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「徒然続く、そんな話。 第三節。」(2007/02/14 (水) 11:13:26) の最新版変更点
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《心をもった生き物》には、思い出が存在する。
過去があって、自分が作られ。
今を生きている。
そして、未来へと自分を創っていく。
……それは神姫であったとしても、同じ事である。
「到着、っと」
車にロックをかける、この時勢、体外の車はオートで鍵が掛かるようになっているが。
心配性な俺は自分でキーを差込み、鍵をかけるのが好きだ。
―――自分にふたをする感覚に似ているから。
「マイロード、ここは?」
頭の上の碧鈴が見上げている看板には。
「ホビーショップエルゴ」と刻まれている。
「……リンクから検索……完了、どうやら、神姫ショップのようですね」
「そそ、ちょっと身の回りのものをね、あと、ちと野暮用」
「?」
首をかしげる碧鈴、そりゃそーだ。
「……よいしょ、と、お邪魔しまっすー」頭に碧鈴を乗っけて、自動ドアを通り抜け、そのまま店内へ
「いらっしゃいませーって、うを、早人?」
温和そうな、それでいて熱そうな店長さんと。
「あれ、早人さん?」
優しそうな声の、彫像、ではなく、神姫。
「ちわっす、先輩とジェニーさん」
微笑み、返す。
この人たちはここの店長、日暮さんとその神姫、ヴァッフェバニータイプのジェニーさん。
「相変わらずの大明神ぷりで何よりです」
「あははははは、撃ちますよ?」
……冗談に笑顔で返さないで頂きたい。
「……と、どした、早人?」
《先輩》がちょっと真剣な声。
「……あ、えと……俺も神姫購入したんですけど、ちとその事で」
「……ん、相談か?」
「ええ」
笑みを返し、ジャンパーのポケットから「碧鈴」を取り出し、頭に載せる。
「あ、あの、その、あう、はじめまして、碧鈴、です」
ぽつり、と呟く、尻尾が立ってるなあ、緊張気味か。
「はじめまして、宜しく」
「よろしくおねがいします、碧鈴さん」
二人が朗らかに返してくれる
有難い、やっぱり、最初につれてきて良かった。
《先輩》に出会ったのは高校生のとき。
あのころ、家族がいないことで少し荒れてた俺は
街中でカツあげしてた所を。
《先輩》の姉さん、秋奈さんにブチのめされて。
……まあ、そのあと連れて行かれて。
下っ端のように使われて。
……まあ、口にしたくないかな、という幾つもの紆余曲折を経て。
同じくまあ、弟子というか下っ端として使われてた《先輩》と出会って。
……ヲタに染められました、まる。
……正直、真っ当に戻れた恩義はたっぷりです。
「マイロード?」
見上げた碧鈴が、心配そうに俺を覗き込んで。
「気にすんな」
なでなでぐしぐしとしてやって
「あうあうあう」
そっぽ向きながらでも、尻尾横に振るのはやめい、そこ《先輩》とジェニーさんが笑ってるってーの。
「で、えーと、先輩方の力を借りたいんですよ」
「馬鹿言うな早人」
「へ?」
首をかしげる、まあ、一国一城の主の先輩に、付き合わせるのが悪いか。
「畏まらんでも力を貸すっつーの、俺たちの中だろ?」
背中をバンバンと叩かれる、正直痛いが、うう。
「あ、有難う御座います」
ぺこ、っと頭を下げ。
「マスターってば」
くすくす、と笑うジェニーさん、その瞳は慈愛と言うか何というか。
「……で、どしたよ、その子のことか?」
「察しが良くて助かります」
まあ、このあたりは便利呪文、かくかくしかじかが発動した、ということで。
「……なる、オーバーロード、ねぇ……こんな店やってると結構見るけど……ふむ」
まじまじ、と碧鈴の顔を見て
「取りあえずデータ、あるか?……それ見てあと、この子直接検査、しないとなあ」
まじめな顔で返してくれる、やっぱり、熱い。
先輩の「熱さ」と秋奈さんの「強さ」で、あのころの俺は、正直救われた、有難い。
「ジェニーさん、一緒に来てちょっと見てくれるかな、データチェックとかしてくれる?」
「はい、分かりました、ただ、レジが……」
「あ、いいっすよ、俺やりますわ、電卓とか弄るの、というかここのは慣れてるんで」
秋奈さんの代わりに店番をした事もある、まあ、大丈夫だろう。
「マイロード……」
不安げに見つめる碧鈴、潤んだ眼と不安そうな顔で見上げてくる。
「……ん……」
……柄にも無く微笑み、頭をなでてやる。
「……ぁ……」
「大丈夫だから行ってきな、あと、体の中も見てもらって」
「あ…………はい」
はにかんだ笑みをして、ジェニーさんについていった碧鈴。
それから暫くレジ撃ちして、お客の対応して、で、午後になって女子高生らしきアルバイトさんと交代。
美人さんだったから、先輩も隅に置けないっすねえ、と思っていると、先輩が手にコーヒーを持って。
「あ、いいっすよ、先輩、見てもらってる御礼みたいなもんで」
「いんや、かまわねーよ、俺も飲みたかったし」
暫くして本題を切り出すように
「……で、えーと、何年かほどぶりだけど、どーしてぽっつりと来るのやめたんだよはーやーと!?」
頭に梅干、いだだだだ、手加減してください先輩、というか言いたくないですってっ!
「……いだ、いだだだだっ、やめ、そこはえと、急がしくてっ、うをぉぉっ!」
「黙秘権は無い、裁判される権利は無い、お前に許されるのは吐く事のみっ!」
いだだだ、って先輩、パロスペシャルはやめ、うああ、折れる折れる。
「吐きます、吐きますから」
ホールドを解いてもらって……ぜー、はー、ぜーはーっ、とため息。
「えーっと、あー……秋奈さんに告白したんすよ、好きだって」
……しばらく、お待ちください
「え、えええー!?」
そこまで動揺せんでもいいっす、先輩。
「……えーと、なんだ、病気にでもなったかお前?」
失敬な。
「えーと、ま、最初に会った時からなんすけどね、一目惚れってやつっす」
「……姉貴だぞ?、ワガママでオタクで芝居掛かってて派手好き、ドSでドMでトラブルメーカーだぞ?」
「知ってますって、一応付き合いは長かったんすから」
事実そのとおりだから先輩も頷く。
「……で、えーと、碧鈴も覗いてますからこれ以上は」
殺気のこもった目でじーっと見つめている碧鈴、ショウジキカンベンシテイタダキタイ
「……えと、データ処理のほう終わったんですけど、マスター?」
ナイスタイミング、ジェニーさん。
「ああ、ありがと、店終わってから見るわ」
「有難う御座います、二人とも」
「いえいえ、マスターのお友達ですから」
「俺とお前の仲だって言ってるだろ?」
それでも、十全に助かります。
「で、振られたのか、早人?」
だからそこでぶり返さないで先輩っ!?
「……」
碧鈴も興味深そうに尻尾振らないっ!、睨みながらっ!
「ま、振られましたよ」
事も無げに。
「『惰弱な、いい感じに腐った眼だと思って拾ってやったのだが、期待はずれだ』って」
「……姉貴らしいというか何というか」
苦笑する先輩。
「ま、正直憧れみたいなもんだったすから」
「ま、ほれ、選別だ」
気を使ったのか、手渡されたのは、神姫用の、服?
「うちのデザイナーさんの試作品、似合うだろうし持ってけ」
「あ、有難う御座います」
「いんや、気にすんな、それにしても、ふふふ」
「笑わないでくださいよ、マジで本気だったんすから」
腹を抱えて笑う、先輩とジェニーさん、くそう。
「じゃ、また来ますね」
「……また、です」
先輩とジェニーさんと別れ、外へ。
「……マイロード」
「ん、どした碧鈴?」
「……ぇと、まだ、その……」
「あー、それ言うなら嘘になるけど……」
一呼吸、置いて
「ま、憧れだよ、憧れ、遠い星さね」
「……ん」
「気にすんな」
なでなでと頭をなでてやる。
「……はい」
まだ何か言いたそうだったけど……
「……今はそーだな、碧鈴さん一筋だから」
「!?」
顔を真っ赤にした碧鈴。
「……ん、どした、碧鈴」
「え、えと、その、あ、あう」
真っ赤になった顔を頬に近づけ。
ちゅ
「……ぶっ!?」
「えと、私も、マイロード、だけです」
帰りの車内が気まずく成りながらも、帰路についたのでした、まる
徒然続く、そんな話。 第三節
過去と彼女と小さな決意。 節終
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《心をもった生き物》には、思い出が存在する。
過去があって、自分が作られ。
今を生きている。
そして、未来へと自分を創っていく。
……それは神姫であったとしても、同じ事である。
「到着、っと」
車にロックをかける、この時勢、体外の車はオートで鍵が掛かるようになっているが。
心配性な俺は自分でキーを差込み、鍵をかけるのが好きだ。
―――自分にふたをする感覚に似ているから。
「マイロード、ここは?」
頭の上の碧鈴が見上げている看板には。
「ホビーショップエルゴ」と刻まれている。
「……リンクから検索……完了、どうやら、神姫ショップのようですね」
「そそ、ちょっと身の回りのものをね、あと、ちと野暮用」
「?」
首をかしげる碧鈴、そりゃそーだ。
「……よいしょ、と、お邪魔しまっすー」頭に碧鈴を乗っけて、自動ドアを通り抜け、そのまま店内へ
「いらっしゃいませーって、うを、早人?」
温和そうな、それでいて熱そうな店長さんと。
「あれ、早人さん?」
優しそうな声の、彫像、ではなく、神姫。
「ちわっす、先輩とジェニーさん」
微笑み、返す。
この人たちはここの店長、日暮さんとその神姫、ヴァッフェバニータイプのジェニーさん。
「相変わらずの大明神ぷりで何よりです」
「あははははは、撃ちますよ?」
……冗談に笑顔で返さないで頂きたい。
「……と、どした、早人?」
《先輩》がちょっと真剣な声。
「……あ、えと……俺も神姫購入したんですけど、ちとその事で」
「……ん、相談か?」
「ええ」
笑みを返し、ジャンパーのポケットから「碧鈴」を取り出し、頭に載せる。
「あ、あの、その、あう、はじめまして、碧鈴、です」
ぽつり、と呟く、尻尾が立ってるなあ、緊張気味か。
「はじめまして、宜しく」
「よろしくおねがいします、碧鈴さん」
二人が朗らかに返してくれる
有難い、やっぱり、最初につれてきて良かった。
《先輩》に出会ったのは高校生のとき。
あのころ、家族がいないことで少し荒れてた俺は
街中でカツあげしてた所を。
《先輩》の姉さん、秋奈さんにブチのめされて。
……まあ、そのあと連れて行かれて。
下っ端のように使われて。
……まあ、口にしたくないかな、という幾つもの紆余曲折を経て。
同じくまあ、弟子というか下っ端として使われてた《先輩》と出会って。
……ヲタに染められました、まる。
……正直、真っ当に戻れた恩義はたっぷりです。
「マイロード?」
見上げた碧鈴が、心配そうに俺を覗き込んで。
「気にすんな」
なでなでぐしぐしとしてやって
「あうあうあう」
そっぽ向きながらでも、尻尾横に振るのはやめい、そこ《先輩》とジェニーさんが笑ってるってーの。
「で、えーと、先輩方の力を借りたいんですよ」
「馬鹿言うな早人」
「へ?」
首をかしげる、まあ、一国一城の主の先輩に、付き合わせるのが悪いか。
「畏まらんでも力を貸すっつーの、俺たちの中だろ?」
背中をバンバンと叩かれる、正直痛いが、うう。
「あ、有難う御座います」
ぺこ、っと頭を下げ。
「マスターってば」
くすくす、と笑うジェニーさん、その瞳は慈愛と言うか何というか。
「……で、どしたよ、その子のことか?」
「察しが良くて助かります」
まあ、このあたりは便利呪文、かくかくしかじかが発動した、ということで。
「……なる、オーバーロード、ねぇ……こんな店やってると結構見るけど……ふむ」
まじまじ、と碧鈴の顔を見て
「取りあえずデータ、あるか?……それ見てあと、この子直接検査、しないとなあ」
まじめな顔で返してくれる、やっぱり、熱い。
先輩の「熱さ」と秋奈さんの「強さ」で、あのころの俺は、正直救われた、有難い。
「ジェニーさん、一緒に来てちょっと見てくれるかな、データチェックとかしてくれる?」
「はい、分かりました、ただ、レジが……」
「あ、いいっすよ、俺やりますわ、電卓とか弄るの、というかここのは慣れてるんで」
秋奈さんの代わりに店番をした事もある、まあ、大丈夫だろう。
「マイロード……」
不安げに見つめる碧鈴、潤んだ眼と不安そうな顔で見上げてくる。
「……ん……」
……柄にも無く微笑み、頭をなでてやる。
「……ぁ……」
「大丈夫だから行ってきな、あと、体の中も見てもらって」
「あ…………はい」
はにかんだ笑みをして、ジェニーさんについていった碧鈴。
それから暫くレジ撃ちして、お客の対応して、で、午後になって女子高生らしきアルバイトさんと交代。
美人さんだったから、先輩も隅に置けないっすねえ、と思っていると、先輩が手にコーヒーを持って。
「あ、いいっすよ、先輩、見てもらってる御礼みたいなもんで」
「いんや、かまわねーよ、俺も飲みたかったし」
暫くして本題を切り出すように
「……で、えーと、何年かほどぶりだけど、どーしてぽっつりと来るのやめたんだよはーやーと!?」
頭に梅干、いだだだだ、手加減してください先輩、というか言いたくないですってっ!
「……いだ、いだだだだっ、やめ、そこはえと、急がしくてっ、うをぉぉっ!」
「黙秘権は無い、裁判される権利は無い、お前に許されるのは吐く事のみっ!」
いだだだ、って先輩、パロスペシャルはやめ、うああ、折れる折れる。
「吐きます、吐きますから」
ホールドを解いてもらって……ぜー、はー、ぜーはーっ、とため息。
「えーっと、あー……秋奈さんに告白したんすよ、好きだって」
……しばらく、お待ちください
「え、えええー!?」
そこまで動揺せんでもいいっす、先輩。
「……えーと、なんだ、病気にでもなったかお前?」
失敬な。
「えーと、ま、最初に会った時からなんすけどね、一目惚れってやつっす」
「……姉貴だぞ?、ワガママでオタクで芝居掛かってて派手好き、ドSでドMでトラブルメーカーだぞ?」
「知ってますって、一応付き合いは長かったんすから」
事実そのとおりだから先輩も頷く。
「……で、えーと、碧鈴も覗いてますからこれ以上は」
殺気のこもった目でじーっと見つめている碧鈴、ショウジキカンベンシテイタダキタイ
「……えと、データ処理のほう終わったんですけど、マスター?」
ナイスタイミング、ジェニーさん。
「ああ、ありがと、店終わってから見るわ」
「有難う御座います、二人とも」
「いえいえ、マスターのお友達ですから」
「俺とお前の仲だって言ってるだろ?」
それでも、十全に助かります。
「で、振られたのか、早人?」
だからそこでぶり返さないで先輩っ!?
「……」
碧鈴も興味深そうに尻尾振らないっ!、睨みながらっ!
「ま、振られましたよ」
事も無げに。
「『惰弱な、いい感じに腐った眼だと思って拾ってやったのだが、期待はずれだ』って」
「……姉貴らしいというか何というか」
苦笑する先輩。
「ま、正直憧れみたいなもんだったすから」
「ま、ほれ、選別だ」
気を使ったのか、手渡されたのは、神姫用の、服?
「うちのデザイナーさんの試作品、似合うだろうし持ってけ」
「あ、有難う御座います」
「いんや、気にすんな、それにしても、ふふふ」
「笑わないでくださいよ、マジで本気だったんすから」
腹を抱えて笑う、先輩とジェニーさん、くそう。
「じゃ、また来ますね」
「……また、です」
先輩とジェニーさんと別れ、外へ。
「……マイロード」
「ん、どした碧鈴?」
「……ぇと、まだ、その……」
「あー、それ言うなら嘘になるけど……」
一呼吸、置いて
「ま、憧れだよ、憧れ、遠い星さね」
「……ん」
「気にすんな」
なでなでと頭をなでてやる。
「……はい」
まだ何か言いたそうだったけど……
「……今はそーだな、碧鈴さん一筋だから」
「!?」
顔を真っ赤にした碧鈴。
「……ん、どした、碧鈴」
「え、えと、その、あ、あう」
真っ赤になった顔を頬に近づけ。
ちゅ
「……ぶっ!?」
「えと、私も、マイロード、だけです」
帰りの車内が気まずく成りながらも、帰路についたのでした、まる
徒然続く、そんな話。 第三節
過去と彼女と小さな決意。 節終
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