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*第四話 激闘!バレンタイン大作戦!!
(今回はルージュ&椿目線でお送りいたします)
時は2月14日、
かつては迫害の元で殉教した聖バレンタイン(バレンチノ)に由来する祭りだったものが
何時の間にやら日本では女性が男性にチョコレートを送る日となった。
義理チョコ友チョコ、そして本命チョコ……
日本の女性はこの本命チョコに想いを託して、想い人へと心を伝える。
それはある種の戦いである、
想い人が居る女性はチョコレートと言う名の甘い武器を携え、
その武器を用いて想い人の心を得るが為に女性は戦うのだ………
21世紀に入って三十年以上過ぎた今も、その戦いは静かに始まっていく……
そして、とあるマンションの一室、
其処においてある種の女性の戦いが始まろうとしていた……
「それじゃ、行ってきまーす」
「行ってらっしゃいませ、主殿…………さて、これからが勝負時です」
主殿が玄関から出て行くのを見送った後、私ことルージュは足早に厨房へと向かいます
これも来るべき決戦の日の為に、なるべく早く準備を終えなくてはなりません
今日は2月14日、バレンタインデーと呼ばれる戦いが始まる、と私は新聞で知りました。
そして、その戦いは女性が想い人に対する想いを込めて作ったある物が、戦いの勝敗を左右するとも知りました
だからこそ、ここで準備を怠ってはあのぶぶ漬けゴホンゴホン、椿さんに主殿を取られてしまいます
材料は既に主殿に”それとなく”頼む事で、全てを揃えることに成功しました
後は、主殿を喜ばせるのも落胆させるのも私の腕次第、ここで気合を入れなくては……
ヴァッフェバニーのフライトユニットを使い、
ガムテープでテーブルの裏に固定して隠してあったそれを、テーブルの上まで運び出す
銀色の包み紙に包まれた褐色の固体は、何時の時代も甘い物が好きな人々を誘惑してきた。
チョコレートと呼ばれるそれは、かつては神の食べ物と呼ばれ珍重されてきた
これに、私の思いを込めるのです。
さあ、今は甘いだけのこの褐色の固体に私の愛と忠誠心をこめて、
主殿が歓喜する一品へ仕上げるのです!
これが上手く行けば、
私と主殿との絆は椿さんが入る隙間の無いくらいに確固たる物になるでしょう!
その為にも、ここで私は頑張らなければならないのです!!
そう決心した私は早速、チョコレートの加工作業を開始した。
良し、先ずはチョコレートを細かくする、適当な道具がないからコルヌで刻む事にしよう
そして細かくしたチョコレートを鍋に入れて溶かして……
よしよし、チョコレートが溶け始めたな……………あれ?
なんだか変な臭いがし始めた……何故だ?
うわわっ!?溶けたチョコレートから黒い煙がっ!?
焦げ付いてるっ!?……―――――
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今日のTVは良いもんがありまへんなぁ……
何や最近は同じ様なもんばっかでちっとも面白くも無いどす。
主はんが暇つぶしに良いと言って置いてくれなはったゲームでもやろうかぇ……?
おや?……さっきから嗅覚センサーに焦げ臭い匂いを感じますなぁ
………いったい何やろ?ちょいと見てきたろ。
そう思い、ウチはその臭いの元の厨房へ行ってみる事にしたんや……
「……………ナゼダ、ナゼコウナルノダ('A`) 」
其処には、何やら黒い煙を吹き上げる何かのなれの果てが入った鍋と、
その前で何かブツブツ言いながら項垂れるルージュはんの姿が……
いったい何があったんや、これ?
「る、ルージュはん……何か焦げ臭いと思って来てみれば……
これはいったい何があったんどす?」
「チョコレートを溶かそうとしたら何故か煙を上げて焦げ付いた
……何処が悪かったのだ……」
「……えーっと、ひょっとしてひょっとすると……
ルージュはん、チョコレートを鍋に入れてそのまま火に掛けたんやろか?」
「む?その通りだが……椿さん、それの何処が悪かったのだ?」
「……ルージュはん、チョコレートは湯煎で溶かすものやで……
それを直接火に掛けたら焦げるのも当たり前どす……」
「な、何だってー!?、それじゃあ私のやった方法は間違いだったのか!?
……そんな……orz」
ウチの指摘で間違いに気付いたルージュはんはどっかで見たような表情で驚くと、
今度こそテーブルに突っ伏してしまった。
しょうのない人やなぁ、ちょっとだけ手伝うてやりましょか。
……にしても、何でチョコレートを溶かそうとしてやろか?ちょいと聞いてみましょ
「ルージュはん、所でチョコレートを何に使うつもりやったん?
ウチだけならともかく主はんにまで黙ってやるなんて
何か後ろめたい事に使うつもりやったんやろか?」
「……私は黙秘権を行使します。椿さんには断じて言えません」
あらぁ、言わないやなんて……ルージュはんもいけずやな。
まあ、ウチにも手は無い訳はないんやけど
「ルージュはん、黙るんやったら黙っててもよろしおす
けど、湯煎を知らないままやと、ルージュはんの事や、また同じポカをやらかすことになりそうやな
ま、ウチに知った事やないし、勝手にやってまた失敗すれば良いどす、それじゃあおおきに」
そう言って、ウチはルージュはんに背を向けて居間に戻ろうとする
「ま、待て!わかった!り、理由を言うから……
湯煎とやらの方法を教えてくれ……椿さん」
その場から去ろうとするウチの背に、
ルージュはんから焦りの混じった声が届いてきおった
流石のルージュはんも、2度も同じポカをやらかしたくなかったようどすな
ふふ、何事も意固地にならんと素直になる事が大事どす。
----
「―――――と言う訳だ、本当は貴方には教えたくなかったが……」
「なんや、バレンタインデーの日に主はんに渡すチョコを作ろうとしてたんやの
何もウチに黙る必要はないのに、何で黙ってやろうとしとったん?」
「そ、そこまで言う必要はない!…そ、それより早く湯煎とやらを教えてくれ!」
「フフ、まあ、そうやな、なら聞かないで置いときます
ルージュはんが言いたくないと言うんやったら無理して聞く必要もありゃせんな
それじゃ、湯煎を始めましょか?ルージュはん」
「……了解した……」
椿さんの卑怯な手(?)によって、私は渋々と極秘作戦の内容を言わざるえなくなった
チョコレートは鍋に入れて直接火に掛けるとてっきり思い込んでいた私は
迂闊なことに湯煎と言う方法を全く知らなかった。
その所為で貴重なチョコレートを無駄にしてしまったばかりではなく
事もあろうに敵(?)である椿さんの手を借りる事になるとは……私は悔しい……
何?何も椿さんの手を借りなくても後で自分で調べて行けば良いじゃないか、だと?
それが出来ればこんな苦労はしない、この作戦は”極秘作戦(だったの)だ。
主殿に気付かれない内に、自分自身(過去形であるが)の手で
今日中までにはチョコレートを完成させなければならないのだ。
……準備するチャンスは今日しかなかった、と言うのが尤もな理由なのだがな……
と、そんな事を考えているより作業を進めなければなるまい、愚痴を言っている時間は無いのだ
「先ずは鍋にお湯を張って、その中にボウルを浮かべて
そのボウルの中でチョコレートを入れてお湯の温度で溶かすんどす。
お湯の温度は60度まででキープする事、
それ以上の温度やとチョコレートの油分が分離するから気を付ける事どすぇ
この際、普通は温度を測るのに温度計を使いはるけど、
ウチら神姫は手の温感センサーで温度を測る事が出来るから、
今回は使わんでもよろしおすな」
私が色々と考えている内に椿さんは湯煎の方法を説明しつつ手際良く準備を整えていく
なんと、湯煎とはそう言う方法だったのか……これはメモリにしっかりと記録しなければ……
「ほらほら、ルージュはん、ボーっとしとらんとチョコレートを溶かさないと。
これはルージュはんがやるべき事やからな」
「へ?………あ、ああ、了解した」
メモリに記録した直後に言われて、つい私は気の抜けた返答をしてしまう。
そんな私の様子が面白かったのか椿さんは笑みを浮かべている
……くっ、全く腹立たしい人です。見ていなさい、椿さん。
私の主殿への忠誠心と愛を込めたチョコレートが完成したその時
貴方のその余裕は消し飛ぶのです!その時を覚悟してください。
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「良し、完全に溶けたぞ、後はこれを型に流し込んで冷蔵庫に入れて冷やせば完成だ」
「その調子どすぇ、ルージュはん。型はウチが用意してくるから少々待っとき」
ルージュはんがチョコレートを溶かしたのを見届けると
溶けたチョコレートが冷めないうちに戸棚からハート型の型を取ってくる
そういや何で主はんの家にハート型の型があるんやろか?………
主はんに菓子を作る趣味とかがあるなんて聞いたことないのになぁ?
ま、まあ、深くは追究しない事にしましょ、この世の中には知らんでええ事やってあるんやろうし
と、ウチがそんな事を考えつつ型を手に持ってルージュはんのとこへ戻ろうとしていると
「…………〇〒@Φ%#Δっっ!?!?!?」
ドンガラガッシャーン
ルージュはんの声にならない叫びと同時に、何かがテーブルから落っこちる音が……
ま、まさかとは思うけど………
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や、やってしまった……なんて事だ……
私は床に落ちてひっくり返り、中のチョコレートを盛大にぶちまけたボウルを見て途方に暮れていた
あの時、チョコレートを溶かした後、私は型を取りに行った椿さんが戻ってくるのを待っていた、
だが、そんな時に呼ばれざる客が来るとは私は思いもしなかった。
恐らく、奴はチョコレートの甘い匂いに誘われて来たのだろう。
あの黒光りした体に長い触角のカサカサブーンと動く黒い悪夢が、私の前に唐突に姿を現したのだ、
当然、心の準備なんぞ出来ていなかった私は完全にパニックになった。
私は無我夢中で側に置いてあったコルヌを手に持つと、
それを無茶苦茶に振り回し、何とか奴を追い払おうとした
その振り回したコルヌがチョコレートを入れたボウルにクリーンヒットするとは………
もう、駄目だ……これでは主殿に面目が立たない……
椿さんの手を借りておきながらこんなザマだ、私は……なんて駄目な神姫だろうか……
そう思うと自然にアイセンサーから水が流れ出てくる……これが、涙か……
「ちょ、ルージュはん、何泣いてはるん、泣いたらあかんって!?
今はチョコレートを完成させて主はんに渡すんやろ、それなのにこんな事で挫けたらあかんって」
「……そのチョコレートが……私の所為で……床に落ちて滅茶苦茶になったのだ
そんなのを……主殿に渡したところで……嫌な顔をされるのが関の山だ……
もう……これじゃ……駄目だ……私はもう……」
パシィッ
その次の瞬間、私の頬に衝撃が走った、私は何が起きたか一瞬だけ理解が出来なかった
椿さんに頬を叩かれたと理解したのは数秒経ってからだった
「ルージュはん!諦めたら其処で全てが終わりどす!
何事も諦める前に手を尽くせ、諦めるのは自分に出来る全てをやった後でやれ
そう、主はんの御父上は言ってはった。
ルージュはんはウチに勝ちたいんやろ?主はんをウチに取られたく無いんやろ?
やったらここで諦めんと頑張りや、ルージュはんがそんな調子じゃ……」
「もう良い……………分かった…………
椿さん、まさか貴方に励まされるとは………本っ当に不甲斐ないな、私は………
諦めるのは自分に出来る全てをやった後、か……その通りだ。
先ずは無事なチョコレートを集めよう。ホンの少しだけでも何か出来る筈だ……」
「そうや、諦めの悪さも勝利のカギどす、ウチも手伝うで!ルージュはん」
「ああ……済まない……椿さん、一緒にやるとしよう……」
私が愚かだった、勝手に椿さんを毛嫌いして苛立って邪魔者扱いしていた私は愚か過ぎた。
椿さんは敵ではない、時には主を巡って競い合い、そして時には互いに励まし合う良き好敵手(ライバル)なのだ。
椿さんの励ましによって、諦め掛けていた心を奮い立たせた私は
涙を拭きつつ椿さんと共に床にぶちまけてしまったチョコレートの回収作業を開始した
----
「で、出来たのはこれ、か……」
俺が会社から帰ってくるなり、出迎えた椿とルージュの二人に「渡したい物がある」と渡された箱
その中には、直径数センチのトリュフチョコが一個だけ入っていた。
そういや今日はバレンタインか………今の今まで俺はそんなイベントには縁が無かったからな……殆ど忘れていたや
手作りのチョコレートなんて渡されたのは、小学生の頃、幼馴染につっけんどんに渡された一度限りだ
「……………」
「……………」
ふと俺が見ると、緊張した面持ちで黙って俺の様子を見る二人の神姫の顔は、
顔どころか身体中がチョコまみれと言う酷い有様だった。
だが、そのお陰でこの一個を作るのに大変な苦労があったのが容易に窺い知れた
俺は無言で笑みを浮かべ、そのトリュフを口に放りこんだ。
苦い、ほろ苦い、だけど気持ちが篭っている……
何処までも俺を想う気持ちがこの1個にたっぷり篭っている……
「美味いよ、本当に美味いよ……ルージュも椿も良く頑張ったな、有り難う。美味しかったよ」
「あ、主殿、私、私は主殿に誉めてもらえて大変に光栄です!」
「主はんにお褒め頂いてほんまおおきに。けど、ウチは手伝っただけで殆どルージュはんが作ったんどす」
「つ、椿さん、けど………私は………」
「良いんや、ルージュはん。今日はウチの負け、けど次は負けへんどすぇ?」
「……フ、そうだな、私も負けないからな?」
そう言って互いに笑みを浮かべ、握手し合うルージュと椿
どうやら、俺が見ていない間に二人はチョコレートだけではなく友情も作り出していたみたいだな。
そう思うと、俺は二人が可愛く思えて思わず二人の頭を撫でていた
「やぁ…主はんくすぐったい……あれ?ルージュはん?」
「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、主殿に撫でられrwくあhqx#zせ&えhwふじdrこ……」
「ちょ、ルージュはんが撫でられた嬉しさの余り熱暴走を起こしはった!?」
おもむろに頭を撫でられたルージュは顔を真っ赤にしてバッタリと倒れる。
頭を触って見るとかなりの熱を発していた、こりゃ大変だ!
「うわわわわわ!?早く氷だ氷!椿、氷を早く持ってきて!!」
「い、言われんでも持ってきますぇ!?ああ、えらいこっちゃ!!」
「ううーん……私は、主殿と一緒にいられて、本当に幸せです……」
大慌てで走り回る俺と椿を余所に、
クレードルに寝かされたルージュは幸せな夢を見て、笑みを浮かべていたのであった……
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