分に自信を持って!』
“Heiliges Kleid”姿の三姉妹が散開するした後、相手を確認する。
それはさながら戦乙女を標榜する此方に、挑戦するかの様な娘達だ。
リミテッドエディションのブラック・アーンヴァルをベースとして、
流出した第五弾のパーツを多分に盛り込んだ、同型機の神姫が三人。
意図的なのか、遠いとは言え親族故の共鳴なのか。複雑な心境だな。
「そう……この娘らの御陰で、灯は変われたのですよねっ」
「……なるほど、そう言う事か。だが手加減はせぬぞ!」
アーコロジー(完全環境都市)化された月面基地に聳えるビルを、三人の
“黒翼の天使”が飛び越えていく。通常の20%以下に設定されている
重力係数は空を飛べない神姫に福音となる物の、デメリットとて多い。
射撃武器の弾道計算を変えねば命中精度が落ちるのは、その代表格だ。
「この環境は、ちょっと不安ですの……まずは、一射ッ!」
「きゃっ!?ミラ、怒りますよ!ええいっ!」
「きゃあっ!ここは……しまった、挟撃ッ!?」
「まずは、一人。イリンが掴まえた……っと!!」
案の定、普段は精緻なロッテの“ムラクモ”による狙撃弾も逸れた。
重力設定による数値変動は計算していたが、まだ足りなかったかッ!
慌てて後退を図るビル上のロッテを、二人目の“天使”がホールド。
完全に宙づりとされてしまった。相手を一人ずつ潰す作戦か……!?
「ティニアのキャノンランサーで、往生してくださいッ!!」
「そうは、行きませんッ!!やぁぁーっ!!!」
「きゃう!?み、ミラッ!」
銃剣……というよりはレーザーキャノンを組み込んだ槍が向けられる。
だがそうはさせじと、ビルを駆け登り加速したアルマが殴りかかった。
“マサムネ”の一撃を受けて怯んだティニアはあっさり後退する。だが
ロッテとイリンを中心とした反対側には、狙いを付けるミラがいたッ!
このままではロッテが危ない。そう判断して叫ぶ前に、彼女が動いた!
「いい加減、お姉ちゃんを降ろしてほしいんだよ……イリンさん!」
「うきゃ!?い、糸が脚に……きゃあああぁっ!!!」
「ミラちゃん!?く、ううう~……!」
「ブースター全開、一斉に“プラグアウト”して離脱……だよっ!」
「きゃあぁぁっ!し、痺れる~!?」
イリンの脚に“ヘル”を絡みつかせたクララが、遠心力を付けながら
二人に指示をする。“シラヌイ”によるスタン攻撃も併用しながら、
立て直しの為、ロッテへの照準補正を極力妨害しようという狙いだ。
その指示に応じて二人はバックルに手を添えて、クララも同調した。
それはイリンを振り回し終えたクララがミラに近付く、好機だった!
『Plug-out!』
「きゃあああぁぁっ!?」
「よし、Y時3smに全基投下する!移動してくれ!」
弾け飛ぶ硬質の羽衣を浴びて、“天使”達に確実な傷が与えられる。
決して致命傷ではないが……“SSS”を投下するには十分な隙だ。
Y時……即ち、三姉妹それぞれに対して“Y字”方向3smの所へ、
サイドボードにセットした三基の追加装備“SSS”を、投下する。
「痛ぁ……って、何あれ?ぷちマスィーンズ!?」
「“スヴェンW”!わたしの所へッ!」
「“ファルケンS”!あたしはここですよ!」
「“ビルガーG”、ボクはこっち……!」
「クェェェェーッ!!!」
──────集う三羽の翼。これが、戦乙女の頂点なの!
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