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**神は降りて、姫とならん(前半)
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アルマも落ち着き、暫く経ったある冬の日。私達は四人連れ立って
とある場所を目指し電車を乗り継いでいた。ロッテとクララは肩、
アルマは白衣の胸ポケットだ。何れも掴まりやすく改造してある。
しかし何だ。アルマは意外な側面を、先程から見せつけてくれた。
「はぐはぐ……マイスターおいしいです、はいっ……♪」
「アルマや、コンビニのおにぎりを1つ丸々喰うのか?」
「うぐ、んっ……はい、だって食べ物がこんなにっ……」
この通りアルマにも食事機能があるのだ。しかもこの娘は大食い。
恐らくあの大修理時にMk-Z氏が仕込んだのだろうが……侮れぬな。
というわけで三人に昼食を与えながら、私達は電車を乗り継いだ。
「けふっ。ごちそうさまでした、マイスター……えっとぉ」
「そうか……では、そろそろ指定された駅だ、降りるぞ?」
「はいですの~♪それにしてもフェレンツェ博士……一体」
「マイスターの意見を聞く限り、マッドサイエンティスト」
私の背後に、脅威・好機……色々な視線が注ぐ。食事を喰う人形。
大方はそんな意識故だな。珍しいかもしれんが、嘆かわしい事だ。
自然からすれば人間の食事風景だって、同じくらい奇異な物だぞ?
半ば八つ当たりに近い義憤を仕舞い込み、私はカートを展開する。
それは大きなスーツケースをフロントに構えた、折り畳み自転車。
住まいがあんな地下である為、普通の自転車では何かと不便でな。
「さてと、ここから……もう見えているか。あのビルへ向かう」
「……マイスター、なんだか話が大きすぎる気がするんだよ?」
「私もそう思っている。まさかフェレンツェめの研究所が……」
都会の風を浴びながら、自転車を軽やかに乗る私は思う。彼奴めが
“あの”鳳条院グループ・本社ビルの一室を占拠しているのだぞ?
博士の研究テーマは今まで知らなんだが、あれでも天才科学者だ。
本社に“幽閉”されていたとて、それ自体はおかしくないのだが。
「そして何故、私が呼び出されるかだ。あの馬鹿げた方法は兎も角」
「マイスター……まだ橘さんの前でのアレ、怒っちゃってますの?」
「当たり前だ!あの親父め、人の前で恥を掻かせおって……ッ!!」
……聞くな。真面目に応対した私がバカなだけだ、その筈だが!
奴めから代金をむしり取り、詰問でもしてやらねば気が済まぬ。
というわけで、私はビルの入口……というより検問所に着いた。
「お嬢ちゃん、ここは散歩コースじゃないよ。別の道へ──」
「たわけ!22階のフェレンツェ博士に言え、槇野が来た!」
「へっ!?じょ、冗談言っちゃ……って、槇野晶さんッ!?」
「名前があるならさっさと通せ、博士とて暇はなかろうっ!」
「は、はいっ。で、でもどう見ても幼女……う、ううぅん?」
来客リストと私の顔を見比べる警備員を後目に、敷地へと入る。
顎に一発くれたかったが、ここで揉めて警察沙汰も馬鹿らしい。
この怒りも全部、フェレンツェめにぶつけてやるとしようかッ!
「ハッハッハ、よく来てくれたね槇野く……ぎゃああっ!?」
「此方から出向くのは初めてだな、なぁフェレンツェ……?」
「痛たたた、しかしいきなり膝蹴りとはヘビーな挨拶だねぇ」
「己の胸に半分聞け。もう半分は八つ当たりだ、気にするな」
というわけで、研究所に通されるなり私は一撃をくれてやった。
まあ奴も十分変人、この程度でへこたれる様なタマではないな。
その場で、私は神姫“三姉妹”達の紹介をさせてやる事とした。
「ふむ、こちらが以前からのロッテ君。で、クララ君にアルマ君か」
「そうだ。所でその“撫でながら話す”癖はどうにかならんのか?」
「何、私にも娘がいてね。どうしても手が寂しくなると言うかなぁ」
……今、物凄い事を聞いた気がした。フェレンツェめに娘だと!?
「それは今度聞こう……一々自慢する為に喚んだ訳ではあるまい?」
「いやいやっ。そんな事で喚んだとあっては、私は殺されてしまう」
「分かっているなら、本題に入ってくれ。重要な事なのだろうしな」
私が催促すると博士は部屋の自動式カーテンを閉じ、壁際に歩いた。
何なのか?と勘ぐった私を振り向き、博士は神妙な面持ちで問うた。
「……槇野君、君にも我が研究に協力してもらいたくてね」
「口外するな、嫌なら帰れ、大仰な実験だ、と言うのか?」
「いや、君は話が早くて助かる。実験とは……これなのだ」
博士は壁にセットされたテンキーを操作して、カードを差す。
鈍い音と共に壁……と思われていたシャッターが、展開した。
「これは人間……いや、ヒューマノイド・マシンか?!」
「人型神姫インターフェイス……彼女らの新しき躯だよ」
──────そこに眠るは、新たなる神の噐。
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