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「妄想神姫:第九章(前半)」(2007/02/01 (木) 04:50:41) の最新版変更点
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**哀れなる傀儡に、祝福を(前半)
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日曜日。クララのサードリーグ登録を済ませ、私・晶が向かう先は
秋葉原神姫センター3階にある、ヴァーチャルバトルフィールド。
今日はここで、ロッテの二戦目を実施しようかと思っているのだ。
クララの装備は開発中だ。あの日暮にも助力を頼んでいるが……。
「アレス・グリューン──────マイスター、今日も快調ですの♪」
「有無、何よりだ。クララ、ロッテのこの装備を土台にする予定だが」
「……マイスター、綺麗だけど少し大型。CQBでは大きすぎるもん」
「ふむむ?そうか。この翼に負けぬ様、自然と重装化しているからな」
この通り“ゲヒルン”の効能もあり、分析能力では私を越えている。
確かに軽量級ランクの水準よりも多く、吟味して武装させたからな。
何らかの方法で、CQB……戦略的近接戦闘も考慮せねばいかんか?
何せバトルフィールドは毎回、基本的にランダムで選択されるしな。
「だったら、どっか~んって衣替えしちゃえば解決しそうですの♪」
「“どっか~ん”って……クララお姉ちゃん、無理があるんだよ?」
「む、いや待て?……ロッテ、お前の発想は使えるやもしれんぞ!」
以前入手した“アレ”を使えばどうにかなるかもしれんな、有無。
解析は少し骨が折れるが、そこはクララや日暮と共同作業で……。
『槇野晶さん、バトル開始時刻です。オーナー席に付いてください』
と、時間の様だ。思いついた事を咄嗟にテキストエディタに書き込み、
私はクララを肩に乗せて、ロッテをエントリーゲートへと送り出した。
そう言えば今日の対戦相手とそのオーナーは……って彼奴めかーッ?!
「うひはッ、あくまたん良い娘だから今日もしっかり勝ってよ~?」
「は、はい御主人様ッ……あたし、がんばりますっ」
「あれは猪刈ではないか!?アレだけ叩かれて舞い戻ってきたのか?」
「マイスター、猪刈さんって確か……その、わたしの姉妹達に……」
「……覚えておったのかロッテや。まあ、気にする事はないぞ」
猪刈久夫、34歳無職。俗に言う“ネオニート”であり、神姫の敵だ。
む、「何故知っているのか」だと?当然だろうッ!彼奴は某掲示板の
神姫板で、己の神姫に不埒な扱いをして挙げ句壊し……しかもそれを
ネット上で動画公開したのだぞ──“彼女”の悲鳴も収録の上でだ!
無論散々叩かれまくり個人情報も暴露されて、奴は有名人となった。
何故罪に問われなかったのか、と事件当時の私は酷く憤ったが……。
「あくまたんはとってもエロカワイクて強いから、あんな人形なんて」
「は、はい……“けちょんけちょんのこなごな”にします……」
「……彼奴め、前の一件でもちっとも懲りておらん様だな」
『ロッテvsあくまたん、本日のサードリーグ第7戦闘、開始します!』
“あくまたん”とやらの姿は見えなかったが、すぐに分かるだろう。
今回のバトルフィールドは……廃工場らしい。CQBの課題探りには
うってつけの戦場だな。案の定ロッテは、翼を広げずに相手を待つ。
「さ。始めましょう、出てきてくださいですの!」
「は、はいっ……えっと、宜しくお願いしますっ……」
「……えーと、それって重くないですの?」
ロッテが突っ込むのも無理はない。相手はストラーフタイプなのだが、
その機動特性をガン無視して、大量の火器を無理矢理くっつけている。
近日発売のフォートブラッグタイプと撃ち合いでもする気か、猪刈め。
「だ、大丈夫ですっ。あたしは、御主人様の為に……勝たないとっ」
「きゃっ!?わたしだって、マイスターの想いを背負ってますのっ!」
「ぷひひ、いいぞあくまたん~!そんな鳥なんか、撃っちゃえ!!」
素早く身をよじり風切り音をかわすロッテの後ろで、弾頭が爆ぜる。
爆風がロッテを襲うが、閉じた翼は耐爆装甲の役を果たしてくれた。
増設した脚部の安定性もあり、次々飛来する砲弾の9割は回避する。
とは言え、100%とは行かない。そう思い分析を始めた時だった。
「きゃああぁっ!?」
「な……ロッテッ!!」
「ぶっひひ~、壊せ、壊せっ!」
「ご、御主人様……はいっ」
白い羽が舞い散り、ロッテが地に伏せる。砲弾が直撃したのだ。
その結果に“あくまたん”は最初不安がったが、猪刈の叱咤にて
トドメを刺そうと、その砲身を零距離まで突きつけてきた……!
「ご、ごめんなさい……勝たないとあたし、あたし……」
「……あなたは何故、自分で戦おうとしますの?」
「え……!?」
相手の窮地に際して、それは猪刈も“あくまたん”も予期せぬ問い。
半ばでロッテは見抜いておったのかもしれんな、彼女の戦う意味を。
その証拠に、現在優位である筈の“あくまたん”は……泣き出した。
「だ、だって……御主人様に喜んでほしい……!!」
「なら“ごめんなさい”は、勝ってからでいいですの」
「うんと……で、でもっ、わたしはっ」
「あなたの“心”に誇りがあるなら……!」
「きゃぅんっ!?」
翼を纏ったロッテがバネの様に起きあがって、彼女を突き飛ばす。
猪刈の趣味であろう重火器に足を取られ、転んだ“あくまたん”。
だがそこでロッテは仕掛けたりせん。代わりに、凛と叫んだのだ。
「自分の戦いには、自信を持ってくださいの!」
「……自分の、戦い?」
──────その言葉は、戦乙女の誇りに賭けて。
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