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「その名はシュートレイ 後編」(2007/02/25 (日) 09:51:28) の最新版変更点
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*その名はシュートレイ 後編
ついに決勝戦開始の時間になった。シュートレイとヨツンへイムはリングフィールドの前で顔をあわせ、お互いに見つめていた。
「あなたがヤイバを敗ったシュートレイね」
「ヨツンへイム、私は力の限り闘います。そのためにここまで勝ち登ってきたのですから」
その思いは恒一も同じだった。無名の選手が実力でここまで勝ち進んだのだ、今更後へは退けるわけがない。目指すのは唯一つ、優勝だけだ。恒一は覚悟を決めた。
「シュートレイ、今までの訓練やデータを思い出してみろ。お前は一生懸命がんばってきた。その頑張りがあればヨツンへイムに勝てるはずだ」
「分かっています。ここまで来たなら、全力で立ち向かっていくだけです。がんばって勝利をつかみましょう」
二人の会話を聞いていたのか、反対側に座っている森芳治が話しかけてきた。
「大会の経験がないというのにここまで勝ち残るとは、私も驚いているよ。ここは神聖なフィールドだ、お互い全力を尽くして戦おうじゃないか」
やけに気のいい態度だな。恒一は彼の意外な一面をみて驚いていた。
「そうだな、がんばろうぜ」
いよいよ制限時間が一杯になった。それぞれのオーナーはヘッドセットをつけ、試合の体制に入った。
「それでは決勝戦、森芳治&ヨツンへイムvs木野恒一&シュートレイの試合を始めます。お互いの神姫をフィールドサイドに立たせてください」
お互いの神姫をフィールドサイドに立たせ、試合開始の合図をじっと待つ。それが神姫とオーナーにとって緊張がピークになるときである。
ピーッ。試合開始の合図が鳴った。その瞬間、二人の神姫が火花を散らした。
「頑張れシュートレイ、今までの特訓の成果を見せるんだ!!」
必死にフォローする恒一。だが、芳治の方は無表情のまま静かに試合を見ていた。
『なんだ、この余裕ある態度は。まるで楽勝できるような感じじゃないか』
彼の表情を見て、恒一は一瞬不安を感じてしまった。しかしそれはすぐに消えた。自分には叶えたい夢がある。そう思ったとき不安は霧のように消えたのだ。
「シュートレイ、中距離で攻撃するんだ。あいつはヤイバと同じ接近戦タイプだ。距離を置けばダメージは少なくなるはずだ」
シュートレイは無言で頷くと、後方にジャンプしてマシンガンでヨツンに攻撃を仕掛けた。
「なるほど、距離を置いて攻撃してきたか。それならこちらにも考えがある」
芳治は射出口から武器を射出した。ヨツンはそれを受け取り、シュートレイにそれを向けた。
「な、何だあの長い槍は?」
それはヨツンの身長よりも長い大型のスピアであった。それを使って攻撃するつもりなんだろう。
「必殺の電磁ランス、とくと味わうがいい!!」
芳治の号令を受けて、ヨツンが電磁ランスでシュートレイを攻撃した。シュートレイはその電撃を避けようとしたが、間に合わなかった。
「あああああっ!!」
ランスから放たれた電撃でダメージを受けてしまうシュートレイは、リングサイドに倒れてしまった。そしてカウントが始まった。
「ワン、ツー、スリー…」
『このまま倒れた方がいいかもしれない。でも約束したんです、精一杯頑張って優勝するんだって…』
傷つきながらもシュートレイはヨロヨロと立ち上がった。
「電撃を受けても立ち上がるとは…、それでこそ我がライバルにふさわしい!」
立ち上がったシュートレイに剣を抜いて襲い掛かるヨツンヘイム。シュートレイは腰のヒートナイフを抜いて立ち向かった。
「止めろシュートレイ、この装備じゃ勝ち目はないぞ」
恒一はとっさにガンクルーザーを出撃させた。
「支援マシンか、だがそんなものこうしてくれる!」
芳治はヨツンに電磁ランスでガンクルーザーのエンジン部を攻撃するよう命令した。
「しまった、避けろクルーザー!!」
恒一はクルーザーに指示を出したが、避ける寸前に片方のスラスターをランスで破壊されてしまった。
「これでパワーアップは出来まい!」
片方のスラスターを破損し、その場に鎮座してしまったクルーザーに、ヨツンはしつこく攻撃を仕掛けた。おそらくクルーザーを完全に破壊するつもりなのだろう。
「ああっ、クルーザーが!」
「落ち着けシュートレイ、今があいつを攻撃するチャンスなんだぞ!あいつがクルーザーを攻撃している間に後ろに回りこむんだ!!」
動揺しながらも恒一の指示に従うシュートレイは、後ろに回りこんでマシンガンで攻撃を仕掛けた。
「ふん、そんな行動は解りきっていた事だ。ヨツン、マシンの攻撃を止めて接近戦に入れ」
「はい主君」
芳治の命令を聞いたヨツンはランスを放し、そのまま腰の剣を抜いてシュートレイに斬りかかった。
「そうきたか。シュートレイ、あいつのことは無視してクルーザーの装備を取りにいくんだ。このままの装備じゃあいつに太刀打ちできない」
シュートレイは無言で頷くと、高くジャンプしてクルーザーに飛び乗った。そしてクルーザーにある装備を装着した。
「いかん、ランスでマシンごと攻撃するんだ!」
芳治はヨツンに攻撃命令を出した。ヨツンはランスを手に取ると、クルーザーに向け先端を射出した。先端はクルーザーのエンジン部に当たり、機体を破壊した。
「シュートレイ!!」
その直後、クルーザーは全壊し、無残な姿をさらした。しかしシュートレイの姿はそこにはなかった。
「どこに隠れたの、あの娘は?」
ヨツンは周りを見まわしたが、シュートレイの姿は見えなかった。
「何をしているんだヨツン、相手は上にいるぞ!!」
芳治の叫び声に反応して、ヨツンは上を向いた。
「まさかあの隙を突いて飛んだというの?」
その瞬間、シュートレイはムラサメディバイダーを構え、ヨツン目がけて突進した。
ガキン!鈍い音がフィールド内に響いた。
「くっ…」
険しい表情になるヨツン。ディバイダーの切っ先はヨツンのシールドを真っ二つに切り裂き、彼女の左手甲を破壊した…。
「どうやら私達は甘く見ていたようです。主君、このままでは…」
痛手を負ったヨツンに、芳治は命令を下した。
「…これ以上ダメージを負うとこちらが不利になる。ひとまず下がるんだ」
ヨツンは無言でフィールドの端に避難した。
「今の攻撃で相手のダメージが大きいみたいだ。反撃のチャンスは今しかない!」
恒一はシュートレイに追撃の命令を出した。よろよろとかわすヨツンには、反撃のチャンスをつかむことさえ出来ないように見えた。
『おかしい、いくらダメージを受けてるとはいえ、逃げてばかりいるなんて…。あいつ、どういうつもりなんだ?』
逃げ回っているヨツンを見て、恒一は不振に思った。そしてそれは確信に変わるのだった。
「そうか、あいつは新しい武器を取るタイミングを計ってたんだ!」
シュートレイがヨツンに迫ろうとすると同時に、ヨツンの行動に異変が起きた。なんと彼女は急に逃げるのを止めてしまったのだ。
「今だヨツン、アーマーをパージするんだ!!」
「はい、主君。アーマーパージ!!」
彼女の叫び声とともに、鎧の大部分がはじけるように外れていった。その鎧の破片はシュートレイに向かって降りそそいだ。
「避けろシュートレイ!あいつは鎧を隠れ蓑にして武器を取りに行くつもりだ!!」
シュートレイは恒一の命令に従い、安全な所までジャンプして破片に当たるのを回避した。しかしヨツンのいる場所を見失ってしまった。
『どうやら考えは間違ってなかったようだな。だとすると相手がいつ攻撃するタイミングを取るのかだ』
恒一は相手の行動パターンを予測して、指示を出した。
「シュートレイ、すべてのフィールドを注意して見張るんだ。もしかしたら動きがあるかもしれない」
「でもどこに隠れているのか…、あっ!」
シュートレイは急に声を上げた。土ぼこりの中に新たな装備を装着しているヨツンの姿があるではないか。
「やっぱりそうか、あれは新たな装備を装着するためにわざとアーマーを外したんだ。こうなったらこっちも新しい装備を出さないと勝ち目はないな」
「新しい装備って…?クルーザーのほかにまだあるんですか?」
「まだ試作段階だが、今使わないとこっちが負けてしまう。それで勝負に出るしかない」
恒一は新たな装備をシュートレイ目がけて射出した。装備はキャノンとミサイルポッドがついた高機動バックパックと脚部アーマー、それと肩部アーマーだった。
「何としてでもヨツンの動きを止めるんだ」
「はい、隊長」
新装備でシュートレイはヨツンに立ち向かっていった。
「あちらも新装備で来たか。ヨツン、何としても接近戦に持ち込むんだ」
「了解、主君」
それぞれ新装備に換装した二人は、最後の勝負に出た。ヨツンへイムは重装備で防御を重視した接近戦型、対するシュートレイは遠距離戦を重視したタイプで、対極の装備といってもいい。だが、両者ともこれが切り札であった。
両者が一斉に攻撃に出た。シュートレイはミサイルを発射してヨツンの鎧を破壊する行為に出た。ヨツンはこの攻撃に耐えた。
「ヨツン、セントクルスで相手の隙を作れ」
ヨツンはボウガンでシュートレイを狙い撃ちした。
「シュートレイ、回避しろ!」
矢は当たる寸前でシュートレイの身体を通り過ぎた。その隙を見て、シュートレイはハンドミサイルを連射してヨツンの背中を狙った。
「重い鎧を着ている以上、早く動けないのは分かってるはずだ!」
しかし芳治は不敵な笑みを浮べていた。
「シルバーラインは伊達ではない!!」
たしかにミサイルは全弾当たったはずだが、ヨツンの身体にはダメージはなかった。
『なるほど、あの重装備はどんな攻撃もはじき返すのか…。だがいくら強固な装甲でも立て続けに攻撃されたらどうなるかな…!』
恒一はシュートレイに攻撃続行の指示を下した。
「いっけえええええええ!!」
シュートレイはミサイルを全弾発射し、ヨツンを攻撃続けた。
「無駄だといっているのが分からないのか!」
ミサイルの雨を身体に受けたヨツンの鎧は傷ひとつ付いてない、かに見えた…!
だが、次の瞬間…
「な、何だと!?」
ヨツンが突然立てひざを付いてしまったのだ。
「やっぱりそうだ、いくら鎧が強固でも中の神姫にダメージがないはずがない。装備の強化に気を使ったばっかりに神姫本体に気を使わなかったのが仇になったようだな」
いつもは冷静な芳治も、この状況を見て焦りを感じ始めていた。
「どうしたヨツン、そんな事で倒れるお前じゃないだろう?立て、立って相手を攻撃するんだ」
しかしヨツンの足取りはすでにふらつき、とても歩けない状態ではなかった。
「主君…、主君のためなら、私は闘います…。みて、いて、くだ、さい…」
ヨツンはゆっくりシュートレイのほうに歩み寄っていくが、膝の関節が壊れてしまい、膝をついてしまった。
「わた、しは、かな、らず、勝って、みせ、ます。か、な、ら、ず…」
そしてついにヨツンはその場に倒れてしまった…。
「ドクターストップ!勝者、木野恒一&シュートレイ!!」
その瞬間、シュートレイの勝利を告げるアナウンスが会場中に響いた。
「やったのか…?俺達…」
ヘッドセットを外した恒一は、フィールド内を見回し、倒れているヨツンと近くで立っているシュートレイを見て勝利を確信した。
「…隊長、私たち、優勝したんですね」
恒一の方を向いて涙を流すシュートレイ。もちろんこれは嬉し涙だ。
「お前、よく泣くなぁ…」
恒一も少しだけど嬉し涙を流した。
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