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「その名はシュートレイ 前編」(2007/02/04 (日) 18:30:24) の最新版変更点
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*その名はシュートレイ 前編
「隊長、いよいよ決勝戦ですね」
傍らに座っているフィギュアが装備の準備をしていた恒一に話しかけた。
「そうだな。もうすぐだな」
彼はフィギュアの頭を指で撫でた。
「もう、いつもこんなことするんですから…。でも、嬉しいです」
フィギュアの子は少し迷惑そうな顔をしていたが、本当はこうしてもらうのが嬉しかったのだ。
「あ、もう時間ですよ。早く行かないと失格になってしまいますよ」
「ああ、じゃ行くぞ、シュートレイ」
彼はシュートレイと呼ばれたフィギュアを肩に乗せると、控え室を後にした。
…彼女、シュートレイは武装神姫と呼ばれるヒューマノイドタイプのロボットである。ロボットといってもただのロボットではない。ちゃんと喜怒哀楽を持ち、自分の意思で考え行動する、最先端のロボットなのだ。
そんな彼女が恒一とどのように出会ったのか、そしてどうやってバトルの階段を登る決意をしたのか。すべてはあるきっかけから始まった。
話は約一年前にさかのぼる。ある日の朝、恒一の家に一つの小包が届いた。送り元は恒一のよく知っている人物からだった。
「父さんの奴、また変なもん送ってきたな」
さっそく包みを開けて中を見ることにした。その中には、一体のフィギュアと起動ディスク、それと一通に手紙が入っていた。
それにはこんな事が書かれていた。
『恒一へ 今、父さんはある開発をしている。これからの時代に必要なパートナーを育てているんだ。その中に入っているものは、父さんが数年の時間をかけて作った成果の一つだ。それをお前にプレゼントしよう。もちろんこの子を手間暇かけて育てるのもよし、友達のフィギュアと戦わせるのもよし。お前の自由にしていい。ただし、月に一度研究所に来て、この子のデータを取らせてもらう。この子はまだ試作段階だ。万が一のことがあったら大変だし、メンテナンスもしなくちゃいけないからね。あと、もう一つ約束してほしい事がある。この子はお前の分身になるから、間違って破壊したり機能停止させたりしないように。もしそんな事をしたらただじゃおかないから肝に銘じておくんだぞ』
恒一は手紙を見てほくそえんだ。
「父さん、俺がそんなことすると思ってるのかな?とにかく起動させてみようか」
さっそく恒一はパソコンに起動ディスクを入れてデータをインストール、そして台座を介してフィギュアをUSB端子で繋いだ。
「よし、ウイザードが出たぞ。…なるほど、これは音声入力でオーナーを認識するのか」
恒一はウイザードの説明にしたがって起動準備を進めていった。そしてフィギュアを起動させて認識作業に入った。
「お買い上げいただきありがとうございます。これから認識作業に入ります。まずは私の名前を登録してください」
「なるほど、名前を登録する事でオーナーの認識を行うわけか。よし、名前は…」
恒一はない知恵を振り絞ってフィギュアの名前を考えた。しかしいい名前が思いつかなかった。
「名前を付けるのにこんなに考えなくちゃならないなんてな…。さて、どうしようか…」
その子の名前になるんだから、下手なネーミングをつけたらとんでもない事になってしまう悩みに悩んだ恒一は、ある授業の事を思い出していた。
「あの時の授業、確か天文学の授業だったかな…。彗星の話だったんだよな。彗星の英語名はシューティングスター…でもそれじゃそのまんまだな」
彗星の話を思い出していた恒一は、何とかして名前を考え出すヒントを搾り出してみた。
「シューティング…シュート…星は光る…光はレイ…シュート…レイ…」
恒一はひらめいたのか、自信ありげに立ち上がった。
「名前はお決まりでしょうか?」
「ああ、決まった。お前の名前はシュートレイ、シュートレイだ!」
「シュートレイ、名前登録しました。次にオーナーの名前を言ってください」
シュートレイと名づけられたフィギュアに、恒一は名乗った。
「木野恒一。俺の名は木野恒一だ」
「木野…恒一、登録しました。最後に恒一さんの事をなんと呼ぶのかを設定してください」
「ん…そうだな、俺のことは隊長と呼んでくれ。お前は俺のパートナー兼部下だからな」
シュートレイはにっこり微笑んでこう答えた。
「それではよろしくお願いします、隊長」
父さんの奴、いいもの送ってくれたじゃないか…。恒一は今更ながら父に感謝した。
「よろしくな、シュートレイ」
恒一はシュートレイの頭を指で撫でた。
こうして恒一とシュートレイの生活が始まった。あるときは一緒に本やサイトを見てみたり、またあるときは外に出て一緒に運動したり…。時には内緒で学校に連れて行ったりもした。シュートレイはあらゆる物を見たり感じたりしたりする事で学習していくのだった。
そんなある日、二人は偶然通りかかったホビーショップであるポスターを見かけた。それはロボットバトル開催のポスターだった。
「これは何ですか?」
「ああ、これは神姫たちを闘わせるトーナメント方式の大会だな。この地区限定みたいだからたいした大会じゃないけどな」
しかしシュートレイはそれを見て、あることを提案した。
「私たちもこの大会に出てみましょう。そうすれば経験値も増えますし」
「でも、いきなり大会に出て大丈夫かよ?この大会は実際に闘わなくちゃいけないからお前もただじゃすまないぞ」
「覚悟の上です。それに大会に出れば私たちの事も少しは有名になるでしょうし」
恒一は少しの間考えた。彼女と出会ってから数ヶ月、色々な事を教えてきた。だがバトルに出るにはまだ早すぎないか…。バトルの経験値がほとんどない彼女にとってはいくら地方の大会とはいえ荷が重過ぎないか…。
「…お前、闘ったら傷つくし、下手したら壊されるかもしれないんだぞ。それでもやりたいのか?」
シュートレイは無言で頷いた。
「そうか、お前がそういうなら俺も付き合うことにするよ。ただし無理だけはしないでくれよ。それから後で研究所でそのことを言わないといけないからエントリーするのはその後からでも遅くないだろ」
「…ありがとうございます。私のわがままを聞いてくれて…」
「いいって、じゃ、さっそく明日研究所に相談しに行こうぜ」
恒一はシュートレイの頭を指で撫でた。もちろん彼女は赤らめながら嬉しそうに笑うのだった。
*中編へつづく
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*その名はシュートレイ 前編
「隊長、いよいよ決勝戦ですね」
傍らに座っているフィギュアが装備の準備をしていた恒一に話しかけた。
「そうだな。もうすぐだな」
彼はフィギュアの頭を指で撫でた。
「もう、いつもこんなことするんですから…。でも、嬉しいです」
フィギュアの子は少し迷惑そうな顔をしていたが、本当はこうしてもらうのが嬉しかったのだ。
「あ、もう時間ですよ。早く行かないと失格になってしまいますよ」
「ああ、じゃ行くぞ、シュートレイ」
彼はシュートレイと呼ばれたフィギュアを肩に乗せると、控え室を後にした。
…彼女、シュートレイは武装神姫と呼ばれるヒューマノイドタイプのロボットである。ロボットといってもただのロボットではない。ちゃんと喜怒哀楽を持ち、自分の意思で考え行動する、最先端のロボットなのだ。
そんな彼女が恒一とどのように出会ったのか、そしてどうやってバトルの階段を登る決意をしたのか。すべてはあるきっかけから始まった。
話は約一年前にさかのぼる。ある日の朝、恒一の家に一つの小包が届いた。送り元は恒一のよく知っている人物からだった。
「父さんの奴、また変なもん送ってきたな」
さっそく包みを開けて中を見ることにした。その中には、一体のフィギュアと起動ディスク、それと一通に手紙が入っていた。
それにはこんな事が書かれていた。
『恒一へ 今、父さんはある開発をしている。これからの時代に必要なパートナーを育てているんだ。その中に入っているものは、父さんが数年の時間をかけて作った成果の一つだ。それをお前にプレゼントしよう。もちろんこの子を手間暇かけて育てるのもよし、友達のフィギュアと戦わせるのもよし。お前の自由にしていい。ただし、月に一度研究所に来て、この子のデータを取らせてもらう。この子はまだ試作段階だ。万が一のことがあったら大変だし、メンテナンスもしなくちゃいけないからね。あと、もう一つ約束してほしい事がある。この子はお前の分身になるから、間違って破壊したり機能停止させたりしないように。もしそんな事をしたらただじゃおかないから肝に銘じておくんだぞ』
恒一は手紙を見てほくそえんだ。
「父さん、俺がそんなことすると思ってるのかな?とにかく起動させてみようか」
さっそく恒一はパソコンに起動ディスクを入れてデータをインストール、そして台座を介してフィギュアをUSB端子で繋いだ。
「よし、ウイザードが出たぞ。…なるほど、これは音声入力でオーナーを認識するのか」
恒一はウイザードの説明にしたがって起動準備を進めていった。そしてフィギュアを起動させて認識作業に入った。
「お買い上げいただきありがとうございます。これから認識作業に入ります。まずは私の名前を登録してください」
「なるほど、名前を登録する事でオーナーの認識を行うわけか。よし、名前は…」
恒一はない知恵を振り絞ってフィギュアの名前を考えた。しかしいい名前が思いつかなかった。
「名前を付けるのにこんなに考えなくちゃならないなんてな…。さて、どうしようか…」
その子の名前になるんだから、下手なネーミングをつけたらとんでもない事になってしまう悩みに悩んだ恒一は、ある授業の事を思い出していた。
「あの時の授業、確か天文学の授業だったかな…。彗星の話だったんだよな。彗星の英語名はシューティングスター…でもそれじゃそのまんまだな」
彗星の話を思い出していた恒一は、何とかして名前を考え出すヒントを搾り出してみた。
「シューティング…シュート…星は光る…光はレイ…シュート…レイ…」
恒一はひらめいたのか、自信ありげに立ち上がった。
「名前はお決まりでしょうか?」
「ああ、決まった。お前の名前はシュートレイ、シュートレイだ!」
「シュートレイ、名前登録しました。次にオーナーの名前を言ってください」
シュートレイと名づけられたフィギュアに、恒一は名乗った。
「木野恒一。俺の名は木野恒一だ」
「木野…恒一、登録しました。最後に恒一さんの事をなんと呼ぶのかを設定してください」
「ん…そうだな、俺のことは隊長と呼んでくれ。お前は俺のパートナー兼部下だからな」
シュートレイはにっこり微笑んでこう答えた。
「それではよろしくお願いします、隊長」
父さんの奴、いいもの送ってくれたじゃないか…。恒一は今更ながら父に感謝した。
「よろしくな、シュートレイ」
恒一はシュートレイの頭を指で撫でた。
こうして恒一とシュートレイの生活が始まった。あるときは一緒に本やサイトを見てみたり、またあるときは外に出て一緒に運動したり…。時には内緒で学校に連れて行ったりもした。シュートレイはあらゆる物を見たり感じたりしたりする事で学習していくのだった。
そんなある日、二人は偶然通りかかったホビーショップであるポスターを見かけた。それはロボットバトル開催のポスターだった。
「これは何ですか?」
「ああ、これは神姫たちを闘わせるトーナメント方式の大会だな。この地区限定みたいだからたいした大会じゃないけどな」
しかしシュートレイはそれを見て、あることを提案した。
「私たちもこの大会に出てみましょう。そうすれば経験値も増えますし」
「でも、いきなり大会に出て大丈夫かよ?この大会は実際に闘わなくちゃいけないからお前もただじゃすまないぞ」
「覚悟の上です。それに大会に出れば私たちの事も少しは有名になるでしょうし」
恒一は少しの間考えた。彼女と出会ってから数ヶ月、色々な事を教えてきた。だがバトルに出るにはまだ早すぎないか…。バトルの経験値がほとんどない彼女にとってはいくら地方の大会とはいえ荷が重過ぎないか…。
「…お前、闘ったら傷つくし、下手したら壊されるかもしれないんだぞ。それでもやりたいのか?」
シュートレイは無言で頷いた。
「そうか、お前がそういうなら俺も付き合うことにするよ。ただし無理だけはしないでくれよ。それから後で研究所でそのことを言わないといけないからエントリーするのはその後からでも遅くないだろ」
「…ありがとうございます。私のわがままを聞いてくれて…」
「いいって、じゃ、さっそく明日研究所に相談しに行こうぜ」
恒一はシュートレイの頭を指で撫でた。もちろん彼女は赤らめながら嬉しそうに笑うのだった。
次の日、恒一とシュートレイは本格的にシミュレーションをするため、父が所属している研究所に足を運んだ。父の部下で知り合いである和智小百合は彼らを快く協力してくれた。
「あなたがその気なら喜んで協力するわ。ただし、本気で取り込むんだから途中で投げ出さない事。約束できるわね?」
「はい、これもシュートレイを表舞台で活躍させるためです。絶対に約束します」
「私からもお願いします!私、トーナメントに出たいんです」
二人は小百合に頭を下げた。
「そんなに頭を下げなくてもいいわよ。あたしも彼女の事が気になるんだから。あと、試合に出るんだから装備も何とかしないとね」
小百合は奥から大きな箱を持ってきた。
「この中に装備が何種類かあるから、好きなものを取っていいわよ。まあ、この装備は暫定的なものになるから、後で彼女にあった装備を作るように頼んでみるわ」
「ありがとうございます!」
こうしてシュートレイの大会に向けての訓練が始まった。シミュレート用のネイキッド神姫やバグブレイムを相手にして、数々の訓練をこなしていった。
そして大会参加の手続きを取り、いよいよ訓練は架橋に入っていった。
「シュートレイ、後ろに気を付けろ!ぼやぼやしてたらやられるぞ」
「はい、隊長」
数々の訓練と模擬試合をこなしていくシュートレイ。そしてついに高得点を叩き出せるまでに成長した。その様子を見ていた小百合は驚いていた。
「短期間でここまで出来るようになるなんて、たいしたもんだわ。後は実践でどの位相手に渡り合えるかよね」
「前に何人かの神姫を相手にしたから、何とか大丈夫だと思いますよ」
「後は大会に備えるだけです!」
「ならいいんだけどね」
驚いている反面、小百合はすこしの不安を感じていた。いくらシミュレーションを重ねても、いざ実践となると今の状態を保てるかしら…。
「大会は一週間後なんでしょ。今は気を抜かない方がいいわよ。それと、コンディションは万全にして大会に出るように心がけなくちゃ」
「分かってますよ、シュートレイはちゃんと休ませてますよ」
「そうじゃなくて恒一君、あなたの事よ。シュートレイから聞いたわよ。あなた、装備の調整でろくに眠ってないんですって?」
小百合は恒一に対して注意した。
「そ、そんなことないさ。ちゃんと眠ってるから心配ないよ」
「そう、でも学校も行かないといけないんだから、調整もほどほどにしなさい。体を壊したら試合どころじゃなくなるから」
「そうですよ、隊長にもしもの事があったら、私…」
シュートレイが寂しい顔になってつぶやいた。
「わ、分かったよ。無理はしないから大丈夫さ」
やれやれ、困ったマスターね。小百合はため息をつきながらそう思うのだった。
*中編へつづく
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