「彼女と彼女」(2007/02/17 (土) 04:33:01) の最新版変更点
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キーボードを打つ規則的な音が部屋に響く。
ふと、時計を見れば時刻は深夜2時。締め切りまであと57時間。
ペース自体は悪くないが、どうも気分が盛り上がらない。
顔を上げ眼鏡を外して軽く目元を揉みほぐす…物音が聞こえたのはその時だ。
そちらを見ればメイド服姿の神姫…私の神姫、D-ベルセルク。
頭上に掲げた盆に載ったコーヒーカップが湯気を立てている。
「どうした?ベルセルク」
眼鏡を掛け直して問う。椅子の背凭れに身体を預けて。
「論理構成の小規模なバグ、誤差内のデータの不整合…有り体に言えば、ストレス」
説明しながらこちらに歩いて来る。盆を持ったまま器用に机に飛び乗った彼女がカップを
勧めながらこちらを見詰めて。
「レクリエーションによる改善を希望」
ベルセルクがそう告げる。
「成程。だが私も締め切り前で忙しいんだがな?」
手を止めてそちらを見下ろし、問いかける。
カップを受け取ってゆっくりとコーヒーに口をつけ。
「駄目?」
無表情ながらも上目遣いでこちらを見る姿はそれなりにそそる物がある。
この服を買い与えたのは悪くなかったかも知れない。
「さぁな。で、何がしたいんだ?」
「もっとも効率の良いレクリエーション…」
私の問いに、腕組みしたベルセルクがしばし黙考する。
「セックス」
やがて顔を上げて言い放ったその一言に、流石の私もコーヒー吹いた。
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「今のはなかなか良かったぞ、ベルセルク」
吹いたコーヒーを片付けながら、我が神姫のアドリブ能力を褒める。
その思考パターンは正直予想外だった。
「なら、遊んで」
無表情のまま切り返すその姿は何か資質めいた物を感じる。さて。
「それとこれとは別だ。とはいえなかなか気を持たせる導入ではあったな」
机の上に頬杖して、ベルセルクを見下ろす。
「好きか?セックス」「好き。気持ちいい」
即答か。
「私も好きだ。奇遇だな…だが、まだスイッチが入らない」
それっきりモニタへ向き直り、再びキーボードを打ち始める。
「その気にさせてみろ」
さぁ、どうでるか。
視界の端で思案するベルセルクに、内心は笑みを浮かべているのだが。
やがて、ベルセルクがゆっくりと声を上げた。
「ボス…見て」
メイド服のスカートをたくし上げてベルセルク…ベルが俯く。
僅かに朱の差すその表情と、彼女の下半身を交互に、執拗に視線で舐める。
その視線すら刺激なのか、妖しい笑みを浮かべる彼女。
「まったく。いやらしいヤツだな、お前は?」
その表情は確かに、私の嗜虐心を刺激するのに充分ではあった。
指先でその顔を持ち上げ、視線を交わらせる。
「快楽や本能に忠実な事は自然な事。ボスの信条でもある」
「私もそう…だから、今欲しい」
コイツは私の主義を割りと色んな面で理解している。
焦らすのもそろそろ飽きたし、問答も無駄だろう。なら、楽しむことにしよう。
悪くない提案とは思って居る。
「期待した目をしているな…ほら、舐めろ。いつもの様にな」
人差し指をベルの前へ突き出す。
ベルは淫靡な瞳でソレを見詰めると、男性器を扱うように頬を擦り付け舌を這わせた。
人間、しかも女の指とはいえ、神姫には充分巨大なサイズだ。
ゆっくりと全体に自分の唾液を塗りつけるように丁寧に舐めるその表情を、
目を細めて見詰める。
「美味いか?」
一心不乱に指先を愛しながら、ベルが頷く。
彼女の口を滴る液体が、彼女のメイド服のエプロンを汚す。
その光景は扇情的だ。
身体の奥が熱を持ち始めて居るのを自覚し、指を離す。
ライトを反射して妖しく濡れた指を彼女の目の先へ。
「お前がサカるから指がドロドロじゃないか」
笑みを含んだ声。自分で聞いていても可笑しくなる。
私は明らかにこの状況を楽しんでいた。
「すっかり汚れてしまったな…お前ので」
呟き、指に纏わり付く唾液を舐め取る。
「厭らしい味だ。こっちまでそんな気分になって来る」
立ち上がり見せ物の様にブラウスのボタンをゆっくり外していく。
惚けた表情でこちらを見るベルに衣服を脱ぐよう促し、私もスカートを床に落とし
下着を脱いで髪留めを外した。拘束を解かれた長い髪が揺れる。
ベルを連れてベッドに横になる。
ベルのボディは人に近い質感を持ち、触覚を強化したタイプだ。
体の繋ぎ目はあるが、素肌の上にボディースーツを着たような状態を素体とする。
元々は感覚強化用に購入したのだが、こういう使い方も当然想定はしていた。
やはりノーマル素体よりは一糸纏わぬ肌の方がそそるという物だ。
「いい格好だ。お前の裸はいつ見てもそそるな」
笑みを浮かべ、賞賛する。もっとも、揶揄に聞こえたかも知れないが。
「ボスも綺麗」
頬を上気させ、自分の胸に手を置いてベルが呟く。
年並みに美容や体系維持はしているし、身体ラインに自信はあるが。
己の神姫とは言え、褒められるのは女として悪い気はしない。
「ムードが無いな。セックスの時ぐらい秋奈でいい」
微笑みベルを手で抱き寄せ。
─私達は今夜最初のキスを交わした。
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「そう…好きにしていいぞ」
ベルは私の上に乗り、私の胸にその裸身を擦り付けている。
「お前、意外と胸が好きだな」
「柔らかいし、暖かい。それに…秋奈の鼓動を感じる」
そう呟きながらも、その小さい口で私を攻め立ててくる。
その、微細な刺激がむず痒くも心地よくもある。
「ベル、先の方だ…舌で丁寧にな」
「ん…秋奈も、好き…?」
指摘しつつ、その小さい舌が私の乳腺を弄る。
ピリピリと背中を僅かに走る電流のような感覚。
「ん…否定はせん、よ。」
素直に声を上げるのもなんとなく面白くなく。
指を噛んでその刺激と痛みを味わう。
指に食い込む歯の硬さと痛み、胸を弄ぶベルの舌の感覚が重なって快楽を引き出す。
痛みと快楽は近しいモノだと感じる。
少なくとも、私は肉体を激しく責め立てられるのも嫌いでは無い。
「秋奈…腰が疼いてる。そろそろ、する?」
こういう事を指摘されるというのもバツが悪い物だ。
「久しぶりだからな…ん」
指を自分の奥へ宛がい、具合を確かめる。
欲求不満でもなかろうが、久しぶりの快楽に其処はすっかり出来上がっていた。
「ふふ…我ながら、貪欲と言うか。愚かしい事だな…」
「準備は出来て居る…来い」
軽い自嘲の笑みを浮かべ、ゆっくりと脚を開く。
脚の付け根の位置に、ベルが移動した。
「そうじろじろ見るな。初めて見るワケでもあるまい?」
「ここも好き。ひくひくしてる」
神姫の小さく硬質な指が、敏感な壁をそっと撫ぜる。
「っ…恥ずかしいヤツだ…」
突然の刺激にベッドに倒れこみ、私は暫くベルの成すがままに任せる事にした。
ベルが外側から私の奥へと、その手と舌を使って刺激を繰り返す。
時間をかけて道筋を作りつつ、ベルの身体自身が私の内側へ侵入してくる。
無言のまま私の内側へ愛撫を繰り返すベルを受け入れるべく、極力身体の力を抜く。
会話が無いのも間が持たないが、自分の内側で喋られるのも気味が悪い。
身体の奥をノックされるような感覚にピクピクと内側の筋肉が引き攣るのを感じる。
…妙な事を考えていても、身体は正直な物だ。
「ッ!?」
その時、ベルがキスをした。内側にだ。
身体を、電流が走る。
いや、生易しい物では無い。ショックを受けたように身体が強張る。
「く…うぅぅっ…うぁ…」
内側も大した抵抗のハズだが、ベルは味を占めたようにキスを繰り返す。
ビクビクと身体が震え、昇り詰めていく感覚を強く感じる。
マズイ─そう、思った時にはもう達する直前だった。
「─ッ!!!」
そして止めとばかりにベルの抱擁を身体の内側に受け、私はそのままガクガクと
身体を弛緩させた。
「はぁ…はぁっ…」
激しく息をつき、疲労に身を任せて…やがて、彼女を中から引き抜く。
「…ベタベタだな」
笑い、彼女をウェットティッシュで拭いてやる。
「ムチャをしおって…今度は私の番だな?」
ベッド脇のノートパソコンからケーブルを引き出し、ベルへと接続する。
素早くコードを入力すれば、ベルの身体が大きく震えた。
「ふぅっ…」
「すっかり身体が出来上がってるじゃないか。まったく…私もお前も、しょうがないな」
自嘲と加虐…そして言い知れぬ興奮。
直接制御系にコードで干渉する事で、身体自体に快楽を「入力」する。
身体を撫で回し、貪り、その奥へ突き立て、抉る。
ソレをコードを使って実体験させる…私がコイツらを抱く為に編み出した方法だ。
今、彼女の身体はソレを認識している。
己の身体を蹂躙し、その身体を行き来する強い身体の快楽を。
「どうだ?お前はこういう風に責められるのが好きだったな?」
ベルの身体を四つんばいにして、後ろから突き立てる。
「もっと…激しく…して…」
か細いその声に唇を歪めて、さらなる行為を打ち込む。
「存分に啼け」
その身体を愛撫する様に、キーボードを滑る指。
嬌声を上げ、ガクガクと身体を揺らす目の前の小さな少女。
…随分歪な形だが、与える側と受ける側がいて。それはまた双方向でもある。
自分達がしている行為が、セックスなのだと改めて自覚する。
これもまた、進化というモノなのかも知れない。
…いや、大げさな話だ。コレは、私と彼女の遊戯。そのぐらいの方が良い。
いっそう高くなったベルの声が、私を現実へと引き戻す。
ちらりと見たグラフの波形が、限界が近い事を告げる。
「…そろそろか」
スパートを掛けるように激しく叩き込む。
言葉にもならない呻き声を上げ、身体を戦慄かせてベルの身体がガクガク揺れる。
耳までを紅潮させ、大きく口を開き、声にならない悲鳴を上げて。
やがて身体を大きく仰け反らせて震えたベルは、繰り糸が切れたように
その場に崩れ落ちた。
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熱いシャワーを浴びる。情事の残り香を洗い流し、思考をクリアに。
…結果としてはあのまま原稿と睨み合うよりは遥かに有意義ではあった。
どちらの為のレクリエーションだか判った物ではない。
それが可笑しくて私は少し笑った。
髪を拭きながら部屋に戻れば、過負荷で一時的にダウンした(俗に言えばイッた)
ベルがハンドタオルを身体に捲いて座っていた。
擬音で形容すればちょこんと、というヤツだ。コレはコレでなかなかの光景ではある。
「起きたか。いや、起こしたか?」
「問題なし。このタオル…ボスが?」
「…風邪はひかんだろうが、裸で転がしておくのもなんだろう?」
常に服かアーマーを着せ続けているおかげか、ウチの神姫は完全な素体状態を人間で
言う裸の様に認識している。そして、羞恥もする。
もっともそうなる様に仕込んだのは私だが。
羞恥するコイツらをメンテする弟の狼狽した顔と言ったらもう傑作だ。
素晴らしきかな人生。
「ありがとう…」
小さく呟き、下を向くベルの声に現実に戻る。いい反応だ、育てた甲斐を感じる。
「私は仕事に戻る…戻って寝ろ」
「…充電は足りている。今日はここで寝たい」
やれやれ。ま、情事の後ぐらい優しくしてやるのもいいだろう。
「なら、ここで眠れ。寝付くまでは傍に居てやる」
私もベッドに横になり、ベルを寝かせる。
「手、貸して」
「握りたいのか?指にしておけ」
差し出した指を握り、はにかんだような笑みを浮かべてベルが目を閉じる。
微かに残る疲労感と火照った身体。何よりこの弛緩した空気が私の眠気も誘う。
時計の針は午前4時半を示していた。
…ハンパな時間だ。やはり今夜は私もこのまま眠ってしまおう。
この心地よさで眠らないのも惜しい。
「おやすみ、ベル」
もう眠っている彼女にこの声は聞こえまい。
だが、その無意味さが人生の機微というヤツだろう。
一人小さく笑った私が眠りに落ちるまで、そう時間は掛からなかった。
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