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**戦うことを忘れた武装神姫 その18
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・・・[[その17 >戦うことを忘れた武装神姫-17]]の続き・・・
「ぬっふっふ・・・」
装着した機械のスイッチを入れるリゼ。
キュイイィィィ・・・
サイズに似合わない、妙に迫力のある動作音がフィールドに響いた。
「あーっ! リゼ、いつの間にぃ?!」
謎の機械を搭載したリゼの姿に、エルガが声をあげた。
「なんだ、あれは。」
「あれー? にゃーさん知らないの? リゼとにゃーで作った、サブパワーユニットにゃの。 CTaねーさまに持って行かれちゃったと思っていた
んだけど、予備も作ってたみたいにゃのだ。」
「あぁ、この前発売延期になった、アレの原型かぁ。」
CTaに振る久遠。
「そうそう。ま、形かえて出すつもりだけどね。 さーて、リミッター無しのプロトタイプ、どれだけの能力があるか、見せてもらおうかねぇ。」
腕組みをしながら、いつの間にかモニター席に座っているCTa。 押しのけられた久遠は、頭だけを何とかモニター席に突っ込んで観戦。。。
「ぬふふふふ・・・きてる、来てるぞ・・・! システムオールグリーン、同期完了・・・ 冷却システム作動!」
ブヒョオォォォォ・・・・ン・・・
背中の機械が、より一層大きな作動音に変わる。向こうのモニター席に座るサイトウにさえ聞こえるほどの響き。
『・・・来るぞ。 やつはほとんどの武装を捨てたようだ。 一撃離脱型の戦闘方法になるだろう。 ポイントT2へ移動、誘い込め!』
サイトウが命じると、ストラーフは縦長の建物が両サイドに並ぶ、いかにもな地点へ移動。
「リゼ、いっきまーす!!」
相手が移動を終えると同時に、リゼも動いた。 装置を背負ったことによる重量増を微塵も感じさせない実に軽やかな足取りで駆け回り、すぐさま相手
の「名無し」ストラーフを発見。
「リーダー、みーつけたっ!」
その瞬間。
『今だ! ファイア!!』
サイトウの声に反応し、名無しのストラーフはぐっと拳を握る。リゼの左右の建物が、大音響と共に崩壊。 このフィールドに仕掛けられたトラップ中、最大のもののひとつ・・・。
「う、うわあぁあぁぁぁっっ!!!」
再び埋まるリゼ・・・ ではなかった。
「・・・と埋まるとでも思ったか?」
サイトウも、そして久遠も、CTaまでもが見えないほどの速さだった。リゼは名無しのストラーフの背後に廻り、腰(正確には背中の装備一式)をがっ
ちりと掴んでいた。そして相当の重量があろうかと思われる相手をひょいと持ち上げ、
「そぉ・・・れっ!!!」
何とそのまま、ジャーマンスープレックスを仕掛けた。 突然のことに相手は一瞬反応が遅れるも、リアアームにて何とか回避、リゼを突き放す。
ずざざざざざー!!
飛ばされたリゼは、瓦礫の上を滑走する。しかし、無傷。
「いってぇなぁ・・・ しかしその反応速度、さすがは元リーダー! って、え、えええぇぇっ?!」
起きあがろうとする前に、相手からのまるでアラレのようなグレネード弾が撃ち込まれる・・・
『いけ! 撃ち尽くすまで打ち込め! 跡形もなく消し去るんだ!』
サイトウが狂喜のごとく叫ぶ。煙るフィールド。壮絶な光景に、ブーイングがわき上がる。 しかし、サイトウは攻撃を止めさせない。 やがて、弾が
尽きたのだろうか、攻撃が一旦やんだ。 すると・・・
「けほっ・・・ ああっ?! せっかくヌシさんに新調してもらったツインテールが、片方どっかいっちまったじゃないかっ!! こ・の・や・ろ〜!」
ユニットから相変わらずの騒音をまき散らしながら、のっそりとリゼが立ち上がり・・・撃ち込まれたミサイルのうち何発かを抱えている。
『な・・・にぃぃぃぃっ!!』
絶句するサイトウ。これほどまでのアタックを喰らっても、ほぼ全くの無傷で、しかも余裕あふれる顔付きで弾を抱えている神姫・・・ 「名無し」も、この状況をどう判断すべきか、動きが止まっていた。
「投げられたものを投げ返すのは、ウチでは慣れっこなんだよ!」
叫ぶや否や、装置で打ち出すよりも正確に、敵の「名無し」めがけてそれらを投げつける。なにも指示が出せないサイトウ、逃げまどう「名無し」・・・先までのブーイングが、今度はリゼを応援する声援へと変わっていた。
「エルガとのじゃれあいで身につけたプロレス技、シンメイとのデザートの取り合い合戦で投げつけあうフォークとサジ・・・素晴らしい切れ味だね。」
久遠がぼそり呟く。 エルガは画面を叩いて応援し、シンメイとリゼは、技についてあれやこれやと討論中。。。 こりゃぁ次のリンゴ取り合い合戦は
一段と壮絶になるだろうなぁ・・・と考える久遠に、CTaが言った。
「な、言ったとおりだろ? いつも通り、それが一番強いんだって。そうだリゼ、この前話したあれ、やってみろよ。 カッコイイぞ〜。」
久遠のマイクを再び横取りし、CTaはリゼに言った。
「あー・・・、やってみるか。」
火薬類が残り少なくなり、どうするか考えていたリゼは、CTaの呼びかけに再び浮かべる悪魔の笑み。
反撃が一息ついたため油断したのだろうか、名無しのストラーフは弾切れで不要となった装備を捨てるため、一時動きを止めようとした。 そのスキを
リゼは見逃さなかった。
「せぇの・・・ とりゃぁああぁぁぁっ!!」
高らかに放りあげたグレネード弾を、パワーユニットを直結し出力増強状態の右足で次々に蹴り出す。 弾は恐ろしい程正確に、名無しの背後の建物に
命中。 崩れ落ちる壁を避けようと、思わず飛び上がる名無し。
今だっ!!
リゼは相手が飛び上がる瞬間 -すなわち、最も無防備な瞬間- を探っていた。 パワーユニットをフル作動させ再び猛烈な速さで名無しのストラーフに接近、
「な、何を・・・?!」
相手が考える間を与えず、装備が中途半端に外された状態で機動性が落ちている相手の両の足首をがっちりと掴んだ。 そして・・・
「うおりゃああぁっ!」
「うっわーーー!」
名無しに、そのままジャイアントスイング。 パワーユニットをフルパワーモードにしていることもあり、半端に残っている名無しの武装はほとんどが
遠心力で飛ばされた。 リゼは数回廻したところで名無しを放り投げ、久遠特製のステアーもどき銃を取り出し狙いを定め、引き金を引いた。
パッ、パパパッ! パスパスパスッ!!
必要最小限の射撃で、残る武装のみを破壊。 名無しの本体に、一切の怪我は無し。 恐ろしいほどの精密射撃。。。
体勢を立て直し、なんとか着地した名無は背中に着けた武装を探る。しかし機能するものは- 、ひとつとして無かった。 にらみ合うリゼと名無し。
『まだだ・・・T6へ移動だ! そこで仕掛けられる!』
明らかに焦りの色が見えるサイトウが声をかけた。 名無しは一瞬、移動をする素振りを見せた・・・が。
『おい、なぜ移動しない!』
「Mr.サイトウ、それは無駄なことです。 今までの相手側の動きを見て、まだ気づかないのですか?」
その声に・・・、リゼも驚きの表情になった。
「もしあなたが、本当に神姫の戦いというものを理解しているのであれば、明らかにあちらが優位であることが解るはずです。」
そう言う名無しの足は、わずかに震えている。自らの意志で、プロテクトが一部解除されたのだろうか。
『だから何だというのだ? ならば、武装で補え。罠で差を埋めろ!』
「そうですか。でしたら、あなたの言うことが本当に正しいのか、今ここで確認してはいかがですか? リゼ・・・さん、いきますよっ!」
言うが否や、名無しは再び建物の密集した地点へ移動、壁に埋め込むように隠していたランチャーを2基取り出し、さらにリゼを挑発する。
『なぁ、ヌシさん。 ちょっとだけ昔を思い出してもいいか?』
ぼそりと呟くようなリゼの通信が入った。 久遠が覗き込んだモニターの中のリゼは、今までにないほどに穏やかな、かつ自身に満ちた顔だった。リゼ
の言葉の意味するところを酌み取った久遠は、
「あぁ、いいぞ。 但し、無理は禁物ね。」
と答えた。 と、さらに小声で久遠にだけ聞こえるレベルで訊いてきた。
『 -昔のあたしを見ても、嫌いにならないか?』
「昔も今も、リゼはリゼ。 大好きだよ。」
即答する久遠。
『・・・ありがとう。 やっぱヌシさんは最高の神姫使いだよ。』
リゼは再びパワーユニットを全開にすると、名無しが待つポイントへ駆けていった。
-カッコイイ神姫になるために。
・・・>[[続くっ!!>戦うことを忘れた武装神姫-19]]>・・・
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[[>その19 へ進む>>戦うことを忘れた武装神姫-19]]
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**戦うことを忘れた武装神姫 その18
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・・・[[その17 >戦うことを忘れた武装神姫-17]]の続き・・・
「ぬっふっふ・・・」
装着した機械のスイッチを入れるリゼ。
キュイイィィィ・・・
サイズに似合わない、妙に迫力のある動作音がフィールドに響いた。
「あーっ! リゼ、いつの間にぃ?!」
謎の機械を搭載したリゼの姿に、エルガが声をあげた。
「なんだ、あれは。」
「あれー? にゃーさん知らないの? リゼとにゃーで作った、サブパワーユニットにゃの。 CTaねーさまに持って行かれちゃったと思っていたんだけど、予備も作ってたみたいにゃのだ。」
「あぁ、この前発売延期になった、アレの原型かぁ。」
CTaに振る久遠。
「そうそう。ま、形かえて出すつもりだけどね。 さーて、リミッター無しのプロトタイプ、どれだけの能力があるか、見せてもらおうかねぇ。」
腕組みをしながら、いつの間にかモニター席に座っているCTa。 押しのけられた久遠は、頭だけを何とかモニター席に突っ込んで観戦。。。
「ぬふふふふ・・・きてる、来てるぞ・・・! システムオールグリーン、同期完了・・・ 冷却システム作動!」
ブヒョオォォォォ・・・・ン・・・
背中の機械が、より一層大きな作動音に変わる。向こうのモニター席に座るサイトウにさえ聞こえるほどの響き。
『・・・来るぞ。 やつはほとんどの武装を捨てたようだ。 一撃離脱型の戦闘方法になるだろう。 ポイントT2へ移動、誘い込め!』
サイトウが命じると、ストラーフは縦長の建物が両サイドに並ぶ、いかにもな地点へ移動。
「リゼ、いっきまーす!!」
相手が移動を終えると同時に、リゼも動いた。 装置を背負ったことによる重量増を微塵も感じさせない実に軽やかな足取りで駆け回り、すぐさま相手の「名無し」ストラーフを発見。
「リーダー、みーつけたっ!」
その瞬間。
『今だ! ファイア!!』
サイトウの声に反応し、名無しのストラーフはぐっと拳を握る。リゼの左右の建物が、大音響と共に崩壊。 このフィールドに仕掛けられたトラップ中、最大のもののひとつ・・・。
「う、うわあぁあぁぁぁっっ!!!」
再び埋まるリゼ・・・ ではなかった。
「・・・と埋まるとでも思ったか?」
サイトウも、そして久遠も、CTaまでもが見えないほどの速さだった。リゼは名無しのストラーフの背後に廻り、腰(正確には背中の装備一式)をがっちりと掴んでいた。そして相当の重量があろうかと思われる相手をひょいと持ち上げ、
「そぉ・・・れっ!!!」
何とそのまま、ジャーマンスープレックスを仕掛けた。 突然のことに相手は一瞬反応が遅れるも、リアアームにて何とか回避、リゼを突き放す。
ずざざざざざー!!
飛ばされたリゼは、瓦礫の上を滑走する。しかし、無傷。
「いってぇなぁ・・・ しかしその反応速度、さすがは元リーダー! って、え、えええぇぇっ?!」
起きあがろうとする前に、相手からのまるでアラレのようなグレネード弾が撃ち込まれる・・・
『いけ! 撃ち尽くすまで打ち込め! 跡形もなく消し去るんだ!』
サイトウが狂喜のごとく叫ぶ。煙るフィールド。壮絶な光景に、ブーイングがわき上がる。 しかし、サイトウは攻撃を止めさせない。 やがて、弾が尽きたのだろうか、攻撃が一旦やんだ。 すると・・・
「けほっ・・・ ああっ?! せっかくヌシさんに新調してもらったツインテールが、片方どっかいっちまったじゃないかっ!! こ・の・や・ろ〜!」
ユニットから相変わらずの騒音をまき散らしながら、のっそりとリゼが立ち上がり・・・撃ち込まれたミサイルのうち何発かを抱えている。
『な・・・にぃぃぃぃっ!!』
絶句するサイトウ。これほどまでのアタックを喰らっても、ほぼ全くの無傷で、しかも余裕あふれる顔付きで弾を抱えている神姫・・・ 「名無し」も、この状況をどう判断すべきか、動きが止まっていた。
「投げられたものを投げ返すのは、ウチでは慣れっこなんだよ!」
叫ぶや否や、装置で打ち出すよりも正確に、敵の「名無し」めがけてそれらを投げつける。なにも指示が出せないサイトウ、逃げまどう「名無し」・・・先までのブーイングが、今度はリゼを応援する声援へと変わっていた。
「エルガとのじゃれあいで身につけたプロレス技、シンメイとのデザートの取り合い合戦で投げつけあうフォークとサジ・・・素晴らしい切れ味だね。」
久遠がぼそり呟く。 エルガは画面を叩いて応援し、シンメイとイオは、技についてあれやこれやと討論中。。。 こりゃぁ次のリンゴ取り合い合戦は
一段と壮絶になるだろうなぁ・・・と考える久遠に、CTaが言った。
「な、言ったとおりだろ? いつも通り、それが一番強いんだって。そうだリゼ、この前話したあれ、やってみろよ。 カッコイイぞ〜。」
久遠のマイクを再び横取りし、CTaはリゼに言った。
「あー・・・、やってみるか。」
火薬類が残り少なくなり、どうするか考えていたリゼは、CTaの呼びかけに再び浮かべる悪魔の笑み。
反撃が一息ついたため油断したのだろうか、名無しのストラーフは弾切れで不要となった装備を捨てるため、一時動きを止めようとした。 そのスキを
リゼは見逃さなかった。
「せぇの・・・ とりゃぁああぁぁぁっ!!」
高らかに放りあげたグレネード弾を、パワーユニットを直結し出力増強状態の右足で次々に蹴り出す。 弾は恐ろしい程正確に、名無しの背後の建物に
命中。 崩れ落ちる壁を避けようと、思わず飛び上がる名無し。
今だっ!!
リゼは相手が飛び上がる瞬間 -すなわち、最も無防備な瞬間- を探っていた。 パワーユニットをフル作動させ再び猛烈な速さで名無しのストラーフに接近、
「な、何を・・・?!」
相手が考える間を与えず、装備が中途半端に外された状態で機動性が落ちている相手の両の足首をがっちりと掴んだ。 そして・・・
「うおりゃああぁっ!」
「うっわーーー!」
名無しに、そのままジャイアントスイング。 パワーユニットをフルパワーモードにしていることもあり、半端に残っている名無しの武装はほとんどが
遠心力で飛ばされた。 リゼは数回廻したところで名無しを放り投げ、久遠特製のステアーもどき銃を取り出し狙いを定め、引き金を引いた。
パッ、パパパッ! パスパスパスッ!!
必要最小限の射撃で、残る武装のみを破壊。 名無しの本体に、一切の怪我は無し。 恐ろしいほどの精密射撃。。。
体勢を立て直し、なんとか着地した名無は背中に着けた武装を探る。しかし機能するものは- 、ひとつとして無かった。 にらみ合うリゼと名無し。
『まだだ・・・T6へ移動だ! そこで仕掛けられる!』
明らかに焦りの色が見えるサイトウが声をかけた。 名無しは一瞬、移動をする素振りを見せた・・・が。
『おい、なぜ移動しない!』
「Mr.サイトウ、それは無駄なことです。 今までの相手側の動きを見て、まだ気づかないのですか?」
その声に・・・、リゼも驚きの表情になった。
「もしあなたが、本当に神姫の戦いというものを理解しているのであれば、明らかにあちらが優位であることが解るはずです。」
そう言う名無しの足は、わずかに震えている。自らの意志で、プロテクトが一部解除されたのだろうか。
『だから何だというのだ? ならば、武装で補え。罠で差を埋めろ!』
「そうですか。でしたら、あなたの言うことが本当に正しいのか、今ここで確認してはいかがですか? リゼ・・・さん、いきますよっ!」
言うが否や、名無しは再び建物の密集した地点へ移動、壁に埋め込むように隠していたランチャーを2基取り出し、さらにリゼを挑発する。
『なぁ、ヌシさん。 ちょっとだけ昔を思い出してもいいか?』
ぼそりと呟くようなリゼの通信が入った。 久遠が覗き込んだモニターの中のリゼは、今までにないほどに穏やかな、かつ自身に満ちた顔だった。リゼ
の言葉の意味するところを酌み取った久遠は、
「あぁ、いいぞ。 但し、無理は禁物ね。」
と答えた。 と、さらに小声で久遠にだけ聞こえるレベルで訊いてきた。
『 -昔のあたしを見ても、嫌いにならないか?』
「昔も今も、リゼはリゼ。 大好きだよ。」
即答する久遠。
『・・・ありがとう。 やっぱヌシさんは最高の神姫使いだよ。』
リゼは再びパワーユニットを全開にすると、名無しが待つポイントへ駆けていった。
-カッコイイ神姫になるために。
・・・>[[続くっ!!>戦うことを忘れた武装神姫-19]]>・・・
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