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「Phase01-7」(2007/04/01 (日) 03:46:33) の最新版変更点
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筐体を囲むギャラリーの歓声が木霊する。
シートの向こうでは番長治が嘲け笑う。
隣に立つ伊吹が叫び、ワカナが両目を覆う。
その横で戦いを見守っていた桜花とショウが目を背けた。
フィールドでは壮絶な笑みを浮かべるベガの拳が、ゼリスの眼前へと迫る。
その最中――。
シュンはスッと自分に向けられる視線に気がついた。
その目、上目使いに覗き込む、そのエメラルドの瞳に一瞬吸い込まれそうになり……彼の脳裏にある言葉が響く。
――緊張する必要など皆無です。安心して私の戦いを見ているだけで結構。
唐突にシュンは理解した。言葉の先に隠された本当の言葉を。
――あなたが見ていてくれるから、私は戦えるのです。
全く。こいつと来たら、本当に普段と変わらない。いつでも、どんな時だって、ただひたすら真っ直ぐだ。
こいつといるといつもトラブルに巻き込まれる? 上等だ。そんな運命なら一緒にありったけの力でぶつかってやるまでだ。
――私はあなたの為に戦います。あなたも私の為に戦ってください。
強い光を灯したエメラルドの瞳を、シュンはただ強く見つめ返した。
言葉はいらない。
行け。
――ゼリス。
ふたりの瞳が交錯したのは一瞬だった。
次の一瞬。その瞳に襲い掛かる拳を捉えたゼリスは、地を踏みしめ前へと跳んだ。
眼前には迫る豪拳。それが内包するのは圧倒的破壊力。
だがその脅威を前に、ゼリスは躊躇せずに踏み込む。
地を這うかというような低いフォーム。
ただひたすら、前へ前へ。
ゼリスとベガ、ふたりの神姫が交差する。
怒れるベガの拳、暴風雨の如きそれをゼリスはさらに前へ突き進むことで、勢力圏内に無理やり体を捻じ込ませる。
吹いたのは暴風でなく、一陣の軽やかな旋風。
ベガの拳が捉えたのは、その旋風に遅れてなびいた数本の蒼い髪。
翻るポニーテールにつられ、ベガが見つめる先には、輝くエメラルドの瞳。
身を捻らせベガの懐へと飛び込むことに成功したゼリスは、そのまま回転を乗せて、右手に構えた対物ライフルのバレルを。
振るった。
後頭部に走る鈍い衝撃。
激痛の後の空白の時間の中、ベガの視線の先には驚愕に歪む番長治の顔。
次の一瞬ベガは、自身の放った必勝の突進力と遠心力から繰り出されたバレルの打撃力によってフィールドの端へと吹っ飛ばされた。
凄まじい音と衝撃と共に、ベガの体はフィールドの界壁へとぶち当たる。
その余韻冷めぬ中、ゼリスは跳躍と共にブルパップ式の弾装を流れるように交換。
フィールド端に倒れるベガの上に乗り降りると、その眼前に銃口を突きつけた。
「あなたの必勝のはずの一撃。それが何故避けられたのか分かりますか?」
自身を仰ぎ見るベガに、ゼリスは淡々と語る。
「あなたは始めに私の銃弾をナイフで弾きましたね。その時点であなたの腕は目に見えぬほどの微かなダメージを受けていたのですよ。それが必勝の一撃を微かに鈍らせた」
そこでゼリスは筐体の横を向く。その先では息を呑んで見守る桜花とショウのふたり。
「最もそれも戦う前からあなたにダメージがあったからこそ。あなたもあなたのオーナーも気付いてなかったようですが、無意味な連戦によって、あなたのパーツには元々かなりの負荷が掛かっていたようでしたから」
再びベガを見下ろしながら、ゼリスはあくまでも冷静に述べる。
「あなたは、あなたとそのオーナーが行った初心者を虐げる行為、それによって、この敗北を喫することになったのです」
ゼリスの踏みしめる脚がベガの動きを封じる。ベガを大地に拘束するそれは、桜花から借り受けた天使型の脚部パーツ。「くっ」と顔を歪ませるベガを一瞥、躊躇わず引き金を引こうとしたゼリスは、自身を呼び止める声に顔を上げた。
「ゼリス、もうやめろよ……」
フィールドに立つゼリスを見つめるシュンの瞳。それに気づいたゼリスは「ふう」とため息ひとつ、手にした対物ライフルをクルリと回転させると、その銃底を振り下ろした。
ごちんっ
見た目より間の抜けた音が響いた後、ゲーム筐体からはゼリスの勝利を告げるメッセージとファンファーレが流れ出した。
戦闘終了後、沸き立つ歓声のなか肩を落として歩き去っていく番長治とベガのふたりを見送りながら、シュンはゼリスが無事だったことにホッと胸を撫で下ろした。
「どうでしたか、シュン。私の華麗なる戦いは」
そう言って小さな胸を張るゼリスに呆れながら、シュンはずっと横で戦いを見守っていた男の子とその神姫――ショウと桜花に笑い掛けた。
「あ……あの、え~と」
「ありがとうございます。ゼリスさんにそのオーナーさん。ほら、ショウ君も」
相変わらずおどおどするショウを桜花がフォローする。
「あの、その……今日は、がんばって……」
そんなふたりを微笑ましく見ていたシュンに、いきなり伊吹が抱きついてきた。
「おめでとう、シュっちゃん。ぜっちゃんの初勝利だね」
「ば……馬鹿っ、引っ付くなよ。つーか痛い、イタタタタッ」
このっ、伊吹のヤツは力任せに。ていうかまたこのパターンか。
何を勘違いしたのかワカナは伊吹の肩で「ヤレーヤレー♪」とか応援してるし。
その光景におどおどしていたショウと桜花も笑い出した。
「頑張ってくれてありがとう、お兄ちゃん。その……カッコ良かったよ」
ゼリスが無言でふたりにグッと親指を立てる。伊吹に関節を取られ、痛みに堪えつつ、シュンも真似してグッと親指を立てた。
笑い溢れる三人と三人の神姫たちに囲まれる中で、ゲーム筐体のモニターを文字が走る。
Winner
SINKI:ZELIS
OWNER: ARIMA Syun
One One Win.
それは確かにシュンとゼリスのふたりが勝ち取った今日の軌跡だった。
*
かくして今日という日は過ぎ去り――。
帰りのモノレールに揺られながら、シュンは今日一日のことを振り返っていた。
「ふぁ~」
思わずあくびが出る。ただ神姫のパーツを買いに来ただけだというのに、えらく疲れる一日だった。
「こら、シュっちゃん。何あくびしてるのよ」
伊吹にそう言われるものの、これは仕方がない。あの規模の神姫センターを歩き回り、オマケに最後の神姫バトル。なんというか、肉体的というよりも精神的にドッとくるものがあった。
「このくらいで疲れるなんて、やっぱりシュっちゃんはまだまだね~」
そう言いながら、伊吹は彼女の肩の上で寝息を立てているワカナを撫でつつ満面の笑み。
このふたり、一日見ていて思ったが本当に仲のいいオーナーと神姫だ。
オーナーと神姫。そこでシュンは今日出会った他のオーナーと神姫たちを思い浮かべる。
ショウ君と桜花、そして番長治とベガ。
戦い終えて、ゼリスが対戦相手に送った言葉が印象に残っている。
「ひとつ言い忘れていたことがありました」
ゼリスに声を掛けられ、ダウンから復帰したベガは問い返した。
「なんだ、まだ何か言いたいことがあるのか」
「あなたの攻撃を避けられた、もうひとつの理由です」
それを聞いて、歩き去ろうとしていたベガは立ち止まる。
「最後の攻撃。あのように平静さを失っては、当たる攻撃も当たるはずがありません。あなたの心に迷いがなければ、結果は逆だったでしょう。あなたのオーナーへの信頼は、私の安い挑発で揺らいでしまう程度のものだったのですか?」
それを聞いたベガは「チッ」と舌打ちし、再び歩き出す。
「なるほど。私が負けたのはお前にではなく、自分自身だということか。ふんっ……確かに本来なら私とサーがお前ごとき小娘に負けるはずはないか」
「リベンジマッチならいつでもお受けいたします。その時はまた、ここ――神姫センターで会いましょう」
その言葉にベガは今度は振り返らず、番長治と共に去っていった。
ゼリスに負けた彼、彼女らがこれからどうするか――これを機に初心者狩りなんてことはやめるのか、また他の場所で同じことを繰り返すのか、シュンには分からなかった。
だたひとつ言えること。それはあのふたりにもまたオーナーと神姫の強い絆で結ばれていたということじゃないだろうか。ただ、それがきっと良くない方に向かってしまったというだけで。
車窓から揺れる街並みを見て想う。
あるいは、シュンとゼリスも彼らのようになっていくんだろうか?
「イテッ」
考え込んむシュンの額に痛み。気がつけばゼリスがデコピンポーズでシュンを覗き込んでいた。
「シュン、ボーっとしてないで、そろそろ乗り換えですよ」
そう言いながらまたシュンの頭にどっかりと座る。すっかりこれが彼女的定位置となってしまった。
「分かってるよ。ほら、そこでジャレついてるオーナーと神姫、お前らも行くぞ」
寝ぼけ眼のワカナを愛でる伊吹を急かしつつ、シュンは想った。
神姫とオーナーといっても、実にいろいろな組み合わせがいる。いや、ひょっとしたら神姫とオーナーの数だけその関係のあり方があるものなんじゃないか。
だとしたら――。
ドアのガラスに映った自分たちの姿を見る。
――僕とゼリスも、僕たちの関係ってヤツを見つければいいってことかな。
まあ、それに。どうせ、こんな変なヤツのオーナーなんてシュン以外になりたがるヤツはいないだろうし。だからさ。
モノレールが駅に到着し、ドアが開く。
歩き出しながらシュンは頭の上に居座る、彼の神姫に声を掛けた。
「行くぞ、ゼリス」
お前のすぐ隣には、僕がいるから――。
……To be continued Next Phase.
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SHINKI/NEAR TO YOU
Phase01-7
筐体を囲むギャラリーの歓声が木霊する。
シートの向こうでは番長治が嘲け笑う。
隣に立つ伊吹が叫び、ワカナが両目を覆う。
その横で戦いを見守っていた桜花とショウが目を背けた。
フィールドでは壮絶な笑みを浮かべるベガの拳が、ゼリスの眼前へと迫る。
その最中――。
シュンはスッと自分に向けられる視線に気がついた。
その目、上目使いに覗き込む、そのエメラルドの瞳に一瞬吸い込まれそうになり……彼の脳裏にある言葉が響く。
――緊張する必要など皆無です。安心して私の戦いを見ているだけで結構。
唐突にシュンは理解した。言葉の先に隠された本当の言葉を。
――あなたが見ていてくれるから、私は戦えるのです。
全く。こいつと来たら、本当に普段と変わらない。いつでも、どんな時だって、ただひたすら真っ直ぐだ。
こいつといるといつもトラブルに巻き込まれる? 上等だ。そんな運命なら一緒にありったけの力でぶつかってやるまでだ。
――私はあなたの為に戦います。あなたも私の為に戦ってください。
強い光を灯したエメラルドの瞳を、シュンはただ強く見つめ返した。
言葉はいらない。
行け。
――ゼリス。
ふたりの瞳が交錯したのは一瞬だった。
次の一瞬。その瞳に襲い掛かる拳を捉えたゼリスは、地を踏みしめ前へと跳んだ。
眼前には迫る豪拳。それが内包するのは圧倒的破壊力。
だがその脅威を前に、ゼリスは躊躇せずに踏み込む。
地を這うかというような低いフォーム。
ただひたすら、前へ前へ。
ゼリスとベガ、ふたりの神姫が交差する。
怒れるベガの拳、暴風雨の如きそれをゼリスはさらに前へ突き進むことで、勢力圏内に無理やり体を捻じ込ませる。
吹いたのは暴風でなく、一陣の軽やかな旋風。
ベガの拳が捉えたのは、その旋風に遅れてなびいた数本の蒼い髪。
翻るポニーテールにつられ、ベガが見つめる先には、輝くエメラルドの瞳。
身を捻らせベガの懐へと飛び込むことに成功したゼリスは、そのまま回転を乗せて、右手に構えた対物ライフルのバレルを。
振るった。
後頭部に走る鈍い衝撃。
激痛の後の空白の時間の中、ベガの視線の先には驚愕に歪む番長治の顔。
次の一瞬ベガは、自身の放った必勝の突進力と遠心力から繰り出されたバレルの打撃力によってフィールドの端へと吹っ飛ばされた。
凄まじい音と衝撃と共に、ベガの体はフィールドの界壁へとぶち当たる。
その余韻冷めぬ中、ゼリスは跳躍と共にブルパップ式の弾装を流れるように交換。
フィールド端に倒れるベガの上に乗り降りると、その眼前に銃口を突きつけた。
「あなたの必勝のはずの一撃。それが何故避けられたのか分かりますか?」
自身を仰ぎ見るベガに、ゼリスは淡々と語る。
「あなたは始めに私の銃弾をナイフで弾きましたね。その時点であなたの腕は目に見えぬほどの微かなダメージを受けていたのですよ。それが必勝の一撃を微かに鈍らせた」
そこでゼリスは筐体の横を向く。その先では息を呑んで見守る桜花とショウのふたり。
「最もそれも戦う前からあなたにダメージがあったからこそ。あなたもあなたのオーナーも気付いてなかったようですが、無意味な連戦によって、あなたのパーツには元々かなりの負荷が掛かっていたようでしたから」
再びベガを見下ろしながら、ゼリスはあくまでも冷静に述べる。
「あなたは、あなたとそのオーナーが行った初心者を虐げる行為、それによって、この敗北を喫することになったのです」
ゼリスの踏みしめる脚がベガの動きを封じる。ベガを大地に拘束するそれは、桜花から借り受けた天使型の脚部パーツ。「くっ」と顔を歪ませるベガを一瞥、躊躇わず引き金を引こうとしたゼリスは、自身を呼び止める声に顔を上げた。
「ゼリス、もうやめろよ……」
フィールドに立つゼリスを見つめるシュンの瞳。それに気づいたゼリスは「ふう」とため息ひとつ、手にした対物ライフルをクルリと回転させると、その銃底を振り下ろした。
ごちんっ
見た目より間の抜けた音が響いた後、ゲーム筐体からはゼリスの勝利を告げるメッセージとファンファーレが流れ出した。
戦闘終了後、沸き立つ歓声のなか肩を落として歩き去っていく番長治とベガのふたりを見送りながら、シュンはゼリスが無事だったことにホッと胸を撫で下ろした。
「どうでしたか、シュン。私の華麗なる戦いは」
そう言って小さな胸を張るゼリスに呆れながら、シュンはずっと横で戦いを見守っていた男の子とその神姫――ショウと桜花に笑い掛けた。
「あ……あの、え~と」
「ありがとうございます。ゼリスさんにそのオーナーさん。ほら、ショウ君も」
相変わらずおどおどするショウを桜花がフォローする。
「あの、その……今日は、がんばって……」
そんなふたりを微笑ましく見ていたシュンに、いきなり伊吹が抱きついてきた。
「おめでとう、シュっちゃん。ぜっちゃんの初勝利だね」
「ば……馬鹿っ、引っ付くなよ。つーか痛い、イタタタタッ」
このっ、伊吹のヤツは力任せに。ていうかまたこのパターンか。
何を勘違いしたのかワカナは伊吹の肩で「ヤレーヤレー♪」とか応援してるし。
その光景におどおどしていたショウと桜花も笑い出した。
「頑張ってくれてありがとう、お兄ちゃん。その……カッコ良かったよ」
ゼリスが無言でふたりにグッと親指を立てる。伊吹に関節を取られ、痛みに堪えつつ、シュンも真似してグッと親指を立てた。
笑い溢れる三人と三人の神姫たちに囲まれる中で、ゲーム筐体のモニターを文字が走る。
Winner
SINKI:ZELIS
OWNER: ARIMA Syun
One One Win.
それは確かにシュンとゼリスのふたりが勝ち取った今日の軌跡だった。
*
かくして今日という日は過ぎ去り――。
帰りのモノレールに揺られながら、シュンは今日一日のことを振り返っていた。
「ふぁ~」
思わずあくびが出る。ただ神姫のパーツを買いに来ただけだというのに、えらく疲れる一日だった。
「こら、シュっちゃん。何あくびしてるのよ」
伊吹にそう言われるものの、これは仕方がない。あの規模の神姫センターを歩き回り、オマケに最後の神姫バトル。なんというか、肉体的というよりも精神的にドッとくるものがあった。
「このくらいで疲れるなんて、やっぱりシュっちゃんはまだまだね~」
そう言いながら、伊吹は彼女の肩の上で寝息を立てているワカナを撫でつつ満面の笑み。
このふたり、一日見ていて思ったが本当に仲のいいオーナーと神姫だ。
オーナーと神姫。そこでシュンは今日出会った他のオーナーと神姫たちを思い浮かべる。
ショウ君と桜花、そして番長治とベガ。
戦い終えて、ゼリスが対戦相手に送った言葉が印象に残っている。
「ひとつ言い忘れていたことがありました」
ゼリスに声を掛けられ、ダウンから復帰したベガは問い返した。
「なんだ、まだ何か言いたいことがあるのか」
「あなたの攻撃を避けられた、もうひとつの理由です」
それを聞いて、歩き去ろうとしていたベガは立ち止まる。
「最後の攻撃。あのように平静さを失っては、当たる攻撃も当たるはずがありません。あなたの心に迷いがなければ、結果は逆だったでしょう。あなたのオーナーへの信頼は、私の安い挑発で揺らいでしまう程度のものだったのですか?」
それを聞いたベガは「チッ」と舌打ちし、再び歩き出す。
「なるほど。私が負けたのはお前にではなく、自分自身だということか。ふんっ……確かに本来なら私とサーがお前ごとき小娘に負けるはずはないか」
「リベンジマッチならいつでもお受けいたします。その時はまた、ここ――神姫センターで会いましょう」
その言葉にベガは今度は振り返らず、番長治と共に去っていった。
ゼリスに負けた彼、彼女らがこれからどうするか――これを機に初心者狩りなんてことはやめるのか、また他の場所で同じことを繰り返すのか、シュンには分からなかった。
だたひとつ言えること。それはあのふたりにもまたオーナーと神姫の強い絆で結ばれていたということじゃないだろうか。ただ、それがきっと良くない方に向かってしまったというだけで。
車窓から揺れる街並みを見て想う。
あるいは、シュンとゼリスも彼らのようになっていくんだろうか?
「イテッ」
考え込んむシュンの額に痛み。気がつけばゼリスがデコピンポーズでシュンを覗き込んでいた。
「シュン、ボーっとしてないで、そろそろ乗り換えですよ」
そう言いながらまたシュンの頭にどっかりと座る。すっかりこれが彼女的定位置となってしまった。
「分かってるよ。ほら、そこでジャレついてるオーナーと神姫、お前らも行くぞ」
寝ぼけ眼のワカナを愛でる伊吹を急かしつつ、シュンは想った。
神姫とオーナーといっても、実にいろいろな組み合わせがいる。いや、ひょっとしたら神姫とオーナーの数だけその関係のあり方があるものなんじゃないか。
だとしたら――。
ドアのガラスに映った自分たちの姿を見る。
――僕とゼリスも、僕たちの関係ってヤツを見つければいいってことかな。
まあ、それに。どうせ、こんな変なヤツのオーナーなんてシュン以外になりたがるヤツはいないだろうし。だからさ。
モノレールが駅に到着し、ドアが開く。
歩き出しながらシュンは頭の上に居座る、彼の神姫に声を掛けた。
「行くぞ、ゼリス」
お前のすぐ隣には、僕がいるから――。
……To be continued Next Phase.
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