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**白鳥の乙女──あるいは予選その二(中編)
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徹甲弾を直撃させたのに、対戦相手がまだ生きている。流石に誰もが
信じられない状況に、“サンドワーム”のプル軍曹が姿を現したよ。
それは2~3人分の装備を贅沢に使った、“多脚戦車”に乗る神姫。
二挺の滑空砲を備え、近距離でもアサルトライフル・拳銃……更には
“ハグタンド・アーミーブレード”までも備えた、重装型の戦車兵。
そんな見るからに強そうな娘が、ゆっくりと周囲を検分するんだよ。
「……確か、この辺りの筈……ッ!?」
「クェェーッ!!」
「……あれは、ぷち?でも、大きすぎる……!」
その脚を止めたのは、“SSS”に搭載した防御用ぷちマスィーンズ。
ロッテお姉ちゃんの伴侶は“スヴェンW”、白鳥型の戦闘機なんだよ。
予期しない小型レーザーガンポッドにより、怯むプル軍曹。その好機を
見逃さずにロッテお姉ちゃんが砂の中から飛び出して、“SSS”へと
接近。いよいよ、その本領を見せる時が来たんだよ。即ち、追加武装!
「“スヴェンW”展開!ライドボードも同時展開、着装ですのッ!!」
「……!?そんな、馬鹿な事……ぷちが、鎧に変形する……!?」
『バックするんだ、プル軍曹。近距離にいては拙い!』
「……イェス、サー」
ここで呆気にとられず最適な距離を確保するのは、戦いに慣れている証。
でも御陰で“SSS(Strike Swan System)”を展開する時間は取れたね。
分類名“アーマメント・シールド・ブースター”とは、こういう事だよ。
突貫攻撃も行えるブースターであると同時に、これはシールド……つまり
防御装備になる。それは運搬担当の“スヴェン”タイプも例外じゃない。
白鳥が分解されて、盾と胸甲……そして鋭角的なバイザーになるんだよ。
「着装完了、ABC・フレキシブル・シルク・バインダー展開ですの!」
「……白鳥の乙女?」
最後に、肩にマウントしたサーフボード状のシールド・バインダーから
耐熱加工を施したマントを引き出して、盾に挟まれていたランチャーを
右手に携え、展開は完了。バイザーからマスクを降ろして、防塵対策も
バッチリなんだよ……これが“Valkyrja”用補助システムの、正体ッ!
「そうですの。これが“Valkyrja・Skjald-maer・Phase”ですの!」
「……でもそれでは、装甲の爆破で威力を減殺できない」
「やってみなくちゃ、わかりませんの……さぁ!」
そう。この“白鳥”を連想させる装甲の下には、いつもの“Valkyrja”。
でもそれだけでは、さっきの様な滑空砲の弾に耐える事は出来ないもん。
ちなみに“Heiliges Kleid”をリアクティブアーマー代わりにする事で、
ロッテお姉ちゃんはさっきの奇襲を凌いだみたいなんだよ。流石、かな?
「……なら、望み通りに……撃つ。目標捕捉。弾道セット」
「ロッテちゃん、レーダーの測定結果を砲身に伝達している」
「なら……ここを凌げば、勝機が見えてきますの。ね?」
相手は、次の狙いを定めている。こんな窮地でも、ロッテお姉ちゃんは
決して余裕と自分の志を棄てない。これが、ここまで勝てた理由かな?
程なくプル軍曹の弾道計算は終了……鈍い発射音が砂嵐の中に熔ける。
するとロッテお姉ちゃんは、右手のランチャーを上空に掲げたんだよ。
「あなたが精密砲撃のプロでも、わたしは射撃戦闘全般の……ッ!」
「……!衝撃波を、撃っている……弾丸が!?」
「プロフェッショナルですの。天使型とは、そういう者ですから」
次の瞬間、鋼の弾が大きく歪み……予定軌道を逸れて、砂地に着弾。
砂煙を盛大に巻き上げて、ロッテちゃんの躯を覆い隠したんだよっ。
『あの弾丸を撃墜するなんて、アーンヴァルタイプでも……!?』
「……その銃器は、一体?」
「インパクトカノン“ミョルニル”。真空圧式の迫撃砲ですの♪」
空気に限らず液体中でも、超高圧によって衝撃波を錬成し撃ち出す銃。
それで産み出された“音速の壁”を使って、徹甲弾を迎撃したんだね。
でも絡繰りがバレてしまった以上は、早めに勝負を付けないと危うい。
だからボクは、ロッテお姉ちゃんへと次の指示を出す事にしたんだよ。
「ロッテちゃん、“光の舞い”!相手の迎撃手段を奪うんだよ!」
「了解ですの……それっ!」
「……空に、舞い上がった?何故?」
──────それは、銀の白鳥が織りなす“光の舞い”なんだよ。
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