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*10話 もうひとつの戦い
バトル予選が終わり、係りの人から明日の簡単な説明を受けて、会場を見て回ることにした。
アールとエルを肩に乗せ、とりあえず物販コーナーへと。
すると、ある店舗で人だかりが出来ていた。なんだ?と気になって近寄ってみる。
「フォルテストラーフセット1つ!」
「こっちは、フォルテ2個とラルナーヴヘッド1個」
「フォルテ2こ!!」
そこは、フォルテとラルナーヴを開発したブースだった。
「押さないで下さい! 在庫はまだ有りますので、押さないで下さい!」
店員が殺到する客の整理をしている。
「あの、これって……あたいが、活躍したから?」
エルが人だかりを見ながら呟く。
「注目を集めたことはたしかですね」
アールも同じ方向を見ている。
「元から人気商品だし、どうなんだろうな」
俺は、人だかりを避けるようにその場所を離れた。
企業ブースを回って新型の展示をみたり、その他いろいろと見て回り、いよいよ國崎技研のブースへやって来た。
「いよいよです」
アールがまた妙なオーラを出し始めました。
「大丈夫かな……」
エルもアールを見て心配している様子。
ブースでカタログを貰い、ヘンデルとグレーテルの説明を受けて、体験とお菓子作りの参加登録をした。
「では、マスターさんはこちらでお待ち下さい」
そういって、待ち合い場所と休憩場所を兼ねているであろうスペースへ案内された。
残念ながらここからは、体験キッチンは見えない。
見えないが……アールがどんなことをしているかは、想像がついた。
『きゃぁぁぁ!! え、えっと!』
そう……この、悲鳴のような叫び声で………
『あわわわ! 大変!』
『あ、あの、落ち着いて。落ち着いて火を消してください』
『あ! 入れすぎです! 半分取り除いてください』
『は、はい! きゃぁぁ!!』
ガシャーン!
「え…っと、マスター……」
「言うな……」
エルが俺のほうを見ている。
確かに、アールが料理をするのは初めてだが、こうなるとは思わなかった。
他のテーブルでは、自分の作ったお菓子を食べて貰って喜んでいる神姫の姿が見える。
微笑ましいその光景は、羨ましかった。
そして、待つことしばし、ついにやって来た。
「ますたぁー、お待たせしましたぁ」
カートの上に銀色の蓋がついた容器を乗せ、さらにアールがその上に乗って、係りの人に押されてやってきた。
係りの人が容器をテーブルに移す。
「さあ、食べてください」
満面の笑みでこっちを見ているアール。
「あ、うん」
覚悟を決めて、蓋を取る。
「お?」
「あれ?」
俺とエルは拍子抜けの声をだした。そこには、まともな出来のクッキー。
「もう! なんですか、その表情は」
腰に手を当ててプリプリ怒るアール。
「あ…ああ、がんばったな」
よしよしと頭を撫でてやる。
「はい……」
ぽっと頬を染めてはにかむアール。
クッキーをひとつ摘んで食べてみる。
「お! うまい」
ふつうのバタークッキーだが、アールが一所懸命作ったものだから、さらに美味しく感じた。
サービスで出されたコーヒーと一緒に、三人で全部食べきった。
ブースから出るとき、体験キッチンを見ると料理指導のハウリンが、非常に疲れた様子をしていたのが目に止まった。
そして、アールの方を見ると
「はい?」
と首を傾げた。
何となく、このことは触れてはいけないと悟った俺だった。
[[戻る>アールとエルと]]
*10話 もうひとつの戦い
バトル予選が終わり、係りの人から明日の簡単な説明を受けて、会場を見て回ることにした。
アールとエルを肩に乗せ、とりあえず物販コーナーへと。
すると、ある店舗で人だかりが出来ていた。なんだ?と気になって近寄ってみる。
「フォルテストラーフセット1つ!」
「こっちは、フォルテ2個とラルナーヴヘッド1個」
「フォルテ2こ!!」
そこは、フォルテとラルナーヴを開発したブースだった。
「押さないで下さい! 在庫はまだ有りますので、押さないで下さい!」
店員が殺到する客の整理をしている。
「あの、これって……あたいが、活躍したから?」
エルが人だかりを見ながら呟く。
「注目を集めたことはたしかですね」
アールも同じ方向を見ている。
「元から人気商品だし、どうなんだろうな」
俺は、人だかりを避けるようにその場所を離れた。
企業ブースを回って新型の展示をみたり、その他いろいろと見て回り、いよいよ國崎技研のブースへやって来た。
「いよいよです」
アールがまた妙なオーラを出し始めました。
「大丈夫かな……」
エルもアールを見て心配している様子。
ブースでカタログを貰い、ヘンデルとグレーテルの説明を受けて、体験とお菓子作りの参加登録をした。
「では、マスターさんはこちらでお待ち下さい」
そういって、待ち合い場所と休憩場所を兼ねているであろうスペースへ案内された。
残念ながらここからは、体験キッチンは見えない。
見えないが……アールがどんなことをしているかは、想像がついた。
『きゃぁぁぁ!! え、えっと!』
そう……この、悲鳴のような叫び声で………
『あわわわ! 大変!』
『あ、あの、落ち着いて。落ち着いて火を消してください』
『あ! 入れすぎです! 半分取り除いてください』
『は、はい! きゃぁぁ!!』
ガシャーン!
「え…っと、マスター……」
「言うな……」
エルが俺のほうを見ている。
確かに、アールが料理をするのは初めてだが、こうなるとは思わなかった。
他のテーブルでは、自分の作ったお菓子を食べて貰って喜んでいる神姫の姿が見える。
微笑ましいその光景は、羨ましかった。
そして、待つことしばし、ついにやって来た。
「ますたぁー、お待たせしましたぁ」
カートの上に銀色の蓋がついた容器を乗せ、さらにアールがその上に乗って、係りの人に押されてやってきた。
係りの人が容器をテーブルに移す。
「さあ、食べてください」
満面の笑みでこっちを見ているアール。
「あ、うん」
覚悟を決めて、蓋を取る。
「お?」
「あれ?」
俺とエルは拍子抜けの声をだした。そこには、まともな出来のクッキー。
「もう! なんですか、その表情は」
腰に手を当ててプリプリ怒るアール。
「あ…ああ、がんばったな」
よしよしと頭を撫でてやる。
「はい……」
ぽっと頬を染めてはにかむアール。
クッキーをひとつ摘んで食べてみる。
「お! うまい」
ふつうのバタークッキーだが、アールが一所懸命作ったものだから、さらに美味しく感じた。
サービスで出されたコーヒーと一緒に、三人で全部食べきった。
ブースから出るとき、体験キッチンを見ると料理指導のハウリンが、非常に疲れた様子をしていたのが目に止まった。
そして、アールの方を見ると
「はい?」
と首を傾げた。
何となく、このことは触れてはいけないと悟った俺だった。
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