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「妄想神姫:外伝・その十一」(2007/03/14 (水) 23:16:01) の最新版変更点
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**誠意の返礼──あるいは初日その二
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“鳳凰カップ”初日も昼を迎え、長大な客足もやっと途切れた所だ。
小型のブースなのだが、それでも我がMMSショップ“ALChemist”には
多数の方々が噂を聞きつけて、一目展示物を見ようと訪れてくれた。
やはりアキバの地下ではなかなかこれだけの集客は出来ぬ……だが!
「ふぅぅ……なんなのだ、この大群衆は。PRは控えめの筈だぞ」
「そうですねぇ。マイスター、やっぱりあたしもHVIFの方が」
「否、それには及ばん。お前はその姿でしか為しえない事がある」
「は、はい……でも少し汗だくですよ?今が暖冬だからって……」
1ステージ終えたアルマが、心配そうに楽屋のコンテナから見上げる。
確かに私・槇野晶は、結構疲労していた。白衣を脱ぎ捨て、小さな躯を
“フィオラ”のそれに包んで、たった一人で客を捌き続けているのだ。
だが、それだけ私の技術が評価された証左でもある。嫌な感覚は無い。
それに頑張っているのは、アルマは勿論……ロッテも梓も同様なのだ!
「しかし、数量制限して正解かもしれぬな……このペースでは少々」
「予備分も含め一杯作って、しかも高価なのに……結構売れてます」
「有無。この調子では三時を待たずに、今日の分は打ち切りとなる」
“フィオラ”は決して安くはない。技術を安売りする気など、私には
毛頭無いからだ。それでも、これまで何百人もの方が訪れてくれる。
量産型でも手抜きをしない姿勢が、受け入れられたのかもしれんな。
それが凄く嬉しくて、私は今日渡すべき物を忘れてしまう所だった。
「そろそろ昼食を取らねばならんな。喫茶店“LEN”に行くか?」
「あ、はいっ!……梓ちゃんとロッテちゃんも、お昼休憩ですっけ」
「有無、丁度二人からメールが来た所だ。そこで落ち合うとしよう」
梓の端末に返信メールを飛ばし、売上金等を手提げ金庫に詰め込んで、
隣のブース要員に留守を頼み、私とアルマはブースを一端飛び出した。
無論盗まれる様なヘマはしないが……それにしても活気に満ちている。
今日の分が終わったら、一度彼方此方を見て回るのもいいかもな……。
「晶お姉ちゃん、アルマお姉ちゃん。ブースの様子は、どうかな?」
「梓や、順調すぎる位でな。この様子では、じきに今日は終わりだ」
「マイスターの洋服が人気だと、わたしも戦う甲斐がありますの♪」
「ロッテちゃん、宣伝効果バッチリだよ。そういうお客さんいたし」
そして私達は梓・ロッテと、“LEN”の出張トレーラー前で合流だ。
話を聞く限り、ロッテは梓……クララの指示が的確な所為もあるのか、
予選Hブロックの準々決勝まで勝ち上がったらしい。つまり、後三回で
明日の決勝ブロックへと駒を進める事になる!これは結構凄い事だな。
「そうか……ファーストやセカンド組も、居たのではなかったか?」
「ここまではセカンド止まりだよ。実力でどうにかなったけど……」
「もうすぐファーストランカーとも戦わないといけませんの。はい」
「油断してくれれば良いが、そうとも限らない。全力を尽くせよ?」
「大丈夫!ロッテちゃんなら決勝まで勝ち上がってくれますよっ!」
皆の声援に、ロッテがはにかむ……可愛らしい。戦う乙女の姿とは、
いつ見ても心動かされる物だ。なんとも可憐に見えるではないかッ!
という事で、私は密かに持ってきていた物を取り出す。3つの箱だ。
それを各自リボンの色に合わせ、手渡していく。梓の箱は大きめだ。
皆不思議そうな顔をしている、無理もない……だが間もなくなのだ。
「さ、さあ……開けてみるがいい、三人とも」
「えっ、これって神姫用のペンダント……?」
「わぁ……マイスター、金のペンダント!?」
「綺麗ですの、マイスターっ♪でもなんで?」
そこに入っていたのは、中世紋章風の彫金加工を施したペンダントだ。
中央にはそれぞれ各自の“W.I.N.G.S.”用ペンダントが、装填出来る。
梓の箱だけ大きいのは、無くしたりしない様にという配慮に他ならぬ。
この日の為に、私が手ずから作り上げた一品だ……何故なのか、だと?
「ほれ。間もなく三月十四日であろう?……だから、そのな……」
「……あ、ホワイトデー?そういえば、わたし達マイスターに!」
「うん……各々、プレゼントを作って手渡してあげたんだよ……」
「あっ!?そう言えば今日のマイスター、全部……身につけて!」
私の耳には宝玉のイヤリング。携帯機には毛糸加工のストラップ。
そして胸元から。三姉妹のそれと似た感じのペンダントを取り出す
私の右薬指には、想いの詩が刻み込まれた銀細工のリングがある。
「……それだけじゃないぞ!ほら、これと同じ物を作りたかったんだ!」
「マイスター、それってあの時の……ううん。照れちゃだめですの~♪」
「照れていないッ!?照れてなんか……い、いないよ!なんでもない!」
「……その割に、お姉ちゃんの顔が真っ赤っか。恥ずかしかったのかな」
「だ、だってしょうがないだろう。お前達の為に、って作ったんだ……」
「有り難うございます、マイスター……やだ、胸が切なくなりそうです」
慌ててペンダントを仕舞いつつ、私も皆を抱き寄せ労う。そうなのだ。
ホワイトデーにも乗る気はあまりしなかったのだが……どうあっても、
皆へお返しをしてあげたかった。故に、その日を言い訳としたのだな。
……想いは伝わった様で何よりだ、有無。お、ウェイトレスが来たな?
「ご……ご注文はお決まりで、でしょうか……って、あーっ!?」
「うん?ああ、すまな……って、貴様は千空?何故ここに居る!」
「あ、晶さんこそなんで此処に!?……って、展示ブースッ!!」
「そうだ、貴様はアルバイトか?……ウェイトレス姿も似合うぞ」
「ふええ~!?や、やめて引っ張らないで注文してくださいッ!」
──────ごめんね、でも……照れ隠しだってしたいじゃない?
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**誠意の返礼──あるいは初日その二
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“鳳凰カップ”初日も昼を迎え、長大な客足もやっと途切れた所だ。
小型のブースなのだが、それでも我がMMSショップ“ALChemist”には
多数の方々が噂を聞きつけて、一目展示物を見ようと訪れてくれた。
やはりアキバの地下ではなかなかこれだけの集客は出来ぬ……だが!
「ふぅぅ……なんなのだ、この大群衆は。PRは控えめの筈だぞ」
「そうですねぇ。マイスター、やっぱりあたしもHVIFの方が」
「否、それには及ばん。お前はその姿でしか為しえない事がある」
「は、はい……でも少し汗だくですよ?今が暖冬だからって……」
1ステージ終えたアルマが、心配そうに楽屋のコンテナから見上げる。
確かに私・槇野晶は、結構疲労していた。白衣を脱ぎ捨て、小さな躯を
“フィオラ”のそれに包んで、たった一人で客を捌き続けているのだ。
だが、それだけ私の技術が評価された証左でもある。嫌な感覚は無い。
それに頑張っているのは、アルマは勿論……ロッテも梓も同様なのだ!
「しかし、数量制限して正解かもしれぬな……このペースでは少々」
「予備分も含め一杯作って、しかも高価なのに……結構売れてます」
「有無。この調子では三時を待たずに、今日の分は打ち切りとなる」
“フィオラ”は決して安くはない。技術を安売りする気など、私には
毛頭無いからだ。それでも、これまで何百人もの方が訪れてくれる。
量産型でも手抜きをしない姿勢が、受け入れられたのかもしれんな。
それが凄く嬉しくて、私は今日渡すべき物を忘れてしまう所だった。
「そろそろ昼食を取らねばならんな。喫茶店“LEN”に行くか?」
「あ、はいっ!……梓ちゃんとロッテちゃんも、お昼休憩ですっけ」
「有無、丁度二人からメールが来た所だ。そこで落ち合うとしよう」
梓の端末に返信メールを飛ばし、売上金等を手提げ金庫に詰め込んで、
隣のブース要員に留守を頼み、私とアルマはブースを一端飛び出した。
無論盗まれる様なヘマはしないが……それにしても活気に満ちている。
今日の分が終わったら、一度彼方此方を見て回るのもいいかもな……。
「晶お姉ちゃん、アルマお姉ちゃん。ブースの様子は、どうかな?」
「梓や、順調すぎる位でな。この様子では、じきに今日は終わりだ」
「マイスターの洋服が人気だと、わたしも戦う甲斐がありますの♪」
「ロッテちゃん、宣伝効果バッチリだよ。そういうお客さんいたし」
そして私達は梓・ロッテと、“LEN”の出張トレーラー前で合流だ。
話を聞く限り、ロッテは梓……クララの指示が的確な所為もあるのか、
予選Hブロックの準々決勝まで勝ち上がったらしい。つまり、後三回で
明日の決勝ブロックへと駒を進める事になる!これは結構凄い事だな。
「そうか……ファーストやセカンド組も、居たのではなかったか?」
「ここまではセカンド止まりだよ。実力でどうにかなったけど……」
「もうすぐファーストランカーとも戦わないといけませんの。はい」
「油断してくれれば良いが、そうとも限らない。全力を尽くせよ?」
「大丈夫!ロッテちゃんなら決勝まで勝ち上がってくれますよっ!」
皆の声援に、ロッテがはにかむ……可愛らしい。戦う乙女の姿とは、
いつ見ても心動かされる物だ。なんとも可憐に見えるではないかッ!
という事で、私は密かに持ってきていた物を取り出す。3つの箱だ。
それを各自リボンの色に合わせ、手渡していく。梓の箱は大きめだ。
皆不思議そうな顔をしている、無理もない……だが間もなくなのだ。
「さ、さあ……開けてみるがいい、三人とも」
「えっ、これって神姫用のペンダント……?」
「わぁ……マイスター、金のペンダント!?」
「綺麗ですの、マイスターっ♪でもなんで?」
そこに入っていたのは、中世紋章風の彫金加工を施したペンダントだ。
中央にはそれぞれ各自の“W.I.N.G.S.”用ペンダントが、装填出来る。
梓の箱だけ大きいのは、無くしたりしない様にという配慮に他ならぬ。
この日の為に、私が手ずから作り上げた一品だ……何故なのか、だと?
「ほれ。間もなく三月十四日であろう?……だから、そのな……」
「……あ、ホワイトデー?そういえば、わたし達マイスターに!」
「うん……各々、プレゼントを作って手渡してあげたんだよ……」
「あっ!?そう言えば今日のマイスター、全部……身につけて!」
私の耳には宝玉のイヤリング。携帯機には毛糸加工のストラップ。
そして胸元から、三姉妹のそれと似た感じのペンダントを取り出す
私の右薬指には想いの詩が刻み込まれた、銀細工のリングがある。
「……それだけじゃないぞ!ほら、これと同じ物を作りたかったんだ!」
「マイスター、それってあの時の……ううん。照れちゃだめですの~♪」
「照れていないッ!?照れてなんか……い、いないよ!なんでもない!」
「……その割に、お姉ちゃんの顔が真っ赤っか。恥ずかしかったのかな」
「だ、だってしょうがないだろう。お前達の為に、って作ったんだ……」
「有り難うございます、マイスター……やだ、胸が切なくなりそうです」
慌ててペンダントを仕舞いつつ、私も皆を抱き寄せ労う。そうなのだ。
ホワイトデーにも乗る気はあまりしなかったのだが……どうあっても、
皆へお返しをしてあげたかった。故に、その日を言い訳としたのだな。
……想いは伝わった様で何よりだ、有無。お、ウェイトレスが来たな?
「ご……ご注文はお決まりで、でしょうか……って、あーっ!?」
「うん?ああ、すまな……って、貴様は千空?何故ここに居る!」
「あ、晶さんこそなんで此処に!?……って、展示ブースッ!!」
「そうだ、貴様はアルバイトか?……ウェイトレス姿も似合うぞ」
「ふええ~!?や、やめて引っ張らないで注文してくださいッ!」
──────ごめんね、でも……照れ隠しだってしたいじゃない?
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