「徒然続く、そんな話。 番外節、そのいち。」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
「徒然続く、そんな話。 番外節、そのいち。」(2007/03/13 (火) 22:52:50) の最新版変更点
追加された行は緑色になります。
削除された行は赤色になります。
それは、ちょっと前の話。
孤独な復讐者と呼ばれた男が……。
神の姫に出会う前の、ちょっとした、前語り。
……レスティクラム、タイプ「V」を起動し。
ミサイル装備の重量級機体、ただし横移動の速度は同タイプ最速を誇る。
その機体を駆使し、攻撃はすべて受けるか耐え、その後の反撃で蹂躙した。
故に”復讐する者”と呼ばれた。
…………彼は公式に一切姿を見せなかった。
ただただ、楽しいことにのめり込んで、それでお金が貰えるなら良いと思っていた。
「大切な何かを忘れて?」
いつの間にか《八相》とまで呼ばれていた、ランクが上がるにつれて、《敵》の難易度も上がった。
「現実から眼を背けて?」
楽しかった、純粋に、世界を忘れて、周囲を忘れてのめり込んだ。
「いつまでこんな子供みたいな事?」
時々他の八相が姿を見せろ、とか噛み付いて来たが拒否。
「つまらない事をしてないで働きなさい」
この部屋とPCとその向こうの世界だけが、自分の世界だった。
……大切な何かたちを失うまで。
火事だった、自分が、コンビニまで出ていった、たまたまに。
……両親と妹が亡くなった、レスティクラムのデータは手元にあったが
「それがなんだ、俺にはもっと、楽しい事がある」
それから暫くが過ぎて……手紙が見つかった。
妹の鈴(すず)から。
「おにいちゃんは、とっても強いげーむの達人です」
「はっそーってよばれていて、そんけーします」
「とーってもとっても強くて、それでお金持ちです」
「でも、さいきんおにいちゃんがかまってくれません、げーむにむちゅうです」
「……少し、さみしいです、おとーさんとも、おかーさんとも喋らなくなって」
「お金もなくていーから、げーむもつよくなくていいから……もっと、みんなとなかよくしてください、すず」
……涙が出た、俺は何をして来たのかと
楽しい事ばかりを追い求めて。
架空の喜びに身をゆだねて。
たったちいさな、妹の祈りすら、かなえてやれなかったのかと……
そしてしばらくして、レスティクラムをやめた。
……データはメモリーごと壊した
そして、しばらく、PCに触れる事をやめた。
全うに勉強した、全うに暮らし始めた、そして
小さな、あのコに出会った。
―――復讐する者、と呼ばれる事は、もうない。
「マイロード、朝ですよ?」
「……ああ、おはよう、碧鈴」
小さな、あの日護れなかった、ものがここに、あるのだから。
徒然続く、そんな話。 「彼の日常」……節終。
[[戻る>徒然続く、そんな話。]]
人間、立ち位置がある。
愛する人の隣。
一番前で戦うもの。
そして、底辺で支えるもの。
「……つーわけで、先輩、今回は参加できねえっすよ、俺、ええ、本業っつーか」
携帯で連絡、悪いがエルゴの手伝いは今回は出来そうも無いのだ。
「ああ、えーっと、すんません、ええ、静香ちゃんにも申し訳ないって」
その事情から、今回は”鳳凰カップ”には便宜上参加しないことになっている。
「……あー、すんません、ほんと、当てにしてもらってなんすけど、はい」
「実家というかまー、保護者っつーか面倒見てもらった人の手伝いなんで、はい、んでは」
受話器を下ろし、いまどき珍しい黒電話を切る。
「マイロード……んー……店長さん、ですか?」
テーブルの上に座っていた碧鈴。
声、聞いてたのかな。
「あー、よーわかったな……ん……」
ポテチを差し出して、あーんしてやる。
「もしゃもしゃ、ん、んむ」
嬉しそうに租借していく碧鈴。
「仕事、つーか……んー、アレなんよ、あんまり見られると面倒な仕事」
「んー……まあ、行ってみれば分かる」
「……ディスは不満そうだな」
ちょっと不満そうな顔をしているディスが、いつも道理どっかりと腰掛けていて。
「そりゃそうじゃ、有名トップランカーばかりじゃろう?」
手をこきこき、っと鳴らし。
「……儂の血も滾るというものだ」
「参加は無茶だから、一応言うとな」
「ち、なら主の体でその責任を」
「問わなくていいですっ!?」
手をわきわきさせるディスと赤面している碧鈴。
「あー、現地には行くぞ、一応」
「「へ?」」
そして、当日。
会場二時間前、スタッフ通用口。
「……んーっと、見慣れた人はいないな、よし」
ダンボールを頭から被って、警備員さんに通行証を見せ。
まあ、止められて最初は揉めたけど。
「なんで隠れるんです、マイロード?」
碧鈴が小さな声を響かせて、耳元でささやく。
「まあ、ちっとな」
「つまりあれか、主は、閉所プレイが」
「怒るぞ、つーか耳に息を掛けるなエロラーフ」
「え、えろらーふ……」
「よし行くぞ」
ぶっちゃけどう見ても不審者です。
「うし、待ってろよ、碧鈴」
二人を下ろして、そのまま更衣室へ。
「マイロード、割と肝心な事、教えてくれませんよね……はあ」
「主らしい、ということじゃよ」
心配そうな碧鈴と、余裕の笑みを浮かべるディス。
「よいしょ、っと」
ドアを開けて、出てきたのは……
猫型ぷちましぃーんずの頭を被ったきぐるみである。
「ま、まいろーど?」
「ぷ、くくくく、まて、ぬし、なんだその」
対称的な反応有難う。
「ん、ああ、黒ぶちくんだぞ、どーうだ?」
可愛いポーズを取って見せてやる。
「似合いませんよマイロード」
「……あっはっはっはっはっはっはっは!?」
「お前ら……」
はあ、とため息、したくてしたわけじゃないわい、この格好。
「ま、仕事なんだよ、仕事」
「……そういうこと」
ドアが開いて……姿を見せたのは、電動車椅子に跨った、一人の少女。
流れるような銀髪、色素の薄い白い肌、血より赤い瞳。
「……んー、でも麻遊利(まゆり)さん、俺の担当、なんで黒ぶちなんすか?」
「あら、あのころのはーくんそっくりじゃない」
「……むう」
親しそうな二人の笑顔、ちょっと不満げに碧鈴が質問してくる。
「マイロード……えと、この方は?」
「ああ、えと、この人は」
にこ、と笑みを浮かべる少女。
「はーくんのママよ?」
「「え、えええー!?」」
徒然続く、そんな話、番外節いち。
出会いと猫ぐるみ。 節終。
[[戻る>徒然続く、そんな話。]]
表示オプション
横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: