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「第九幕 「Berry」」(2007/03/26 (月) 18:11:57) の最新版変更点
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唐突だが、私「ヌル」は非常に複雑な主従関係の最下層に居る神姫である
原因は明白、私が、「マスターの確定している神姫」の所有している神姫だからである
通常、神姫はマスター登録を行なった「人間」をマスターとして認識するようになっていて、また、神姫が神姫を所有しようとするというのは一般的ではない
だが、私のケースはその両方の例外に該当し、私の電脳にマスターとして登録されているのは、間に仮マスター等によるワンクッションも無しでダイレクトに「ニビル」であり、また、ニビル姉さまは「神姫を所有したい」と望んだ神姫であったのだ
これが故障なのか、それとも表面化していないだけで結構ある事なのかは不明だが、兎に角これによって、私には沢山のややこしい約束事が課されたのも事実だ
例えば、私がマスターを「姉さま」と呼ぶのはマスターの呼び名登録によるものではなく、私にとってその方が便利だからという理由で後天的に決定したものである
つまり、ニビル姉さまのマスターである「西 梓」の事を、「梓姉さま」。ニビル姉さまの師匠にして、姉さま曰く「本来ならばクイントスより強い槙縞ランカー」たる「キャロライン」様の事を「キャロ姉さま」と呼べる事が、私にとって非常に楽だった訳だ
もうひとつ、一人のマスターが複数の神姫を所有する時、所有されている神姫同士が、起動した順に「姉妹」の様に呼び合う事があると聞いたのもある
・・・「故障」と判断されたりするのが怖い為、余りおおっぴらにニビル姉さまの事を「マスター」と呼びたくないのだ
回収されたり研究機関に入れられたりしたら、私は私の「マスター」と会えなくなってしまう
数分離れているだけでも辛いのに、そんな状況は想像しただけでも泣きそうだった
要するに何が言いたいかと言うと・・・何が言いたいのだろう・・・惚気ているだけなのかもしれない
兎に角離れている事が辛過ぎる私は、一回戦後発組である事を良い事に、先発組である姉さまのバトルの様子を、変装して来た「クイントス」様と一緒に見ていた
*第九幕 「Berry」
風が吹きすさぶ
並んだ木造家屋と乾いた土地、立ち並ぶ仙人掌と地面を転がる例のアレ(注1)は、まさに西部劇の舞台そのものだ
ぎぃ・・・ぎぃ・・・と風に吹かれて軋むパブの木戸の前に私ーニビルーは佇み、相手の神姫が来るのを待っている
因みにこういう事態を想定していなかったので、残念ながら私の装備はいつも通り・・・即ちバッフェバニーの靴、肩、リスト、腿当てに、ごつい三本のベルトで吊るしたヒートサーベルとナイフ、ハンドガン。そして防弾繊維のマント・・・である
・・・ウェスタンハットもウェスタンブーツも持っているだけに、これは非常に悔しい
(このマントを羽織ったままでいれば・・・まぁなんとか「らしく」は見えない事も無いか)
等と考えている内に、相手のインを確認。真正面、「フォートブラッグ」だ
ちょっとぽけーっとした表情で周囲を見回している・・・いかん、むらむら来た。いかんいかん
「ハイ!こっちよ。マシンが準備に手間取ってるみたいね?」
「・・・」
無言でこちらに目を向ける。まだ完全に入りきっていないらしい
「折角こんな出来過ぎた舞台なんだから、バトル開始の合図と同時にクイックドロウで遊ばない?」
聴覚はまともに働いているようだ。反応はした
「準備しといてね。貴女が乗ってこようが来なかろうが、少なくとも私はそのつもりでやるから」
言い捨てて立ち上がる。両手をだらりと下げて、抜き射ちの準備を
相手が完全に入る。フォートブラッグとしての優位を狙って動くなら距離を取るだろうが・・・
相変らずぽやっとした表情のまま、いきなり主力武装をパージ、FB-RP3bを素足と交換して、右脚に拳銃をマウントする
嬉しい事やってくれるじゃないの・・・
『バトル開始迄、あと5,4,3・・・』
無機質なアナウンス、乾いた風が吹き抜ける。演出なのか何なのか、一斉にそこかしこの家屋の扉やカーテンが、バタバタと音を立てて閉じられてゆく
『バトル、スタート』
抜き放つ速度は・・・互角
ほぼ同時に、アルファ・ピストルと私の「スーパーブラックホーク」が火を噴く
着弾する両者・・・ホントの西部劇だったら相打ちだなこりゃ
だが、私は防弾マントで無事、相手は・・・何だ?理由は不明だが、こちらのマグナム弾を無力化したらしい
って待て
このホーダーアームズ製の神姫用「スーパーブラックホーク.44ゴールドエングレービング仕様」(注2)は、今この瞬間私が持っている中で最強の攻撃力の武器なんだが!?
しかも、パージした武装には目もくれず、拳銃を乱射しながら突っ込んで来る
まずい・・・取敢えずこういう時は、身を隠すんだ
大きく跳躍、付近のバーに飛び込み、カウンターの裏に隠れる。ドアがばかすか穴だらけになる
さて・・・と
理由は不明なれど、明らかに着弾していたマグナム弾が無効化されていた。当然私は装甲面等ではなく相手の指を狙い、かわせるコースでも無かった事は間違いない
だが、数瞬前に彼女は確かに反撃をぶっ放し、今また・・・
何で追撃が来ない!?
そう思った瞬間、鈍い爆発音が轟き、壁もろともカウンターが破壊される・・・!こっ・・・これが噂のFB256の威力な訳ね
やむを得ず飛び出す私。あれをぶっ放してきたという事は、少なくとも即座に走れるような状態ではない筈。索敵、索敵・・・居た!反対側の建物の屋根の上!
二射目・・・狙いが甘い。彼我の距離が近過ぎて精密な照準をする暇が無いか
走る・・・華墨の様に速くは無いが、この際贅沢は言っていられない・・・何故こんな時に迄華墨の事を考えてるの?私は
三射目、ギリギリだ。当たらなかったのは半分運
慌てて離れようとする相手
ははぁ・・・判ってきたぞ
本当に私のマグナムが効いていなかったのなら、機動力が阻害される事が判っている装備で、こんな狭い所で砲撃等して来ない
無敵装甲にモノを言わせて、手持ちのライフルか何かで掃射すれば良い
だが、私が隠れた時にすぐに飛び込んで来ずに、わざわざ一回パージした装備を付け直し、砲撃して来た
つまり
「少なくともあの一回は効かなかったけど、至近距離で射ち合いするのは貴女にとってリスキーなのね?」
しかもそれは機動力を殺すリスクより大きいのだ
という事は、あの無敵装甲は回数制か、でなければ恐ろしくエネルギーを喰うかのどちらかでどちらにせよ多用出来ない種類の代物なのだろう
なら多分何とかなる・・・何せこっちの輪胴には、まだ弾が「4発も」残っている
四射目。惜しい、もう私は貴女の後ろに居るの
「!!」
直立し、真後ろから見下ろす形で銃口を突きつける
「Eichen wie?」
どかん!と爆音後頭部に確実にいいのが入った。よろめく「フォートブラッグ」
「Wollen Sie den zweiten Schuß?」
汚い直訳文と共に二発目。三脚状態でこける事は無かったが、バックパックの再パージを試みているようだ
「Alles kommt in threes」
逃がすものか。パージした所を後ろから撃つ・・・まだやる気か!?銃を抜くフォートブラッグ
「Sterben Sie früh!」
同時に発砲。着弾寸前に何故かボディの色が一気に変色するフォートブラッグ
鋭い音と共に私の頬が裂ける。フォートブラッグの顔面には・・・大穴、何故か顔色も悪い
あー・・・何か昔のアニメで「色が付いてる間は実弾に対して無敵」とかいう厨バリアがあったようななかったような・・・
後になって考えてみれば、狙いも甘かったし回避も下手糞だったしで、大した相手じゃなかったんだけど・・・
遊び過ぎた末の辛勝じゃぁ格好つかないな・・・
案の定、アクセスポッドから出るなり、泣きそうな顔のヌルに抱きつかれた・・・相当心配させてしまった様だ
まだまだ私は師匠の域には遠いな
「・・・ごめんごめん。調子に乗って遊び過ぎただけよ。次は普通にやるから。それより貴女一回戦まだでしょ?勝った私の事より、自分の事を考えなさい」
「あぁ!見てて、姉さま。私も必ず、一回戦突破してみせるから!準決勝で会おう!!」
爽やかに去っていくヌル、反対に、私の傍によって来るクイントス
「まずは一回戦突破おめでとうニビル。だが、どんな闘いでも油断は禁物だぞ?自信過剰は足元を掬うのだからな」
「はいはい判ってるわよ」
生返事
「・・・なら、良いのだがな」
まだ言いたい事はありそうだったが、適度な所でやめる辺り大人だ
「それよりもクイントス」
「どうした?」
「そのスーツとグラサン、全然似合って無いわよ?」
最後に思い切りずっこけるクイントスだった
[[剣は紅い花の誇り]] [[前へ>第捌幕 「FOLLOWER」]] [[次へ>第玖幕 「GARDEN」]]
注1.「タンブルウィー ド」の事を言いたいのだと思われる
注2.マニアほど武器のスペックを語りたがったり、訳の判らないぁゃιぃカスタムを施したりするものである
唐突だが、私「ヌル」は非常に複雑な主従関係の最下層に居る神姫である
原因は明白、私が、「マスターの確定している神姫」の所有している神姫だからである
通常、神姫はマスター登録を行なった「人間」をマスターとして認識するようになっていて、また、神姫が神姫を所有しようとするというのは一般的ではない
だが、私のケースはその両方の例外に該当し、私の電脳にマスターとして登録されているのは、間に仮マスター等によるワンクッションも無しでダイレクトに「ニビル」であり、また、ニビル姉さまは「神姫を所有したい」と望んだ神姫であったのだ
これが故障なのか、それとも表面化していないだけで結構ある事なのかは不明だが、兎に角これによって、私には沢山のややこしい約束事が課されたのも事実だ
例えば、私がマスターを「姉さま」と呼ぶのはマスターの呼び名登録によるものではなく、私にとってその方が便利だからという理由で後天的に決定したものである
つまり、ニビル姉さまのマスターである「西 梓」の事を、「梓姉さま」。ニビル姉さまの師匠にして、姉さま曰く「本来ならばクイントスより強い槙縞ランカー」たる「キャロライン」様の事を「キャロ姉さま」と呼べる事が、私にとって非常に楽だった訳だ
もうひとつ、一人のマスターが複数の神姫を所有する時、所有されている神姫同士が、起動した順に「姉妹」の様に呼び合う事があると聞いたのもある
・・・「故障」と判断されたりするのが怖い為、余りおおっぴらにニビル姉さまの事を「マスター」と呼びたくないのだ
回収されたり研究機関に入れられたりしたら、私は私の「マスター」と会えなくなってしまう
数分離れているだけでも辛いのに、そんな状況は想像しただけでも泣きそうだった
要するに何が言いたいかと言うと・・・何が言いたいのだろう・・・惚気ているだけなのかもしれない
兎に角離れている事が辛過ぎる私は、一回戦後発組である事を良い事に、先発組である姉さまのバトルの様子を、変装して来た「クイントス」様と一緒に見ていた
*第九幕 「Berry」
風が吹きすさぶ
並んだ木造家屋と乾いた土地、立ち並ぶ仙人掌と地面を転がる例のアレ(注1)は、まさに西部劇の舞台そのものだ
ぎぃ・・・ぎぃ・・・と風に吹かれて軋むパブの木戸の前に私ーニビルーは佇み、相手の神姫が来るのを待っている
因みにこういう事態を想定していなかったので、残念ながら私の装備はいつも通り・・・即ちバッフェバニーの靴、肩、リスト、腿当てに、ごつい三本のベルトで吊るしたヒートサーベルとナイフ、ハンドガン。そして防弾繊維のマント・・・である
・・・ウェスタンハットもウェスタンブーツも持っているだけに、これは非常に悔しい
(このマントを羽織ったままでいれば・・・まぁなんとか「らしく」は見えない事も無いか)
等と考えている内に、相手のインを確認。真正面、「フォートブラッグ」だ
ちょっとぽけーっとした表情で周囲を見回している・・・いかん、むらむら来た。いかんいかん
「ハイ!こっちよ。マシンが準備に手間取ってるみたいね?」
「・・・」
無言でこちらに目を向ける。まだ完全に入りきっていないらしい
「折角こんな出来過ぎた舞台なんだから、バトル開始の合図と同時にクイックドロウで遊ばない?」
聴覚はまともに働いているようだ。反応はした
「準備しといてね。貴女が乗ってこようが来なかろうが、少なくとも私はそのつもりでやるから」
言い捨てて立ち上がる。両手をだらりと下げて、抜き射ちの準備を
相手が完全に入る。フォートブラッグとしての優位を狙って動くなら距離を取るだろうが・・・
相変らずぽやっとした表情のまま、いきなり主力武装をパージ、FB-RP3bを素足と交換して、右脚に拳銃をマウントする
嬉しい事やってくれるじゃないの・・・
『バトル開始迄、あと5,4,3・・・』
無機質なアナウンス、乾いた風が吹き抜ける。演出なのか何なのか、一斉にそこかしこの家屋の扉やカーテンが、バタバタと音を立てて閉じられてゆく
『バトル、スタート』
抜き放つ速度は・・・互角
ほぼ同時に、アルファ・ピストルと私の「スーパーブラックホーク」が火を噴く
着弾する両者・・・ホントの西部劇だったら相打ちだなこりゃ
だが、私は防弾マントで無事、相手は・・・何だ?理由は不明だが、こちらのマグナム弾を無力化したらしい
って待て
このホーダーアームズ製の神姫用「スーパーブラックホーク.44ゴールドエングレービング仕様」(注2)は、今この瞬間私が持っている中で最強の攻撃力の武器なんだが!?
しかも、パージした武装には目もくれず、拳銃を乱射しながら突っ込んで来る
まずい・・・取敢えずこういう時は、身を隠すんだ
大きく跳躍、付近のバーに飛び込み、カウンターの裏に隠れる。ドアがばかすか穴だらけになる
さて・・・と
理由は不明なれど、明らかに着弾していたマグナム弾が無効化されていた。当然私は装甲面等ではなく相手の指を狙い、かわせるコースでも無かった事は間違いない
だが、数瞬前に彼女は確かに反撃をぶっ放し、今また・・・
何で追撃が来ない!?
そう思った瞬間、鈍い爆発音が轟き、壁もろともカウンターが破壊される・・・!こっ・・・これが噂のFB256の威力な訳ね
やむを得ず飛び出す私。あれをぶっ放してきたという事は、少なくとも即座に走れるような状態ではない筈。索敵、索敵・・・居た!反対側の建物の屋根の上!
二射目・・・狙いが甘い。彼我の距離が近過ぎて精密な照準をする暇が無いか
走る・・・華墨の様に速くは無いが、この際贅沢は言っていられない・・・何故こんな時に迄華墨の事を考えてるの?私は
三射目、ギリギリだ。当たらなかったのは半分運
慌てて離れようとする相手
ははぁ・・・判ってきたぞ
本当に私のマグナムが効いていなかったのなら、機動力が阻害される事が判っている装備で、こんな狭い所で砲撃等して来ない
無敵装甲にモノを言わせて、手持ちのライフルか何かで掃射すれば良い
だが、私が隠れた時にすぐに飛び込んで来ずに、わざわざ一回パージした装備を付け直し、砲撃して来た
つまり
「少なくともあの一回は効かなかったけど、至近距離で射ち合いするのは貴女にとってリスキーなのね?」
しかもそれは機動力を殺すリスクより大きいのだ
という事は、あの無敵装甲は回数制か、でなければ恐ろしくエネルギーを喰うかのどちらかで、どちらにせよ多用出来ない種類の代物なのだろう
なら多分何とかなる・・・何せこっちの輪胴には、まだ弾が「4発も」残っている
四射目。惜しい、もう私は貴女の後ろに居るの
「!!」
直立し、真後ろから見下ろす形で銃口を突きつける
「Eichen wie?」
どかん!と爆音
後頭部に確実にいいのが入った。よろめく「フォートブラッグ」
「Wollen Sie den zweiten Schuß?」
汚い直訳文と共に二発目。三脚状態でこける事は無かったが、バックパックの再パージを試みているようだ
「Alles kommt in threes」
逃がすものか。パージした所を後ろから撃つ
銃を抜くフォートブラッグ・・・まだやる気なの!?
「Sterben Sie früh!」
同時に発砲。着弾寸前に何故かボディの色が一気に変色するフォートブラッグ
鋭い音と共に私の頬が裂ける。フォートブラッグの顔面には・・・大穴、何故か顔色も悪い
あー・・・何か昔のアニメで「色が付いてる間は実弾に対して無敵」とかいう厨バリアがあったようななかったような・・・
後になって考えてみれば、狙いも甘かったし回避も下手糞だったしで、大した相手じゃなかったんだけど・・・
遊び過ぎた末の辛勝じゃぁ格好つかないな・・・
案の定、アクセスポッドから出るなり、泣きそうな顔のヌルに抱きつかれた・・・相当心配させてしまった様だ
まだまだ私は師匠の域には遠いな
「・・・ごめんごめん。調子に乗って遊び過ぎただけよ。次は普通にやるから。それより貴女一回戦まだでしょ?勝った私の事より、自分の事を考えなさい」
「あぁ!見てて、姉さま。私も必ず、一回戦突破してみせるから!準決勝で会おう!!」
爽やかに去っていくヌル、反対に、私の傍によって来るクイントス
「まずは一回戦突破おめでとうニビル。だが、どんな闘いでも油断は禁物だぞ?自信過剰は足元を掬うのだからな」
「はいはい判ってるわよ」
生返事
「・・・なら、良いのだがな」
まだ言いたい事はありそうだったが、適度な所でやめる辺り大人だ
「それよりもクイントス」
「どうした?」
「そのスーツとグラサン、全然似合って無いわよ?」
最後に思い切りずっこけるクイントスだった
[[剣は紅い花の誇り]] [[前へ>第捌幕 「FOLLOWER」]] [[次へ>第玖幕 「GARDEN」]]
注1.「タンブルウィー ド」の事を言いたいのだと思われる
注2.マニアほど武器のスペックを語りたがったり、訳の判らないぁゃιぃカスタムを施したりするものである
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