「第八幕 「予感」」(2007/03/26 (月) 18:05:39) の最新版変更点
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真鍮色の薬莢が、けたたましい金属音と共に地面にこぼれてゆく
凄まじい速度の速射、正確な狙いは確かに、対処法を知らない者を瞬殺するに足る
だが、私に当てる事すら出来ないのでは駄目だ
それ以上のものが必要なのだ
機械の正確さだけでは私達神姫を倒す事は叶わないのだ
「ヌル!手を抜いているのなら容赦しないわよ?その調子では貴女は決して中位以上に上がる事等出来はしない!本気で来なさい」
我ながらびっくりする程冷酷な声音だ。一瞬泣きそうな顔になったヌルが見えた
一瞬銃撃がやむ、遮蔽物の陰から私の動きを伺う視線を感じる・・・甘い!隠れ場所を見つけるにはこうする
マントを放り投げる、案の定そこへ向かって殺到するヌル
反対側から飛び出し、背後からヌルの首にナイフの刃を宛がう
「私が銃を使っていれば既に貴女は二度死んでいるわ。判っているの?ヌル」
*第八幕 「予感」
「ヌルは使い物になりそうなのか?」
アクセスポッドから出て来た私を迎えたのは、あまり柔らかさの感じられない声だった
「企業機密・・・よ。今は同じ家に暮らしているとは言え、私達は貴女に挑む為に訓練しているのだから」
「違いないな。期待しているぞニビル?願わくばお前たちのどちらかと当たりたいものだ」
この神姫・・・「クイントス」はリップサービス等しない。彼女が闘いたいというからには、それは、少なくとも私の実力はそこそこ評価されているという事だ
だが、正直私は彼女の事が余り好きではなかった
常に堂々としていて、実際に強く、誠実で、剛毅
加えてこの間の全国区大会にも出場し、かなりの好成績を収めているセカンドランカーでもある
ここでいっそ優勝でもしていてくれたら、私の溜飲も少しは下がったのだろうが、彼女はまだ戦士として完成しては居ない
つまりまだまだ成長途上なのだ
・・・完璧過ぎる
彼女の帰還によって槙縞ランキングのチャンピオンカップ争奪戦は再開されるだろう
感動的な全国大会・・・ファーストランカー選出大会・・・の直後だ。多くの槙縞ランカーの神姫達が凄まじいテンションだろう
つまりこの「クイントス」は多くの神姫の心を注がれる対象でもあるわけだ
「姉さま」
ヌルが上がってくる嫌な表情をしている所をあまり見せたくは無い。私はヌルを引き摺って、とっとと部屋に帰ることにした
「・・・出来る事なら、もう少し仲良くしたいのだがな・・・」
「姉さまはクイントス様の事が嫌いなの?」
[[『ロマンティックバスタブ』>ちっちゃい物研・商品案内-4]]の泡風呂で二人きりになった途端に、ヌルが声を掛けてくる・・・相変わらず鼻が利くな
「嫌い・・・ではないわ。彼女の人柄も強さも、共に私は尊敬してる」
ぱしゃ・・・と湯船から手を出し虚空に泳がせる。石鹸水の膜を貼った指の隙間に、歪んだヌルの顔を見る・・・少し笑える
「嫌いじゃないならどうしてあんなにつれない態度を?確かに彼女は最高位のランカーで、私達の倒すべき目標ではあるけど、それは彼女を憎む事とは違うだろう?」
ばしゃ、と立ち上がるヌル。惜しい、乳房に泡が一杯ついてる
「興奮しないの、ヌル。可愛いおっぱいが丸見えよ?」
「え?あわわ!!」
真っ赤になりながら胸を隠し、慌てて湯船に沈み込むヌル。
「むう~。姉さまの意地悪」
口元まで湯船に漬けて、ぶくぶくとさらに泡を増やす・・・あぁもう可愛いッ!!
ばしゃ、と立ち上がる私。そのままヌルに抱き付く
「ちょ!姉さま!いきなりそんな・・・あっ!駄目・・・変な所触らないで!・・・ふわっ!?・・・くぅん」
ばしゃばしゃと激しく抵抗していたヌル・・・だが甘い。私はこの子の急所を知り尽くしている
じきに縮こまっていた体が弛緩し、私にされるがままに身を任せる
あぁヌル!私の可愛い神姫!!
エキサイトし始めた私だったが、なんとかヌルが復帰を見せる
「だあぁ~っ!もう!!誤魔化さないでよ姉さま!!」
気合いと共に、逆に私を押し倒す格好になるヌル。頬には紅潮が残っているが、私を覗き込む瞳は凛々しい理性を取り戻している
・・・このまま襲われるのも良いかも・・・とか少し思ってしまう
「姉さま?姉さま!?」
おっと、いけないいけない。ついあらぬ妄想に身を任せて遠い世界へ逝ってしまう所だった
「・・・で、何の話だったかしら?」
がくっと項垂れるヌル
「だから、姉さまはどうしてクイントス様の事がそんなに嫌いなのかって話だよ!誤魔化さないでよ」
「・・・」
「同じ家に住んでるんだし、別に無理して神姫同士憎み合うよりは仲良くした方が良いじゃないか!?」
「・・・じゃぁ逆に聞くけど、貴女はどうして『華墨』の事を嫌うの?明らかに最初に負けたから・・・ってだけの理由じゃぁ無いのでしょう?」
「・・・っ!」
そうだった
ヌルはあの紅緒、「華墨」の事を明らかに敵視していた
そもそも基本的には大人しい性質で、バトルをしたいと言いだしたのも私や「キャロ」姉さまが綺麗に銃を操るのを見て、真似がしたいと言い出した事が切欠で、別にバトルそのものは明らかにどうでもよさそうな様子だった
現に、「華墨」以外の神姫とバトルする時は、本来のおとなしい性質が出て、「華墨」よりも格下の神姫にすら敗れることがままある位なのだ
だが、「華墨」と闘った時のこの子は、まるで仇を付けねらうようなえげつなさ、鋭さを見せた
実際あの戦術・・・マシーンズに腕を明け渡して射撃に専念させ、自身は足技で相手を追い詰める・・・は相当精神的に参るのだ。正直心が余り強くないこの子では、なんらかの憎悪や怒りの下駄を履かなければ可能足り得ない芸当なのだ
そしてヌルは、私にその理由を話してはくれない
「・・・ね、話せないでしょう?それは理由が自分でも判らないのか、話せない様な理由なのかどっちかって事だわ」
押し倒された姿勢ではあったが、まぁそれなりの説得力はあっただろう
「私のそれも同じ様なものだと思わない?」
一応、私のそれは前者に値するだろう・・・なんとなく、気に入らないのだ、要するに
「私が・・・あいつの事が気に入らないのは・・・っ」
へぇ・・・話せるの?
「・・・姉さまが・・・アイツの事を妙に気にかけるからだ!・・・と思う・・・」
赤面し、顔を背けながら呟くヌル。最後の方は徐々に声が小さくなっている
・・・ドキッとした
それは、普段の私なら先刻そうした様に飛び付き、ヌルを逆に押し倒す所だったろう仕草だ
・・・が、何?何だって・・・?私が、華墨を、気に掛けている・・・?
無自覚だったなら笑い飛ばすだろう
だがこれ程衝撃を受けているという事は、ヌルの発言は的を射ていて、しかも私はその真実に気付かないふりをしていたと言うことになる
「・・・そ・・・う・・・それは・・・悪かったわね。新人だからつい、気になっていたのね・・・」
何とか余裕の笑みを作る
「・・・出ましょう、いつまでもお風呂でむぎゅむぎゅしている訳にはいかないし・・・」
それだけ何とか言い切ると、半ば逃げる様に、先に湯船から上がる私
「姉さま・・・?」
私は・・・華墨を・・・?
その晩、私は何か不快な夢を見た
「姉さま、朝ですよ~姉さま」
寝覚めが悪い。朝日が体を痛めつける様な錯覚
「うぅ~ん・・・後五分・・・」
「充電は完了してる。さぁ姉さま起きて」
クレイドルから私を無理矢理引き剥がそうとするヌル・・・そっちがその気なら
「じゃぁ起きるから、お目覚めのキスして・・・」
「な・・・っ!!」
音がしそうな程真赤になるヌル・・・愛い奴
「してくれないんなら私起きな~い・・・すやすや」
言いつつ、既にボディの機能チェックはほぼ終わりつつある私
「・・・いいさ、やっ・・・やってやる。やってやるぞ・・・!」
くふふ、無理しちゃって、本当に可愛いんだから。よし、いつまでもいぢめてあげるのも可哀想だし、ぱっと起きて奇襲、おでこにキスしてやろう
せーの
「姉さま・・・」
え?
唇に柔らかい感触が・・・重なった
「・・・誰にも・・・渡さない・・・私のマスター、姉さま・・・」
機能チェックは万全だった
だけど体温は下がらなかった
[[剣は紅い花の誇りTOP]] [[前へ>第漆幕 「READY STEADY GO」]] [[次へ>第捌幕 「FOLLOWER」]]
真鍮色の薬莢が、けたたましい金属音と共に地面にこぼれてゆく
凄まじい速度の速射、正確な狙いは確かに、対処法を知らない者を瞬殺するに足る
だが、私に当てる事すら出来ないのでは駄目だ
それ以上のものが必要なのだ
機械の正確さだけでは私達神姫を倒す事は叶わないのだ
「ヌル!手を抜いているのなら容赦しないわよ?その調子では貴女は決して中位以上に上がる事等出来はしない!本気で来なさい」
我ながらびっくりする程冷酷な声音だ。一瞬泣きそうな顔になったヌルが見えた
一瞬銃撃がやむ、遮蔽物の陰から私の動きを伺う視線を感じる・・・甘い!隠れ場所を見つけるにはこうする
マントを放り投げる、案の定そこへ向かって殺到するヌル
反対側から飛び出し、背後からヌルの首にナイフの刃を宛がう
「私が銃を使っていれば既に貴女は二度死んでいるわ。判っているの?ヌル」
*第八幕 「予感」
「ヌルは使い物になりそうなのか?」
アクセスポッドから出て来た私を迎えたのは、あまり柔らかさの感じられない声だった
「企業機密・・・よ。今は同じ家に暮らしているとは言え、私達は貴女に挑む為に訓練しているのだから」
「違いないな。期待しているぞニビル?願わくばお前たちのどちらかと当たりたいものだ」
この神姫・・・「クイントス」はリップサービス等しない。彼女が闘いたいというからには、それは、少なくとも私の実力はそこそこ評価されているという事だ
だが、正直私は彼女の事が余り好きではなかった
常に堂々としていて、実際に強く、誠実で、剛毅
加えてこの間の全国区大会にも出場し、かなりの好成績を収めているセカンドランカーでもある
ここでいっそ優勝でもしていてくれたら、私の溜飲も少しは下がったのだろうが、彼女はまだ戦士として完成しては居ない
つまりまだまだ成長途上なのだ
・・・完璧過ぎる
彼女の帰還によって槙縞ランキングのチャンピオンカップ争奪戦は再開されるだろう
感動的な全国大会・・・ファーストランカー選出大会・・・の直後だ。多くの槙縞ランカーの神姫達が凄まじいテンションだろう
つまりこの「クイントス」は多くの神姫の心を注がれる対象でもあるわけだ
「姉さま」
ヌルが上がってくる嫌な表情をしている所をあまり見せたくは無い。私はヌルを引き摺って、とっとと部屋に帰ることにした
「・・・出来る事なら、もう少し仲良くしたいのだがな・・・」
「姉さまはクイントス様の事が嫌いなの?」
[[『ロマンティックバスタブ』>ちっちゃい物研・商品案内-4]]の泡風呂で二人きりになった途端に、ヌルが声を掛けてくる・・・相変わらず鼻が利くな
「嫌い・・・ではないわ。彼女の人柄も強さも、共に私は尊敬してる」
ぱしゃ・・・と湯船から手を出し虚空に泳がせる。石鹸水の膜を貼った指の隙間に、歪んだヌルの顔を見る・・・少し笑える
「嫌いじゃないならどうしてあんなにつれない態度を?確かに彼女は最高位のランカーで、私達の倒すべき目標ではあるけど、それは彼女を憎む事とは違うだろう?」
ばしゃ、と立ち上がるヌル。惜しい、乳房に泡が一杯ついてる
「興奮しないの、ヌル。可愛いおっぱいが丸見えよ?」
「え?あわわ!!」
真っ赤になりながら胸を隠し、慌てて湯船に沈み込むヌル。
「むう~。姉さまの意地悪」
口元まで湯船に漬けて、ぶくぶくとさらに泡を増やす・・・あぁもう可愛いッ!!
ばしゃ、と立ち上がる私。そのままヌルに抱き付く
「ちょ!姉さま!いきなりそんな・・・あっ!駄目・・・変な所触らないで!・・・ふわっ!?・・・くぅん」
ばしゃばしゃと激しく抵抗していたヌル・・・だが甘い。私はこの子の急所を知り尽くしている
じきに縮こまっていた体が弛緩し、私にされるがままに身を任せる
あぁヌル!私の可愛い神姫!!
エキサイトし始めた私だったが、なんとかヌルが復帰を見せる
「だあぁ~っ!もう!!誤魔化さないでよ姉さま!!」
気合いと共に、逆に私を押し倒す格好になるヌル。頬には紅潮が残っているが、私を覗き込む瞳は凛々しい理性を取り戻している
・・・このまま襲われるのも良いかも・・・とか少し思ってしまう
「姉さま?姉さま!?」
おっと、いけないいけない。ついあらぬ妄想に身を任せて遠い世界へ逝ってしまう所だった
「・・・で、何の話だったかしら?」
がくっと項垂れるヌル
「だから、姉さまはどうしてクイントス様の事がそんなに嫌いなのかって話だよ!誤魔化さないでよ」
「・・・」
「同じ家に住んでるんだし、別に無理して神姫同士憎み合うよりは仲良くした方が良いじゃないか!?」
「・・・じゃぁ逆に聞くけど、貴女はどうして『華墨』の事を嫌うの?明らかに最初に負けたから・・・ってだけの理由じゃぁ無いのでしょう?」
「・・・っ!」
そうだった
ヌルはあの紅緒、「華墨」の事を明らかに敵視していた
そもそも基本的には大人しい性質で、バトルをしたいと言いだしたのも私や「キャロ」姉さまが綺麗に銃を操るのを見て、真似がしたいと言い出した事が切欠で、別にバトルそのものは明らかにどうでもよさそうな様子だった
現に、「華墨」以外の神姫とバトルする時は、本来のおとなしい性質が出て、「華墨」よりも格下の神姫にすら敗れることがままある位なのだ
だが、「華墨」と闘った時のこの子は、まるで仇を付けねらうようなえげつなさ、鋭さを見せた
実際あの戦術・・・マシーンズに腕を明け渡して射撃に専念させ、自身は足技で相手を追い詰める・・・は相当精神的に参るのだ。正直心が余り強くないこの子では、なんらかの憎悪や怒りの下駄を履かなければ可能足り得ない芸当なのだ
そしてヌルは、私にその理由を話してはくれない
「・・・ね、話せないでしょう?それは理由が自分でも判らないのか、話せない様な理由なのかどっちかって事だわ」
押し倒された姿勢ではあったが、まぁそれなりの説得力はあっただろう
「私のそれも同じ様なものだと思わない?」
一応、私のそれは前者に値するだろう・・・なんとなく、気に入らないのだ、要するに
「私が・・・あいつの事が気に入らないのは・・・っ」
へぇ・・・話せるの?
「・・・姉さまが・・・アイツの事を妙に気にかけるからだ!・・・と思う・・・」
赤面し、顔を背けながら呟くヌル。最後の方は徐々に声が小さくなっている
・・・ドキッとした
それは、普段の私なら先刻そうした様に飛び付き、ヌルを逆に押し倒す所だったろう仕草だ
・・・が、何?何だって・・・?私が、華墨を、気に掛けている・・・?
無自覚だったなら笑い飛ばすだろう
だがこれ程衝撃を受けているという事は、ヌルの発言は的を射ていて、しかも私はその真実に気付かないふりをしていたと言うことになる
「・・・そ・・・う・・・それは・・・悪かったわね。新人だからつい、気になっていたのね・・・」
何とか余裕の笑みを作る
「・・・出ましょう、いつまでもお風呂でむぎゅむぎゅしている訳にはいかないし・・・」
それだけ何とか言い切ると、半ば逃げる様に、先に湯船から上がる私
「姉さま・・・?」
私は・・・華墨を・・・?
その晩、私は何か不快な夢を見た
「姉さま、朝ですよ~姉さま」
寝覚めが悪い。朝日が体を痛めつける様な錯覚
「うぅ~ん・・・後五分・・・」
「充電は完了してる。さぁ姉さま起きて」
クレイドルから私を無理矢理引き剥がそうとするヌル・・・そっちがその気なら
「じゃぁ起きるから、お目覚めのキスして・・・」
「な・・・っ!!」
音がしそうな程真赤になるヌル・・・愛い奴
「してくれないんなら私起きな~い・・・すやすや」
言いつつ、既にボディの機能チェックはほぼ終わりつつある私
「・・・いいさ、やっ・・・やってやる。やってやるぞ・・・!」
くふふ、無理しちゃって、本当に可愛いんだから。よし、いつまでもいぢめてあげるのも可哀想だし、ぱっと起きて奇襲、おでこにキスしてやろう
せーの
「姉さま・・・」
え?
唇に柔らかい感触が・・・重なった
「・・・誰にも・・・渡さない・・・私のマスター、姉さま・・・」
機能チェックは万全だった
だけど体温は下がらなかった
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