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「妄想神姫:第十四章」(2007/02/16 (金) 18:24:56) の最新版変更点
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**自らの成せる事を、為したいから
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世間では三連休となる少し前の日。私・槇野晶は一つの店に向かった。
“ホビーショップ・エルゴ”……日暮めが経営する店に“二人”でだ。
少々挑戦的な行動ではあるがこれもまた、HVIFの意義を問う為には
欠かせぬ行為の一つである……そう、“人間社会への単独進出”だな。
「お出かけ~、お出かけ~、お姉ちゃんとお出かけですの~♪」
「葵、そんなにはしゃぐな。クララが胸ポケットから落ちるぞ」
「だってわたしは初めてですの、この姿で一緒におでかけはッ」
とは言え制約を自ら課した手前、今日HVIFを使うのはロッテのみ。
というわけで、私達は四人で……見た目は二人だが……店の門を潜る。
暖冬の所為もあってか、カウンターでは日暮めが眠そうに欠伸をする。
奴が私達に気付いたのは、欠伸が終わって数秒後……気を確かに持て。
「ふぁあぁぁ~……ん?晶ちゃ、じゃないや。晶、いらっしゃい」
「有無。来てやったぞ、日暮。先日のメールは読ませてもらった」
「あ、あれね。基本プログラムとかは……って、そっちの娘は?」
「む、異母姉妹の葵だ。先日フィンランドから帰ってきたのでな」
「は、初めましてですの。日暮さんにジェニーうさ大明神さま♪」
無論、異母姉妹だのフィンランドだのは全部私の描いた筋書きだ。
欺くのは心苦しいが、フェレンツェめとの“約定”だからな……。
極力平静を装った私と葵だが、流石に若干疑いの目が向いている。
日暮は勿論の事、胸像のジェニー。そしてたった今来店した客も。
「人間の妹さんなんていたんだ、晶。てっきりロッテちゃんとか……」
「……そう言えば、何故初対面なのに私をその名で呼べるのですか?」
「あれ?ゲッ、やべ……!て、店長アタシこれで帰る、また来るッ!」
──何故、客である所の少女にまで逃げ出されるのか不可解だが。
というより、あの少女が着ていた服。私がデザインした物に……?
いや、それ所ではないか。今日は、結果報告をしに来たのだった。
待ちきれずに、葵の胸ポケットから飛び出したのはクララである。
その手に握られていたのは、本と杖であった。私の作品の一部だ。
「日暮さん。貴方から送られたアーカイブ、ボクが解読したんだよ」
「クララちゃんが?じゃあ、この本と杖ー……いや、違うかなコレ」
「察しがいいな。共に解析した私が作り上げた、彼女の“武器”だ」
それは本と言うには無骨であり、杖と言うには先端が槍の様であった。
何よりどちらにも鋼が使われており、杖には弾倉まで備え付けている。
そう……これは“盾”と“槍”であり、更に“魔導具”でもあるのだ。
「備蓄データは、日暮さんの書式通りボクが変換して書き込んだ」
「えっ?だって、一頁当たりでもPCなら二分くらい掛かるぞ?」
「ボクの能力なら、二分で十二頁は処理できるもん。余裕だよッ」
「……へぇー。流石“オーバーロード”って所か、クララちゃん」
確かにクララの“ゲヒルン”は、スパコンも凌ごうかという超常的な
情報処理能力を、彼女自身に与えている。だがそれだげではないぞ。
クララは元より読書が好きなのだ、趣味として明記できる程度にな?
読むジャンルも、漫画からビジネス書……更には辞書や専門書まで。
彼女は暇さえあれば本を読む。故に知識の量は、半端ではないのだ。
「ただ能力を持つだけではなく、能力を使うのが好きだからこそだ」
「与えられた役割と才能を、使う事が好きか……良い事だと思うよ」
「ボクに出来る事をなんでもしたいだけ。褒める事じゃないもんッ」
と素っ気なく言い放つクララだが、少し照れている様に見えるな。
ここで、彼女にさせてみたい事を思いついたが……それは後々だ。
色々手続きが面倒な事になりそうだが、そこは何とかしてみよう。
ここで私の胸ポケットから、やっとアルマが顔を出してきた様だ。
「あ、あのっ。初めまして!日暮さん、ジェニーさん……です?」
「そうです、大明神ではありませんので。宜しくお願いしますね」
「君が、アルマちゃんかな?話は晶から聞いたよ……元気そうだ」
「はいっ、マイスターの御陰で……あたし自身が見えてきました」
「晶。人数が増えて大変だけど、君が拠り所なんだから確りな?」
何を言うか、と笑ってみせる。“パーフェクトな仕事を”が信条だ。
ならば“妹達”を立派に、幸せにしてみせるのもパーフェクトにッ!
私自身の魂に掛けて、それだけは一生を掛けて成し遂げるつもりだ。
ただ同時に、私は皆の自由意思を護る。したい事をさせてやりたい。
理論だけではない感性や心情は、マイスター(職人)には必要なのだ。
「これ、マイスターが作ってくれたんですよ。戦乙女の槍です!」
「これが……なかなか攻撃的な能力持ってるね、使いこなせる?」
「分かるか日暮。だが、アルマの身体能力を一度見てみるといい」
「え?!あ、あのマイスター、ここで踊っちゃっていいんです?」
「構わぬ。ポケットの中で窮屈だっただろう、少し披露してやれ」
その言葉を聞いてアルマは瞑目し、槍をそっと構えて舞い始めた。
彼女はとりわけ躯を動かす事が好きなのだ。しかも舞踊の類をな。
更に興が乗れば──────ほら、耳を澄ませ。聞こえるだろう?
軽やかで澄んだ彼女のハミングが、最近流行のJPOPの旋律が。
猪刈めに抑圧されて長らく出来なかった、自分の趣味が出来る事。
それが如何に幸せか、舞い踊るアルマが一番感じているだろうな。
「……こんな感じです。あの、えっと。如何ですか皆さんっ?」
「ストラーフとは言え、そんな重い槍を持って踊れるんだ……」
「修理は勿論、晶さんの改造も目覚ましい効能がある様ですね」
「うん。でもそれ以上に、綺麗だったと思うよ?楽しそうだし」
……日暮、人の“妹”に色目を使って赤面させるのが楽しいのか?
クララも身長程ある槍を抱え、おろおろするばかりで可笑しげだ。
だが、どちらも満更では無さそうだな……これが平穏という物か。
「どうせですから、エルゴのバトルフィールドで試験してみますの?」
「おおッ、それは良いな葵!クララ、アルマ。一度模擬戦してみるか」
「ん、丁度いいや。オレも二人が気になるし、試してみてくれるかな」
「は、はい分かりました日暮さんっ!クララちゃんも、一緒にやる?」
「やってみよう、アルマお姉ちゃん。一度使って、様子を見たいもん」
「では、愛する“妹達”の勇姿をとくと拝見しよう。楽しみだな……」
──────為したい事、成せる事。それがあれば、前に進めるよ。
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**自らの成せる事を、為したいから
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世間では三連休となる少し前の日。私・槇野晶は一つの店に向かった。
“ホビーショップ・エルゴ”……日暮めが経営する店に“二人”でだ。
少々挑戦的な行動ではあるがこれもまた、HVIFの意義を問う為には
欠かせぬ行為の一つである……そう、“人間社会への単独進出”だな。
「お出かけ~、お出かけ~、お姉ちゃんとお出かけですの~♪」
「葵、そんなにはしゃぐな。クララが胸ポケットから落ちるぞ」
「だってわたしは初めてですの、この姿で一緒におでかけはッ」
とは言え制約を自ら課した手前、今日HVIFを使うのはロッテのみ。
というわけで、私達は四人で……見た目は二人だが……店の門を潜る。
暖冬の所為もあってか、カウンターでは日暮めが眠そうに欠伸をする。
奴が私達に気付いたのは、欠伸が終わって数秒後……気を確かに持て。
「ふぁあぁぁ~……ん?晶ちゃ、じゃないや。晶、いらっしゃい」
「有無。来てやったぞ、日暮。先日のメールは読ませてもらった」
「あ、あれね。基本プログラムとかは……って、そっちの娘は?」
「む、異母姉妹の葵だ。先日フィンランドから帰ってきたのでな」
「は、初めましてですの。日暮さんにジェニーうさ大明神さま♪」
無論、異母姉妹だのフィンランドだのは全部私の描いた筋書きだ。
欺くのは心苦しいが、フェレンツェめとの“約定”だからな……。
極力平静を装った私と葵だが、流石に若干疑いの目が向いている。
日暮は勿論の事、胸像のジェニー。そしてたった今来店した客も。
「人間の妹さんなんていたんだ、晶。てっきりロッテちゃんとか……」
「……そう言えば、何故初対面なのに私をその名で呼べるのですか?」
「あれ?ゲッ、やべ……!て、店長アタシこれで帰る、また来るッ!」
──何故、客である所の少女にまで逃げ出されるのか不可解だが。
というより、あの少女が着ていた服。私がデザインした物に……?
いや、それ所ではないか。今日は、結果報告をしに来たのだった。
待ちきれずに、葵の胸ポケットから飛び出したのはクララである。
その手に握られていたのは、本と杖であった。私の作品の一部だ。
「日暮さん。貴方から送られたアーカイブ、ボクが解読したんだよ」
「クララちゃんが?じゃあ、この本と杖ー……いや、違うかなコレ」
「察しがいいな。共に解析した私が作り上げた、彼女の“武器”だ」
それは本と言うには無骨であり、杖と言うには先端が槍の様であった。
何よりどちらにも鋼が使われており、杖には弾倉まで備え付けている。
そう……これは“盾”と“槍”であり、更に“魔導具”でもあるのだ。
「備蓄データは、日暮さんの書式通りボクが変換して書き込んだ」
「えっ?だって、一頁当たりでもPCなら二分くらい掛かるぞ?」
「ボクの能力なら、二分で十二頁は処理できるもん。余裕だよッ」
「……へぇー。流石“オーバーロード”って所か、クララちゃん」
確かにクララの“ゲヒルン”は、スパコンも凌ごうかという超常的な
情報処理能力を、彼女自身に与えている。だがそれだげではないぞ。
クララは元より読書が好きなのだ、趣味として明記できる程度にな?
読むジャンルも、漫画からビジネス書……更には辞書や専門書まで。
彼女は暇さえあれば本を読む。故に知識の量は、半端ではないのだ。
「ただ能力を持つだけではなく、能力を使うのが好きだからこそだ」
「与えられた役割と才能を、使う事が好きか……良い事だと思うよ」
「ボクに出来る事をなんでもしたいだけ。褒める事じゃないもんッ」
と素っ気なく言い放つクララだが、少し照れている様に見えるな。
ここで、彼女にさせてみたい事を思いついたが……それは後々だ。
色々手続きが面倒な事になりそうだが、そこは何とかしてみよう。
ここで私の胸ポケットから、やっとアルマが顔を出してきた様だ。
「あ、あのっ。初めまして!日暮さん、ジェニーさん……です?」
「そうです、大明神ではありませんので。宜しくお願いしますね」
「君が、アルマちゃんかな?話は晶から聞いたよ……元気そうだ」
「はいっ、マイスターの御陰で……あたし自身が見えてきました」
「晶。人数が増えて大変だけど、君が拠り所なんだから確りな?」
何を言うか、と笑ってみせる。“パーフェクトな仕事を”が信条だ。
ならば“妹達”を立派に、幸せにしてみせるのもパーフェクトにッ!
私自身の魂に掛けて、それだけは一生を掛けて成し遂げるつもりだ。
ただ同時に、私は皆の自由意思を護る。したい事をさせてやりたい。
理論だけではない感性や心情は、マイスター(職人)には必要なのだ。
「これ、マイスターが作ってくれたんですよ。戦乙女の槍です!」
「これが……なかなか攻撃的な能力持ってるね、使いこなせる?」
「分かるか日暮。だが、アルマの身体能力を一度見てみるといい」
「え?!あ、あのマイスター、ここで踊っちゃっていいんです?」
「構わぬ。ポケットの中で窮屈だっただろう、少し披露してやれ」
その言葉を聞いてアルマは瞑目し、槍をそっと構えて舞い始めた。
彼女はとりわけ躯を動かす事が好きなのだ。しかも舞踊の類をな。
更に興が乗れば──────ほら、耳を澄ませ。聞こえるだろう?
軽やかで澄んだ彼女のハミングが、最近流行のJPOPの旋律が。
猪刈めに抑圧されて長らく出来なかった、自分の趣味が出来る事。
それが如何に幸せか、舞い踊るアルマが一番感じているだろうな。
「……こんな感じです。あの、えっと。如何ですか皆さんっ?」
「ストラーフとは言え、そんな重い槍を持って踊れるんだ……」
「修理は勿論、晶さんの改造も目覚ましい効能がある様ですね」
「うん。でもそれ以上に、綺麗だったと思うよ?楽しそうだし」
……日暮、人の“妹”に色目を使って赤面させるのが楽しいのか?
クララも身長程ある槍を抱え、おろおろするばかりで可笑しげだ。
だが、どちらも満更では無さそうだな……これが平穏という物か。
「どうせですから、エルゴのバトルフィールドで試験してみますの?」
「おおッ、それは良いな葵!クララ、アルマ。一度模擬戦してみるか」
「ん、丁度いいや。オレも二人が気になるし、試してみてくれるかな」
「は、はい分かりました日暮さんっ!クララちゃんも、一緒にやる?」
「やってみよう、アルマお姉ちゃん。一度使って、様子を見たいもん」
「では、愛する“妹達”の勇姿をとくと拝見しよう。楽しみだな……」
──────為したい事、成せる事。それがあれば、前に進めるよ。
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