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「妄想神姫:第十五章(後編)」(2007/02/16 (金) 18:28:48) の最新版変更点
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**暗き過去に、深き眠りを(後編)
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どうやら“かまきりん”の制御は、本体たる神姫素体から蟷螂頭の方に
移ったらしい。恐らく昆虫の頭に専用のAIが仕込んであるのだろう。
AIの導入自体は誰もがやっている事なので構わないが、この使い方は
少々解せなかった。神姫の意思を無視する事は、私もアルマも赦せん!
そしてアルマは“アサルトキャリバー”を起動させ、距離を詰める!!
「……ここからは、本気で行きますッ!!」
「Shaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!」
「行け“かまきりん”!何かされる前に切り裂いちゃえ!!」
そっと、アルマが自らの腰に手を当てた。ベルトのバックル部分だ。
縁に偽装されたレバーを半分起こすと同時に、“Heiliges Kleid”の
アーマーが浮き上がり、垂れ下がっていたマント部分が水平に立つ。
その縁は実剣の様に研ぎ澄ましてある……全てはこの時の為なのだ!
『Plug-out!』
「G、Gyaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!??」
「アルマ!……よし、装備の折り込みと展開は成功した様だな」
再び電子音が叫ぶ。同時にアーマー全体が爆ぜ、四方に飛び散った!
鋭利な装甲板が幾つも胴部に刺さり、蟷螂の悲鳴が空間を支配する。
そして肝心要の爆心地には、既に先程までのアルマの姿はなかった。
ダメージをどうにか堪えた魔物が必死になって、“敵”の姿を探す。
「ぶ、ぶひ!?どういう事……?“かまきりん”ッ!!」
「Urrrrrrrrrrrrrr……!?」
「ここです、あたしはここにいます!」
「ぶふぅ!?あ、あれは……“あくまたん”!!」
皆の視線が上に集まる。キャノンの誘爆やアルマの“装甲排除”によって
鍾乳洞の天井は一部崩れ、外の光がエンジェルラダーの様に差していた。
その輝きを背に天へ舞うのは、黒き一人の武装神姫だった──アルマだ。
「……いいえ、そうじゃないですよ猪刈さん……ッ!!」
「Grrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr……!?」
「あたしは、紅星の閃姫(ロードナイト・ヴァルキュリア)です!」
紅き星の閃きを持つ戦乙女……私が三人の為に考えた二つ名の一つだ。
ロッテに以前約束した事柄であるからな、二人にも是非与えたかった。
センスが壊滅的な猪刈めには、一生こういう思考は宿らぬだろうがな?
「ろ、ろっ?な、なんだよそれ格好悪い……“かまきりん”!!」
「Syarrrrrrrrrrrrrrrrrrrrraa!!!!」
「紅き“戦乙女”の名にかけて……この戦い、頂きますッ!」
悪魔の意匠を一部残す物の、頭上に輝く“天使の環”と弾倉機構を持った
大いなる槍に盾……ロッテに引けを取らぬ“戦乙女”の姿がそこにある!
翼の狭間にある二基のブースターは、さながらアルマの頭髪にも見えた。
ロッテの勇姿と他に大きく違うのは……大型化した腰部のスカートだな。
「なんだよ、ナマイキ言っちゃって!撃て撃てッ!!」
「Shagyaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!」
「マイクロミサイル!?……ですが、この程度ッ!」
変わり身にすっかり興奮した蟷螂めは、命令通りに全身の装甲から
ミサイルを放つ。だが、撃っているのは“かまきりん”ではない。
砲撃特化のフォートブラッグなら兎も角、この程度の戦術AIなら
ミサイルの弾道制御も上質ではない。全身のブースターを噴かし、
無数の弾幕を振り解きつつ上空から一気に接近……背後を取った!
「一気に攻めろ、アルマ!勝負を決めてしまえ!」
「はいっ!この槍で……魔物を、倒しますッ!」
ここが最大の勝機と見て、私は最後の指示をアルマへと与える。
猪刈の判断不足に付け込んで、一気に畳み込むチャンスなのだ!
「ブレードスカート起動……はぁあっ!」
「Shaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!?」
「鎌が!?な、なにしてんだよぉ、斬れ、踏めっ!!」
“妹”は私の言葉を受けて、スカートに仕込んであった“腕”を
展開。その先端に据えられた六本のブレードを高速回転させて、
振り返りざまに斬ろうとしてきた蟷螂の鎌を、跳ね飛ばした!!
皮肉にも、同じ第四弾のジルダリア・ジュビジー両方のタイプを
参考にした新武装、“ヴァルキュリア・ロクス”の一撃だった。
「貴方の腕は二本。私には……もっと沢山の腕があります!」
「Gyaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!?」
「か、“かまきりん”ッ!?」
そう宣言したアルマは、左手のバックラーを水平に構え……発射!
いや、より厳密には盾に仕込まれたクローアームを展開したのだ。
鈎爪は過たず蟷螂の頭を捉え、アームの先端に仕込まれた銃器……
“ジャマダハル”サブマシンガンが複眼式カメラアイを粉砕する!
「捉えました……これで、決めさせてもらいますっ!」
「AhhhhhhhhGyaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa……!!」
「ぶひぃ~っ!!!ば、バカなバカなぁっ!?」
AIの戦意が薄れた瞬間を狙い、アルマは胴体を垂直方向に貫く形で
左手で支えた槍を突き刺し、右手に掛かった“トリガー”を弾いた!
同時に炸薬の衝撃で、鋭い穂先が蟷螂の機関部へと叩き込まれる!!
「──────フォイエルッ!!」
「Gaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa……!???!」
「ぶひぃ~っ!!!ば、バカなバカなぁっ!?」
アルマが“別のトリガー”を弾いた瞬間、忌まわしい蟷螂の上半身は
木っ端微塵に爆ぜる。“かまきりん”の武装は全滅、勝負ありだな。
裂帛の轟音が止んだ後には、胴体を砕かれ藻掻き苦しむ魔物が居た。
「ど、どういう事だよッ!?なんで槍だけで爆発ぅッ!!?」
「零距離砲撃をしてはならないと、誰も決めておらんだろうが」
「今回は、シュラム用のグレネード弾を撃ち込んでみましたよッ」
右手の“フラーメイェーガー”は、一見してただのランスではない。
炸薬によるパイルバンカー機能は勿論の事、穂先を通して敵の体内に
弾丸を撃ち込む事が出来る、“零距離砲撃の為の銃”でもあるのだ。
リボルバー機構まであるのに全く気付かない、猪刈めの眼力が悪い。
「今出してあげますから……やああっ!!」
“ヨルムンガルド”を拾ったアルマが、残った蟷螂の躯を斬り捨てる。
その中には、悪夢から醒めつつある“かまきりん”が横たわっていた。
感極まったアルマは武器を全て降ろした後、彼女をそっと抱き寄せた。
「う、ぅ……あれ、小官は……まだ生きてる……?」
「ユニットが壊れて、正気を取り戻したのか。何よりだ」
「……よかったです。助かってよかった、助けられた……!」
「小官の負けみたいですね……話を、聞かせてください」
『テクニカルノックアウト!勝者、アルマ!!』
「これであたしの過去も精算できました、マイスター!」
こうして戦いは終わり、二人は無事にヴァーチャル空間を抜け出した。
以前の時と同じ鐵を踏まない為に、私はエントリーゲートからアルマを
素早く回収……すぐに猪刈の所へと向かった。案の定口論をしている。
別れ際にアルマが2~3助言をした為か、“かまきりん”の目は鋭い。
洗脳か自閉症か分からんが……ともあれ今は、それを振り払った様だ。
「なんであんな負け方するんだよぅ!お前までバカかッ!?」
「お言葉ながら……小官にもマスターを選ぶ権利がある筈!」
「そう言う事だ猪刈。衆人環視の中で約束を破るか、貴様?」
「う、うぐっ!う、煩い!そんな約束なんか……ゲゥッ?!」
あのバカが“かまきりん”を破壊するよりも早く、ロッテが動いた。
私の肩を蹴って跳躍し、猪刈の眉間を“フェンリル”で殴ったのだ。
鉛玉を撃ち込むよりは遙かに弱いが、奴を気絶させるには十分だな。
「蒼天の旋姫(セレスタイン・ヴァルキュリア)が、見届けてますの」
「……ロッテや、二つ名とはバトルエントリー時に名乗る物だぞ?」
「これだって立派なバトルですの。あの娘を救い出せましたしね♪」
「忝ない。後、相談なのだが……マスターを捜していただけないか」
「引き受けよう、最早猪刈などの元で苦しむ事がない様に手配する」
──────悪夢は必ず醒めるよ、朝はきっと来るのだから。
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