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「妄想神姫:第十九章」(2007/02/25 (日) 10:55:12) の最新版変更点
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**手織り、羽織り、慈しみを込めて
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“♪梅は咲いたか、桜はまだかいな”等という詩もあるが、暖冬傾向が
進んだ2036年現在は、冬は短い物である。東京ともなれば尚更だ。
という訳で折角の冬服も出番が多少減ってきた今日この頃である故に、
HVIFと私用の春物衣装を買い、私・槇野晶はアキバに帰ってきた。
「うむ、今日も可愛い服がいろいろあったな……今帰ったぞ、茜!」
「あっ!おかえりなさい、お姉ちゃん。うんと、えと……収穫は?」
「見てみるといい。今年の春物新作は、可愛らしくも動きやすいぞ」
最初に出迎えてくれたのは、住居フロアで編み物をしている茜だった。
そう、今日はアルマの“HVIF当番”の日なのだ。人前に出る行為を
率先して行わないアルマ……茜は、当番の日を部屋で過ごす事が多い。
無論買い物などで必要なら出かける事もあるがな。それにしても……。
「にしても茜や、お前は家庭的な事をしている雰囲気が似合うなぁ」
「ほ、ほえっ!?なっ、何を言ってるんですか、お姉ちゃんッ!?」
「いや、“姉”の私が言うのもなんだが……本当に、似合ってるぞ」
落ち着いた色合いのジャンパースカートを身につけて、毛糸と編み棒を
手に楽しそうに何かを作る、あるいはエプロンをまとって台所に立つ。
元より神姫に備わる“創造性”という物を確信する私ではあるのだが、
こうして楽しげに何かを行う茜を見ると、その実在は一層確信出来る。
HVIFの可能性を垣間見る一コマとも言えるが……それ以前にッ!!
「そ、そんなぁ……お姉ちゃんに言われると、恥ずかしいです……」
「……くぁぁぁぁーッ!?た、たまらんっ!!茜、可愛いぞッ!?」
金砂の髪を揺らし、白い頬を染めて照れる……紅蓮の眼を持った少女。
“神姫”だという意識はもちろん私の中にある。だが、だからこそッ!
“殻の躯”から“肉の躯”に転じた時のインパクトは、未だに高い!!
たまらず私は茜を抱きしめてやる……こら、貴様見るなあっち行け!?
「……マイスター、昼間からドキドキしすぎなんだよ?」
「きゃああっ!?はえ、え……い、一体いつからっ?!」
「しょうがないですの、インターフェイスですからっ♪」
「え゛!?ろ、ロッテにクララ……今まで何処にいた?」
……貴様の所為で、ロッテとクララに見つかったではないかッ!?
こほん、それはともかくだ……彼女らは“ちっちゃい物研”謹製の
洋風クレイドル……またの名を神姫ハウスだ……から、出てきた。
その両手には“フェンリル”と、“斬鋼糸”を改良した“ヘル”。
どうやら、隣にある専用トレーニングブースで特訓していた様だ。
「……いつからって、最初っからだもん。ね、ロッテお姉ちゃん」
「はいですの。マイスターが帰ってきた時から、ず~っと……♪」
「う゛、うあぁぁぁぁ……声くらい掛けてくれぬか、頼むからッ」
顔から火が出そうな程、私は真っ赤になる。茜の方は、茹で蛸も同然。
対してクララは普段通りの冷静さ、ロッテは愉快そうに微笑んでいる。
完全にしてやられた、という事か……だが、本心故どうしようもない。
だからこそ……私はそっとロッテとクララも抱き寄せて、懐に包んだ。
「マイスター?なんでわたし達まで抱きしめちゃいますの~?」
「……だって、インターフェイスの茜にだけする事ではないぞ」
「ロッテお姉ちゃん笑ってる。ひょっとしたら確信犯なんだよ」
そう言うクララも、僅かに微笑んでいる。これは……ヤキモチなのか?
“神姫の心”が人と変わらぬ物である以上、そういう感情は当然ある。
そう、HVIFを使っている茜もまたこうして、私の背中に……って!
「うわああっ!?茜何をしてるかっ、背後から、そのっ!」
「……お姉ちゃん、あたしだっているんですからね……?」
柔らかい感触を、背に覚える。“殻の躯”でも撫でたりする時は、
緊張する部位だがこう私と変わらぬサイズになってるとなぁッ!?
その後、茜を皆で宥めて離れるには三分ばかりを要した……ふぅ。
「でも、アル……じゃない、茜お姉ちゃんは帰りを待ってたんだよ」
「なんだと、クララ?何か私、忘れ物でもしていたのか……茜や?」
「え、ええっと……今日の成果を、お見せしたいなって思って……」
そう言うと茜はごそごそと紙袋から、一つの人形を取り出して来た。
それは可愛らしいクマの編みぐるみ……をくっつけた、ストラップ。
神姫の“殻の躯”では作れぬ、とは言わないが重労働なのは確かだ。
真直堂みたく、複数人の神姫で一斉に作るという訳にもいかんしな。
そう言う意味でも、HVIFの利点がまた一つ分かった。良い事だ。
「……これは、茜が作ったのか?その編み棒と毛糸を使って」
「後、市販のストラップと綿にビーズも……楽しかったです」
「ありがとうな、茜。楽しい事とはいえ、私の為になぞ……」
あ、という息を呑む音が聞こえる。私が、彼女の手に口を寄せた為だ。
流石に正面切ってキスが出来る程、私は開けっぴろげな性格ではない。
だが感謝の心は示したかった。それ故に……こういう妙な行動となる。
自分でも笑ってしまうが、誠意だけは何時でも大事にしたかったのだ。
余談だが茜の、白魚の様な指は……とても滑らかで清く、暖かかった。
「──────ま、まままま……じゃない、お姉ちゃんッ!?」
「さあ、夕食を作るぞっ!茜や、手伝ってくれぬか?その後で」
「え、ええっと……あ、そうですね、お洋服!……喜んでっ♪」
──────姿形は違っても、心通わせれば、全てが楽しいよね。
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**手織り、羽織り、慈しみを込めて
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“♪梅は咲いたか、桜はまだかいな”等という詩もあるが、暖冬傾向が
進んだ2037年現在は、冬は短い物である。東京ともなれば尚更だ。
という訳で折角の冬服も出番が多少減ってきた今日この頃である故に、
HVIFと私用の春物衣装を買い、私・槇野晶はアキバに帰ってきた。
「うむ、今日も可愛い服がいろいろあったな……今帰ったぞ、茜!」
「あっ!おかえりなさい、お姉ちゃん。うんと、えと……収穫は?」
「見てみるといい。今年の春物新作は、可愛らしくも動きやすいぞ」
最初に出迎えてくれたのは、住居フロアで編み物をしている茜だった。
そう、今日はアルマの“HVIF当番”の日なのだ。人前に出る行為を
率先して行わないアルマ……茜は、当番の日を部屋で過ごす事が多い。
無論買い物などで必要なら出かける事もあるがな。それにしても……。
「にしても茜や、お前は家庭的な事をしている雰囲気が似合うなぁ」
「ほ、ほえっ!?なっ、何を言ってるんですか、お姉ちゃんッ!?」
「いや、“姉”の私が言うのもなんだが……本当に、似合ってるぞ」
落ち着いた色合いのジャンパースカートを身につけて、毛糸と編み棒を
手に楽しそうに何かを作る、あるいはエプロンをまとって台所に立つ。
元より神姫に備わる“創造性”という物を確信する私ではあるのだが、
こうして楽しげに何かを行う茜を見ると、その実在は一層確信出来る。
HVIFの可能性を垣間見る一コマとも言えるが……それ以前にッ!!
「そ、そんなぁ……お姉ちゃんに言われると、恥ずかしいです……」
「……くぁぁぁぁーッ!?た、たまらんっ!!茜、可愛いぞッ!?」
金砂の髪を揺らし、白い頬を染めて照れる……紅蓮の眼を持った少女。
“神姫”だという意識はもちろん私の中にある。だが、だからこそッ!
“殻の躯”から“肉の躯”に転じた時のインパクトは、未だに高い!!
たまらず私は茜を抱きしめてやる……こら、貴様見るなあっち行け!?
「……マイスター、昼間からドキドキしすぎなんだよ?」
「きゃああっ!?はえ、え……い、一体いつからっ?!」
「しょうがないですの、インターフェイスですからっ♪」
「え゛!?ろ、ロッテにクララ……今まで何処にいた?」
……貴様の所為で、ロッテとクララに見つかったではないかッ!?
こほん、それはともかくだ……彼女らは“ちっちゃい物研”謹製の
洋風クレイドル……またの名を神姫ハウスだ……から、出てきた。
その両手には“フェンリル”と、“斬鋼糸”を改良した“ヘル”。
どうやら、隣にある専用トレーニングブースで特訓していた様だ。
「……いつからって、最初っからだもん。ね、ロッテお姉ちゃん」
「はいですの。マイスターが帰ってきた時から、ず~っと……♪」
「う゛、うあぁぁぁぁ……声くらい掛けてくれぬか、頼むからッ」
顔から火が出そうな程、私は真っ赤になる。茜の方は、茹で蛸も同然。
対してクララは普段通りの冷静さ、ロッテは愉快そうに微笑んでいる。
完全にしてやられた、という事か……だが、本心故どうしようもない。
だからこそ……私はそっとロッテとクララも抱き寄せて、懐に包んだ。
「マイスター?なんでわたし達まで抱きしめちゃいますの~?」
「……だって、インターフェイスの茜にだけする事ではないぞ」
「ロッテお姉ちゃん笑ってる。ひょっとしたら確信犯なんだよ」
そう言うクララも、僅かに微笑んでいる。これは……ヤキモチなのか?
“神姫の心”が人と変わらぬ物である以上、そういう感情は当然ある。
そう、HVIFを使っている茜もまたこうして、私の背中に……って!
「うわああっ!?茜何をしてるかっ、背後から、そのっ!」
「……お姉ちゃん、あたしだっているんですからね……?」
柔らかい感触を、背に覚える。“殻の躯”でも撫でたりする時は、
緊張する部位だがこう私と変わらぬサイズになってるとなぁッ!?
その後、茜を皆で宥めて離れるには三分ばかりを要した……ふぅ。
「でも、アル……じゃない、茜お姉ちゃんは帰りを待ってたんだよ」
「なんだと、クララ?何か私、忘れ物でもしていたのか……茜や?」
「え、ええっと……今日の成果を、お見せしたいなって思って……」
そう言うと茜はごそごそと紙袋から、一つの人形を取り出して来た。
それは可愛らしいクマの編みぐるみ……をくっつけた、ストラップ。
神姫の“殻の躯”では作れぬ、とは言わないが重労働なのは確かだ。
真直堂みたく、複数人の神姫で一斉に作るという訳にもいかんしな。
そう言う意味でも、HVIFの利点がまた一つ分かった。良い事だ。
「……これは、茜が作ったのか?その編み棒と毛糸を使って」
「後、市販のストラップと綿にビーズも……楽しかったです」
「ありがとうな、茜。楽しい事とはいえ、私の為になぞ……」
あ、という息を呑む音が聞こえる。私が、彼女の手に口を寄せた為だ。
流石に正面切ってキスが出来る程、私は開けっぴろげな性格ではない。
だが感謝の心は示したかった。それ故に……こういう妙な行動となる。
自分でも笑ってしまうが、誠意だけは何時でも大事にしたかったのだ。
余談だが茜の、白魚の様な指は……とても滑らかで清く、暖かかった。
「──────ま、まままま……じゃない、お姉ちゃんッ!?」
「さあ、夕食を作るぞっ!茜や、手伝ってくれぬか?その後で」
「え、ええっと……あ、そうですね、お洋服!……喜んでっ♪」
──────姿形は違っても、心通わせれば、全てが楽しいよね。
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