「第肆幕 「THE FIRST CRY IN HADES」」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
「第肆幕 「THE FIRST CRY IN HADES」」(2007/03/26 (月) 18:00:52) の最新版変更点
追加された行は緑色になります。
削除された行は赤色になります。
記憶と記録の違いは、追随する感情の有無だというのをどこかで聞いた事がある
少なくとも、私達神姫にとっては、それはある種の真理なのだ
神姫が人間によって、「人間の似姿」として作られた人造の人間であるならば、人間と同じ様に哲学的な物思いに耽る事も必要な事とされたのだろう
「華墨、それから、佐鳴武士と言ったわね。ヌルのマスターであると同時に槙縞ランキング11位のランカーとして貴女達をマークさせて貰うわ」
それは鮮烈な記憶だった
「私はニビル。〈神の星〉暗黒星ニビルよ。槙縞ランキングへようこそ、おふたりさん!」
このシーンは、私の中に得体の知れない、何か強烈な感情をもたらしていたのだ
それも、私が「華墨」として目覚め、「華墨」という個性を獲得してから感じた中で最大級の
「ヌルのマスターであると同時に槙縞ランキング11位のランカー」だと・・・?
神姫が神姫をマスターと認識するものだろうか?
逆に、神姫が神姫を所有したいと思うのだろうか?
この世界に目覚めて間が無く、私達以外の神姫もマスターも余り見ていない私には判りかねる難題だが、少なくともあの赤い靴の神姫は事実「そうしている」様であった
私の中で問題となっているのは言葉か?神姫か?
今もってそれは不明だが、少なくともこの感情の故に、この記録は強烈な記憶となって私の中に焼き付いている
「・・・もしかして私は・・・」
私も、ニビルの様に神姫を所有したいと考えているのだろうか?それとも・・・?
*第肆幕 「THE FIRST CRY IN HADES」
「槙縞ランキング」は、現在皆川彰人氏が店長代理を務める「槙縞玩具店」に集まる神姫の間で自然発生した地元リーグである
所謂「草」というやつで、現在、入りたての私とヌルを含めて21名のランカーが所属している
パーツも満足に揃わない田舎のリーグの常として、始まったばかりの頃は本当に数名の神姫達によるささやかな遊びだったのだが、ここ2,3年の神姫ブームの到来によって、実質町内で唯一のバトルスペースである店に多くの客が集まる事となったのだ
とはいえ、愛玩派マスターが気紛れで来て、一度登録したきり滅多に来ない・・・という事もままあり、実質ランカーとして機能しているのは14~5名程であると見られている
うちのマスターはばりばりのバトル派なので、暇さえあればほぼ毎日の様に通い、私もまた、あの時感じた感情の正体が判るかも知れない期待と、闘争本能から、ここ1週間で既に3勝を経験するに至っていた
(・・・とは言えなぁ・・・)
私の初戦、あれは明らかに「辛勝」というやつだった。ヌルは性格に難があったし、実戦はあれが初めてだったのだろうが、何らかの戦闘訓練を積んでいるというのは判った
神姫の「パッケージに詰められたデフォルト装備と言うのは素体との相性を考慮した上で選別されており、思いのほか高いバランスでまとめられている」という至言があるが、裏を返せばそれは、「いきなりデフォルト武装と異なる武装をして巧く立ち回れる神姫というのはなかなか居ない」という事でもあるだろう
一応私は勝ちはしたが、少なくとも、ヌル以後に闘った神姫達にはヌル程梃子摺りもしなかったし、逆にもう一度ヌルと闘っても、楽勝出来るとは全く思えなかった
(そう言えば結局あの感情もあれ以来感じていないな・・・)
今にして思えばその感じも曖昧になって来ている・・・初めての戦闘で、異常に緊張して、それで妙な高揚感を感じたのかもしれないな・・・という疑念すら感じているのも、また事実だった
今日もまたマスター共々相手を探して槙縞玩具店に来ている・・・
「えっ?戸樫君来てないの?リターンマッチするっていってたじゃん!?」
「なんでも急用が出来たとかで来れなくなったらしいんだ。まぁ約束を破るのは良い事ではないが、人それぞれ事情があるのもまた事実だ・・・今回は仕方ないだろう」
マスターと店長が話し込んでいる・・・私は、未だ売れ残っている多くの「紅緒」達が置かれている陳列棚に座り、考え込んでいる
「くそ~・・・今回のバトルに備えて神姫について色々勉強してきたのにな~・・・バトルしたいぜ!皆川さん」
「そうは言っても相手が居ないのでは仕方が無いだろう?駄々をこねるものではない」
「否!一人いるじゃねーか皆川さん!キャロだよキャロ!皆川さんとこのキャロちゃんと闘わせてくれよ!!」
「それが出来るのならそうしている・・・キャロラインは闘えないんだ」
「なんでさ!?」
我侭だなうちのマスターは。済まないな店長、そんなのの相手させて
「どんなにがなっても1が2になる様な話はないさマスター・・・今日は日が悪かったんだろう?なら諦めて帰るのも一つの手ではないのか?」
『そこ、どいてくれるかな?』
「でもよぉ華墨?お前だって結構乗り気だったじゃねーか?」
『通して欲しいんだけど・・・』
「それはそれ、これはこれだよ・・・済まないな店長。うちのマスターはこういう所は本当に幼稚園児並みのようだ」
「ちょっ・・・!?華墨てめぇ!!」
「聞えないの?低脳コンビ!ホントもう耳か脳が腐ってんじゃないの!もう!!」
突如かかった高飛車な一喝に、私もマスターも驚いて振り向く
小柄なショートカットの少女・・・なんとなくだがストラーフがそのまま人間サイズになった様な印象を受ける・・・が無表情で突っ立っている
手には神姫の拡張パーツ。買い物に来ているようだ
だが、声は彼女のものではなく、彼女の肩の上でいかついレザーのロングコートを着てふんぞり帰っている神姫・・・第四弾、「ジルダリア」だ・・・が放ったものであった
「いらっしゃい、神浦 琥珀君、『エルギール』君」
店長だけは彼女らの存在に気付いていたようだった
「成程・・・アンタ達がニビルが言ってた『新入り』ってワケね?なんか冴えない面構えしてるわ」
ふん、と鼻で笑いつつ私たちを偉そうに値踏みする「エルギール」根本的に高飛車な性格らしい
「今迄4戦4勝?まぁ、愛玩系に毛が生えた程度の連中相手じゃぁね」
「エルギール、ちょっと言い過ぎだよ」
ハスキーな声で冷静にたしなめる神浦さん。どうやらうちとは逆に、神姫が一方的に喋ってマスターが突っ込むペアの様だ(誰だ今「(゚Д゚)?」って顔したのは)
神浦 琥珀・・・と呼ばれた少女が、覗き込んでいた端末から顔を上げる
「どうだろう?闘いたいのなら僕達とやってみない?」
「いいのかよ?」
「ちょっと琥珀?何勝手に決めてんのよ!?」
同時に声を上げるマスターとエルギール。とは言えマスターは、ここで相手が「やっぱりやめた」って言ってもやりたがるだろうし、エルギールも何のかんの言ってやる気のようではあった
「うん・・・本当はこういうのはニビルの役なんだけど・・・いいよ。僕達が相手だ」
含みのある言い方だ。なんだろう?この胸の内側を羽毛で撫でられる様な感じは・・・
「おっけい!勝負だ!!」
特に何も意に介した様子も無く、マスターは勢い良く立ち上がった
[[剣は紅い花の誇りTOP]] [[前へ>第参幕 「神の星」]] [[次へ>第伍幕 「Merciless Cult」]]
記憶と記録の違いは、追随する感情の有無だというのをどこかで聞いた事がある
少なくとも、私達神姫にとっては、それはある種の真理なのだ
神姫が人間によって、「人間の似姿」として作られた人造の人間であるならば、人間と同じ様に哲学的な物思いに耽る事も必要な事とされたのだろう
「華墨、それから、佐鳴武士と言ったわね。ヌルのマスターであると同時に槙縞ランキング11位のランカーとして貴女達をマークさせて貰うわ」
それは鮮烈な記憶だった
「私はニビル。〈神の星〉暗黒星ニビルよ。槙縞ランキングへようこそ、おふたりさん!」
このシーンは、私の中に得体の知れない、何か強烈な感情をもたらしていたのだ
それも、私が「華墨」として目覚め、「華墨」という個性を獲得してから感じた中で最大級の
「ヌルのマスターであると同時に槙縞ランキング11位のランカー」だと・・・?
神姫が神姫をマスターと認識するものだろうか?
逆に、神姫が神姫を所有したいと思うのだろうか?
この世界に目覚めて間が無く、私達以外の神姫もマスターも余り見ていない私には判りかねる難題だが、少なくともあの赤い靴の神姫は事実「そうしている」様であった
私の中で問題となっているのは言葉か?神姫か?
今もってそれは不明だが、少なくともこの感情の故に、この記録は強烈な記憶となって私の中に焼き付いている
「・・・もしかして私は・・・」
私も、ニビルの様に神姫を所有したいと考えているのだろうか?それとも・・・?
*第肆幕 「THE FIRST CRY IN HADES」
「槙縞ランキング」は、現在皆川彰人氏が店長代理を務める「槙縞玩具店」に集まる神姫の間で自然発生した地元リーグである
所謂「草」というやつで、現在、入りたての私とヌルを含めて21名のランカーが所属している
パーツも満足に揃わない田舎のリーグの常として、始まったばかりの頃は本当に数名の神姫達によるささやかな遊びだったのだが、ここ2,3年の神姫ブームの到来によって、実質町内で唯一のバトルスペースである店に多くの客が集まる事となったのだ
とはいえ、愛玩派マスターが気紛れで来て、一度登録したきり滅多に来ない・・・という事もままあり、実質ランカーとして機能しているのは14~5名程であると見られている
うちのマスターはばりばりのバトル派なので、暇さえあればほぼ毎日の様に通い、私もまた、あの時感じた感情の正体が判るかも知れない期待と、闘争本能から、ここ1週間で既に3勝を経験するに至っていた
(・・・とは言えなぁ・・・)
私の初戦、あれは明らかに「辛勝」というやつだった。ヌルは性格に難があったし、実戦はあれが初めてだったのだろうが、何らかの戦闘訓練を積んでいるというのは判った
神姫の「パッケージに詰められたデフォルト装備と言うのは素体との相性を考慮した上で選別されており、思いのほか高いバランスでまとめられている」という至言があるが、裏を返せばそれは、「いきなりデフォルト武装と異なる武装をして巧く立ち回れる神姫というのはなかなか居ない」という事でもあるだろう
一応私は勝ちはしたが、少なくとも、ヌル以後に闘った神姫達にはヌル程梃子摺りもしなかったし、逆にもう一度ヌルと闘っても、楽勝出来るとは全く思えなかった
(そう言えば結局あの感情もあれ以来感じていないな・・・)
今にして思えばその感じも曖昧になって来ている・・・初めての戦闘で、異常に緊張して、それで妙な高揚感を感じたのかもしれないな・・・という疑念すら感じているのも、また事実だった
今日もまたマスター共々相手を探して槙縞玩具店に来ている・・・
「えっ?戸樫君来てないの?リターンマッチするっていってたじゃん!?」
「なんでも急用が出来たとかで来れなくなったらしいんだ。まぁ約束を破るのは良い事ではないが、人それぞれ事情があるのもまた事実だ・・・今回は仕方ないだろう」
マスターと店長が話し込んでいる・・・私は、未だ売れ残っている多くの「紅緒」達が置かれている陳列棚に座り、考え込んでいる
「くそ~・・・今回のバトルに備えて神姫について色々勉強してきたのにな~・・・バトルしたいぜ!皆川さん」
「そうは言っても相手が居ないのでは仕方が無いだろう?駄々をこねるものではない」
「否!一人いるじゃねーか皆川さん!キャロだよキャロ!皆川さんとこのキャロちゃんと闘わせてくれよ!!」
「それが出来るのならそうしている・・・キャロラインは闘えないんだ」
「なんでさ!?」
我侭だなうちのマスターは。済まないな店長、そんなのの相手させて
「どんなにがなっても1が2になる様な話はないさマスター・・・今日は日が悪かったんだろう?なら諦めて帰るのも一つの手ではないのか?」
『そこ、どいてくれるかな?』
「でもよぉ華墨?お前だって結構乗り気だったじゃねーか?」
『通して欲しいんだけど・・・』
「それはそれ、これはこれだよ・・・済まないな店長。うちのマスターはこういう所は本当に幼稚園児並みのようだ」
「ちょっ・・・!?華墨てめぇ!!」
「聞えないの?低脳コンビ!ホントもう耳か脳が腐ってんじゃないの!もう!!」
突如かかった高飛車な一喝に、私もマスターも驚いて振り向く
小柄なショートカットの少女・・・なんとなくだがストラーフがそのまま人間サイズになった様な印象を受ける・・・が無表情で突っ立っている
手には神姫の拡張パーツ。買い物に来ているようだ
だが、声は彼女のものではなく、彼女の肩の上でいかついレザーのロングコートを着てふんぞり帰っている神姫・・・第四弾、「ジルダリア」だ・・・が放ったものであった
「いらっしゃい、神浦 琥珀君、『エルギール』君」
店長だけは彼女らの存在に気付いていたようだった
「成程・・・アンタ達がニビルが言ってた『新入り』ってワケね?なんか冴えない面構えしてるわ」
ふん、と鼻で笑いつつ私たちを偉そうに値踏みする「エルギール」根本的に高飛車な性格らしい
「今迄4戦4勝?まぁ、愛玩系に毛が生えた程度の連中相手じゃぁね」
「エルギール、ちょっと言い過ぎだよ」
ハスキーな声で冷静にたしなめる神浦さん。どうやらうちとは逆に、神姫が一方的に喋ってマスターが突っ込むペアの様だ(誰だ今「(゚Д゚)?」って顔したのは)
神浦 琥珀・・・と呼ばれた少女が、覗き込んでいた端末から顔を上げる
「どうだろう?闘いたいのなら僕達とやってみない?」
「いいのかよ?」
「ちょっと琥珀?何勝手に決めてんのよ!?」
同時に声を上げるマスターとエルギール。とは言えマスターは、ここで相手が「やっぱりやめた」って言ってもやりたがるだろうし、エルギールも何のかんの言ってやる気のようではあった
「うん・・・本当はこういうのはニビルの役なんだけど・・・いいよ。僕達が相手だ」
含みのある言い方だ。なんだろう?この胸の内側を羽毛で撫でられる様な感じは・・・
「おっけい!勝負だ!!」
特に何も意に介した様子も無く、マスターは勢い良く立ち上がった
[[剣は紅い花の誇り]] [[前へ>第参幕 「神の星」]] [[次へ>第伍幕 「Merciless Cult」]]
表示オプション
横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: